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カテゴリ:★『シルバーバーチの霊訓』 > シルバーバーチ 潜在意識の機能

シルバーバーチ 潜在意識の機能 目次

潜在意識の機能1

潜在意識の機能2

 入神(トランス)状態における霊媒はどんな役割を演じているのか-ある日の交霊会でそれが問題となったことがある。そのきっかけはシルバーバーチが霊媒のバーバネルが入神状態から睡眠状態へ移りそうなのでコントロールがしにくくなったと述べたことにある。そして〝私にはそうなるとまずいのです〟と言うと、サークルの一人が〝なぜですか〟と尋ねた。すると〝私はこの霊媒の身体の全体をコントロールしなければならないからです〟と答えた。

-霊媒が眠ってしまうとコントロール出来ないのですか。

 「出来ません。身体を操るには潜在意識を使用しなければなりません。眠ってしまうと潜在意識が活動を停止します」

-でも、どっちにせよ、霊媒はその身体から出るのではないでしょうか。

 「いえ、霊媒自身が身体の中にいるか外にいるかの問題ではありません。潜在意識とその機能の問題であり、それは中でもなく外でもありません」

-私は霊媒は脇へ押しやられていると思ってました。

 「それはそうなのですが、一時的に身体からは離れているというだけのことです(身体から離れていても意識状態には関係ないということ-訳者)。それは霊媒が自ら進んで身(潜在意識)を任せている状態で、潜在意識まで引っ込めてしまうのではありません。そうなると睡眠状態になってしまいます。霊媒現象は全て霊界と地上との間の意識的な協力関係で行われます。無意識の内に潜在能力が一時的に使用されるケースが無いわけではありませんが、支配霊と霊媒という関係で本格的な霊的交信の仕事をするとなると、その関係は意識的なものでなければなりません。つまり霊媒現象に関係するあらゆる機構に霊媒が進んで参加することが必要となります」

-睡眠中の霊媒が(支配霊以外の霊によって)使用されて通信が届けられたケースがあったように思いますが・・・。

 「そういうこともあったかも知れませんが、それは通常行われるべきプロセスが逆転した状態です」(訳者注-冒頭でシルバーバーチが霊媒が眠ってしまいそうなので通信しにくくなったと述べたが、逆に眠っていた潜在意識が引き戻されて通信を送るということ)

-その場合、睡眠中にそういう形で使用されることを霊媒自身も同意していたということが考えられますか。

 「それは考えられます。ただご承知のように、私共は霊媒の望みはよほど下らぬことでない限りは敬意を払い、然るべき処置を取ります。しかし、言うまでもなくこの身体は私共の所有物ではありません。居住者であるバーバネルのものです。こうして私共が少しの間お借りすることを許してくれれば結構なことであり有り難いことですが、その許可もなしに勝手に使用することは道義に反します。その身体を通じて働く様々な霊的エネルギーに対して霊媒と私達の双方が敬意を払った上で、気持よく明け渡すというのが正しいやり方です」

