●死後、良心の呵責に苦しむ牧師
地上で熱心な牧師だった人が、死後、精神的混乱と良心の呵責に苦しむ例が多い。次はその一例である。



1921年3月9日
スピリット=マローリー氏
霊媒=ウィックランド夫人



賛美歌[かの美わしき彼岸]を出席者全員で歌っているうちに誰かが乗り移って来て、いきなり大声で笑い出した。

博士「そちらへ行かれて[美わしき彼岸]を見出されましたか。どんなところか、お教え頂けませんか」
スピリット「大デタラメさ」
博士「そうでしょうか」
スピリット「そうだよ(愉快そうに笑う)。あんなことを信じるのは間抜けな野郎だけさ」
博士「あなたはその『彼岸』へ行かれたわけですが、どんなところか、少しお教え頂けますか。何もないのでしょうかね?死後の生命を信じないというのなら、そのわけをお聞かせください。懐疑論者であるのなら、あなたなりの信仰をお聞かせください」
スピリット「信仰?そんなもの!」(また笑い出す)
博士「何がおかしいのですか」
スピリット「泣いても笑っても同じだから笑うのさ。さっきは[かの美わしき彼岸]を歌っておられたが、あれじゃあ、大嘘を言ってることになりますぞ」
博士「霊的生命に何の意味もないということでしょうか」
スピリット「ないね。何もないね。あれは嘘。全部嘘っぱち。霊的生命も宗教も、それに関連したもの全部がたわごと・・・・」
博士「ご自分の生命を悟ろうとはなさらなかったのですかーその謎を?」
スピリット「私自身の生命?それもたわごと、ただのたわごと!」(笑う)
博士「たわごとであることがどうして分かるのでしょうか。あなたは自分で、自分の無知を笑ってるだけではないのでしょうか」
スピリット「泣こうが笑おうが、同じこと。どっちが良くも、どっちが悪くもない。全部嘘っぱちー大嘘!私も悩んだものさ」
博士「どちらでのことですかーこの世でですか、そちらへ行ってからですか」
スピリット「どっちだっていいさ!」(また笑う)
博士「今お幸せですか」
スピリット「幸せ?バカバカしい。そんなものはこの世にはありません。過去にもありませんでしたし、これからも絶対にありません」
博士「本当にご存知ないのですか。ご自分の身体をお持ちだった頃に真理というものを求められましたか」
スピリット「一生懸命に祈ったが、すべてはナンセンスだった・・・・。へっ!クソ食らえだ、まったくもう・・・・」
博士「すべてがたわごとだったということですか・・・。それと現実の生活とどう結びつけましたか」
スピリット「立派な人間になろうと心掛けたことはありました。が、そのうち、すべてはたわごと、ナンセンス、ペテン以外の何ものでもないのだという考えになりました。あなたも一人前の人間として、私の言ってることが分かるでしょう?私も一人前の人間のつもりです。あなたは分かってくれると思いますが・・・・」
博士「私にはあなたの姿が見えていないのです。霊的存在を見かけたことはありますか?」
スピリット「何の話ですか、それは?もうこれ以上のナンセンスは願い下げにして頂きたいですな。信じるのは勝手ですよ。水の上を歩いて渡れると信じたければ、信じたらいいのです。が、実際に歩いたら、ずぶずぶと沈みます。それと同じですよ。私も、信ずれば水の上を歩けるのです、などと説いたことがあります。ですが、見事に沈みましたな」
博士「それは理性をおろそかにしたからですよ」
スピリット「理性?理性では水の上は歩けませんよ」
博士「水の上が歩けるという意味ではありません。水は飲むことと水浴びに使うだけでよろしい」
スピリット「なぜ私の手を握るのですか」
博士「私は私の妻の手を握っているのです」
スピリット「正気でおっしゃってるのでしょうな?本気ですか」
