●『逆上癖』の女性を救済したケース

R・F嬢は、突然逆上して走り出すという行動を、断続的に繰り返していた。が、その憑依霊を招霊し、説得し、離れてもらうことで、きれいに収まった。


 1920年9月15日
 スピリット=エドワード・スターリング
 患者=R・F嬢

霊媒に乗り移ると同時に、椅子から立ち上がって走り出そうとしたので、押さえ込もうとすると逆上した。

博士「座ってください」
スピリット「いやだ!」
博士「どこへ行きたいのです?」
スピリット「家だ」
博士「家?あなたの家はどこですか」
スピリット「探しに行くんだ」(我々の手を振り切ろうとして激しく暴れる)
博士「おしとやかなレディですね」
スピリット「レディ?レディ?俺はレディじゃない、男だ!」
博士「どちらから来られました?」
スピリット「どこだっていい。これから家に帰るところだ」
博士「家はどこにあるのですか」
スピリット「見つかりさえしたら、どこだっていい。とにかく、こんなところに座っているわけにはいかんのだ。帰るんだ。言ってることが分からんのか!」
博士「なぜ髪を切ったのですか」(患者は衝動的に髪の毛を切っている)
スピリット「女みたいな長い髪をしていて平気でいられると思うか。イヤだね。冗談じゃない!さ、帰らせてくれよ。頼むから」
博士「どこへ帰るのです?あなたには家はないのです」
スピリット「ここにいたくないのだ。帰りたいのだ」
博士「死んでどれくらいになりますか」
スピリット「死んでなんかいない。帰してくれよ!身体中にあんな恐ろしいものを浴びせやがって・・・・トゲみたいな、何か先のとんがったものを刺されたみたいだ」
博士「私が患者さんに流した電流をそのように感じられたのです」
スピリット「二度も逃げ出そうとしたが、連れ戻された」
博士「なぜあの方(R・F嬢)に髪を切らせたのですか」
スピリット「誰にも切らせてなんかいないよ。俺の身体なんだから、切りたい時に切るさ。眠り込んで、目が覚めたら髪がひどく伸びていて、どうしようかと思った。女みたいだったので、自分で切ったんだ。散髪に行くわけにもいかんだろう?恥ずかしくて通りを歩けないよ」
博士「あなたが切ったのは、あなた自身の髪ではなくて、今まで乗り移っていた女性の髪だったのですよ」
スピリット「俺は俺の髪を切ったんだ。なんでこんなところに引き止めておくんだ?あんたをはじめ、他の誰にも、俺は何も悪いことはしていないじゃないか」
博士「あなたは、一人のご婦人に大変いけないことをして、その方を困らせてきたのです。あなたは男だとおっしゃるけど、女性の服装をしてらっしゃいますね。どうなってるんでしょうね?」
スピリット「男性用の服が手に入らなかっただけのことさ」
博士「この事実を知って目を覚ましてくださいよ。何か身の上に異変が起きているに違いないのですけどね?」
スピリット「座らせてくれよ」
博士「いいでしょう、おとなしくしていればね。いかがです?一体どうなってるのか、知りたいとは思いませんか」
スピリット「こんなところにいたくない。早く帰らせてくれよ」
博士「大人しく腰掛けて、私の言うことを聞いてくれれば、今あなたがどういう状態にあるかを説明してあげましょう。あなたは、いわゆる『死者』となっておられるのです」
スピリット「死んでなんかいないよ。そんなに抱きしめんでくれ!」
博士「あなたを抱きしめているのではありません。私の妻を抱きしめているのです。今あなたはまったく普通と違う状態にあるのです。もう肉体から脱け出ているのに、それがあなたには理解できていないのです」
スピリット「行かせてくれよ。ここから出たいのだ。なんで俺の手を押さえるのだ?」
博士「あなたの手を押さえているのではありません。私の妻の手を押さえているのです」
スピリット「あんたの奥さんの手だと!? 俺はあんたに会うのは今日が初めてじゃないか。あんたの奥さんなんかじゃないよ。第一、男が男と結婚するのかね?そんな話、聞いたことがないよ」
博士「私の言ってることに間違いはありません。あなたは何も知らずにいるスピリットで、今までの自分の状態が分かっていらっしゃらないのです」
スピリット「俺のことは構わんてくれよ。とにかく帰りたいのだ」
博士「死んだらどうなるのか考えてみたことがありますか」
スピリット「俺は死んではいないよ。ただ眠り込んだだけだ」
博士「それが死の眠りなのです」