 その潜在意識がどのように使用されるかを聞かれて-
 「そのことに関して随分誤解があるようです。精神(大半が潜在意識)には様々な機能があります。人間というのは自我意識を表現している存在といってよろしい。意識が全てです。意識そのものが〝個〟としての存在であり、個としての存在は意識のことです。意識のある所には必ず個としての霊が存在し、個としての霊が存在する所には必ず意識が存在します。あなた方の物質界においては自我の全てを意識することは出来ません。なぜならば-あなた方に分かり易い言い方をすれば-自我を表現しようとしている肉体(脳)よりも本来の自我の方が遙かに大きいからです。小は大を兼ねることが出来ません。弱小なるものは強大なるものを収容することが出来ないのが道理です。
 人間は地上生活を通じて、より大きな自我のホンの一部しか表現しません。大きい自我は死んでこちらへ来てから自覚するようになります。死んで直ぐに全部を意識するようになるのではありません。やはりこちらの生活でもそれなりの身体を通して、霊的進化と共に少しずつ意識を広げていくことになります。
 意識的生活のディレクターであり個的生活の管理人である精神は、肉体的機能の全てを意識的に操作しているわけではありません。日常生活において必要な機能の多くは自動的であり機械的です。筋肉、神経、細胞、繊維等々が一旦意識的指令を受け、更に連繋的に働くことを覚えたら、その後の繰り返し作業は潜在意識に委託されます。
 例えば、物を食べる時皆さんは無意識の内に口を開けています。それは、顎が動く前にそれに関連した神経やエネルギーの相互作用があったことを意味します。すなわち精神の媒体である脳から神経的刺激が送られ、それから口を開けて、物を入れ、そして噛むという一連の操作が行われます。全てが自動的に行われます。一口毎にその操作を意識的に行っているわけではありません。無意識の内にやっております。潜在意識がやってくれているのです。赤ん坊の時はその一つひとつを意識的にやりながら記憶していかねばなりませんでした。しかし今は一々考えないで純粋に機械的に行っております。
 こうして皆さんの身体上の、そしてかなりの程度まで精神的機能も、大部分が潜在意識に委託されていることがお分かりになるでしょう。潜在意識というのは言わば顕在意識の地下領域に相当します。例えば皆さんが本を読んでいて途中で、これはどういうことだろう、と自問すると即座に答えが閃くことがあります。それは潜在意識が普段から顕在意識の思考パターンを知っているので、それに沿って答えを生み出すからです。誰かの話を聞いている時でも同じです。〝あなたはどう思いますか〟と不意に聞かれても即座に潜在意識が答えを出してくれます。
 ところが日常的体験の枠外の問題に直面すると、それは潜在意識が体験したことも、或いは解決したこともないことですので、そこで新たな意識操作が必要となります。新しい回線を使用することになるからです。しかしそうした例外、つまりオリジナルな思考-という言い方が適切かどうかは別として-を必要とする場合を除いて、人間の日常生活の大部分は潜在意識によって営まれております。言わば潜在意識は倉庫の管理人のようなものです。あらゆる記憶を管理し、生きる為の操作の大半をコントロールしています。その意味で人間の最も大切な部分ということが出来ます。
 その原理から霊媒現象を考えれば、そもそも霊媒現象というのはそれまで身体機能を通して表現してきた自分とは別の知的存在が代わって操作する現象ですから、顕在意識の命令に従って機能することに慣れている潜在意識を操作する方が楽であるに決まっています。命令を受けることに慣れているわけです。仕事を割り当てられ、それをよほどのことがない限り中断することなく実行することに慣れております。
 霊媒現象の殆ど全部に霊媒の潜在意識が使用されています。その中に霊媒の人物の本当の姿があるからです。貯蔵庫とも言うべき潜在意識の中にその人物のあらゆる側面が仕舞い込まれているのです。こうした入神現象において支配霊が絶対に避けなければならないことは、支配の仕方が一方的過ぎて、霊媒が普段の生活で行っている顕在意識と潜在意識の自動的連係関係がいつものパターン通りに行かなくなってしまうことです。その連係パターンこそがこの種の現象の一番大切な基本となっているからです」

