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カテゴリ:★『各種霊的能力の解説』 > バーバネル 霊媒の誕生-三人の例

バーバネル 霊媒の誕生 三人の例 目次

エステル・ロバーツ

オズボン・レナード

ヘレン・ヒューズ

自殺ダメ



 『これが心霊(スピリチュアリズム)の世界だ』M・バーバネル著 近藤千雄訳より


 様々な心霊現象の話を読まれて、「それはいいとして、一体霊媒は自分に霊能があることをどうやって発見するのか。何か共通したパターンがあるのか」という疑問をもたれる方も多かろうと思う。事実それがあるのである。それを三人を例にしてみたい。

 エステル・ロバーツ

 まずエステルであるが、最初心霊体験をしたのは八歳の時であった。そしてそれは八歳の少女にとってはあまり楽しい体験とはならなかったようだ。というのは、父親から〝嘘を言った〟と、ひどく叱られたからである。
 ある日の朝、三階の部屋でお姉さんと一緒に学校へ行く支度をしていた時、窓を三度叩く音がしたので二人はびっくりした。と同時に部屋が急に暗くなった。まるで大きな雲に被われたようだった。
 エステルがどうしたのだろうと驚きながら見上げた。その時彼女が見た光景に姉が仰天するといけないと思い「上を見ては駄目よ、姉さん!」と叫んだ。が、見るなと言われると見たくなるものだ。姉もとっさに見上げた。そして、あまりの異様さにキャッと叫んだまま気を失ってしまった。
 二人が見たものは光り輝く鎧を纏った騎士の姿だった。エステルはそれをじっと見据えた。窓の外の宙に浮いているように見える。伸ばし切った腕の先にはギラギラと輝く剣が握られている。その鋭い眼光がうら若き少女の両眼とかち合った。その時、騎士が何やら頷いた。次の瞬間、その姿はもうなかった。半世紀以上経った今でもエステルはその騎士の顔つきを鮮明に覚えている。
 さて姉の異様な叫び声を聞いて駆け上がってきた父親にエステルは今見たものを正直に語った。すると父親はそのあまりの突っ飛な話に「嘘をつくんじゃない。お前の見たものはただのコウモリだ!」と叩きつけるような言い方で否定した。しかしエステルはその後ずっと、この異常体験を自分の人生の使命の始まりであったと見ている。その時見た騎士が再び姿を見せたのはエステルが中年になってからのことであった。
 学校ではエステルは一見ごく普通の女の子だった。が、一つだけ違ったところがあった。それは何かというと〝声〟が聞こえるとか〝姿〟が見えると言うのである。それで友達はみんなエステルのことを〝夢見屋さん〟と呼んだ。そうした声にエステルがどの程度心を奪われていたかは知る由もない。両親に話して聞かせても、信心深い善人ではあったが、少し空想の度が過ぎると言って相手にしてくれなかった。
 エステルが最初にした仕事は子守で、十五歳の時だった。その時考えたことは、子守の仕事に忙しくしていたら変な現象も起きなくなるのではないかということだったが、乳母車を押して歩いていると、相変わらず何人かの姿が後から付いて来るし、その話し声も聞こえる。その話の内容は自分の知らないことや想像もつかないことばかりだった。
 それでもエステルは自分が霊能者であることが理解出来ずに、相変わらずそうした現象を押さえつけようとしていたが、その内自分は他の女の子とは違うのだという自覚を迫られているような気がし始めた。訳が分からないエステルは気狂いになるのではないかと心配になってきた。
 二年後の十七歳の時に結婚し、とても愛情深い人だったので何もかも打ち明けた。ご主人はエステルの気持はよく理解してくれたが、スピリチュアリズムについては何の知識もなかったので、自分の妻は〝変人〟かも知れないと考えたりした。
 そうしたある夜のこと、ベッドで横になっていると、一人の姿が部屋を横切るのを霊視した。それが夫のおばであることを確認したエステルは「あなたのおばさんが亡くなられたようよ」と夫に言った。当然のことながらご主人は「なぜそんなことが分かるのか」と聞いたが、説明しようもないので「でも、それが分かるのよ」と言った。翌朝早く、昨夜おばが死んだことを告げる電報が届いた。