スピリット「永いこと眠っていて、目が覚めたら髪の毛がひどく伸びていたんだ」
博士「髪が伸びていただけでなく、衣服まで女性のものを着ていた・・・どうやって手に入れたのですか」
スピリット「でも、やっぱり俺は死んではいない」
博士「物質で出来た身体を失ったのですと申し上げているのです。身体をなくしてしまうと死んだことになるのです」
スピリット「ほんとに死んだのなら、墓へ行って最後の審判の日まで待ってるよ。ガブリエルがラッパを吹くまでな・・・」
博士「それは愚かしい信仰なのです。あなたは生命の神秘を勉強なさらなかったようですね?」
スピリット「死んだら、神とキリストを信じていれば天国へ行くんだと教わったよ。キリストが我々の罪を背負って十字架で死んだのだとね」
博士「じゃ、なぜあなたは天国へ行ってないのでしょうね?あなたは地上の人間としては死んだのです。あなたは今ここにいらっしゃるけど、あなたの姿は私達には見えていないのです。見えているのは、私の妻の身体だけなのです」
スピリット「あんたの奥さんには会ったことがないから、どんな方か知りません」
博士「霊媒というものについて聞いたことがありますか」
スピリット「あるよ。でも、信じない」
博士「あなたは今、その霊媒の身体を使って喋っているのです。男だとおっしゃるけど、女性の身体で喋ってるじゃないですか」
スピリット「嘘だ!大嘘だ!」
博士「でも事実ですよ。女性の服を着てるでしょ?これで、あなたの身の上に何か変わったことがあったことがお分かりでしょう。おそらく、ここがカリフォルニアのロサンゼルスであることはご存知ないのでしょうね?」
スピリット「ロサンゼルスなんかじゃない」
博士「では、どこですか?」
スピリット「あちらこちらを転々と動いていたので・・・・」
博士「その手をごらんなさい。あなたのものではないでしょう?」
スピリット「あんたのことは、あの電気治療をしてくれるまでは知らなかった。あれがどんなに痛いか、あんたは知るまい。ずいぶん我慢したが、たまらなくなって飛び出したら、図体のでかいインディアン(霊媒の背後霊の一人)が俺を捕まえて牢へ入れてしまった。しばらくして出してくれたと思ったら、ここへ連れてこられていた」
博士「あなたはそれまでずっと、一人の女性を苦しめておられて、あの電気治療でやっとその方から離れたのです」
スピリット「一体どうなってるのかな?ここへ来てから、何だか窮屈に感じられるんだが・・・」
博士「多分あなたは、大柄な方だったのでしょうね。それが今、それより小さい身体の中に入っておられるから、そう感じるのでしょう。それよりも、早く心を開いて、今あなたが置かれている実情を学ばなくては・・・・」
スピリット「学ぶことなんか何もないよ」
博士「ご自分の身体をなくされたのは、かなり前のようですね。今年は何年だと思われますか」
スピリット「永い間ぐっすり寝ていたので、知らんね」
博士「今の状態を体験されていて、何か疑問に思うことはありませんか。私達の目には、あなたの姿は見えていないのですよ。お話になる声が聞こえるだけなのですよ」
スピリット「目に見えない者と話をしてどうするんだ?」
博士「この婦人は霊媒なのです。あなたはその霊媒の身体を使って喋っているスピリットなのです」
スピリット「そんなこと、信じないね」
博士「それは私の妻の身体です。となると、あなたは私の妻だとおっしゃるのですか」
スピリット「あんたの奥さんなんかじゃない!俺は男だぞ!」
博士「あなたが憑依していた女性の身体から、私が引き離したのです。あなたがその方に気狂いじみた行為をさせていたからです。どうやってここへ来られましたか」
スピリット「こっちが聞きたいよ」
博士「あなたは人間の目には見えないスピリットになっているのです。その辺の事情が分かっておられない。あなたが憑依していた女性は、その頃たまたま神経過敏になっておられ、それであなたが憑依したのです。その女性が気狂いじみた行動をしたのは、皆、あなたのせいだったのです。ご自分はどう思われますか」
スピリット「自慢にするほどのことでもないが、とにかく俺はその女性のことは何も知らんね」
博士「その方の髪を切って逃げ出したのは、あなたのせいですよ」
スピリット「なぜこの俺に長い髪がいるのだ?眠りから覚めてみたら髪が伸び過ぎていたから切ったーそれだけのことさ」
博士「あなたが切ったのは、その女性の髪だったのです」