-霊媒の方が潜在意識を大人しくさせる必要があるということでしょうか。

 「そうではありません。支配霊の個性と霊媒の個性とが完全に調和し、その調和状態の中で支配霊自身の思念を働かせなければなりません。同時に支配霊は、他方において、丁度タイプライターのキーを押すと文字が打たれるような具合に、霊媒の潜在意識の連係パターンをマスターして、他の知的存在の指令にすぐさま反応するように仕向けなければなりません。それが支配霊として要求される訓練です。先程述べたことを絶対に避ける為の訓練といってもよろしい。
 ここで皆さんも容易に得心して頂けることと思いますが、霊媒現象は霊媒という生きた人間を扱う仕事であり、霊媒には霊媒としての考えがあり偏見があり好き嫌いがありますから、今も述べたように、〝支配する〟といってもある程度はそうした特徴によって影響されることは免れません。霊媒を完全に抹殺することは出来ません。どの程度までそうした影響が除去出来るかは、支配霊がどの程度まで霊媒との融合に成功するかに掛かっています。もし仮に百パーセント融合出来たとしたら霊媒の潜在意識による影響はゼロということになるでしょう。
 霊媒を抹殺するのではありません。それは出来ません。融合するのです。霊媒現象の発達とはそれを言うのです。サークル(円座-シルバーバーチの交霊会ではバーバネルが普段使っている書斎の椅子に座り、そこから左右にほぼ円形にメンバーが席を取る-訳者)の形を取るのはその為です。出席した人達全員から出るエネルギーがその融合を促進する上で利用されるのです。調和が何より大切ですと申し上げるのはその為です。出席者の間に不協和音があるとそれは霊媒と支配霊の融合を妨げるのです。交霊会の進行中は絶え間なく精神的エネルギーが作用しているのです。あなた方の目にお見せ出来ませんが、出席者の想念、思念、意志、欲求、願望の全てが通信に何らかの影響を及ぼしています。支配霊が熟練している程、経験が豊富である程、それだけ霊媒との調和の程度が高く、それだけ潜在意識による着色が少なくなります」

-その説からいうと、霊媒はなるべく支配霊と似通った願望や性格の持ち主がよいことになりませんか。

 「一概にそうとも言い切れません。これは異論の多い問題の一つでして、私共の世界でも意見の相違があります。忘れないで頂きたいのは、私達スピリットも人間的存在であり、地上との霊的交信の方法について必ずしも全ての点で意見が一致しているわけではありません。
 例えば無学文盲の霊媒の方が潜在意識による邪魔が少ないので成功率が高いと主張する者がいます。それに対して、いや、その無知であること自体が障害となる-それが一種の壁を拵えるのでそれを崩さねばならなくなるのだ、と反論する者がいます。安物の楽器よりも名匠の作になる楽器の方がよい音楽を生むのと同じで、霊媒は教養がある程よい-よい道具程通信を受け易いのだと主張するのです。私はこの意見の方が正しいと思います」

-なぜ教養の有る無しが問題とされるのでしょう。人格の問題もあるのではないでしょうか。

 「私は今トランス状態での通信の話をしているのです。人間性の問題は又別の要素の絡んだ問題です。私は今霊言が送られる過程を述べているのです。通信の機構(メカニズム)と呼ばれても結構です。それを分かり易く譬えて言いますと、バイオリニストにとっては名器のストラディバリウスの方が安物よりも弾き易いでしょう。楽器の質の良さが良い演奏を生むからです。安物では本当の腕が発揮出来ません。
 霊媒の人間性の問題ですが、これは霊言の場合ですと通信内容に、物理現象の場合ですと現象そのものにその影響が出ます。物理霊媒の場合、霊格が低い程-程度の問題として述べているだけですが-例えばエクトプラズムの質が落ちます。物質的にでなく霊的観点から見てです。霊側と霊媒とを繋ぐ霊力の質は霊媒の人間性が決定付けるのです。例えば地上ならさしずめ聖者とでも言われそうな高級霊が人間性の低い霊媒を通じて出ようとしても(注)、その霊格の差の為に出られません。接点が得られないからです」(注-ここで言う〝出る〟とはエクトプラズムで拵えた発声器官(ボイスボックス)で喋る場合-直接談話現象-と、同じくエクトプラズムを身に纏って姿を現す場合-物質化現象-とがある-訳者)

