●『死後』も酒に執着する酔っぱらい
 地上で酒飲みだった者は、普通の手段では欲求が満たされないので、地上の感受性の強い人間に取り憑いて、強制的に酒を飲ませることをする。そういうスピリットの犠牲者が数多く我々のサークルに連れてこられているが、最近の例としてはV夫人のケースがある。夫人は定期的に大酒を飲みたくなる癖があり、ある時期それを止めようと努力してみたが、無駄だった。
 どうしても止められなくて、ある晩ひどく酔ったまま、私のところへやってきて、治療してほしいという。電気治療を施した後、夫人を帰宅させてから、サークルのメンバーで集中祈念を行ったところ、夫人から除霊された酔っ払いが妻に乗り移った。


 1923年4月4日
 スピリット=ポール・ホプキンス
 患者=V 夫人

博士「ここへおいでになるのは初めてでしょうか。どちらから来られました?」
スピリット「(ケンカ腰で)余計なことをしやがって!人が一杯やっていい気分になろうとしている時に、なんで引っぱり出すんだ!」
博士「ご自分のなさってることを恥ずかしいとは思わないのですか。ご婦人に取り憑いて、その人の人生をメチャクチャにしてしまうのが、いい気分になることになるのですかね?」
スピリット「面白くない時に、他にすることがあるのか!」
博士「その大酒の癖を治さないといけませんね」
スピリット「熱くてかなわん!」(静電気治療の影響)
博士「どちらから来られたのですか」
スピリット「何か飲ませてくれ、早く!喉が渇いてかなわんのだ」
博士「もう飲みたいだけ飲んだじゃないですか」
スピリット「身体が燃えるように熱いんだ!」
博士「ご婦人に酒を飲ませてますね?あなたはもう『死んでいる』こと、『スピリット』になっていることをご存知でしょうか」
スピリット「分かっているのは、身体が火照るということだけだ。身体中に火を注がれたみたいだったぞ」
博士「それで良かったのです」
スピリット「あの時ばかりは、さすがの俺も逃げ出したよ。何しろ初めてだったもんな。まるでオーブンの中にいるみたいだった。最近は新しい機械が出来たんだろうな?」
博士「何の話ですか」
スピリット「火だよ、背中に注がれた・・・。喉が渇くな。ひどく渇く!何か飲ませてくれーほんのちょっとでいいから」
博士「もう肉体はなくなって、スピリットになっていることが分かりませんか。何の話をしているのか分かりますか」
スピリット「分からんね。第一、あんたを知らないよ」
博士「でも、私の言ってることは分かるでしょ?あなたはスピリットなのです」
スピリット「何か飲むものをくれ!」喉が渇いてしょうがないんだ。くれと言ってるのが分からんのか!連れてこられた時は、まだちょっとしかやってなかったんだ」
博士「いい加減おとなしくしてはどうです?」
スピリット「それが出来ないのさ。ちょっとでいい、ほんのちょっとでいいから飲ませてくれよ!」
博士「大人しくしないと、暗闇の中に閉じ込めますよ」
スピリット「そうだ、あの薬局の旦那に、少し足りなかったと言ってくれんか。頼むよ」
博士「薬局とは、もう縁が切れたのです」
スピリット「何か飲むものが欲しいんだよ」
博士「一人の婦人を操って酒を飲ませて満足するなんて、情けないと思いませんか」
スピリット「なんとかしないと、やり切れんのだ」
博士「あのご婦人にウイスキーを飲ませておいて、それで平気なのですか」
スピリット「ご婦人?俺は自分で飲んだのさ。女なんかに飲ませてないよ。全部俺が飲むさ。最近はあまり酒にありつけなくなったんだ。せっかく手に入れたものを、人にやるもんか。ぜんぶ一人で飲むよ」
博士「自分で飲んだつもりが、実は一人の婦人を通して飲んでいることに気がつかないのですか」
スピリット「いいから、何か飲むものをくれ、早く!」
博士「それよりも、今ご自分が置かれている事情を悟ってほしいのです」
スピリット「俺はいつもまっとうな人間のつもりだよ」
博士「ろくでなしですよ」
スピリット「とんでもない!」
博士「あなたのような人間を『役立たずのろくでなし』というのです。最近は、どんなことをしていましたか」