 それからエステルにとって苦難の時代が訪れた。元々頑健でなかった夫が大病を患ったのである。夫を看病する傍ら三人の子供を育てなければならない。〝声〟が頑張れと励ましてくれるのだが、何だか彼女自身にはその〝声〟の主達が不幸を運んでくれてるような気がしてならなかった。そして或る日、霊の一団が夫のベッドの周りに集まっているのを見て、エステルは夫に別れを告げる時が来たと悟った。三人の子供を家の外に出し、夫と二人きりになって最後の瞬間まで看病してあげた。夫が決して治らないことは霊的に知らされていたのである。ベッドに寄り添い最後の時を待っていた。
 いよいよこの世との別れの時が近づいた時、二人の霊が一緒に寝ずの番をしているのが見えた。夫の両親だった。夫が最後の息を引取った時、一本の細い透明に近い紐が頭部から離れて行くのが見えた。同時に、それによく似た絹のような物質が他の箇所から出て来て、やがていつもの夫の姿になった。ベッドに横たわっている身体と生き写しでありながら、しかも全く別の存在であった。それがゆっくりと視界から消えていった。それと一緒に、夫の死を手伝いに来ていた霊界の医師(複数)もその場を離れた。我が子を迎えに来ていた両親も又消えた。
 葬儀には参列者は殆どいなかった。悲しみに暮れる若き未亡人に優しく言葉をかける人は一人もいなかった。エステルは一人寂しく墓場に立っていた。三人の子供と、これから待ち受ける心細い将来を思うと、自然に涙が溢れて頬をつたった。
 その時、思いも寄せないところから励ましの声がかかった。牧師が埋葬の祈りを述べている時、ふと墓を見ると夫の柩の上に夫の姿が見えた。容貌まで見える程はっきりとした姿だった。夫はニッコリと笑みを浮かべて彼女を見つめた。その時「絶望しては駄目だよ」という励ましが彼女の身体に流れ込むような感じがした。
 「灰を灰に、塵を塵に返せよ」-そう牧師が読み上げた。が、その時はもう彼女はその言葉に悲しみを覚えなかった。「その瞬間私は夫が本当に私から去ってしまったのではないことを悟ったのです」これで心の支えは得られた。しかし、今度は物質的な問題に直面しなければならない。その一つはいかにして子供の養育費を賄うかということであった。
 それからイヤな職探しが始まった。そしてやっと見つけたのは遠くのカフェのウェイトレスであった。これが大変な仕事だった。朝七時に家を出て夜十一時より早く帰れることはなかった。やっと帰って来ると翌朝の食事の準備をしなくてはならない。クタクタに疲れる毎日だったが、それでも心霊能力だけは一向に衰えなかった。彼女は言う-
 「毎日疲れた足を引き摺りながらカフェの床を歩いていると〝声〟が聞こえるし〝姿〟が見えるのです。お相手をしている客の頭上に〝天使〟の姿が見えるのです。そんなお客さんには、今思うと、その方達が食べておられたソーセージやチップスよりも遙かにいいものを出してあげることも出来たわけです。霊的なことをちゃんと理解していたら、その話を出すことも出来たことでしょう」
 が、もしもそんなことをしたら気狂い扱いされて、恐らくクビにされると考えて口にしなかった。それでよかったのである。
 が、遂に運命の転換期が訪れた。近所の人が彼女をスピリチュアリスト教会の行事に誘ったのである。すると主催者の霊視家がエステルを呼び出して「あなたは生まれながらの霊媒です。世の中の為に大きな仕事をなさる方です」と告げた。
 子供の頃から見続け聞き続けてきた姿と声についてまともな説明を聞いたのはこれが始めてだった。が、まだスピリチュアリズムの仕事に身を投じる気にはなれない。何かそれを保証してくれるしるしが欲しかった。そこでそのことをその霊視家に打ち明けた。
 経験豊かなその霊視家は一つの方法を勧めた。それは毎晩テーブルに向かってただ座ることだった。そうすればきっとしるしがある筈だと言われた。彼女は同意した。言われた通りに座り、それを六日間続けた。が、何のしるしもない。疑念が頭をもたげ、いい加減イライラしながら七日目の晩も座った。そして予定時間を終えると、遂に腹を立てて立ち上がり、こう独り言を言った。
