それから数週間後に最後の憑依霊がバートン夫人から離れてウィックランド夫人に乗り移り、監禁されていたことを憤り、先の出て行った仲間達はどこへ行ったのかと尋ねるのだった。
スピリット=マギー・ウィルキンソン
患者=バートン夫人
博士「ようこそ。どなたでしょうか」(霊媒の手をとりながら)
スピリット「手を握らないで!触らないでください!」
博士「名前は何とおっしゃいますか」
スピリット「マギーです」
博士「マギー・何とおっしゃいますか」
スピリット「マギー・ウィルキンソン」
博士「ここがロサンゼルスであることをご存知でしょうか。どちらからおいでになりましたか」
スピリット「テキサスのダラスです」
博士「ロサンゼルスまでどうやって来られたのですか」
スピリット「ここはロサンゼルスではりあません。テキサスです。ずっと蹴り通しでした」
博士「なぜ蹴るのです?」
スピリット「牢に入れられてるからです(バートン夫人のオーラのこと)。何人か一緒にいたけど、みんないなくなっちゃった。あたしだけ置いて、みんな出て行っちゃった。ずるいわ!」
博士「みんなが行ってるところへ、あなたも行ってみたいですか」
スピリット「別に・・・他の人のことなんか、どうでもいいわ。何もかもみんなで取りっこして、あたしはいつも除け者にされてたんだから」
博士「今の状態が少し変だとは思いませんか。死んでからどのくらいになりますか」
スピリット「死んでからですって!一体あの婦人(バートン夫人)はなぜ、このあたしにつきまとうのですか。あの人はいつも火責めに遭ってるのよ。酷い代物なの。何かの上に乗っかって頭の上に何かを置くと、火の雨が降るの!」(バートン夫人が静電気装置の横の台の上に乗ると、電気ショックの効果を増す為に頭から毛布を被せられた)
博士「こんなところにいて、いいのですか」
スピリット「どこへ行けばいいのですか」
博士「霊界です」
スピリット「何です、それは?」
博士「身体から脱け出た人が行くところです。ただし、自分の身の上のことをよく理解した人に限ってのことですけどね。あなたも何か変わったことが身の上に起きてることに気づきませんでしたか」
スピリット「私は、例の毛布を頭から被せられて火責めに遭うことさえ止めて頂けたら、それでいいのです。まるでバラバラに叩きのめされたみたいな気分になります。あんな仕打ちに耐えられる人がこの世にいるのですかね」
博士「あれは、あなたを追い出すためにやったことです。今は楽な気分じゃありませんか。あの、『発砲』を受けてから後は何をなさっていたのですか」
スピリット「追い出されて良かったですよ。これまでよりは気分がいいですから」
博士「あなたが今使っておられる身体は、私の妻のものであることはお分かりですか」
スピリット「冗談じゃないわ!」
博士「今使っておられるのは私の妻の身体なのです」
スピリット「あなたの奥さんの?バカバカしい!」
博士「着ていらっしゃる衣服に見覚えがありますか」
スピリット「そんなことはどうでもいいことです」
博士「どこで手に入れられました?」
スピリット「泥棒扱いしないでください!警察を呼びますよ。警察署を見つけ次第、逮捕状を出してもらいますからね」
博士「では、マギー、あなたの髪は何色ですか」
スピリット「ブラウンーダークブラウンです」
博士「(霊媒の髪に触りながら)これはブラウンじゃありませんね。この衣服も全部私の妻のものですよ」
スピリット「私のものであろうがなかろうが、私は構いません。私から頼んだわけではありませんから」
博士「死んでからどのくらいになりますか」
スピリット「私は死んではおりません。あの話をするかと思うと、この話になる・・・」
博士「私がお聞きしているのは、あなたが身体を失ったのはいつだったかということです」
スピリット「私はまだ身体はなくしておりません。墓に埋められてはいません」
博士「病気になって、そのうち急に良くなったというようなことはありませんでしたか」
スピリット「病気が酷くなり、そのうち急に楽になったと思ったら、牢に入れられていました。私はウロウロしていましたが、そのうちある女性が私を何かと邪魔立てするようになりました。私の他にも何人かいましたが、例の火責めにあって、みんな出て行ってしまいました」