スピリット「しばらく仕事をしてないね」
博士「今年は何年だか知ってますか」
スピリット「そんなこと、どうだっていいよ」
博士「あなたはずっと一人のご婦人の生活を邪魔しているのです。それはあなた自身の身体ではありません。そのことが分かりませんか。これは女性の身体ですよ」
スピリット「女性の?」
博士「そうです。スカートをごらんなさい」
スピリット「スカートなんかはいてないよ。でも、時たま女になったみたいに思えたことはあったな」
博士「その女性を通してウイスキーを飲んでいたのです。恥ずかしいとは思いませんか。自分の身体をダメにしただけでは満足できずに、ご婦人まで巻き添えにしないと気が済まないのですね」
スピリット「なんで恥ずかしく思うことがあるのだ?罪もないウイスキーを少しばかり飲んだだけさ」
博士「なんとなく具合が変だということは分かってるはずです」
スピリット「たしかに、時たま変だと思うことはあるよ」
博士「あなたがここに連れて来られて、その身体を使って話すことを許された目的は、その婦人につきまとうのはいけないことであることを悟って頂く為です。その方の名前はV ーというのですが、ご存知ですか」
スピリット「それは俺の名前じゃない。自分の名前をしばらく聞いていないんだ。時たま変だなと思うことはあるね。記憶が昔ほど良くないみたいだ」
博士「どうしてそうなったか、理由を知りたいとは思いませんか。要するにご自分の肉体はもうなくされたということですよ」
スピリット「するとこの俺はどうなってるのかな」
博士「あなたはスピリットなのです。私達には、あなたの姿は見えてないのです」
スピリット「この俺が見えない?」
博士「見えません」
スピリット「なんで見えないのだ?俺は大柄なほうだぞ。なぜ見えんのだ?さては、お前達も一杯やってるな。だったら、俺にも一杯くれよ。一緒に仲良くやろうじゃないか。ウイスキーだと有り難いがな」
博士「一杯やれば気分はいいでしょうね」
スピリット「ウイスキーをくれたら恩にきるよ」
博士「そういうものはあげません」
スピリット「喉が渇いている人間をかわいそうとは思わんのか」
博士「あなたの好きなようにしてあげるわけにはいきません」
スピリット「なぜ、あんな熱い火をふりかけたのだ?」
博士「あなたにかけたのではありません。あの女性に電気治療を施しただけですよ。その方から頼まれたのです。それによって、あなたをその女性から追い出したのです。どうやらあなたには気に入って頂けなかったようですね」
スピリット「よくもあんな目に遭わせてくれたな!」
博士「自業自得です」
スピリット「なあ、ウイスキーを少しくれないか」
博士「いくら頼んでも無駄です。私達はあなたが置かれている事情を理解させてあげようとしているところです。あなたは、この女性の身体を使っている目に見えないスピリットなのです」
スピリット「もう一人の婦人はどうなってるんだ。なぜ、あんな女と俺と関わり合わなきゃならんのだ」
博士「その女性にあなたが取り憑いていたのです。あなたが一方的にあの方を操って好きなようにしていたのです。あの女性が悪いのではありません。あなたの方こそ悪いのです。バイブルをお読みになったことがありますか」
スピリット「バイブル?」
博士「イエスが不浄なスピリットを追い出した話をご存知ですか。あなたもその種のスピリットの一人になっておられるのです」
スピリット「(手先を見て)この指輪は俺のじゃない。何がどう間違って、人の手がひっついたのかな」
博士「その手に見覚えがありますか」
スピリット「ない。少しアルコールが過ぎたかな?でも足はふらついてないみたいだ。少し飲み過ぎたんだろう。催眠術というのがあるから、あれに引っかかったのかもしれん。いやいや、飲み方が足らんのかもしれんぞ。試しにもう少しウイスキーをくれんかなーほんの一杯でいい」
博士「いつまでも聞き分けがないと、出て行ってもらうことになりますよ」
スピリット「追い出せるもんか。俺を負かした奴は、そう滅多にいなかったからな。ちょっとした力持ちなんだ。これ見ろ!」
博士「我々の目には、あなたの姿は全然見えないのです」