-物理現象においても霊媒の潜在意識が影響を及ぼすように思えるのですが、その点についてご説明願えませんか。

 「交霊会の鍵を握っているのは霊媒です。霊媒は電話機ではありません。電信柱ではありません。モールス信号のキーではありません。生きた器械です。その生命体のもつ資質の全てが通信に影響を及ぼします。
 それで良いのです。もしも霊界と地上との行進の為の純粋の通信器械が出来たら-そういうものは作れませんが-それによって得られる通信は美しさと宗厳さが失われるでしょう。いかなる交霊会においても鍵を握るのは霊媒です。霊媒なしでは交霊会は出来ません。霊媒の全資質が使用されるのです。例えばメガホン一本が浮揚するのも、物質化像が出現するのも、その源は霊媒にあります。そして霊媒のもつ資質が何等かの形でその成果に現れます」

-霊が憑って来ると霊媒の脈拍が変化するのはなぜでしょうか。その脈拍は霊の脈拍なのでしょうか。

 「霊が霊媒を支配している時は霊媒の潜在意識を使用しています。すると当然霊媒の基本的な機能つまり心臓、脈拍、体温、血液の循環等々を支配することになります。入神すると呼吸が変化するのはその為です。一時的なことです。ですが一時的にせよその問は、支配霊は物質界と接触して自分の個性を物的身体を通して再現しているわけです。例えば私は元アメリカ・インディアンの幽体を使用しています。そのインディアンが霊媒の潜在意識を支配していますから、その間の脈拍はその幽体の脈拍です。このような形(注)で行う方が一から始めるよりも手間が省けます。(注-地上の霊媒と霊界の霊媒を使用して通信を送っており、これであの肖像画に見るインディアンがシルバーバーチその人でないことは明白である-訳者)
 「あなた方の住む物質界は活気がどんよりとしています。あまりに鬱陶しく且つ重苦しい為に、私達がそれに合わせようと波長を下げていく途中で高級界との連絡が切れてしまうことがあります。私の住む光の世界とは対照的に、あなた方の世界は暗くて冷たい、ジトジトした世界です。
 あなた方は太陽の本当の姿、目も眩まんばかりの(太陽の霊体の)光輝をご覧になったことがありません。あなた方が見ておられるのはその粗末な模造に過ぎません。丁度月が太陽の光を反射して輝くように、あなた方の目に映っている太陽は私達の太陽の微かな反射程度に過ぎません。
 譬えてみれば、こうして地上に降りて来た私は、カゴに入れられた小鳥のようなものです。用事を済ませて地上から去って行く時の私は、鳥カゴから放たれた小鳥のように、果てしない宇宙の彼方へ喜び勇んで飛び去って行きます。死ぬということは鳥カゴという牢獄から解放されることなのです。
 さて私があなた方と縁のあるスピリットからのメッセージを頼まれる時は、それなりのバイブレーションに切り換えてメッセージを待ちます。その時の私は単なるマウスピースに過ぎません。状態がいい時は連絡は容易に出来ます。が、この部屋の近所で何かコトが起きると混乱が生じます。突如として連絡網が途切れてしまい、私は急いで別のメッセージに代えます。バイブレーションを切り換えなくてはなりません。
 そうした個人的なメッセージの時はスピリットの言っていることが一語一語聞き取れます。それは、こうして私が霊媒を通じて喋っている時のバイブレーションと同じバイブレーションでスピリットが喋っていることを意味します。しかし、高級界からのメッセージを伝えるとなると、私は別の意識にスイッチを切り換えなくてはなりません。シンボルとか映像、直感とかの形で印象を受け取り、それを言語で表現しなくてはなりません。それは霊媒がスピリットからの通信を受けるのと非常によく似ております。その時の私は、シルバーバーチとして親しんで下さっている意識よりも更に高い次元の意識を表現しなければならないのです。
 例えば画家がインスピレーションを受ける時は、普段使用しているのとは別のバイブレーションに反応しています。その状態の中で画家はある霊力の作用を受け、それを映像に転換してキャンバスの上に画きます。インスピレーションが去るとそれが出来なくなります。それと同じで、私が皆さんに霊的真理をお伝えしようとすると、私の意識の中でも高等なバイブレーションに反応出来る回線を開き、高級霊がそれを通路として通信を送ってくる。それを私が地上の言語で表現するわけです。
