これまで私は、私の初期の体験を順を追って説明してきた。これで私の霊界旅行がどのようにして始まったかがお分かり頂けると思うが、その後の旅行はそれとは全く性格の異なるものとなっていった。
 その後、指導霊はどうやら私の霊的身体を肉体から離す要領を会得したようだった。それは私にとっては有り難いことだった。というのは、精神統一を永く続け、その間ずっと意識を保ち続けるということは根気のいることであり、精神的にも疲れることだからである。
 ベッドに入ると私はただ気持ちを落ち着け、今夜も新しい体験があることを祈念するだけである。どうやら私は毎晩のようにそれを期待していたのではないかと思う。それは望むべくもないことなのである。後で思い知らされたのであるが、数々の条件が整わなければならなかったのである。しかも、いざ離脱が起きるとなると、背骨を下から上へ強烈な電流が波打つように上昇してきて、首筋の辺りで絶頂に達するか、或はみぞおちの辺りに衝撃を感じ、ベッドを揺らす程に全身が激しく揺れるかの、いずれかの現象が起きる。
 その頃、ある霊視能力者を訪ねたところ、年輩の中国人の姿が見えると言い、さらに、
 「その中国人があなたをマグネタイズ(磁気を帯びさせる、磁気化する等の意味がある)していると言っています。その意味はともかくとして・・・」と述べた。私にはそのマグネタイズされた時はそれと確認出来た。
 その中国人は最初の離脱の時に部屋の中で見かけた背後霊団の一人である。その時の感じはシワが多く笑顔がチャーミングということだった。地上では薬草店を開いていたという。

 肉体から離れている時間が次第に長くなっていった。その間必ずしも意識が持続されているわけではない。というのも、一晩のうちに次元の異なる界層を三つから四つも往復することがあり、波長を環境に合わせている間は無意識で、次に意識が戻った時は別の界層にいるのだった。
 また 離脱中の意識はある種のエネルギーを補充されているかのように、弱ってきたなと思っていると強くなってくる。そのエネルギーが『魂の緒』(肉体と霊体とを繋ぐ銀色をした紐)を通じて肉体から送られてくるのか、それとも指導霊が直接注入してくれるのか、そのへんのことはよく分からない。
 指導霊は私の離脱中の体験の全てに通じているとも限らないようである。というのは、プロの霊視家を訪れて霊界での体験を私の指導霊と確認し合うと、知らないことが驚く程多いのである。
 霊媒の中には、霊界を訪れると地上生活に嫌気がさすおそれがあるので訪れないことにしているーよくよくのことがある時しか訪れないと言う人がいる。私にはその気持ちはよく分かるが、私の場合は妻に会い我々二人の子供達の為に地上に帰ってくるという生活が出来て有り難いと思っている。
 初めのうちは体験のメモを取っていたが、間もなく止めた。というのは、思い出そうと思えば、書き記したもの以上のことを鮮明に、しかも残らず全部を思い出すことが出来ることが分かったからである。霊界で意識的に目撃したことは地上の出来事より遥かに鮮明に、精神に印象づけられている。実に際立った形で思い出され、地上の記憶のように、他の記憶とごっちゃになることがない。
 そこで私は、霊界の事情や霊の生活についての霊側からの通信はとかく混乱しているので、地上の人間である自分が見聞きしたことをそっくりそのまま持ち帰れば、いい霊界物語が出来上がると考えた。
 ところが実際にやってみると、そう簡単にいかないことが分かった。というのは、霊界の事情についての質問には『イエスでもありノーでもある』と答えざるを得ないものが非常に多いのである。正解はその霊が所属する界層によって異なってくる。同じ問題を扱っても、ある霊にとって『イエス』であることが他の霊にとっては『ノー』であることもあるということである。