スピリット「お前達が束になってかかってきても、平気だぞ。前にもやったことがあるんだ(と言って腕まくりをする)用心しろよ」
博士「私の言ってることがなぜ分からないのですか。あなたの姿は、私達には見えてないのです」
スピリット「俺が見えない?」
博士「見えません。あなたは肉体を失ったのです。これは、あなたの身体ではありません」
スピリット「俺のじゃない?(ケンカ腰の姿勢になる)何か飲むものをもってこい!」
博士「いい加減に恥を知りなさい!」
スピリット「何が恥だ!一杯やっただけじゃないか」
博士「まだご自分の事情が分かってないみたいですね」
スピリット「あの女に、なぜ、もう少し待つように言ってくれなかったんだ?(患者が電気治療のあとすぐに帰ったこと)逃げるように帰って行ったな。なぜだ?」
博士「もうすぐあなたも、ちゃんとした面倒を見てあげます。そして、二度と人に迷惑をかけないようにしてあげます」
スピリット「彼女はなかなか気のきく女なんだ。ウイスキーが欲しくなると、ちゃんと買ってきてくれて、飲ませてくれるんだ」
博士「もう、そういうことはなくなります」
スピリット「俺一人じゃないんだ。他にも大勢仲間がいるんだよ」
博士「みんな酒を飲みたがってましたか」
スピリット「そうさ」
博士「あなた達は、一人の女性の人生をメチャクチャにしつつあったのです。あの女性に取り憑いて、彼女に飲ませては、自分が飲んだつもりでいたのです」
スピリット「あの太った、でかい女のことかね?あの女は気だての優しい人だよ。いつでもご馳走してくれるよ。一緒に愉快にやるんだー実に愉快にな!」(笑う)
博士「それも、もう終わりです。一人の女性の人生をぶち壊し、飲んだくれにしておいて、それで立派なことをしているとでも思ってるんですか」
スピリット「俺は酔っぱらってなんかいないよ。まっすぐ歩けるし、しかも早足でな。分別もある。あのデブちゃんと一緒に愉快に飲むのさ」
博士「あなたには羞恥心というものが全くないのですね。いいですか、あなたはもう目に見えないスピリットになっていて、肉体はなくなっているのです。今年は1923年で、ここはカリフォルニアのロサンゼルスですが、ご存知ですか。多分、何年も前に肉体をなくし、ずっと地上界をうろつき回っていたのでしょう」
スピリット「今、ここで一杯飲ませてくれないか」
博士「それが『愉快な』時ですか」
スピリット「しばらくは愉快な気分になるよ」
博士「そうやって、一人の女性の人生を破滅に追いやっていたのですよ」
スピリット「そんなことをした覚えはないね」
博士「あなたがウイスキーを欲しがると、あのご婦人に飲ませてしまっていたのです」
スピリット「そんなことはやっていない。俺は自分で飲んだのさ」
博士「そうですーあの婦人を通してね。知らばっくれるのもいい加減にしなさい。あのご婦人にウイスキーを飲むように念を送っていたのは、ちゃんと分かってるのです」
スピリット「あの人は金があるもんな。俺にはもう金はないし・・・」
博士「自分の欲求を満たす為に、そうやって人を操ってもいいのですか。あなたのお母さんはそんなことを教えたのですか」
スピリット「母はとっくの昔に死んでるよ」
博士「仮にお母さんが今も生きてるとして、もしそのお母さんが地縛霊の奴隷にされている有様を見たら、あなたはどう思うでしょうか」
スピリット「俺は、地縛霊なんかじゃない」
博士「お母さんが大勢の地縛霊に取り囲まれて、酒を飲まされているところを見てみたいですか。そんなものを見て嬉しいわけがないでしょう?」
 スピリット「俺の母は、そんなことにはならないよ。俺には、あの婦人がぴったり都合がいいんだ。ウイスキーを買ってもらうだけなんだけどな」
博士「そう、そして彼女を通して、それを飲むということをやってきたのです」
スピリット「俺は自分で飲んださ」
博士「V夫人に乗り移って飲んでるのです。今その身体に乗り移っているようにです」
スピリット「俺は、誰にも乗り移ってなんかいないよ。酒を飲んでるだけさ」
博士「いい加減に目を覚ましなさい。その身体は、あなたのものではないのです」
スピリット「じゃあ、誰のだ?」