博士「ロサンゼルスに来られたのはいつですか」
スピリット「ここはロサンゼルスではありません。テキサスのダラスです。もしもここがロサンゼルスだとしたら、私は一体どうやって来たのですか」
博士「赤い髪をした女性と一緒に来られたに相違ありません」(バートン夫人がすぐ側に腰掛けている)
スピリット「彼女には私をここへ連れてくる権利はありません」
博士「彼女もテキサスから来たのです」
スピリット「他の人達はどうなったのですか」
博士「自分の身の上についての理解がいって、無事、霊界へ旅立たれました。あなたもそこへ行くべきなのです。なぜこちらの女性につきまとうのですか」
スピリット「つきまとう?とんでもない!私はずっと牢の中にいるのです。身動きが取れないのです。出ようとして、色々やってみたのです。私を見かけた人達は、私を救い出してやるなどと言っていながら、結局誰も出してくれなかった。私があんまり騒ぐものだから、私から逃げ出したのよ」
博士「多分、その方達が、あなたをここへお連れしたのですよ」
スピリット「私に見えているのは、ここに腰掛けている人達だけです」
バートン夫人「あなたは私についてここへ来たのですね?私を苦しめてどうしようというのです?」
スピリット「私はあなたとは何の関係もございません。あれ!あなただわ、この私を牢に閉じ込めたのは」
バートン夫人「あなたと一緒だった女友達は何という名前でしたかね(同じくバートン夫人を悩ませていた別の霊のこと)?」
スピリット「どこでの話ですか。テキサスでのことですか」
バートン夫人「そうです」
スピリット「あの人はメアリーといいました。もう一人、キャリーというのがいましたけど・・・・」
バートン夫人「キャリーも一緒に来てますか」
スピリット「勿論よ。ねえ、あなたはなぜこの私を閉じ込めといたのよ?なぜ出してくれなかったのよ?」
バートン夫人「私は出て行けと言い続けたじゃないですか」
スピリット「それは知ってたわ。だけど、あなたはドアを開けてくれなかったじゃないですか」
博士「自分の心の中で、この人の身体から離れるのだと思い込めば、それで離れられたのですよ」
スピリット「思い込んで離れるなんて、私には出来っこありません」
博士「スピリットの世界のことが分かってくると、出来るようになるのです。出来ないのはその原理を知らないからです」
スピリット「(バートン夫人に向かって)ねえ、あなたは何のために私をあなたの側から離れられないようにしたのよ?」
博士「あなたは『招かれざる客』だったのですよ」
バートン夫人「あなたがいなくなってくれて、さっぱりしているところですよ」
スピリット「私の方こそよ。あんな牢から出られて、せいせいしてるわ。なぜおとなしく出してくれなかったのよ?」さんざんノックしたのに、出してくれなかったじゃない。(博士に向かって)あなたがあの火の贈り物をくださったお陰で出られたのね。有り難く思ってるわ」
博士「この前の治療の後、出たのですね?」
スピリット「あれを『治療』とおっしゃるのね」
博士「これで夫人の身体から離れられたのなら、立派な治療ですよ」
スピリット「あれで私がどれほど苦しい思いをしたか、ご存知ないのね。特に、あの針で突き刺すやつーあれをやったのは、あなただったのね?大嫌いよ、あんたなんか!」
博士「あなたを出すために、あの夫人にあのような手荒い治療を施さなければならなかったのです」
スピリット「あなたは、あの悪魔の機械を小さな神様みたいに思ってるんだわ。あなたは私にどこかへ行ってほしいと言ったわね。どこでしたか」
博士「スピリットの世界です」
スピリット「それはどこにあるのです?」
博士「肉体を捨てた者が行くところです。ただし、それには理解が必要です。あなたは肉体はなくなりましたが、まだ理解が出来ていらっしゃらない。それであのご婦人に迷惑をかけてきたのです」
バートン夫人「あなたや他の人達に出て頂いた後は、ドアをきっちり閉めて、あなた達の誰一人として、二度と入れないようにしますからね」
博士「自由になったつもりになれば、それで牢に閉じ込められた気分にはならなくなります。肉体をもった人間は思っただけではどこへも行けませんが、スピリットにはそれが出来るのです。あなたは私達には姿が見えません。あなたはスピリットとなっており、一時的に地上の人間の身体を使っているのです。それが私の妻というわけです」
