●地縛霊による憑依
地縛霊による憑依が大きな悲劇と悲哀を生むことがよくある。次の招霊実験の患者は、激しい頭痛を訴えながら、繰り返し悲しげに泣く症状を見せていたが、憑依霊が取り除かれると、それがケロッと治っている。


 1918年1月5日
 スピリット=ミニー・デイ
 患者=L・W夫人

スピリット「(悲しげに泣きながら)ああ、頭が痛い!あの火の針は嫌!頭が痛い!ここがどこだか分からない。針の雨だったわ。どうしても悲鳴になってしまう」
博士「どこに住んでるの?」
スピリット「知りません」
博士「両親はどこに住んでいましたか」
スピリット「知りません」
博士「あなた、子供じゃないの?」
スピリット「子供よ。ミニー・デイといいます」
博士「どこに住んでたの?年齢はいくつ?」
スピリット「知らない。ママに聞いて」
博士「住んでいた都市の名は?」
スピリット「セントルイス。ああ、またお父さんがやってくる!あたしの頭をぶったの!それに、ウィリーもいる」
博士「ウィリーって誰?」
スピリット「あたしのお兄さんよ。父さんがやってくる!怖い!一緒においで、って言ってる。あ、ママだ。ママ、あたし、頭が痛いの!ママも、一緒においで、って言ってる。あたしのウィリーの為に新しい家を用意してあるから、と言ってる」
博士「霊界のお母さんの家のことですよ」
スピリット「霊界って何?それ何のこと?」
博士「地球の周りにある、目に見えない世界のことです。自分が死んだことを知ってるの?」
スピリット「それ、どういうこと?」
博士「物質で出来た身体はもうなくなったということです。最近は何してたの?」
スピリット「誰かいないかと思って、走り回ってたの。ママはとっくの昔、あたしがちっちゃい時に死んでるし・・・・。ママが死んだ後、パパはあたしとウィリーに、辛く当たるようになって、すぐに殴るようになったの。いつも嫌な思いをしてたものだから、こんなに頭痛がするようになっちゃって・・・・。色んな所へ行ってみたけど、ママは死んじゃってるし、もう、どこへ行ったらいいのか分からない」
博士「あんまり苦しい思いをしたものだから、事情が理解できなかったのね。ミニーちゃんは、もう、物質で出来た身体はなくしちゃったんです。お友達はあなたのことを『死んだ』と思ってるはずですよ」
スピリット「あたしが死んだ?時々何か箱のようなものに入ってるみたいな感じがすることはあります。そこに大勢の人達(憑依霊)がいて、みんな押しっこするの。その中の一人だけ大嫌いな人がいて、その人がみんなに意地悪するの。あの人、この人と、追っかけまわしていたけど、そのうちいなくなっちゃった(二日前に除霊されたジョン・サリバン)。良かった、これで静かになると思ったら、今度は火の針が降り出して・・・・」
博士「あなたは一人のご婦人を苦しめていたのですよ。あなたが泣きわめくものだから、そのご婦人も泣きわめいていたのです」
スピリット「それ、どういうこと?」
博士「あなたはもうスピリットになっていて、そのご婦人のオーラの中に入り込んでいたのです。その方に電気治療を施したら、あなたがその身体から離れて、今度は私の奥さんの身体を使って喋っているのです。手をご覧なさい。それ、ミニーちゃんの手だと思いますか?」
スピリット「わぁ、見て!指輪してる!でも、あたしのじゃないわ。あたし、盗んでなんかいない!(興奮している様子)これ、もっていってちょうだい!あたし、盗みなんかしてないわ!」
博士「これはあなたの身体ではありません。だから、あなたの指輪ではありません。きっと、あなたは頭をぶたれた後に死んだんだね。スピリットは身体が死んだ後も生きているのです」
スピリット「でも、あたし、今も生きてるわ」
博士「生きてますとも。でも、身体はもうありません。死んだ後一人の婦人と一緒になっちゃったのです。その方は今、別の部屋にいます。あなたがすることと同じことをするようになり、あなたが痛いと思うところを、その人も痛がっているのです。狂ったような振る舞いをしているように見えるのですが、それはあなたのせいなのです」
スピリット「意地の悪い男の人がいたのですが、今はいなくなって、ホッとしているところです。みんなその人を怖がっていたのに、逃げ出せなかったのです。とっても意地の悪い人で、噛み付いたり、ひっかいたり、喧嘩ばかりしていました」
博士「とても頑固な人でしたね。つい二、三日前に、今のあなたと同じように、その身体を使って喋りましたよ。このサークルは、色々なスピリットが救いを求めてやってくるところなのです」