 「もう止めた!スピリチュアリズムはこれでお終いだ!」
 彼女は子供の部屋へ行こうと、ドアの方へ歩を進めた。すると何ものかが首の後ろを押さえるのである。ドアに近付く間ずっと押さえ続けている。何だろうと思って振り返ると、なんと、さっきまで向かっていたテーブルが宙に浮いて、その一本の脚が彼女の首を押さえていたことが分かった。テーブルは相変わらず何の支えもないのに天井と床の中間に浮いたままである。驚いて見ていると、テーブルがすーっと後戻りして、ゆっくりと元の位置に降りた。
 テーブルに手を置いているとラップで通信が送られてくる話を聞いていた彼女は、一つ試してみようと思った。早速テーブルに向かって座り、手を置くと案の定、ラップが起きた。予め聞いていた符号-一つの時はa、二つはb、三つはc、等々-で綴ってみると次のようなメッセージになった。
 「私ことレッドクラウドは人類の為にやって来た」
 これが彼女にとって支配霊との最初の意識的連絡であった。それは又、それから四十年に亘って何千何万もの人々に慰めを与えた偉大なる仕事の始まりでもあった。

自殺ダメ



 ケント州の海岸沿いにある田舎町タントカートンの小さな家で、世界のどの立派な劇場より多くのドラマが演じられていた。そこが〝イギリス女性霊媒の女王〟とまで言われるレナード夫人の自宅であった。
 そこでは生者と死者との再会が何百回イヤ何千回も行なわれていたのである。その生と死を主役とするドラマに比べると、大劇場における人工のドラマも影が薄くなる。そのレナード夫人が初めてトランス現象を体験したのは、奇妙なことに、レパトリ劇団の一員として各地を回っている時にロンドン・パレイディアム劇場の舞台の下で友人二人と実験をしていた時であった。それについては後に詳しく述べよう。
 そのレナード夫人がその名を世界に知られるようになったのは、英国が誇る世界的物理学者オリバー・ロッジ卿が彼女のことを激賞したからであった。ロッジ卿は初め匿名でレナード夫人の実験会に出席していたが、第一次大戦で失った息子のレーモンドからの通信を受け、それが紛れもなく本人のものであることを確信するに及んで、その証拠を「レーモンド」他二、三の書物に纏めて公表したのだった。
 さてレナード夫人に会ってみると少しも気取らない控え目な女性なので、まさかこの人が世界的な入神霊媒であるとは信じ難い程である。霊能は小さい頃、誰にも見えないものが見えることから始まった。朝目を覚まして着替えをしている時や子供部屋で朝食をとっている時などに、突如として眼前に美しい景色が展開することが毎日のように起きるのだった。どっちの方角を見ても、壁もドアも天井も消え失せて、代わってなだらかな坂、美しい土手や樹木、様々な形をした綺麗な花の咲き乱れる谷のある景色が展開する。それが何マイルも遠くまで続いているのである。
 幼い彼女にはなぜだか分からないが、その景色は肉眼で見える周りの景色より遠くまで広がって見えるのである。難しい理屈は抜きにして、幼いながらに彼女はそれがこの世のものでないものを見ているということを感じていた。そして普通の肉眼で見ている景色や人間と比べたら、その光景の中の景色や人間がいかに綺麗であったかを今でも思い出すことが出来るという。
 そんな或る朝のことである。その日は父親がスコットランドへ出張する日なので、子供部屋でなく下へ降りてみんなで朝食をとることを許された。嬉しいので目が覚めると直ぐに跳び起きて部屋着に着替え、まだ半分目が開かないままテーブルについて正面の壁にその眠い目をやった。すると彼女が〝幸福の谷〟と呼んでいる光景が展開し始めた。普段は口にしないのだが、その朝はつい気軽に父親に言ってしまった。「今朝の景色は特別に美しいとこなのね」
 「どこのことかね」父親が聞き返した。彼女は壁を指差した。その壁には二丁の銃が掛けてある以外は何もない。「お前は一体何のことを言ってるのかね」父親にそう聞かれて彼女は正直にありのままを説明した。さぁ大変である。周りの家族はみんな慌て、心配し、そして悩んだ。
