自殺ダメ
(自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)
いよいよこれから、こちらの世界のお話になりますが、最初はまだ半分足を現世にかけているようなもので、やはり娑婆臭い、お聞き苦しい事実ばかり申し上げることになりそうでございます。-ナニその方が人間味があって却って面白いと仰るか・・・。御冗談でございましょう。話すものの身になれば、こんな辛い、恥ずかしいことはないのです・・・・。
これは後で神様から聞かされた事でございますが、私はやはり、自力で自然に眼を覚ましたというよりか、神様のお力で眼を覚まさして頂いたのだそうでございます。その神さまというのは、大国主神(おおくにぬしのかみ)様のお指図を受けて、新しい帰幽者の世話をして下さる方なのでございます。これにつきては後で詳しく申し上げますが、兎に角新たに幽界に入ったもので、こういった神のお神使、西洋で申す天使のお世話に預からないものは一人もございませんので・・・・。
幽界で眼を覚ました瞬間の気分でございますか。それはうっとりと夢でも見ているような気持、そのくせ、何やら心の奥の方で『自分の居る世界はモー違っている・・・・』と言った、微かな自覚があるのです。四辺は夕暮れの色に包まれた、いかにも森閑とした、丁度山寺にでも寝ているような感じでございます。
そうする中に私の意識は少しずつ回復してまいりました。
『自分はとうとう死んでしまったのか・・・・・』
死の自覚が頭脳の内部ではっきりすると同時に、私は次第に激しい昂奮の暴風雨の中に巻き込まれて行きました。私が先ず何より辛く感じたのは、後に残した、老いたる両親のことでした。散々苦労ばかりかけて、何の報いるところもなく、若い身上で、先立ってこちらへ引越してしまった親不幸の罪、こればかりは全く身を切られるような思いがするのでした。『済みませぬ済みませぬ、どうぞどうぞお許しくださいませ・・・・』何回私はそれを繰り返して血の涙に咽んだことでしょう!
そうする中にも私の心は更に他の様々の暗い考えに搔き乱されました。『親にさえ背いて折角三浦の土地に踏み止まりながら、自分は遂に何の仕出かしたこともなかった!なんという不甲斐なさ・・・・なんという不運の身の上・・・・口惜しい・・・・悲しい・・・・情けない・・・・』何が何やら頭脳の中はただごちゃごちゃするのみでした。
そうかと思えば、次の瞬間には、私はこれから先の未知の世界の心細さに戦慄しているのでした。『誰も迎えに来てくれるものはないのかしら・・・』私はまるで真っ暗闇の底無しの井戸の内部へでも突き落とされたように感ずるのでした。
殆ど気でも狂うかと思われました時に、ひょっくりと私の枕辺に一人の老人が姿を現しました。身には平袖の白衣を着て、帯を前で結び、何やら絵で見覚えの天人らしい姿、そして何ともいえぬ威厳と温情との兼ね具わった、神々しい表情でじっと私を見つめておられます。『一体これは誰かしら・・・・』心は千々に乱れながらも、私は多少の好奇心を催さずにおられませんでした。
このお方こそ、前に私がちょっと申し上げた大国主神様からのお神使なのでございます。私はこのお方の一方ならぬ導きによりて、辛くも心の闇から救い上げられ、尚その上に天眼通その他の能力を仕込まれて、ドーやらこちらの世界で一人立ちが出来るようになったのでございます。これは前にも述べた通り、決して私にのみ限ったことではなく、どなたでも皆神様のお世話になるのでございますが、ただ身魂の因縁とでも申しましょうか、めいめいの踏むべき道筋は違います。私などは随分厳しい、険しい道を踏まねばならなかった一人で、苦労も一しほ多かったばかりに、幾分か他の方より早く明るい世界に抜け出ることにもなりました。ここで念の為に申し上げておきますが、私を指導してくだすった神様は、お姿は普通の老人の姿を執っておられますが、実は人間ではございませぬ。つまり最初から生き通しの神、あなた方の自然霊というものなのです。こう言った方のほうが、新しい帰幽者を指導するのに、まつわる何の情実もなくて、人霊よりもよほど具合が宜しいと申すことでございます。