博士「私の妻のものです。妻は霊媒の体質をしていて、その身体をスピリットに貸してあげて、語らせてあげることが出来るのです」
スピリット「じゃ、俺と一緒に一杯やらないかな。あんたもどうかね?」
博士「結構です」
スピリット「俺が、みんなに奢ろう」
博士「お金はないはずですがね」
スピリット「いつも、あの婦人から貰ってるよ」
博士「あの方は、ここにはいません」
スピリット「じゃ、あんたが出しといてくれよ。俺が奢るから・・・。さあ、みんな来いよ、俺がみんなに奢ろう」
博士「その婦人は、あなたの稼いだ金で勘定を払うのですかね?」
スピリット「彼女には、お金を出してくれる男が別にいるんだよ。結構な話じゃないか」
博士「それは、あの方のご主人ですよ」
スピリット「主人?」
博士「そうです。あなたは、他人の奥さんを奴隷扱いにして、大酒飲みにしているのです。もしもその女性があなたのお母さんだったら、どうしますか」
スピリット「俺のおふくろ?」
博士「そうです。よく考えてみてください。誰かが、あなたのお母さんを大酒飲みにしていたら、それを見てあなたはどんな気がしますか。あなたの妹さんでもいいです」
スピリット「おふくろも妹も、そんなことになるほど馬鹿じゃないよ」
博士「あなたのやっていることが立派だと思いますか」
スピリット「自分では、まともな人間のつもりだがね。特に女性には優しいよ。女性は俺にとっては最高の友だ。いつも金をもっていて、気前良く使ってくれるからね」
博士「いいですか、よく聞きなさい。あなたはもう、ご自分の肉体を失っておられるのです。多分、何年も前のことでしょう。今の大統領は誰だと思いますか」
スピリット「知らんね。誰の名前も思い出せないのだ」
博士「リンカーンですか」
スピリット「いや、それはずっと前の大統領だ」
博士「クリーブランドですか」
スピリット「いいや」
博士「マッキンレーですか、それともアーサーですか」
スピリット「それもずいぶん古い大統領だな」
博士「では、ウィルソン大統領を知ってますか」
スピリット「ウィルソン?そんな名前、知らんね」
博士「ヨーロッパで大戦があったのをご存知ですかー二十三カ国が参戦しましたが・・・」
スピリット「どうでもいいよ、そんな話は。俺は酒さえあればいいんだ。喉が渇いてきたな。戦争のことで、この俺が何を心配すりゃいいんだ?殺し合いをしたけりゃ、やらせとけばいい。俺には関係ないよ。殺し合うしか知恵がないのなら、やらせてやれよ」
博士「お母さんは、あなたのことを何と呼んでましたか」
スピリット「ポールと呼んでたな」
博士「姓は?」
スピリット「聞かなくなってずいぶんになるね」
博士「お父さんは、人から何と呼ばれてましたか」
スピリット「ジョン・ホプキンス」
博士「じゃあ、あなたはポール・ホプキンスだ。どの州で生まれましたか」
スピリット「忘れたね。いや、待てよ。そうだ、アリゾナ州のユマで生まれたんだ」
博士「ロサンゼルスには行ったことがありますか」
スピリット「あるよ、時々だけどね。大通りに結構いい酒場がいくつかあったんだが、今もあるだろうね」
博士「今はもうありません」
スピリット「どうなったのかな」
博士「全部店を閉めたのです」
スピリット「第二と第三の通りの間にあったんだが」
博士「お母さんは、今のあなたのしていることを見て、どんな思いをなさるでしょうね?」
スピリット「母は死んでるよ」
博士「お母さんのスピリットは死んでいません。こんなことになったあなたを見て、さぞ悲しまれるでしょうよ」
スピリット「俺はちっとも悪いことしてないよ。こんなに気分のいい暮らしはないね。欲しい時はいつでもウイスキーが飲めるし、飲むと気分が良くなって楽しいよ」
博士「酔っぱらってミゾに落ちている息子の姿を見て、愉快でしょうかね」
スピリット「そんな奴、見たことないね。でも、酒はいいよ!おいおい、誰だ、あれは?」(スピリットの姿が見える)
博士「どなたでしょうかね」
スピリット「ちょっと待てよ、よく見ないと・・・・(そのスピリットに向かって)あんた、誰?」
博士「お母さんでしょう」