 最初はみんな「それはお前の作り話だろう。そうだろう?」と言ってみたが、彼女は「でも本当に見えるんだもの」と言い張る。そしてその光景を細かく、あまりに細かく説明するので、これは何か意味があるのだろうと結論せざるを得なかった。が、それが何であれ、普通でないことには間違いない。父親は二度とそんなものを見るんじゃないよと強く言いつけた。
 子供というのは心霊能力をごく自然に発揮していることがあるものである。が、残念なことに親はそれを病気ではないかと思って抑え込んでしまうのである。が、レナード夫人の場合は父親のきつい言いつけにもかかわらず同じ光景を見続けた。そしてその光景の中に出現する人物と親しくなっていった。
 少し大きくなってから、演劇好きの彼女は両親の驚きをよそに役者になる道を選んで、あるレパトリ劇団に加わって各地をまわった。
 ある町で公開交霊会の広告を見て覗いてみた。その時は大して興味を覚えなかったが、なぜかもう一度行ってみたくなって出席したところ、今度は主催者の霊視家から指名されて、いとこからのメッセージを貰った。霊視家が描写したいとこの容姿は確かにその通りだった。そのことを家に帰ってから母親に告げると、喜んでくれるかと思っていたのとは逆に、きつく諌められ、二度とそんな話を口にするものではありませんと言われた。彼女は、そのいとこからのメッセージに自分が将来やることになっている特殊な仕事を予言してくれているところがあると言ってみたが、母親は二度とスピリチュアリズムに係わりあってはいけませんと、相手にしてくれなかった。
 そのいとこからのメッセージにはまた彼女の結婚相手についての予言も入っていた。ただその相手の男性の容貌があまりにグロテスクなので、とても信じたくなかった。ところがある劇場で自分の出番が近付いたので階段を駆け上がっていた時、小道具を入れたカゴに足を引っ掛けてつんのめり、同じ階段を降りかかっていたプロデューサーの両腕に抱きかかえられる格好になってしまった。彼も同じ出し物に出演していたのであるが、その役柄の衣装とメーキャップが霊視家の説明通りだったのである。彼は、いきなり自分の腕に抱えられたレナードにキスをした。そして彼女もお返しのキスをした。そして二人は予言通り結婚することになり、その後ご主人が背中の傷がもとで他界するまで、実に幸せな夫婦生活を送った。
 話は戻って、そうした地方巡業のせわしい生活の合間を見つけて、レナード夫人は二人の友人と三人でテーブル現象の実験を一生懸命やっていた。数えて二十六回までは何の現象も起きなかったが、二十七回目になってようやくテーブルが動き出し、その脚が床をコツコツと叩いて通信を送ってきた。符号に合わせてみるとフィーダと名乗る女性のスピリットからの通信で、レナードはそのうち入神霊媒になると告げて来た。レナード夫人はトランスは嫌いだった。が、フィーダはその方が一番いい結果が得られると説明した。ついでに言えば、フィーダはレナード夫人の先祖霊の一人だと言っている。
 さて話はいよいよ最初に述べたロンドン・パレイディアムでの話になる。化粧室はごった返していた。三人は実験をする静かな場所がなくて困っていた。ある夜、もう実験会をやれる見込みはないと諦めながら劇場の周りをうろついていると、ステージから下へ降りる狭い階段があるのを見つけた。勝手に降りてはいけないのだが、みんなで降りてみた。
 降りてみるとそこは劇場の設備-暖房や照明などのエンジンや機械類が置いてある広い部屋だった。人影はない。これはいい部屋だと三人は思った。壁が厚いので低いエンジンの音以外は殆ど耳に入らない。隅に小ぎれいな場所があった。上の騒音のことを思うと、そこは平和な避難所のようだった。運良く出張から帰ったばかりのご主人に頼んでテーブルと三つの椅子を用意してもらった。見つかったら最後とばかり、それをこっそりと運び入れた。
