優しい性格、高貴な精神が特徴的な女性だったが、1860年に、大変若くして亡くなった。
 サン・テチエンヌの近くの、石炭の鉱山で働く労働者一家に生まれたが、そのことが、彼女の霊としての立場に大きな影響を与えた。

ー招霊します・・・。
 「はい、私です」
ーあなたの旦那様とお父様のお願いがあったので、こうして招霊させて頂きました。お二人共、あなたからのメッセージが得られれば、大変喜ばれるでしょう。
 「私自身も、メッセージをお送り出来れば、たいへん幸せです」
ーあなたは、家族から本当に愛されていたのにもかかわらず、どうしてそんなに若くして天に召されたのですか?
 「私の地上での試練が終わったからです」
ー家族のところに行くことはありますか?
 「ええ、しょっちゅう行っています」
ー霊として幸せですか?
 「私はとても幸せです。私は、希望を持ち、期待し、愛しているからです。天国には不安というものがありません。私は、確信と愛に満たされて、背中に白い羽が生えるのを待っているのです」
ー羽とはどういう意味ですか?
 「浄化を果たし、まばゆいばかりの天の使者になるということです」

 [天使の背中に生えた羽は、勿論、天使の移動の速さを表す為の象徴でしかない。というのも、天使はエーテルで出来ている為に、空間を自由に移動することが出来、羽のようなものは実際には必要としないからだ。しかし、天使達が人間の前に姿を現す時は、人間の思いに応える為に、羽をつけた姿をとるのである。それは、別の霊達が、家族の前に出てくる時に、家族に分かり易いように生前の姿をとるのと同じことである]

ーあなたのご両親に何かしてもらいたいことはありますか?
 「あまりにも深く私の死を惜しんで、私を悲しませないで頂きたいのです。私は本当にいなくなってしまったわけではなく、それは両親も知っているはずです。両親に対する私の思いは、優しく、軽やかで、芳香を放っています。私の地上でのあり方は、一輪の花のようなものでした。花が早く散ったとしても、悲しむことはないのです」
ー今のあなたの言葉は非常に詩的で洗練されています。地上で一介の労働者だった人の言葉とはとても思われないのですが。
 「それは、話しているのが私の魂だからです。私の魂は過去世で様々なことを学んできました。
 神様は、時に、繊細な、極めて女性的な魂を、荒くれ男達の間に送り込むことがあります。そうして彼らに繊細さということを学ばせるのです。もっとも、彼らには直ぐには分からず、繊細さを身につけるには時間がかかりますが」

 神が人間に対して持っている慈しみがどのようなものであるかが、以上の、極めて論理的な説明からよく分かる。そうした説明を聞かないと、一見、異常とも思える事態を正確に理解することは出来ないかもしれない。
 それにしても、荒くれた労働者達の間で育てられたにもかかわらず、この女性霊の話す言葉が極めて詩的で優美であることには、全く驚かされる。この場合とは反対のケースもしばしば見られる。つまり、未熟な霊が、最も進化した霊達の間に生まれることもあるのである。この場合には、目的は逆である。進化した人々の間で育つことによって、未熟な霊が向上していくことを、神は願っておられるのである。また、それが進化した人々に対する試練である、ということも有り得る。
 そうしたことを、これほど的確に説明出来る哲学大系が、霊実在主義以外にあるであろうか?