博士「間違いなく私の妻の手です」
スピリット「私もかつては、そういう信仰をもったことがあります」
博士「その信仰をなぜ失われたのでしょうか」
スピリット「デタラメだということが分かったからです」
博士「地上生活は、知識を得る旅のスタートですよ」
スピリット「まだ、何の知識も得ておりません」
博士「ここを去っていかれるまでに得られますよ」
スピリット「かつては私も信仰をもち、熱心に信じました。ところがです・・・・」
博士「それからどうなりました?」
スピリット「そうです、それからですよ、問題は。私は『神の代理人』として、まるで奴隷のように仕事をしました。今は神のために働くことはしません。もう昔のことになりました。私の方から手を引いたわけです。神は私にとって呪いのようなもので、気苦労と悩みが多すぎました。それで私は、神をこう罵ったのですー『こんなことをするのが、あんたの代理人というなら、神なんか存在しない!』とね。それ以来、信仰は捨てました」
博士「しかし、そのことが生命の実相と死後の生命とにどう関わりがあるのでしょうか」
スピリット「死んでしまえば、死人となるだけです」
博士「じゃ、なぜあなたは、死んでから死人になり切っていないのです?」
スピリット「死人になり切る?私は死んでませんよ」
博士「肉体に関するかぎり、あなたは『死んだ』のです」
スピリット「私は、あの偽善者達から逃れたいと真剣に考えていました。彼らは私の有り金全部を搾り取ったのです。もしも神が存在するのであれば、なぜ神はそんなに金を欲しがるのでしょう?まず信じなさいという。信じて、財産を教会に寄付しなさい、そして教会の為に働きなさい、と。私は、それはそれは、よく働きました。朝六時から夜遅くまでーすべて神の為にね。神の為に働きながら、食うにも事欠くほど生活費に困ったことがありました」
博士「どちらから来られましたか」
スピリット「私が今欲しいのは自由だけです」
博士「どちらからおいでになったか、教えて頂けませんか」
スピリット「あそこにいる連中(スピリット)をご覧なさい!私を罵り、あざ笑っている声が聞こえるでしょう。『お前のこと知ってるぞ!忘れはせんぞ!』と口々に言ってる。みんなで私をあざ笑っているのが聞こえますか。ちゃんと責任を取ってもらうつもりだと、あなたに言えよと叫んでいます。薄汚いところにいるのは、この私の責任だと言うのです」
博士「あの人達にも真実を知って頂きたいと思ってお呼びしてあるのです」
スピリット「聞こえますか、あの呪いの言葉が?」
博士「彼らにも思いやりの心を見せてあげないといけません。あなたは慈悲心がどういうものかを理解なさろうとしませんね」
スピリット「わっ、あれを見てください!みんな一斉に『慈悲なんかいらん』と言ってます」
博士「お金のことを言ってるのではありませんよ。自分の意識を改めていく手がかりを与えてあげなさいと言っているのです。
 ところで、今年は何年だと思いますか」
スピリット「そんなことはどうでもいい。百年前でも百年後でもいい。とにかく私は、神も人類も、その他何もかも信じられなくなったのです。かつては信仰厚き人間でした。ところが、『神の召使い』という仕事が、妻と子供を私から奪い去ったのです。それでも、私は朝六時から真夜中の十二時まで働きました」
博士「ただ、あなたはその信仰に『理解』を加えることをなさらなかったのです」
スピリット「聖霊と神への信仰はありました」
博士「なぜそれに『理解』を加えなかったのでしょうか」
スピリット「かつては、山をも動かす信仰をもっておりました。ひたすら聖霊への信仰を教え込まれましたから・・・・。
 見てください、あの者達を・・・・。座ってるでしょう。あいつらを見てください。
 おい、カランゴ!