 それからというもの、彼女達三人は毎晩のように、ステージに用のない九時から十時までそこで実験会を開いた。成果は上々で楽しかった。フィーダが通信を送ってくるのであるが、その度に、その内レナードを入神させると言って来た。が、そういう現象は一向に起きなかった。友人のアグネス、ネリー、それにご主人は諦めずにやるように励ましてくれるのだが、レナード自身はいい加減イヤになりイライラするようになった。
 ついでに言っておくと、その劇場は新しく建ったばかりで、その劇場を所有する会社の社長であるウォルター・ギボンズ卿が建てたものである。三人はギボンズ卿のことは何も知らないし、今回の上演の為に来るまでは会ったこともなかった。
 ある夜のこと、いつものようにレナード夫人はややマンネリ気味になってきた実験会を開いた。するとフィーダがこれからはテーブルでの通信は止めてレナードを入神させることに集中すると言って来た。その直後のことである。最近顔を知ったばかりのギボンズ卿がそのエンジンルームへ降りて来たのである。そして後ろ手を組んだまま部屋を行ったり来たりして物思いに耽っている。三人は薄暗い隅にいるところを見つかりはしないか冷や冷やしながら押し黙っていた。そのうち卿の目がたまたま三人の方を向いた。ところが意外にも卿は何も言わないで、三人から十五、六メートル離れた所を相変わらず物思いに耽った様子で行ったり来たりしていた。
 「いつになったら行ってくれるんだろう」
 彼女達は気が気でならなかった。ところが、そうして待っている内にレナード夫人が異常な程の眠気を催し始めた。そして自分の霊能に以前にも増して自信がなくなってきた。眠いような疲れたような感じが増してきた。
 「今夜はいつもより暗いのね。私とっても眠いの。ちょっと位寝ても上の人達には分からないでしょう?」けだるそうにそう言いながら、ついに寝入ってしまった。やがて目を覚ました時は、自分が何時間も寝たのか、それとも何分しか寝てないのか分からない程だった。
 が、目を覚ました時の二人の仲間の様子は忘れようにも忘れられない程脳裏に焼き付いているという。アグネスとネリーが彼女の両腕を握り、ひどく興奮した様子で、しかも涙が二人の頬をつたっている。
 「一体どうしたというの?」彼女が聞くと
 「大変よ!フィーダがあなたに乗り移って私達の親戚からのメッセージを伝えてくれたのよ。ネリーのお母さんも通信を送ってきたわ。素晴らしかったわ!」
 こうして始まった入神談話で、フィーダは1914年の春に世界に大変な悲劇が起きること、そしてレナードを通じて多くの人々の力になりたいと告げて来た。レナード自身は霊媒を職業とする考えには賛成でなかったが、彼女を取り巻く事情がその道へと引きずり込んで行った。そして予言通り第一次大戦が勃発し、無数の人々に悲劇をもたらした。
 霊媒としての資質に恵まれていたレナード夫人はその後急速に名声を高めていった。他の生活面を一切犠牲にした五十年に及ぶ霊媒の仕事を通じて世界的霊媒として知られるようになった。スピリチュアリズムを信じない人、或いは懐疑的な心霊研究家も、夫人の誠実さと霊媒現象への一途な献身ぶりに賞讃を惜しまなかった。
 困難に直面してレナード夫人の霊能にすがった数人の人の中の一人で、後に夫人の交霊会のレギュラーメンバーとなった人に、例の劇場のオーナーのギボンズ卿がいる。後に親しくなってからレナード夫人がパレイディアム劇場のステージの下のエンジンルームで初めて会った時の話を持ち出すと大いに笑ったそうである。
 フィーダが大戦を予言し、レナード夫人の入神談話を通じて多くの人々を救ってあげたいと述べたその願いが、半世紀以上にも亘る長い献身的仕事によって実現された。それはフィーダとレナード夫人の顕幽にまたがる宿命的な共同事業の成果であった。レナード夫人の交霊会で見られる大きな特徴は、フィーダが霊界のスピリットのメッセージを取り次ぐ時、一度そのメッセージを繰り返して確かめるその声がよく聞こえたことである。
 子供の頃、霊界の光景をしばしば見ていたレナード夫人に、結婚後一つだけ実に奇妙な体験がある。これは所謂幽体離脱現象であるが、ただ単に肉体から出て旅行してきたというだけでないところに興味がある。