 とは言え、私は所詮この霊媒(バーバネル)の頭にある用語数の制限を受けるだけでなく、この霊媒の霊的発達程度による制約も受けます。霊媒が霊的に成長してくれれば、その分だけ、それまで表現出来なかった部分が表現出来るようになるのです。
 今ではこの霊媒の脳のどこにどの単語があるということまで分かっていますから、私の思うこと、というよりは、ここに来る前に用意した思想を全部表現することが出来ます。
 この霊媒を通じて語り始めた初期の頃は、一つの単語を使おうとすると、それと繋がった他の要らない単語まで一緒に出て来て困りました。必要な単語だけを取り出す為には脳神経全体に目を配らなくてはなりませんでした。現在でも霊媒の影響を全く受けていないとは言えません。用語そのものは霊媒のものですから、その意味では少しは着色されていると言わざるを得ないでしょう。が私の言わんとする思想が変えられるようなことは決してありません。
 あなた方西洋人の精神構造は、私達インディアンとは大分違います。上手く使いこなせるようになるまでに、かなりの年数が要ります。まずその仕組みを勉強した後、霊媒的素質をもった人々の睡眠中を狙って、その霊体を使って試してみます。そうした訓練の末に漸くこうして喋れるようになるのです。
 他人の身体を使ってみると、人間の身体がいかに複雑に出来ているかがよく分かります。一方でいつものように心臓を鼓動させ、血液を循環させ、肺を伸縮させ、脳の全神経を適度に刺激しながら、他方では潜在意識の流れを止めて、こちらの考えを送り込みます。容易なことではありません。
 初めの内はそうした操作を意識的にやらなくてはならないのです。それが上達の常道というものです。赤ん坊が歩けるようになるには一歩一歩に全意識を集中します。その内意識しなくても自然に足が出るようになります。私がこの霊媒をコントロールするようになるまで、やはり同じ経過を辿りました。一つ一つの操作を意識的にやりました。今では自動的に働きます。
 最近他界したばかりの霊が喋る時はそこまでする必要はありません。霊媒の潜在意識に思念を印象付けるだけでよろしい。しかしそれにもかなりの練習が要ります。それをこちらの世界の者同士で行います。そう易々と出来ることではないのです。こうして霊媒の口を使って思うことを伝えるよりは、メガホンを使って喋る方がずっと楽です。(訳者注-メガホンの中に発声器官を拵えて喋る。詳しくは「ジャック・ウェバーの霊現象」-国書刊行会-を参照されたい)
 人間の潜在意識はそれまでの生活によって働き方に一つの習性が出来ており、一定の方向に一定の考えを一定のパターンで送っています。その潜在意識を使ってこちらの思想なりアイディアなり単語なりを伝える為には、その流れを一旦止めて、新しい流れを作らなくてはなりません。もし似たような考えが潜在意識にあれば、その流れに切り換えます。レコードのようなものです。その流れに乗せれば自動的にその考えが出て来ます。新しい考えを述べようと思えば新しいレコードに代えなくてはならないわけです。
 この部屋に入って来るのに、壁は別に障害になりません。私のバイブレーションにとって壁は物質ではないのです。寧ろ霊媒のオーラの方が固い壁のように感じられます。私のバイブレーションに感応するからです。もっとも、私の方はバイブレーションを下げ、霊媒の方はバイブレーションを高めています。それが上手く行くようになるまで十五年もかかりました。
 霊媒のオーラの中にいる間、私は暗くて何も見えません。この身体によって私の能力が制限を受けています。この霊媒が赤ん坊の頃から身に付けて行くことを私がいかに使用するかを一つひとつ勉強しなければなりませんでした。もっとも足の使い方は知る必要がありませんでした。私は足には用事がないからです。必要なのは脳と手だけです。
 この霊媒を支配している時に別のスピリットからのメッセージを口移しに伝えることがありますが、その時は霊媒の耳を使うのではなく私自身の霊耳を使います。全ては霊媒のオーラと私のオーラの問題です。私のオーラは霊媒のオーラ程濃密でなく、霊媒のオーラの中にいる時でも他のスピリットが私のオーラに思念を印象付けることが出来ます。言ってみれば電話で話をしながら同じ部屋の人の話を聞くのと同じです。二つのバイブレーションを利用しているのです。同時には出来ませんが、切り換えることは出来るわけです」

