私が霊界旅行中に一番長時間付き合った動物は馬である。その時の体験は私にとって最も貴重な体験の一つに数えられるのではないかと思っている。
 ある日、肉体を離脱した後の霊界での意識の回復が非常にゆっくりだったことがあった。そして完全に意識が戻ってみると一頭の馬にしっかりと跨がっていた。霊的身体に感じられるその境涯のバイブレーションは非常に気持ちがよく素敵だった。
 辺りを大勢の人が歩いており、その人達がみな色彩豊かな衣装をつけ、のどかさと優雅さに溢れていた。その衣装は地上の衣服とはおよそ概念が異なるものであるが、その界層において見ると少しも違和感がなく、自然そのものに見える。
 私の直感では、ある儀式が今終わったばかりで、解散して別れていく前にお互いに挨拶し合っているところのようだった。全員が無垢の友愛のバイブレーションにおいて完全に融合し合い、一体となり切っている。それでいて一人一人が個性ある存在であり、お互いが無くてはならない存在なのである。これが本当の意味での『仲間』なのである。個が幾つか集まって仲間を構成するが、その個と個との間に『仕切り』がない。霊的同胞精神があるからである。
 この境涯のバイブレーションは格別に私を引きつける作用があり、反応が顕著である。周りには幾百とも知れぬ霊がいて、馴染みのある顔は一つとして無いのに、どの人も『赤の他人』という感じがしない。その感じは説明できる性質のものではない。
 間もなく私達は何らかの動作に移らねばならないと考えたーというよりは、そう感じ取った。そして馬を見下ろすと、馬は今か今かと待ちかねている様子だった。その間、ぴくりともしなかったことに私は非常に感心した。すると私のその気持ちがすぐに伝わって『嬉しさ』と『友愛』と『奉公』の心情の温かみが返ってくるのを感じた。これは両者のオーラが融合した時の思念の相互作用だと理解した。
 私はその人波の中に自然に出来た抜け道を見つけて、そこから出ようと思った。するとその思いを馬がすぐに察して、私が命じないうちにその方角へ進み始めた。そして、そこから通路へ出て田園地帯までの長い道のりを行く間中、馬は私の思念を『先取り』して、手綱を引くことは一度もなかった。私の直感ではその馬は既に霊界へ来てかなりの年月が経っていて、その界層の人達の愛と思いやりに深く馴染んでいるようだった。
 私はかなりの遠乗りを楽しんでから、いい気分のうちに引き返して来た。そしてそろそろ元の位置に近づいた頃になって眠気を催し始めた。これは高いバイブレーションの世界にいると必ず起きる現象で、間もなくふわっと浮き上がる気分がして、気がつくと肉体へ戻っていた。その時は一つの界層への一回だけの旅行で、真夜中のことだった。
 私はそれまで霊界旅行によって睡眠に影響を受けたことはなかったのであるが、その日だけは、どこかで休日を楽しんで帰ってきたような、爽快な気分になっていた。