スピリット「スピリット?あたしは何も知りません。頭が痛いわ」
博士「あなたが使っている身体は、私の奥さんのものですが、本人は少しも痛がってませんよ」
スピリット「あの火の針が痛がらせるの」
博士「今日、その婦人に電気治療を施したおかげで、あなたはその婦人の身体から離れて、今、そうやって私の奥さんの身体を使って喋ることが出来ているのです。これであなたも救われますよ。ところで、さっきお父さんとお母さんが見えると言ってたけど、今どこにいるの?」
スピリット「あなたにはママが見えない?ここに立ってるわ」
博士「そのお母さんと一緒に行きたくないの?」
スピリット「でも、ママは死んじゃってるもの」
博士「あなたも死んじゃったのです。本当は『死』はないのです。物質の身体を失うだけなのです。スピリットは人間の目には見えないのです」
スピリット「あっ!あたしをどこかへ連れてって!お願い、連れてって!父さんがやってくるの!あたし怖い!またぶたれるわ!どこかへ連れてって!」
博士「お父さんは、あなたにお詫びを言いに来ているのですよ。あなたに許してもらえるまでは、スピリットの世界の高いところへ行けないのです。分かるでしょ?お父さんが言いたがってることを聞いてあげたら?」
スピリット「何も言わずに、ただ泣いてるだけなの。今、ママのところへ近づいたわ」
博士「お父さんは申し訳無さそうにしていない?」
スピリット「悪かったと言ってる」


 ここでミニー、除霊されて、代わって父親が乗り移った。苦悩のあまり泣き叫びながら、ひざまずいて、両手を差しのべて言うー


スピリット「お許しを!お許しを!私は自分のしていることが分かっていなかった。ミニー、父さんは殺すつもりじゃなかった。気持ちがイライラして、子供の声がうるさかった。家内が死んで、私は寂しかった。どうか、もう一度だけチャンスを与えてください!私も苦しかった。ずっと暗がりの中にいて、誰も救いの手を差しのべてくれず、子供のそばにも近づけない。私を怖がって・・・。許しを請う為に何度か近づいてみたんですが、私を怖がって、近づくと遠ざかってしまう。
 皆さん、子供を殴るのだけはお止めなさい。あとで何年も何年も苦しい思いをさせられます。ミニーを傷つけるつもりはなかった。可愛かった。なのに殺してしまった。もしも神がいらっしゃるのなら、どうかこの苦しみと悲しみを取り除いてください!ほんの少しで結構ですから光と慰めをください。心の安まる時がないのです。安らぎがないのです。見えるのは怒り狂ってやった自分の行為ばかりです。
 皆さん、どんなに腹が立っても、自分を見失ってはいけません。さもないと、私のように苦しい思いをさせられます。神よ、お助けください。ああ、神様!一度だけーもう一度だけチャンスをお与えください!」
博士「あなたがもう死んだ人間であることは、お気づきですか」
スピリット「いえ、知りません。あの子を殺してしまってから、私は逃げました。が、誰かが追いかけて来て、何かで首のところを殴られて倒れました。(この時死んでいる)が、すぐに起き上がって、また逃げました。逃げて逃げて、もう何年になることか・・・・。何度か妻の姿が見えました。子供を殺したことを責め立てるのです。確かに殺したのです。神様、お助けください!ほんの少しでいいから、安らぎと光を見出したいと思ってきたのですが、見出せません」
博士「ご自分の現在の身の上を悟るまでは、光は見出せませんよ」
スピリット「神よ、光と悟りをお与えください!目に映るのはあの子の頭だけです。かわいそうに、私の一打で割れてしまったのです。許してもらいたいと思って近づいても、ミニーは私を怖がって逃げるのです。そして、妻がひっきりなしに責めるのです」
博士「もう、責めたりなんかしませんよ」
スピリット「勿論。お名前は何とおっしゃいますか」
スピリット「ウィリアム・デイ」
博士「今年が何年か、お分かりですか」
スピリット「頭が混乱していて・・・・もう何年も逃げて逃げて逃げ回っているものですから・・・。大勢の人間が追いかけてくるのです。私の目に入った人間は、みんな子殺しを責めるような気がして、すぐに逃げてしまうのです。夜になると、妻が枕元に立って責めます。そこにはミニーも一緒にいます。頭が割れて、血が噴き出しているのです。もう、地獄です。こんなにむごい地獄はありません。なんとか救われる道はないものでしょうか。一生懸命祈るのですが、何の効果もありません」
博士「ここがカリフォルニアであることはご存知ですか」
