1860年、パリ霊実在主義協会にて。
 シャルル・ド・サン=Gは十三歳の知的障害児で、知性が全く発達しておらず、自分の両親が誰かも分からなかった。また、一人で食事をすることさえ出来なかった。身体の発育も、小さい時に全く止まってしまっていた(この霊は、生きている子供の霊を招霊した時の記録)。

ー(指導霊に対して)この子供の霊を招霊したいのですが、よろしいでしょうか?
「そうですね、死者の霊を招霊するのと同じように、この子の霊を招霊することは可能です」
ーということは、いつでも招霊が可能だということですか?
「その通りです。魂は霊子線で肉体と結びついており、いつでも招霊することが可能です」
ーシャルル・ド・サン=Gの魂を呼びます・・・。
「私は体を通して地上に縛り付けられた哀れな霊です」
ー霊体としてのあなたは、今世、自分が知的障害を持った人間として地上に生きているということを、意識していますか?
「勿論です。囚われの身であることは感じています」
ーあなたの肉体が寝ている時、あなたは霊として肉体から離脱すると思うのですが、その時、あなたは、霊界にいた時のように、澄んだ意識でいられるのですか?
「私の哀れな肉体が休んでいる時、私は自由になり、霊界へと上がっていって一息つくのです」
ー現在のような不自由な肉体に宿っていることを、霊として、辛いと感じますか?
「勿論です。これは罰なのですから」
ーということは、過去世についての記憶があるということですか?
「ありますとも。前回の転生で、現在の地上への追放の原因をつくったのです」
ーどんな生き方をしたのですか?
「アンリ三世の治世下、私は若い自由思想家でした」
ーあなたは、「現在の境涯は罰である」とおっしゃいました。ということは、ご自分で選ばれたわけではないのですね?
「はい、私が選んだわけではありません」
ー現在のような人生を送ることが、どうして進化に役立つのでしょうか?
「神が私にそれを課した以上、私にとってそれが役に立たないということは有り得ないのです」
ー今回の地上の人生はいつまで続くかご存知ですか?
「分かりません。ただ、あと数年もすれば、故郷に還れるのではないかと思っています」
ー前回の転生が終了し、今回の転生が始まるまで、霊界では何をしていたのですか?
「私は軽はずみなことをしでかしましたので、ある場所に閉じ込められて反省しておりました」
ー通常の意識状態の時、あなたは周りで起こっていることを自覚していますか?肉体器官はあまり発達していないわけですが。
「霊としては、見ることも、聞くことも出来ます。しかし、私の体は何も理解出来ませんし、何も見ることが出来ません」
ーあなたの為に、私達に何か出来ることはありませんか?
「何もありません」
ー(聖ルイの霊に対して)肉体に宿って地上にいる霊の為に祈った場合、肉体から離脱して迷っている霊に対するのと同じような効果はあるのですか?
「祈りは、神にとっては常によきものであり、神のお気に召します。この哀れな霊の為に祈った場合、現状は変化しませんが、将来、必ず役に立ちます。神がそれを考慮に入れてくださるからです」

 この招霊によって、知的障害児についてずっと言われてきたことが事実であるということが確かめられた。すなわち、彼らは肉体を備えた人間としては知的能力を欠いているが、霊としては全く正常で、その能力には何の欠陥もない。肉体器官に欠陥がある為に、考えていることをしっかり表現出来ないだけなのだ。屈強な男が、縄で雁字搦めに縛られているようなものだと思えばよい。

 パリ霊実在主義協会において、既に亡くなって霊界にいる、霊媒の父親のピエール・ジューティから、知的障害児に関し、次のような情報が与えられた。

「優れた能力を地上において悪用した者が、次の転生で、知的障害児として過ごすことになる場合があります。彼らの魂は、欠陥のある肉体に閉じ込められ、自分の考えを自由に表現出来ないことになります。精神的、肉体的に不自由な、この状態は、地上における罰のうちで最も厳しいものです。こうした試練は、自らの過ちを償おうとする霊によって、しばしば選択されることがあります。
 この試練には意味がないわけではありません。というのも、肉体に閉じ込められている霊自身は、あくまでも正常だからです。霊は、かすんだ目を通して見、弱った頭脳を通して考えるのですが、言葉や視線を使って、考えたことを表現することが出来ません。
 悪夢の中で、『危険に遭遇し、助けを呼ぼうとしても舌が口の奥に張り付いて声が出ず、逃げようとしても足の裏が地面に吸い付いて足が動かない』という状況を体験したことがあると思いますが、ちょうどあのようなものだと思えばよいでしょう。
 身体障害者の多くは、そのような状態で生まれなければならない、しかるべき理由を持っています。全ては理由を持っているのであり、あなた方が理不尽な運命だと考えている当のものこそ、実は、至高の正義の表れであることを忘れてはなりません。
 精神障害は、高い能力を濫用したことに対する罰です。精神障害に陥った人は、二重の意識を持っています。一つは、常軌を逸して行動する意識、もう一つは、それを知りながら、制御することの出来ない意識です。
 知的障害児はどうかといえば、孤立して、物事を観照している彼らの魂は、肉体の楽しみからは無縁だとはいえ、普通の人々と全く同じように、感じ、考えているのです。
 中には、自分で選んだ試練に反抗している者もいます。そうした体を選んだことを後悔し、霊界に早く還りたいと激しく望んでいる者もいるのです。
 精神障害者や知的障害児は、あなた方よりも沢山のことを知っており、無力な肉体の奥に、想像も突かない程の強靭な精神を潜ませていることを知らなくてはなりません。肉体が、怒り狂ったり、馬鹿な振る舞いをすることに対し、内部の魂は、恥ずかしく思ったり、苦しんだりしているのです。
 同様に、人々から、あざけられ、侮辱され、邪険に扱われるとー我々はそういうことをしないでしょうか?ー、彼らは、自分の弱さ、卑しさをより強く感じて、苦しむことになるのです。犠牲者が抵抗出来ないことをいいことに弱い者虐めをする人々を、もしそれが可能であれば、きっと彼らは告発したことでしょう」