-霊言現象は霊が霊媒の身体の中に入って喋るのですか。

 「必ずしもそうではありません。大抵の場合オーラを通じて操作します」

-霊媒の発声器官を使いますか。

 「使うこともあります。現に今の私はこの霊媒の発声器官を使っています。拵えようと思えば私自身の発声器官を(エクトプラズムで)拵えることも出来ますが、そんなことをするのは私の場合はエネルギーの無駄です。私の場合はこの霊媒の潜在意識を私自身のものにしてしまいますから、全身の器官をコントロールすることが出来ます。いわば霊媒の意志まで私が代行し-霊媒の同意を得た上での話ですが-暫く身体を預かるわけです。終わって私が退くと霊媒の意識が戻って、いつもの状態に復します」

-霊媒の霊体を使うこともありますか。

 「ありますが、その霊体も常に肉体に繋がっています」

-仕事を邪魔しようとするスピリットから守る為に列席者にも心の準備が要りますか。

 「要ります。一番大切なことは身も心も夢の一つになり切ることです。そうすれば愛の念に満たされたスピリット以外は近付きません」

-霊界側でもその為の配慮をされるのですか。

 「勿論です。常に邪魔を排除していなくてはいけません。あなた方出席者との調和も計らなくてはなりません。最高の成果を挙げる為に全ての要素を考慮しなければなりません。こちらにはその為に組織された素晴らしい霊団がおります」

-霊媒は本をよく読んで勉強し、少しでも多くの知識をもった方がいいでしょうか。それともそんなことをしないで自分の霊媒能力に自信をもって、それ一つで勝負した方がいいのでしょうか。

 「それは霊能の種類にもよるでしょうが、霊媒は何も知らない方がいいという考えには賛成出来ません。知らないよりは知ってる方がいいに決まっています。知識というのは自分より先に歩んだ人の経験の蓄積ですから、勉強してそれを自分のものにするよう努力した方がいいでしょう。私はそう思います」

-立派な霊能者となるには生活面でも立派でなくてはいけませんか。

 「生活態度が立派であれば、それだけ神の道具として立派ということです。ということは、生活態度が高度であればある程、内部に宿された神性がより多く発揮されていることになるのです。日常生活において発揮されている人間性そのものが霊能者としての程度を決めます」

-ということは、霊格が高まる程霊能者としても向上すると言っていいのでしょうか。

 「決まり切ったことです。生活面で立派であればある程霊能も立派になります。自分の何かを犠牲にする覚悟の出来ていない人間にはロクな仕事は出来ません。このことは、こうした霊界での生活を犠牲にして地上に戻って来る私達が身をもって学ばされて来た教訓といってもいいでしょう」