スピリット「長過ぎたから切ったんだ」
博士「その女性の身になってごらんなさい。もしもあなたが自分の髪を誰かに勝手に切られたら、どうします?平気ですか」
スピリット「そりゃ、イヤだよ」
博士「少し勝手すぎるとは思いませんか」
スピリット「訳が分からん。じゃあ聞くが、もしも俺があんたの言う通り、死んでるとしたら、なぜ天国か地獄に行ってないのかね?」
博士「そんな場所は存在しないからです」
スピリット「神様もキリストも悪魔も見かけないのに、あんたは俺のことを死んでると言う」
博士「あなたが死んでると言ってるのではありません」
スピリット「今さっき『死んだ』と言ったじゃないか」
博士「地上世界の人間から見ると、死んだことになるという意味です」
スピリット「『あなたは死んだのです』と言ったよ」
博士「いわゆる『死んだ人間』になった、つまり物的身体をなくされたという意味です」
スピリット「でも『死んだ』と言ったぞ!」
博士「もう少し分別を働かせなさい。そうしないと隣の部屋へ連れて行って、例の電気治療をしますよ」
スピリット「あれは止めてくれ!あれをやられると、まるで身体に火をつけられたみたいな感じになる」
博士「女性の身体から離れて頂くためにやったことです。それがうまくいったのです」
スピリット「あのままあそこにいて、何が悪いのだ?」
博士「あの方から取り除く必要があったのです」
スピリット「勝手に連れ出す権利があんたにあるのかね?」
博士「あなたこそ、他人の身体に取り憑いて、その人の生活をメチャクチャにする権利があると思いますか」
スピリット「誰だって生活する場所がないといけないだろう?」
博士「仮にその女性というのが、あなたのお母さんだったとして、そのお母さんにわがままなスピリットが憑依して気狂いじみた行動をさせたとしてみましょう。あなたはほうっとけますか」
スピリット「俺は気狂いじゃない。他人に気狂いじみた行動をさせた覚えもない」
博士「その女性が、自分の髪を切って、家を飛び出すというのは気狂いじみています」
スピリット「男が髪を長くしていて、平気でいられるわけがないじゃないか」
博士「あれは女性の身体で、切ったのは女性の髪で、あなたのものではないのです。あなたはもうその女性の身体から離れたのですから、考えを改めないといけません。言うことを聞かないと、土牢に閉じ込めますよ。さっきあなたは『インディアンが俺を捕まえて』とおっしゃいましたが、素直にしないと、別のインディアンが捕まえに来ますよ」
スピリット「来たら、今度こそ負けんぞ!」
博士「よく聞きなさい。私の妻は霊媒なのです。あなたのような方に身体を貸してあげて、気づかずにいる現実を知って頂くチャンスを与えてあげているのです。このチャンスを有り難いと思わないといけません。今でも、あなたの他に何千というスピリットが順番を待っているのです。
 辺りに誰か親戚の方が見えていませんか。その方達がスピリットの世界へ案内してくれますから、おとなしく分別を働かせて、理解しようという心構えにならないといけません」
スピリット「どうしたらいいのかね」
博士「スピリットの世界があるということをまず理解して、そこへ行けるように、心がけを改めないといけません」
スピリット「天国のことですか」
博士「神の国は、あなたの心の中にあるのです」
スピリット「キリストが、あなたの罪を背負って死んでくれたことを信じないのですか」
博士「私は、キリストが私の罪を背負って死んでくれたとは思っていません。そんな信仰には何かが欠けていることが分かりませんか。イエスは、人生とは何かを教えてくれたのです。誰の罪も背負ってくれてはいません。キリストが自分の罪を背負って死んでくれたと信じるような人は、イエスの教えを本当に理解していない人です。
 そもそも、そんな教義は、全知全能の神の概念に反しております。もしもその教義が真実だとしたら、神はうっかり間違いを犯し、それを償うために仲介役を用意せざるを得なかったことになります。
 さあ、そろそろあなたも、私の妻の身体から離れて頂かないといけません。そして、二度とあのご婦人に迷惑をかけないようにしてください」
スピリット「何を言う!私はあんたの奥さんは一度も見かけたことないよ」