 ある夜、肉体から出てベッドの中で苦しんでいる或る男性の部屋へ入って行った。そして自分でも何故だか分からないのであるが、その人に治療を施した。それから帰ろうとして部屋を出かかったところで激しいセキの発作に襲われた。と、次の瞬間、目が覚めた。見るとご主人がその発作を耳にして心配そうに夫人を見守っていたのでギョッとしたという。
 ベッドに横になったまま今の幽体離脱のことを思い出していると、そのベッドで苦しんでいた男性が、かの有名な作家のコナン・ドイル卿であることに気が付いた。少し躊躇したが、彼女はその夜の体験をドイル卿に書いて送った。するとそれに対して電報で「直ぐに来て欲しい」と言って来た。早速行ってみるとドイル卿はこんなことを語った。あの夜は自分は体調が非常に悪かった。部屋のドアは開いており、そこへ一人の女性が入って来た。そして自分に近付いて治療を施してくれた。「それからその女性は帰りかけた時に激しいセキの発作に襲われました」と。
 肉親を失った数え切れない程の人々に慰めを与えて来たレナード夫人自身にも同じ悲しみが訪れた。長い間殉教者のように病苦に耐えてきた夫君がついにこの世を去った。が、夫人は悲しまなかった。なぜなら夫君にとっては死こそ苦しみからの解放だったからである。
 それから夫人としては珍しいことをしている。自分自身の為の交霊会を開いたのである。夫からのメッセージを聞きたいと思い、姪を呼んで入神中に自分が喋ることを書き取らせた。案の定、夫からの愛情のこもったメッセージが送られて来た。新しい生活の様子や再会した親戚のことを語り、最後を愛の言葉で結んでいた。
 レナード夫人が私にこんなことを語ってくれた。
 「夫の死によって私は随分多くのことを学ばされました。というのは、死後の新しい冒険のことを細かに話してくれたからです」
 その夫のメッセージで余生を霊媒の仕事に捧げる決意を固めたという。最後に夫人の得た霊界通信の要約ともいうべき言葉を引用しておこう。
 「私が長年に亘って得た数え切れない程のメッセージの中で、それを受けた人の性格を高め、心を豊かにしない言葉はただの一語もありません」

自殺ダメ



 ヒューズ女史も子供の頃から心霊体験があった。いつも〝物が見える〟と言うので、メソジスト派の信者であった両親は「この子は少しおかしいのではないか」と密かに心配していた。父親はガラス細工の仕上げ工で、ヘレンは七人の子供の一番上であった。
 ヘレンが目に見えない遊び友達の話をしたり、特にその子達が玄関から入ってきて裏口から出て行くところを語った時などは〝馬鹿げた空想〟もいい加減にしなさいと叱られたものだった。
 しかし、いくら叱られても自分ではやっぱり見えるし声も聞こえることを確信していた。というのは実際にその子達と一緒に遊んでいたからである。学校でも先生から同じようなことで叱られている。もっとも、他の生徒にもヘレンと同じものを見た人が大勢いたらしい。
 それはヘレンが十一歳の時のことだった。校舎の入り口を入りかけた時、教室の中の窓際に一人の生徒の姿が見える。生徒達はみんなこれから教室に入るところで、まだ中にいる筈はない。ヘレンは十二、三人いた友達に「あれ見て!」とその窓の方を指差した。すると不思議に全員にその姿が見えるのである。多分うっかりカギをかけられて出られなかったんだろう、ということに話が落ち着いた。
 そこへ先生が近付いて来て何を騒いでいるのですかと聞いた。みんな窓の方を指差して教室の中に生徒が一人いると言った。ところがその時はもう姿はなかった。本当にいたんです、とみんなで説明しても先生は聞き入れてくれなかった。そしてヘレンが悪ふざけの〝主犯〟にされて〝幽霊を見た罰〟として、その姿が見えたという窓際に立たされたのだった。