 あいつとはよく口論をするのです。が、いつも私が勝ちます。永い間、説教をしていました・・・。今はその頃より上手になりましたからね。
 おい、カランゴ、そんなところに間抜けなツラをして、しゃがみ込みやがって!あの連中が行こう行こうと言うものだから、私も来たのですよ。初め、あなたは私のことを怖がってましたな。でも、ちゃんと来ましたよ」
博士「どうやってお入りになりましたか」
スピリット「ここにですか?どうやって?それは知りません」
博士「こんな手をどこで仕入れたのですか」(と言って霊媒の手を触る)
スピリット「こんな手?私のものだと思うが・・・・。他人のものじゃないよ。カランゴが来たな。そんなところにしゃがみ込みやがって!さあ、みんなよく聞け!」
博士「これ、おしゃべりは止めなさい」
スピリット「あなたは、ここのボスのつもりですか」
博士「そうです」
スピリット「でも、あんたの言うことは信じないからね。他の誰も信じません」
博士「あなたは、もう、物質で出来た身体をなくしたということを理解してほしいのです。今あなたは、私の妻の身体を使っておられるのです。あなたの姿は私達には見えていないのです。その辺に男達がしゃがみ込んでるとおっしゃいますが、私達には見えないのです。私達は物質の身体に宿っていますが、あなたには、もうそれはないのです」
スピリット「この私が見えていないのですか」
博士「私達にはスピリットの姿は見えないのです。あなたは、私の妻の身体を使って喋っておられるのです。高級霊の方達が、ここへお連れしたのです」
スピリット「あんたが来いというから来たのです。あの薄暗いところにいる連中も、私と一緒にやってきたのです。あんた達が招いたからです」(サークルによる地縛霊への祈りが通じたことを意味している)
博士「高級霊の方達がお連れしたのです。その方達の言う通りにしてください。あなた達は今、薄暗い闇の中にいらっしゃいます」
スピリット「たしかにその通りだ。が、あんたが招いたから来たのです。言っときますが、もし邪魔なら、何も喋りませんよ」
博士「ここへお連れしたのは高級霊の方達です。私の妻の身体を使って頂いて、あなたにはもう肉体がなくなっていることを理解して頂くためです。キリスト教は神について正しく理解しておりません。その教会の説くところがデタラメだからといって、あなたは何もかもがデタラメだと決めつけておられる。
 あなたが肉体を失ったのは、多分かなり前のことでしょう。私の妻は霊的能力があり、その身体を一時的にあなたにお貸しして、今こうして喋って頂いているところです。見回してご覧なさい。どなたか、ご存知の方がいらっしゃるはずですよ」
スピリット「カランゴだよ、見えてるのは」
博士「人生にはちゃんとした意味があることを理解しないといけません」
スピリット「そう信じてましたよ。十分過ぎるほど信じてましたよ。ところが、財産も、そして妻子までも失ってしまった。そして、今はこのザマだ」
博士「それが生命の実相と何の関係があるのでしょう?大自然の不思議に心を打たれたことはないのでしょうか」
スピリット「神などというものは信じません。そういうものは存在しません」
博士「神は、あなたの言うデタラメとは何の関わりもありません。バイブルを理解なさったのでしょうか。『神は愛なり』と述べているではありませんか。あなたがデタラメと思っていることは、宇宙の生命とは何の関わりもありません。私達は、あなたにもっとマシなものを知って頂きたいのです」
スピリット「誰一人頼りになる者はいません」
博士「今あなたは、カリフォルニアのロサンゼルスにいらっしゃるのをご存知ですか」
スピリット「知りません」
博士「さ、本当の生命とは何かを、よく理解しないといけません。あなたの思いも寄らなかったものなのです。あなたは花をこしらえたことがありますか。草を生えさせ、この生命を永らえさせたことがありますか。植物の生長について勉強なさったことがありますか」
スピリット「それは神の領分です」
博士「無知のままでは知性は芽生えません。神の脅威のわざを勉強なさったことがありますか。卵を割ってごらんなさい。そこには生命は見当たりません。ところが、それを21日間温めてごらんなさい。ヒヨコが出てくるのですよ」
スピリット「それは当たり前のことです」
博士「一体そのヒヨコをこしらえたのは何なのでしょう?我々は信仰に知識を加えないといけないのです。バイブルには『神は霊なり。神を崇める者は、霊と真理の中に神を崇めるべし』とあります。あなたは、それを教会の中に見出そうとしたから、見出せなかったのです。教会は盲目の信仰しか教えません」
スピリット「信仰はもっていたつもりです」
博士「バイブルには『真理を悟るべし。その真理が汝を自由にすればなり』とあります。バイブルはけっして『聖なる書』ではないのですが、いくつか素晴らしい真理が含まれています」
スピリット「(笑いながら)私は信じない」
博士「あなたはご自分の無知を笑っているようなものですよ。私の妻は自分の身体をこうして、無知のまま迷っておられるスピリットにお貸しして、現実の身の上を悟って頂く仕事をしているのです。死後にも生命があることを知って頂きたいのです。あなたがどちらのご出身かは知りませんが、そうやって生身の肉体にもう一度宿って頂いて、事情をお聞きしているのです。お家はどこにありましたか」