博士「今あなたは、一時的に私の妻の身体を使っておられるのです。あなたの姿は私達には見えていないのです。いい加減に目を覚まさないと、強制的に引っ張り出して、バイブルにある『外なる暗黒』の中に連れて行ってもらいますよ」
スピリット「俺をこんな目に遭わせる神様が間違っているんだ。俺は祈って祈って祈り続けたもんさ。真面目に教会へ通って、ずいぶん献金もしたもんさ。金を出さないと、死んだらまっすぐ地獄へ行くなんて脅すからさ。出しただけのお返しはあると信じてたよ」
博士「イエスは何と言ったのでしょう?『神は霊的存在であり、神を崇める者は霊性と真理の中に崇めないといけない』と言ってます。神は霊的存在なのです。一個の霊ではありませんよ。バイブルにはこうもあるでしょうー『神は愛であり、愛の中に生きる者は神の中に生きる者である』と。
 そういう存在が自分の心の中以外のどこに見出せるのでしょうか。『あなたは神の神殿であり、神の霊性はあなたの中にある』とも言っています。では天国とは何か?それは、各自の心の状態を言っているのであり、人生の目的を理解した時に成就されるのです」
スピリット「天国はどこかの場所ではないのですか。バイブルでは場所のように言ってるよ。天国の通りは黄金で舗装されてると言ってます。違うんですか」
博士「それは、他の言葉と同じように、真理を象徴的に言っているのです」
スピリット「さっき、あんたはイエスは我々の罪を背負って死んだんじゃないと言ってたが、じゃ、あんたの信仰はどうなのかね?」
博士「我々地上の人間は、物質の身体に宿った霊的存在だというのが私の考えです。その身体から出た後、理解のできた者は霊的な目が開いて、『外なる暗黒』へは行きません。そこへ高級界の方が案内に来てくれます。今も、あなたの知ってる方が何人か助けに来ているかも知れませんよ。あなたの身の上に何か異変が起きていることに気づきませんか」
スピリット「そういえば、前よりは、よく喋れるみたいだ。あんたの話だと、あんたの奥さんを通して喋ってるそうだけど、どうしてそんなことが出来るのかね?」
博士「私の妻は霊能者で、スピリットがその口を借りて喋る機能が発達しているのです。高級霊の方が、あなたにもこうして話をすることを許してくださったのです。ただし、あまり長時間はダメですよ」
スピリット「出来ることなら、このままこうしていたいものです。前より気分がいいです。かなりスッキリしています」
博士「スピリットの世界の事情を理解なさったら、もっと気分が良くなりますよ。幼い子のように素直になることです。そうすると『神の国』へ入れます。信じるだけではいけません。理解しないといけません。お名前は何とおっしゃいました?」
スピリット「エドワードです」
博士「姓は?」
スピリット「知りません」
博士「どこにお住まいでしたか。ここがカリフォルニアのロサンゼルスであることをご存知ですか」
スピリット「いえ、知りません」
博士「なぜご存知ないのでしょうね?」
スピリット「記憶がありません。考えるということが出来ないのです。これ以上のことは何も分かりません」(精神病患者によくある健忘症は、憑依したスピリットの精神的混乱から生じていることを暗示している)
博士「それは『外なる暗黒』の中にいたからですよ。そして、フラフラしているうちに、あのご婦人のオーラに入り込んじゃったのです。それが彼女に気狂いじみた行動をさせることになったのです」
スピリット「気持ちのいい、静かな家が欲しかったのです」
博士「あなたのなさったことがいけないことだということは、お分かりですね?」
スピリット「暗闇の中を歩き続けていて、ふと明かりが見えたら、誰だって入りたいと思いませんか」
博士「明かりは明かりでも、それはあなたに必要な明かりではありません。あなたに必要なのは理解という明かりなのです」
スピリット「では、教会へ行って賛美歌を歌い、神に祈り、バイブルを読めとおっしゃるのでしょうか」
博士「バイブルは本当は誰が書いたものか、勉強なさったことがありますか」
スピリット「バイブルは神の啓示の書です」
博士「バイブルは神が書いたものではりあません。人間が書いたのです。常識ある人間社会に通用しないような内容のものを、神がお書きになると思いますか」
スピリット「では、誰が書いたのですか」
博士「いろんな時代にいろんな資料を集めて、主に想像上の悪魔と地獄を恐怖のネタにして、人心を抑える目的で編纂されたものなのです。詩・歴史・寓話・思想の寄せ集めであり、その中に矛盾と真理とがごちゃ混ぜになっております。
