●アダムズ博士の地上人への警告
 アダムズ博士は、地上では内科医で、スピリチュアリズムの思想にも通じておられ、よく講演会を開いておられた。その博士が、死後、我々のサークルを訪れたのは一再に留まらないが、次に紹介するのはその一つである。


 1920年10月20日
 スピリット=アダムズ博士



 皆さんがなさっておられる仕事には、陰ながらいつも大きな関心を抱いております。私も生前から霊的な仕事に携わっておりましたが、博士のような招霊による除霊の仕事はしませんでした。主に、死後にも生命があるという事実を広める仕事をしておりました。死後の生命は実感溢れるものです。決して観念的なものではりあません。理解ということが全ての鍵を握る世界であり、信仰は何の役にも立ちません。
 何らかの教義をただ信じているだけでは、こちらで暗闇の中に自分を見出します。他のものを遮断して自分の世界にだけ閉じ込めるからです。バイブルにも、いいことがたくさん述べられております。問題は、それを文字通りに受け取ったり、伝統的解釈に拘ったりすることです。その裏にある意味を理解すれば、どんなにか違ってくるのですが・・・。
 そもそもバイブルが書かれた時代は、今日ほど開けておらず、宗教も、無知な人民を思い通りに動かす為の鞭のようなものでしかありませんでした。そして、言う通りにしない者は、死んでから悪魔に捕まって地獄に連れて行かれると説いたのです。
 その地獄たるや、実に惨たらしいものに描かれていました。火焔がもうもうと燃え盛り、辺りには骸骨が散乱し、悪魔が大きなフォークで人間をその炎の中に放り込んでおります。そんなところへは誰も行きたくありませんから、結局は言うなりになってしまいます。
 そうした宗教集団が各地に出来てくると、それらの宗教間での優劣の競い合いが生じ、やがて戦争へと発展します。宗教が原因となって生じた戦争の歴史は、今日なお続いております。が、そろそろ新しい時代へと入りつつあるようです。理性が発達してきた現代人は、宗教というものに疑問を抱き始めております。が、宗教に背を向けた後に向かう方向は、金と権力です。稼げるだけ稼ぎ、握れるだけ権力を握ろうとします。その為には、手段を選ばないという傾向が生じています。
 私が地上にいた時とは、すっかり事情が違ってきました。資本がものを言う時代であり、それが原因となって不和とトラブルが生じております。私が生きていた頃は、人に雇われるということは有り難いことと思って一生懸命に働いたものですが、今は雇う方も雇われる方も賃金を第一に考え、それが対立のもとになっております。
 現代は、空を飛ぶ機械も出来ております。が、これは新しい発明の序の口に過ぎません。これからは、夢想もしなかったものが発明されていきます。電気を使用するものが多くなり、さらには、大気中から摂取したものをエネルギー源とするようになるでしょう。中でも、太陽が摂るエネルギーが最大の恩恵をもたらすことになるでしょう。
 そうなれば、現代の金持ちもその使い道に困るようになります。太陽と大気とからエネルギーが摂取されるようになれば、利己主義者はいなくなり、キリストの説いた、お互いがお互いの為に生きる平和な世の中になることでしょう。これまでのように、ただ盲目的に信じて賛美歌と祈りだけの生活はしなくなるでしょう。
 人間は誰しも間違いを犯します。その間違いから摂理を学べば良いのです。神は人間に理解力を与えてくださっています。その理解力を使って、自然界に顕現されている驚異と不思議の中に神を見出すのです。そこから生まれる魂の喜びの状態こそが、他ならぬ『天国』なのです。大切なのは理解力なのです。
 地上時代の私は不遇でした。死後の生命の実在を信じ、それを説いて回ったことがその原因でした。そんな私を、みんな気狂い呼ばわりしました。死んだら地獄行きだと言うのです。人間は、死ねば『最後の審判日』まで墓で眠っているのだと言うのです。その審判日に呼び起こされて、善人と悪人とに選り分けられ、悪人は地獄へ送られて、そこで永遠の火炙りの刑に処せられるというのです。
 神がすべてを作り給うたと言いながら、そんな理不尽なことをするなんて、バカバカしい話ではありませんか。
 私は、もともと学者でしたが、スピリチュアリズムに熱心だったことで、色々と悩みや苦しみがありました。しかし、私は、死後の実在を知らしめることが自分の義務だと感じていたのです。スピリチュアリズムの教会を建てるのが夢でした。そこでスピリチュアリズムの思想を説きたかったのです。心霊実験などはするつもりはありませんでした。
 ご忠告申し上げたいのは、見えざる世界への扉を開く努力をなさるのは結構ですが、その前に、霊的原理をしっかりと勉強してほしいということです。最近のスピリチュアリズムは、現象的なことばかり興味を抱いて、肝心の人生哲学や、霊界と地上界との関係を支配している霊的法則についての勉強が不足しております。
 無知と利己心と嫉妬心から愚かなマネをしないようにしましょう。そういう低次元のものは一蹴して、創造の大霊から授かっている愛と叡智と理解力とを最大限に発揮いたしましょう。 
 では、失礼いたします」