スピリット「前にもそんなことををおっしゃったわね」
博士「どこか変だとは思いませんか」
バートン夫人「マギーマッキンをご存知でしょう?」(もう一人の憑依霊で、バートン夫人は霊視で確認していた)
スピリット「知ってます。メアリーも知ってます」
博士「肉体から出た時はおいくつでしたか。昔のことを何か思い出しませんか」
スピリット「馬に乗って出かけていた時に、いきなりその馬が走り出して、それから何もかも真っ暗になりました。それからのことはあまり覚えていません」
博士「今年は何年だかお分かりですか」
スピリット「そんな質問に答える必要はないでしょう。一体あなたは弁護士?それとも裁判官?一体何なの?」
博士「私は『火夫(ファイアマン)』です。今年が1920年であることをご存知ですか」
スピリット「そんなこと、どうでもいいことです(指を鳴らす)。私の知ったことではありません」
博士「さぞ苦しみから逃れたいだろうと思っていたのですがね」
スピリット「私はただ、あの牢から出たいだけだったのです。今はとても楽で、ここしばらく味わったことがないほどです」
バートン夫人「牢から出して頂いたことを、先生に感謝しなくてはいけませんよ」
スピリット「冗談じゃありません。私に火を放射した罪で逮捕されるべきですよ。まるで頭が狂いそうでしたよ」
博士「お知り合いの方が見えているのが分かりませんか」
スピリット「二人のインディアンの姿が見えます。一人は大柄な方で、もう一人は少女です。カールした髪と青い目をした婦人も見えています」
博士「『シルバー・スター』と呼んでみてください。少女の名前ですよ」(ウィックランド夫人の背後霊の一人)
スピリット「頷いています」
博士「その方達が、霊の世界での向上に力になってくれますよ」
スピリット「私は自信があります。きっと天国に行けます。教会へも通ったし、真面目な女でしたからね」
博士「今見える人達もみんな、あなたと同じスピリットなのです。私達には見えていないのです」
スピリット「でも、同じようにそこにいますよ。その人について行けば、素敵な家に案内してくださるんですって。嬉しいわ!しばらく家をもっていないんですもの。もうあの火責めには遭わないのでしょうね。あの赤い髪の婦人のところへは行きませんからね。神様に感謝します」
博士「さあ、もう自由なんだと心に思って、その方達と一緒に行きなさい」
スピリット「分かりました。行きます。さようなら」
バートン夫人が初めて我々のところへ来た時は、どんな仕事も出来なかったが、今では大きな商店の事務員をしている。
スピリット=マギー・ウィルキンソン
患者=バートン夫人
博士「ようこそ。どなたでしょうか」(霊媒の手をとりながら)
スピリット「手を握らないで!触らないでください!」
博士「名前は何とおっしゃいますか」
スピリット「マギーです」
博士「マギー・何とおっしゃいますか」
スピリット「マギー・ウィルキンソン」
博士「ここがロサンゼルスであることをご存知でしょうか。どちらからおいでになりましたか」
スピリット「テキサスのダラスです」
博士「ロサンゼルスまでどうやって来られたのですか」
スピリット「ここはロサンゼルスではりあません。テキサスです。ずっと蹴り通しでした」
博士「なぜ蹴るのです?」
スピリット「牢に入れられてるからです(バートン夫人のオーラのこと)。何人か一緒にいたけど、みんないなくなっちゃった。あたしだけ置いて、みんな出て行っちゃった。ずるいわ!」
博士「みんなが行ってるところへ、あなたも行ってみたいですか」
スピリット「別に・・・他の人のことなんか、どうでもいいわ。何もかもみんなで取りっこして、あたしはいつも除け者にされてたんだから」
博士「今の状態が少し変だとは思いませんか。死んでからどのくらいになりますか」
スピリット「死んでからですって!一体あの婦人(バートン夫人)はなぜ、このあたしにつきまとうのですか。あの人はいつも火責めに遭ってるのよ。酷い代物なの。何かの上に乗っかって頭の上に何かを置くと、火の雨が降るの!」(バートン夫人が静電気装置の横の台の上に乗ると、電気ショックの効果を増す為に頭から毛布を被せられた)