 この話には面白い後日談がある。何年かしてヘレンも結婚してシェパード姓からヒューズ姓になってからのことであるが、優れた霊媒として各地で活躍していた時、グラスゴーでのデモンストレーションで一人の女性がヘレンに歩み寄って成功の賛辞を述べた。その女性こそヘレンを罰として窓際に立たせた先生その人だった。ちょっぴり後悔の情を見せながらこう言った。「まあ、ヘレン・シェパードさん、この大成功があの幽霊騒ぎから始まったなんて夢みたいですわね」
 さて話は再び子供時代に戻って、その幽霊騒ぎから三年ばかり経った頃また不思議な体験をした。友達と通りで遊んでいた時、ふと空を見上げると〝熱病が流行っている〟という文字がはっきりと見えた。この時は友達の誰一人として見える者がいなかった。帰ってからそのことを母親に聞かせると、又そんなことを言う、と言って叱られた。が、三週間後にヘレンは熱病にかかっている。
 その後、学校を出てから仕立て屋に奉公に出るようになってからも、相変わらず物が見えたり聞こえたりした。そして十八歳という若さで鉱夫のトーマス・ヒューズと結婚した。働く婦人としての義務と、もう直ぐ四つになる子を頭とする三人の子供の出産と育児に、さすがの異常現象も奥へ追いやられたかにみえた。三人目の子を産んでからは背骨に痛みを訴えるようになり、やがて回復不能の重病患者になってしまった。
 それからヘレンにとって悲惨な暗い時代が続く。痛みに加えて、再び心霊現象が起きるようになり、自分で自分の精神を異常ではないかと疑うようになった。彼女が素晴らしい霊能を秘めた未完成の霊媒であり大きな使命を持っていることを指摘してくれる人が周りにいなかったのである。次の体験はその使命を物語っている。
 病状がいよいよ悪化して、最早死を待つばかりの状態になった。親戚の者や友人が別れを告げに集まった。ところが死の床に横たわる病身とは打って変わってヘレン自身は目も眩まんばかりの色とりどりの美しい花園の中を歩いていた。驚いたことに、とっくに死んだ筈の中年の婦人に出会った。再会出来た嬉しさに長々と話が弾んだ。その時ふとこれまでの惨めな身の上とは裏腹に何か新しい活力が湧いてくるような意識がした。それからのことをこう語っている。
 「その何分かの会話の後、ふと、その言い様のないほど美しい花園の中でもひときわ美しい花が目に入ったので、思わずその花に近付いたのです。すると〝まだだ。お前にはまだ為すべき仕事がある〟という声に遮られました」
 目を覚ますと親戚の者や友人達が心配そうに覗き込んでいる。今見た光景に感動したヘレンは「私は絶対に死にませんよ」と言った。みんな口では「そうとも、死ぬものですか」と言いながら、内心では「まず駄目だろう」と観念していた。が、確かに死ぬことはなかったが、それで直ぐ回復に向かってはくれなかった。それから二年もの間歩くことが出来ず、車椅子を使わなければならなかった。
 絶望と痛みに耐えながら横になっていると、再び死んだ筈の人達の声が聞こえ始め、次にはその姿まで見かけるようになった。彼女は怖くなり、長い闘病生活で正気を失いつつあるのではないかと心配した。多くの医者に連れて行ってもらったが何の救いにもならなかった。
 その内その〝声〟が「起き上がって歩け」と命令するようになった。当時はとても歩ける状態ではなかった。が、何とかして立ち上がってみた。そして足を床の上に置いてみると、すっかり麻痺していると思い込んでいた足にまだ生命が通っていることが分かった。〝声〟が頑張れと励ます。その頃から彼女の健康は薄紙を剥ぐように快方に向かい始めた。
 医者が往診に来た時ヘレンはその〝声〟の話をしてみた。すると精神に少し異常を来たしたのかも知れないと思った医者は、どこか遠くへ休養に行ってはどうかと勧めた。が、彼女は〝声〟にますます自信を深め、心を鼓舞されつつあった。人生の曲がり角はもう回り切ったと感じていた。初め杖を頼りにゆっくり歩いていたが、やがて杖をかなぐり捨てた。健康は日増しに回復し、〝声〟は強く大きくなり、しかもより頻繁になっていった。
 その頃から新たな現象が加わるようになり戸惑うことがあった。壁を叩く音がしたり、ベッドが揺さぶられたりした。その内一人の見知らぬ女性が規則正しく姿を見せ、その容貌をはっきりと認めることは出来るのだが一言も喋らない。ドアから入って来て又出て行くのであるが、時には忽然と消えることもある。そんなことが何ヶ月も続いたが、ヘレンには理屈はともかくとして、それがこの世の人でないことだけは分かっていた。