 それを人間は、一字一句にいたるまで神の言葉であると信じ、筋の通らないものまで、言葉どおりに解釈しようとします。バイブルにも『儀文は殺す、されど霊は生かす』とあり、また『霊的なものは霊的に見極めないといけない』とも言っております。つまり、宗教とは知的な見極めのプロセスを言うのです。
 キリストの教えの中には素晴らしい真理が含まれています。ところが教会は、ただの寓話を事実であるかのように説き、ドグマと教義と信条とが、その奥に秘められた霊的な意味を曖昧なものにしてしまったのです」
スピリット「神は六日間で地球をこしらえて、七日目に休まれたという話を信じますか」
博士「信じません。それも、ただの寓話です。七日というのは大自然の七つの基本的原理のことです。『神は創造者であると同時に創造物でもある』と言われます。もしも神が働くことを止めたら、すべての活動が止まってしまいます。生命というものを有るがままに理解することです。教えられたままを信じてはいけません。
 さ、もうだいぶ時間が経ちました。これ以上、その身体に留まることは出来ません。よくごらんなさい。どなたか知った方の姿が見えませんか」
スピリット「あっ!母さんだ!もうずいぶん会ってないなあ・・・・でも、待てよ。母は俺がちっちゃい頃に死んだはずだ」
博士「お母さんのおっしゃる通りになさい。力になってくださいますよ」
スピリット「ああ、母さん!ボクを連れてってくれるかい?お願いだ、連れてってよ。ボクはもう疲れたよ」
博士「勿論、お母さんは連れていってくださいますよ。でも、さっきのような愚かな信仰を捨てて、理解ということを心掛けないといけませんよ」
スピリット「行かせてください」(と言って立ち上がる)
博士「お母さんと一緒になったつもりになってください。その身体は私の妻のものですから、そのまま行くわけにはいかないのです。一緒になったつもりになるだけで、お母さんのところへ行けます」
スピリット「疲れてしまって、うんざりです。ほんとに疲れました。母と行かせてください。母がやって来ます。別れてずいぶんになるなぁ・・・・」
博士「さあ、一緒に行きなさい。神は考える為の知性を与えてくださっております。お母さんをはじめ、人の言うことをよく聞くのですよ」
スピリット「母が、あなたへの無礼のお詫びを言いなさいと言ってます。迷惑をかけたあのご婦人にも許してくださるよう、ちゃんとお詫びを言うようにとのことです」
博士「どちらから来られたか、教えて頂けませんか」
スピリット「思い出せません」
博士「今年は、何年だと思いますか」
スピリット「たしか1901年です」
博士「それは19年前ですね。大統領の名は?」
スピリット「マッキンレー」
博士「彼は、1901年9月6日に撃たれて、14日に死亡しています。今年は、1920年です」
スピリット「その間私はどこにいたのでしょう?眠っていたのでしょうか。私は1901年の冬にひどい病気にかかり、その後のことはよく覚えていないのです。クリスマスの頃のことで、風邪をひいて、それが悪化したのです」
博士「病気になった時はどこにいましたか」
スピリット「山で材木の伐り出し作業をしていました。何かが頭に当たったのを覚えていますが、思い出せるのはそれだけです。母が言ってます・・・私の姓はスターリングだそうです。そうだった、そうだった!」
博士「木材業をする前はどこにいたか、お母さんはご存知ないでしょうね?」
スピリット「生まれたのはアイオワ州だと言ってます。ウィスコンシン州の森林地帯で仕事をしている時に、事故に遭ったのだそうです。昔はアイオワに住んでいました」
博士「住んでいた町の名前は思い出せますか」
スピリット「いえ、思い出せません」
博士「ま、いいでしょう。これからは生命の実相についての理解を得て、人の迷惑でなく人の為になるように心掛けないといけません。あなたはこれまで、一人の女性に迷惑をかけてきて、その方は未だに完全には良くなっておられないのです」
スピリット「迷惑をかけていたのは私一人ではなく、他に二人、私と同じようなことをしていたのがいます」
博士「すっかり元気になったら、今度はそのご婦人が完全に良くなるための手助けをしてあげないといけません。残りの二人のスピリットを取り除いてあげるのです」
スピリット「やってみます。有り難うございました。さようなら」