1862年、ボルドーにて。
 この霊は、自発的にコンタクトをとってきて、「お祈りをしてほしい」と言ってきた。
 

ーどうしてお祈りが必要なのですか?
「迷っていて、どうしたらいいか分からないんです」
ーもうずいぶん長い間迷っているのですか?
「180年位になると思います」
ー地上にいた時は何をしていたのですか?
「よいことは何もしませんでした」
ー霊界ではどんな境涯にいるのですか?
「退屈している霊達と一緒にいます」
ーそれは境涯とは言えないように思われますが。
「そんなことはありません。どんな心境の霊も、似た者、共感する者を見つけることが出来、そうして彼らと一緒に暮らすのです」
ーもし、苦しみという罰を受けていないなら、どうして、長い間、向上もせずに迷っているのですか?
「私は、いわば、退屈という罰を受けているのです。これも立派な苦しみなのです。喜びでないものは、全て苦しみではないですか?」
ーということは、自分の意志に反して、迷いの世界に置かれているのですか?
「こうしたことは非常に微妙なので、あなた方の物質界における粗雑な知性では、到底理解出来ないでしょう」
ー私に分かるように説明してくださいませんか?そうすることで、何かの役に立つことになるかもしれませんよ。
「出来ません。どのように言ったらいいのか・・・。相応しい言葉が見つからないのです。
 地上で、生命の火を心ゆくまでしっかり燃やさなかった為に、何か不完全なようなものが残っているのです。紙がちゃんと燃えないと、しっかり灰にならずに、何か滓(かす)のようなものが残るでしょう?あんな感じです。霊に、肉体の滓のようなものが付着しており、完全なエーテル体に戻れないわけです。純粋なエーテル体に戻ってこそ、初めて向上を願うことが出来るというのに」
ー何が原因で、退屈が生じているのですか?
「地上での生き方の影響がまだ消えていないのです。退屈とは、無為が生み出すものです。私は、地上で過ごした長い年月を、有効に使いませんでした。その帰結を今、霊界で引き受けている、ということなのです」
ーあなたのように、退屈に囚われている霊達は、止めようと思えば、その状態から抜け出られるのではないですか?
「いつもそう出来るとは限りません。というのも、退屈が、我々の意志を麻痺させているからです。
 我々は地上での生き方の結果を引き受けているのです。我々は、無用な存在として人生を過ごし、『主体的に何かに取り組む』ということをしませんでした。だから、今霊界で、退屈しながら、みんなバラバラに生きているのです。退屈に飽き飽きして、自分で『本当に何とかしなくては』と思い始めるまで、この状態で放っておかれるのです。我々の中に、ほんの少しでも意志が芽生えれば、助けがやってきて、よき忠告をしてくれ、努力を支援してくれるのです。そうすれば、我々も何とかやり続けられるのですが」
ー地上でどんなことをしたのか、ほんの少しでもいいですから、教えて頂けませんか?
「ああ、それは勘弁してください。本当に大したことはしていないんです。退屈、無用、無為は全部怠惰から生じるのです。怠惰はまた無知も生み出します」
ー過去世での修行で向上しなかったのですか?
「しましたよ。でも、大した向上はしていません。転生は、大体、どれも似たようなものになるからです。それぞれの転生で向上はします。しかし、それは実に僅かなものです。でも、我々にとってはそれで十分なのです」
ー次に転生するまで、ここに頻繁に来て頂くことは出来ますか?
「呼ばれたら、来ざるを得ないでしょう。でも、私にはありがたいことです」
ーあなたの書体はしょっちゅう変わりますが、それはどうしてですか?
「それは、あなたが質問し過ぎるからですよ。疲れるので、他の霊に助けてもらっているのです」

 霊媒の指導霊からのメッセージ: 「『考える』という作業が、この霊を疲れさせるのです。そこで、彼が答えられるように、我々が協力せざるを得ないのです。この霊は、地上でもそうだったように、霊界でも無為に過ごしています。我々は、この霊をあなたのところに連れてくることで、何とか無気力状態から救い出そうと考えたわけです。
 退屈に由来する、この無気力状態は、ある意味では、激しい苦しみよりももっと辛い、真の意味での苦しみだと言えるかもしれません。というのも、いつまでも、無限に続く可能性があるからです。決して終わることのない退屈がいかに恐ろしいものであるか、あなた方は想像出来ますか?
 この類いの霊にとっては、地上への転生は単なる気晴らしでしかないのです。彼らにとっては、霊界での耐えがたい単調さを破る唯一の機会が、地上に生まれ変わることなのです。したがって、善をなそうという決意もせずに、地上に生まれ変わることがあるのです。そして、また同じことを繰り返すわけです。
『本当に向上したい』という気持ちが、いつか芽生えてくるのを待つ他ないでしょう」