(自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)
いよいよこれから、こちらの世界のお話になりますが、最初はまだ半分足を現世にかけているようなもので、やはり娑婆臭い、お聞き苦しい事実ばかり申し上げることになりそうでございます。-ナニその方が人間味があって却って面白いと仰るか・・・。御冗談でございましょう。話すものの身になれば、こんな辛い、恥ずかしいことはないのです・・・・。
これは後で神様から聞かされた事でございますが、私はやはり、自力で自然に眼を覚ましたというよりか、神様のお力で眼を覚まさして頂いたのだそうでございます。その神さまというのは、大国主神(おおくにぬしのかみ)様のお指図を受けて、新しい帰幽者の世話をして下さる方なのでございます。これにつきては後で詳しく申し上げますが、兎に角新たに幽界に入ったもので、こういった神のお神使、西洋で申す天使のお世話に預からないものは一人もございませんので・・・・。
幽界で眼を覚ました瞬間の気分でございますか。それはうっとりと夢でも見ているような気持、そのくせ、何やら心の奥の方で『自分の居る世界はモー違っている・・・・』と言った、微かな自覚があるのです。四辺は夕暮れの色に包まれた、いかにも森閑とした、丁度山寺にでも寝ているような感じでございます。
そうする中に私の意識は少しずつ回復してまいりました。
『自分はとうとう死んでしまったのか・・・・・』
死の自覚が頭脳の内部ではっきりすると同時に、私は次第に激しい昂奮の暴風雨の中に巻き込まれて行きました。私が先ず何より辛く感じたのは、後に残した、老いたる両親のことでした。散々苦労ばかりかけて、何の報いるところもなく、若い身上で、先立ってこちらへ引越してしまった親不幸の罪、こればかりは全く身を切られるような思いがするのでした。『済みませぬ済みませぬ、どうぞどうぞお許しくださいませ・・・・』何回私はそれを繰り返して血の涙に咽んだことでしょう!
そうする中にも私の心は更に他の様々の暗い考えに搔き乱されました。『親にさえ背いて折角三浦の土地に踏み止まりながら、自分は遂に何の仕出かしたこともなかった!なんという不甲斐なさ・・・・なんという不運の身の上・・・・口惜しい・・・・悲しい・・・・情けない・・・・』何が何やら頭脳の中はただごちゃごちゃするのみでした。
そうかと思えば、次の瞬間には、私はこれから先の未知の世界の心細さに戦慄しているのでした。『誰も迎えに来てくれるものはないのかしら・・・』私はまるで真っ暗闇の底無しの井戸の内部へでも突き落とされたように感ずるのでした。
殆ど気でも狂うかと思われました時に、ひょっくりと私の枕辺に一人の老人が姿を現しました。身には平袖の白衣を着て、帯を前で結び、何やら絵で見覚えの天人らしい姿、そして何ともいえぬ威厳と温情との兼ね具わった、神々しい表情でじっと私を見つめておられます。『一体これは誰かしら・・・・』心は千々に乱れながらも、私は多少の好奇心を催さずにおられませんでした。
このお方こそ、前に私がちょっと申し上げた大国主神様からのお神使なのでございます。私はこのお方の一方ならぬ導きによりて、辛くも心の闇から救い上げられ、尚その上に天眼通その他の能力を仕込まれて、ドーやらこちらの世界で一人立ちが出来るようになったのでございます。これは前にも述べた通り、決して私にのみ限ったことではなく、どなたでも皆神様のお世話になるのでございますが、ただ身魂の因縁とでも申しましょうか、めいめいの踏むべき道筋は違います。私などは随分厳しい、険しい道を踏まねばならなかった一人で、苦労も一しほ多かったばかりに、幾分か他の方より早く明るい世界に抜け出ることにもなりました。ここで念の為に申し上げておきますが、私を指導してくだすった神様は、お姿は普通の老人の姿を執っておられますが、実は人間ではございませぬ。つまり最初から生き通しの神、あなた方の自然霊というものなのです。こう言った方のほうが、新しい帰幽者を指導するのに、まつわる何の情実もなくて、人霊よりもよほど具合が宜しいと申すことでございます。