スピリット「母はずいぶん老けてたよ。この人は、俺の母のことをよく知っているそうだ。母は、真面目なクリスチャンだったから、今頃は天国の神様の玉座のそばに座っていると思うよ」
博士「イエスは、神は霊的存在であり愛であると説かれました。玉座に座っている神様なんて存在しないのです」
スピリット「では、神様はどこに座っているのですか」
博士「神とは霊的存在であり、一定の場所にいるのではないのです。大自然の大生命そのものなのです。あなたという存在も、その神の一つの表現なのです。同じ神の表現でも、あなたは何も知らずにいる愚かなスピリットであることを早く悟って、悪い酒癖を止めることです。そうすれば向上できるのです」
スピリット「その女性が言うには、私がおとなしく言うことを聞けば、ベッドで休めるそうです。たしかに、ひどく疲れたよ。本当に寝かせてくれるのだろうか」
博士「本当ですよ。そして目が覚めたら、今度こそ自分がスピリットであること、酒飲みの習慣を止めて、スピリットとしてのきちんとした生き方を心掛けないといけないことに理解がいくでしょうよ」
スピリット「あの人は、看護婦なんだそうです」
博士「我々の目には、その方の姿が見えないのです。あなたの姿も見えてないのです。あなたは、私の妻の身体を使っておられるのですよ」
スピリット「それが分からんのだな。とにかく、あのベッドに行って寝てみたいよ」
博士「人生の目的を学ばなくてはいけませんよ」
スピリット「あのベッドに横になったら、もうウイスキーはもらえなくなると言ってる」
博士「霊界での進歩の仕方を教わるでしょう」
スピリット「もうウイスキーはダメですか」
博士「ダメです」
スピリット「ま、いいや。疲れたけど、どこか嬉しい気持ちもする。これからどうするかな。私には家もないし、行くところもない。たまにはやりたいですよ、どんちゃん騒ぎを・・・」
博士「まだ分かってないようですね」
スピリット「あの人が言うには、母と一緒の家に住めるのだそうです。では、母のところへ行くことにします。こんな私でも迎え入れてくれるでしょうかね?」
博士「母の愛は、決して消えてしまうものではありません。すっかり事情に理解がいったら、これまで迷惑をかけていたご婦人に、罪滅ぼしをしないといけません。あの方を大酒飲みにしてしまったのですから」
スピリット「私がですか?そうとは知りませんでした。何か飲みたいと思っただけで、それが他人に迷惑をかけていたとは知りませんでした」
博士「あの方が私のところに来られた時は酔っぱらってましたよ。それで、私が電気で治療したのです」
スピリット「私にも応えました」
博士「あなたがその方を酔っ払いにしていたのです。彼女自身は飲みたいとは思っていないのです。酒を欲しがる衝動に抵抗しているのです。が、彼女は感受性が強くて、あなたに唆されて、飲まされてしまったのです」
スピリット「酒を止めるのは難しいです」
博士「これからその償いのために、しっかりと彼女の面倒を見てあげてくださいよ」
スピリット「とても疲れてきました。あのベッドに入りたくなりました」
博士「そのベッドに入ったつもりになってごらんなさい。それだけでそこに行けますよ」
スピリット「本当ですか。そう思うだけでいいのですか」
博士「そうです。心を十分に落ち着けて、そのベッドに入ったつもりになるのです」
スピリット「こんな男のことを忘れないでください。これでも悪い人間ではないつもりなのです。あんな火を浴びせたあなたのことも、決して憎んではいませんので・・・」
博士「あなたがご覧になっている女性の方が、これからあなたの看護をしてくださいます」
スピリット「おや、母さんだ!母さん、許してください。こんなロクでなしになっちゃって・・・。もうこれからは、ウイスキーは飲みません。(博士に向かって)母も私の面倒を見てくれるそうです。こんな私のために、色々と親切にしてくださって、有り難うございました」

 知人からの報告によるとV夫人は、この招霊会があってから性格が一変し、アルコール類を一滴も欲しがらなくなったという。その後ご本人からも、その事実を確認する礼状が届いている。