スピリット「私の家?カナダです。モントリオールの近くです」
博士「私も、1881年に、カナダにいたことがあります。あなたはフランス系カナダ人ですか」
スピリット「曾祖父がそうでした」
博士「ご自分の名前を覚えていらっしゃいますか」
スピリット「物事が思い出せなくてね・・・・」
博士「では、物事を理解なさる方向へお手伝いしましょう」
スピリット「私は奴隷のようなものでして・・・・」
博士「それはもう、すべて過去のことです」
スピリット「過去しか見えないのです。そして、それが私を狂わせるのです。普通の人は泣きわめきたくなるところでしょうが、私は何でも笑ってやろうと思ったわけです。気が狂いそうになり、どうしようもなくなると笑い始めるわけです。泣きわめくよりは笑う方が少しはましだと思って・・・。
 私には心痛のタネがあるのです。その悲しみが妻を追い出し、家庭を崩壊させ、子供達を追い出したのです。可愛い女房でした。ある日、くたくたに疲れ果てて家に帰ってみると、妻も子供もいなくなっていたのです。
 しかし『神の代理人』であるはずの私に、その妻はもう必要でなくなっていたことに気がつきました。妻の方は神を求めていたようですが、私は反対の方向へ進んでいたのです。教会は私の味方になってくれないし、『神の代理人』の家庭を破壊し、妻も子供も奪うような世界に神は存在しないーそう考えたのです。その神を求めて地獄へ降りてみました。下へ下へと降りてみて、最下層の世界にも友情があることを知りました。
 あなたも降りてみられるといいですよ。それが分かります。みんなお互いを外道だと思っていますが、ここへ連れて来た連中は、私の本当の友人です。何かと手を貸してくれるし、何でもみんなで分け合うことをします。どんなに落ちぶれて、たとえ一文無しになっても、何とかしてくれますよ。
 そうしたある日のことです。忘れもしませんーこれだけは永久に忘れませんー一体神は何を酔狂にこんなことを許すのでしょうか。ある日、妻クララに出会ったのです。どこにいたと思いますか。妻もその貧民窟に身を落としていたのです。そこの売春宿で見つけたのです。神は、無用になった妻をそこへ蹴落としたのです。私の目と妻の目とが合いました。
 『こんなところに!』
 私は、呆れて言いました。
 『あなたこそ、こんなところへ!』と妻も言いました。
 『なぜ、またこんなところに?』と私が尋ねると、妻も、『あなたこそ、何をしにこんなところへ?』と尋ねます。
 『多分、私の自由意志がここへ連れて来たのだろう』と言いました。
 すると妻は、『さだめし、あの栄光の神の代理人の仕事が、その名を辱めないようにと、私をこんなところへ押し込めたのでしょう』と言います。
 つまり、神の汚らわしい仕事を隠し、身の上を尋ねられることのないようにと、売春宿に閉じ込めたというわけです。妻はもうすべての羞恥心を失っておりました。二人とも落ちるところまで落ちてしまったのです。あの悪魔(神)のためにね。
 それ以来、私は教会へ近づいたことはありません。敬虔な宗教家をすべて呪うようになりました。妻は私には一切関わろうとしませんでしたし、私も妻のことは救えませんでした。病に冒された身体のまま、あの貧民窟にほうってあります。女が身をもち崩すと、動物にも劣ることをするようになるものです。何の罪も咎めもない私の妻をあんな目に遭わせる神なんて、信じられる人がいますか?あのような現実があっていいのでしょうか」
博士「なぜあなたは、神の与えてくださった理性というものを使用なさらなかったのでしょうか」
スピリット「あのような境遇に落ちた人間が無数にいるのです。もうどうなっても構わなくなった人間ばかりなのです」
博士「今あなたは、その『もうどうなっても構わない』という気持ちから脱け出ようとなさっている。さ、今度は私の話を聞いて頂けませんか。あなたはキリスト教へ入信して盲目的信仰を受け入れたーそのことは認めますね?」
スピリット「立派な人間になりたいと思ったのです」
博士「もう少し高いものを求める気持ちは出なかったのでしょうか。ただ盲目の信仰を受け入れただけで、それに理解というものを加えなかった。神は判断力というものを与えてくださっています。理知的に考える能力です。ところが、あなたはその反対の盲目的信仰を受け入れて、それに執着した。それは神が悪いのではありません。信仰に知識を加えないといけません。その時初めて自由になるのです。バイブルは神がお書きになったものではないのですよ」
スピリット「聖なる書です。そう言われています」
博士「あれは人間が書いたものなのです。それよりも、人間の心の不思議ということを考えたことがありますか。私は今『事実』の話をしているのです。人体の不思議に関心をもったことがおありですか。つまり、目に見えない精神が、物的身体をコントロールしている、その不思議です。大自然の驚異に心を奪われたことはないのですか」
スピリット「それは今の私の惨めな状態とは何の関係もありません」