-他界した肉親や先祖霊からの援助を受けるにはどうすればいいでしょうか。

 「あなたが愛し、あなたを愛してくれた人々は、決してあなたを見捨てることはありません。いわば愛情の届く距離を半径とした円の範囲内で常にあなたを見守っています。時には近くもなり、時には遠くもなりましょう。が決して去ってしまうことはありません。その人達の念があなた方を動かしています。必要な時は強く作用することもありますが、反対にあなた方が恐怖心や悩み、心配等の念で壁を拵えてしまい、外部から近付けなくしていることがあります。悲しみに涙を流せば、その涙が霊まで遠く流してしまいます。穏やかな心、安らかな気持、希望と信念と自信に満ちた明るい雰囲気に包まれている時は、そこにきっと多くの霊が寄ってまいります。
 私達霊界の者は出来るだけ人間との接触を求めて近付こうとするのですが、どれだけ接近出来るかは、その人間の雰囲気、成長の度合、進化の程度にかかっています。霊的なものに一切反応しない人間とは接触出来ません。霊的自覚、悟り、ないしは霊的活気のある人とは直ぐに接触がとれ、一体関係が保てます。そういう人はスピリチュアリストばかりとは限りません。知識としてスピリチュアリズムのことを知らなくても、霊的なことを理解出来る人であればそれでいいのです。とにかく冷静で受容的な心を保つことです。取り越し苦労、悩み、心配の念が一番いけません。それらがモヤを拵えて、私達が近付けなくするのです」

-そういう霊にこちらからの念が通じますか。

 「一概にイエスともノーとも言いかねます。魂の進化の程度が問題になるからです。波長の問題です。もしも双方がほぼ同程度の段階にあれば通じるでしょう。が、あまりに距離があり過ぎれば全く波長が反応し合いませんから、通じないでしょう」

-他界した人のことをあまり心配すると霊界での向上の妨げになるでしょうか。

 「地上の人間に霊界の人間の進歩を妨げる力はありません。スピリットはスピリット自身の行為によって向上進化します。人間の行為とは関係ありません」(絶対的拘束力はないという意味で述べている-訳者)

-世俗から隔絶した場所で瞑想の生活を送っている人がいますが、あれで良いのでしょうか。

 「〝良い〟という言葉の意味次第です。世俗から離れた生活は心霊能力の発達には好都合で、その意味では良いと言えるでしょう。が私の考えでは、世俗の中で生活しつつ、しかも世俗から超然とした生活の方が遙かに上です。つまり霊的自覚に基づいた努力と忍耐と向上を通じて同胞の為に尽くすことが、人間本来のあるべき姿だと思います」

-世俗から離れた生活は自分の為でしかないということでしょうか。

 「一番偉大なことは他人の為に己を忘れることです。自分の能力を発達させること自体は結構なことです。が開発した才能を他人の為に活用することの方がもっと大切です」

-これからホームサークルを作りたいと思っている人達へのアドバイスを・・・・。

 「イヤな思いをすることのない、本当に心の通い合える人々が同じ目的をもって一つのグループを拵えます。週一回、同じ時刻に同じ部屋に集まり、一時間ばかり、或いはもう少し長くてもよろしい、祈りから始めて、そのまま瞑想に入ります。目的、動機が一番大切です。面白半分にやってはいけません。人の為に役立たせる為の霊能を開発したいという一念で忍耐強く、粘り強く、コンスタントに会合を重ねて行くことです。その内同じ一念に燃えたスピリットと感応し、必要な霊能を発揮すべく援助してくれることでしょう。
 言っておきますが、私共は何かと人目を引くことばかりしたがる見栄っ張りの連中には用はありません。使われずに居睡りをしている貴重な能力を引き出し、同胞の為人類全体の為に有効に使うことを目的とした人の集まりには大いに援助します」

-どうすれば霊媒や霊視能力者になれるのでしょうか。

 「神の為に自分を役立てようとする人は皆神の霊媒です。いかにして霊を向上させるか-これはもう改めて説く必要はないでしょう。これまで何回となく繰り返し説いて来たことだからです。自分を愛する如く隣人を愛することです。人の為に役立つことをすることです。自分を高めることをすることです。何でもよろしい、内部に宿る神性を発揮させることをすることです。それが最高の霊媒現象なのです。霊視能力者になる方法よりは、神の光が見えるように魂の眼を開く方法をお教えしましょう。それも今述べたのと同じです」

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