スピリット「カリフォルニア?いつからそんなところに?セントルイスからカリフォルニアまで走ってきたのですか?」
博士「今、あなたは生身の人間の身体を借りているスピリットであることが理解できますか」
スピリット「この私が死んでるとおっしゃりたいのですか」
博士「物質で出来た身体は、もうなくしておられるということです」
スピリット「すると、死者が復活する日まで墓場にいなくてはならないのでしょうか」(キリスト教では、死者は『最後の審判』の日まで墓場で休むということになっている)
博士「あなたは今ここにいらっしゃるじゃないですか。どうやって墓から脱け出てきたのですか」
スピリット「もう思い出せないくらい永い間、一時も休んだことがないのです」
博士「『死』などというものはないのです。肉体から脱け出ると、五感を全部失ってしまいます。ですらか、次のスピリットとしての生活についての悟りがないと、暗闇の中で暮らすことになります。そこで、こうして生身の人間の身体を借りないことには現実が見えないのです」
スピリット「でも、あの人達がしつこく追いかけてきます。もう、疲れ果てました」
博士「ですから、もうこの辺で奥さんやお子さんと和解なさったら?」
スピリット「この私を許してくれると思われますか、あの二人が・・・・。なあ、お前、この俺を許してくれ!俺は夫として落第だった。お前は天使で、俺は野獣だった。許してくれないか。もう一度だけチャンスを与えてくれれば、今度こそ本気で頑張ってみる。苦しみはもう沢山だ。
 キャリー、キャリー、この俺を本当に許してくれるかい?本当かい?お前は我慢強くて、一生懸命頑張ってくれたが、俺はろくでなしだった。子供を愛してはいたが、すぐに腹を立てた。家計を補うために、お前は身を粉にして縫い物をした。そして、その過労で死んだ。俺が殺したようなものだ。俺は、金は稼いでも、悪い仲間と一緒に、それをすぐに使い果たしていた。家に帰った時はまるで鬼になっていた」
博士「何もかもあなたが悪かったわけでもありませんよ。あなたはスピリットにそそのかされていたのです。これから奥さんについていけば、素敵なスピリットの世界が待ってますよ」
スピリット「私には妻と一緒に行く資格はありません。償いの為に善行を心掛けます。キャリー、頼むから私から逃げないでくれ(泣き出す)。ミニー、パパを許してくれるかい?可愛い我が子を殺してしまったけど、殺そうと思ってやったことではないのだよ。このパパを許しておくれ。
 私は眠っているのでしょうか。夢を見ているのではないでしょうか。目が覚めても、まだ闇の中にいるのでしょうか。
 ミニー、パパから逃げないでおくれ!どうか許しておくれ!」
博士「あなたは夢を見ているのでも、眠っているのでもありません。少しずつ現在の身の上が分かってこられましたね」
スピリット「首のあたりを殴られた時に死んだのでしょうか。ピストルで撃たれたのでしょうか」
博士「はっきりしたことは言えませんが、多分そうでしょう」
スピリット「もう一度だけチャンスを与えてくれたら、今度こそ家族を大切にするよう最善を尽くすつもりです」
博士「もっと他に、あなたにおできになることがありますよ。生身の人間に取り憑いている哀れなスピリットを救ってあげることです。人間に地獄の苦しみを与えているのです。あなたも何人かのスピリットに取り憑かれていたのですよ」
スピリット「私はもともと、アルコール類は好きじゃなかった。においを嗅ぐだけでムカつくほどだった。なのに、ほんの一口飲んだだけで、何かに取り憑かれたような気持ちになり、暴れたくなった。それがどうしても抑え切れなかった。自分ではどうしようもなかったのです。神よ、どうか、ホンの少しで結構です、慰めをお与えください」
博士「ここをお出になったら、家族の方達と再会できますよ」
スピリット「本当ですか」
博士「本当ですとも。でも、霊格の高い方の指示に素直に従わないといけませんよ」
スピリット「この私に出来ることがありましたら、是非やらせてください。家族と再会させてくださったのですから。
 私は、毎晩のように酔っぱらって家に帰ってきました。ある晩、帰ってみたら妻が死にかかっていました。その時は酔っていてどう考えたか知りませんが、翌朝目を覚ましてみたら死んでいたのです!わけが分からなかった。どうしたらいいのだ!子供達はどうなる!妻が死んでしまった!その妻とミニーが、この私を許してくれると言ってます。これで妻と二人の子供と一緒になれます。一からやり直します。色々と私や家族のためご厄介をおかけしました。礼を言います」