 ついに彼女は、そんな眠れない夜から逃れるにはその幽霊屋敷を出るしかないと決意し、他の家を探しに夫と連れ立って炭鉱事務所を訪れた。まず彼女がいきさつを話すと、一笑に付されると思いきや、逆にそこの役人は大いに理解を示してくれた。ヘレンが「どうか私を気狂いと思わないでください」と言うと、理解のある笑顔で「あなたは気狂いなんかじゃありませんよ」と言ってくれた。この役人がヘレンの悩みに真の理解を示した最初の人だった。
 役人はヒューズ氏に向かってこう言った。「奥さんの小指には他の人の体全体よりも多くのものが詰まってますよ」(知恵とか才能が豊かであることの西洋的表現)
 ヘレンは後にその役人は奥さんがスピリチュアリストだったから理解してくれたことを知った。が、その時は残念ながらその役人はスピリチュアリズムについては一言も触れなかった。そして別の家をという要求を聞き入れてドードンという所の家を紹介してくれたに留まった。
 もしもヘレンが新しい家なら異常現象も起きないと考えていたとしたら、それは大きな見当違いだった。なくなるどころか、ますます頻繁になったのである。が、移転によって一つだけ予期しなかった重要なことが生じた。それは夫のトーマスも〝物を見る〟ようになったことであった。お蔭で何ヶ月もの間ヘレンに出現した見知らぬ女性を自分でも見ることによって、真面目に取り合ってくれなかった夫も信じるようになった。
 さて、運命がついにその奥の手を出す時が来た。それは、見かけは冴えないが心霊的知識を持った一人の男が立ち寄ったことに始まる。
 心霊現象に悩まされた夜が明けた早朝のことである。ドアをノックする音がした。外で道路工事をしていた男が紅茶を温めさせてくれないかというのである。どうぞといってヘレンは招き入れた。
 男を見るとヘレンはなぜか夜中の不思議な現象を打ち明けたい衝動に駆られた。そこで長々と喋った。死者の声が聞こえたり姿が見えたり、一人の女性が毎晩のようにただ訪れては帰っていくので、この調子では頭が変になってしまうのではないかと心配だと語った。
 男はヘレンの話を親身になって聞いた後、ダーラム州訛り丸出しでこう言った。
 「それは奥さん、あんたはこの町一番の果報者ですな。奥さんを毎晩訪ねて来る女性は奥さんを救いにやってくるんです。奥さんはその内偉い霊媒になります」
 そして、今度その女性が出て来たら話しかけてみることですと言った。ヘレンは一度も話しかけたことはなかった。その男はスピリチュアリストだったのである。彼は手短にヘレンの現象を解説し、その目的を説明した。「奥さんは普通の五感とは別の感覚を使っているだけです。超能力というやつですな。千里眼と呼ぶ人もいます」
 彼がそう言った時、ヘレンはある体験を思い出していた。何年か前にシーハムという港のカフェで手伝っていた時、ノルウェー人の船員がヘレンを見て「ねえさん、あんたは天使とお喋りが出来るね。お母さんのマーガレットがあんたとあんたの家族を見守っていると、言ってますよ」
 母親の名前がマーガレットだということはその通りだし、それをその船員が知っているのは変だとは思ったが、船員の言っていることの本当の意味はその時は分からなかった。今道路工夫が懇切丁寧に、しかも論理的に説明してくれたお蔭で、ヘレンはいよいよ人生の曲がり角に来たことを悟った。
 それから六ヶ月、その男は毎日のように訪ねて来てヘレンを何かと励ました。そして最後にスピリチュアリスト教会へ行ってみるように勧めた。行ってみると霊視家からメッセージを授かった。その人は全く知らない人であったが、ヘレンのそれまでの体験を全部言い当て、その内あなたも立派な霊媒になりますと言った。
 それはやがて見事に実現することとなった。

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