1862年、ボルドーにて。
 クシュメールと名乗る霊が、ある時、自発的にメッセージを送ってきた。霊媒は、こうした霊示を受け取ることに慣れていた。霊媒の指導霊が、しばしばこのような低級霊を連れて来ていたからである。霊媒自身が教訓を学ぶこと、そして、当該霊に向上の機会を与えること、この二つがその目的である。

ーあなたはどなたですか?お名前を聞いた限りでは、男性なのか女性なのか分かりませんが。
「男だ。これ以上考えられないほど不幸な男の霊だ。地獄のあらゆる拷問で苦しんでいるのだから」
ー伝統的なカトリックが主張するような地獄というのは実は存在しないのですよ。従って、いわゆる地獄の拷問というものもありません。
「何をたわけたことを言っているんだ!」
ーあなたが置かれた状況を説明して頂けませんか?
「そんなことをする気は毛頭ない」
ーもしかして、あなたが苦しんでいる原因の中には、エゴイズムが入っているのではありませんか?
「ふん・・・そうかもしれん」
もし楽になりたいのであれば、あなたのそういった悪しき傾向性を捨てる必要があります。
「そんなことは心配してくれなくて結構。お前には関係ない。それよりも、俺の為、そして他の霊達の為に、とにかく祈ってくれんかね。話はその後だ」
ーしかし、まず悔い改めをしないと、お祈りの効果は殆どありません。
「祈りをせずに、そんなふうにべらべら喋っていても、俺はちっとも向上出来ないぞ」
ー本当に向上したいのですか?
「多分な。だが、よく分からん。祈りが効くかどうか試してみよう。それが一番大事なことだ」
ーでは、安らぎを強く願って、私と一緒にお祈りをしてください。
「俺はいいから、とにかくお前がやってみてくれ」
ー(祈った後で)いかがですか?
「俺が思っていたみたいにはなってないぞ」
ー長い間病気をしている人に、一度、薬を与えたからといって、直ぐに治るわけではありません。
「ふん、そうかもしれん」
ーまた来てくださいますか?
「ああ、呼んでくれればな」

 霊媒の指導霊からのメッセージ:「我が娘よ、あなたは、これから、この強情な霊には手を焼くでしょう。しかし、深い迷いの中にいない霊を救ったところで、何程のことがありましょうか。
 勇気を出しなさい!根気強く続ければ、必ずやり遂げられます。お手本を見せ、時間をかけて説得すれば、どんな罪深い霊であっても、最後には必ず立ち直ることが出来るでしょう。どんなに邪悪な霊であっても、やがては自己改善に取り組むものです。
 仮に、すぐ成功しなくても、その為に費やした時間と労力は、決して無駄になることはありません。彼らに投げかけられた、よき言葉、よき考えは、必ず彼らを動かし、考えさせるからです。種を蒔いておきさえすれば、それがいつかは芽を出すのです。そして、やがては果物をならせます。ツルハシを一度打ち込んだだけでは、頑丈な岩は割れないでしょう?
 このことは、よいですか、我が娘よ、生きている人間にも当てはまるのです。どんなに強く霊実在論を信じている人でも、あっという間に完璧になれるわけではないということを覚えておきなさい。信ずることは、最初の一歩に過ぎないのです。次に、本物の信仰がやってきます。そして、ようやく自己変革が可能となるのですよ。しかし、多くの人達にとっては、まず゜何よりも、霊界に実際に触れてみることが大切なのです」