博士「こんなところにいて、いいのですか」
スピリット「どこへ行けばいいのですか」
博士「霊界です」
スピリット「何です、それは?」
博士「身体から脱け出た人が行くところです。ただし、自分の身の上のことをよく理解した人に限ってのことですけどね。あなたも何か変わったことが身の上に起きてることに気づきませんでしたか」
スピリット「私は、例の毛布を頭から被せられて火責めに遭うことさえ止めて頂けたら、それでいいのです。まるでバラバラに叩きのめされたみたいな気分になります。あんな仕打ちに耐えられる人がこの世にいるのですかね」
博士「あれは、あなたを追い出すためにやったことです。今は楽な気分じゃありませんか。あの、『発砲』を受けてから後は何をなさっていたのですか」
スピリット「追い出されて良かったですよ。これまでよりは気分がいいですから」
博士「あなたが今使っておられる身体は、私の妻のものであることはお分かりですか」
スピリット「冗談じゃないわ!」
博士「今使っておられるのは私の妻の身体なのです」
スピリット「あなたの奥さんの?バカバカしい!」
博士「着ていらっしゃる衣服に見覚えがありますか」
スピリット「そんなことはどうでもいいことです」
博士「どこで手に入れられました?」
スピリット「泥棒扱いしないでください!警察を呼びますよ。警察署を見つけ次第、逮捕状を出してもらいますからね」
博士「では、マギー、あなたの髪は何色ですか」
スピリット「ブラウンーダークブラウンです」
博士「(霊媒の髪に触りながら)これはブラウンじゃありませんね。この衣服も全部私の妻のものですよ」
スピリット「私のものであろうがなかろうが、私は構いません。私から頼んだわけではありませんから」
博士「死んでからどのくらいになりますか」
スピリット「私は死んではおりません。あの話をするかと思うと、この話になる・・・」
博士「私がお聞きしているのは、あなたが身体を失ったのはいつだったかということです」
スピリット「私はまだ身体はなくしておりません。墓に埋められてはいません」
博士「病気になって、そのうち急に良くなったというようなことはありませんでしたか」
スピリット「病気が酷くなり、そのうち急に楽になったと思ったら、牢に入れられていました。私はウロウロしていましたが、そのうちある女性が私を何かと邪魔立てするようになりました。私の他にも何人かいましたが、例の火責めにあって、みんな出て行ってしまいました」
博士「ロサンゼルスに来られたのはいつですか」
スピリット「ここはロサンゼルスではありません。テキサスのダラスです。もしもここがロサンゼルスだとしたら、私は一体どうやって来たのですか」
博士「赤い髪をした女性と一緒に来られたに相違ありません」(バートン夫人がすぐ側に腰掛けている)
スピリット「彼女には私をここへ連れてくる権利はありません」
博士「彼女もテキサスから来たのです」
スピリット「他の人達はどうなったのですか」
博士「自分の身の上についての理解がいって、無事、霊界へ旅立たれました。あなたもそこへ行くべきなのです。なぜこちらの女性につきまとうのですか」
スピリット「つきまとう?とんでもない!私はずっと牢の中にいるのです。身動きが取れないのです。出ようとして、色々やってみたのです。私を見かけた人達は、私を救い出してやるなどと言っていながら、結局誰も出してくれなかった。私があんまり騒ぐものだから、私から逃げ出したのよ」
博士「多分、その方達が、あなたをここへお連れしたのですよ」
スピリット「私に見えているのは、ここに腰掛けている人達だけです」
バートン夫人「あなたは私についてここへ来たのですね?私を苦しめてどうしようというのです?」
スピリット「私はあなたとは何の関係もございません。あれ!あなただわ、この私を牢に閉じ込めたのは」
バートン夫人「あなたと一緒だった女友達は何という名前でしたかね(同じくバートン夫人を悩ませていた別の霊のこと)?」
スピリット「どこでの話ですか。テキサスでのことですか」
バートン夫人「そうです」
スピリット「あの人はメアリーといいました。もう一人、キャリーというのがいましたけど・・・・」
バートン夫人「キャリーも一緒に来てますか」
スピリット「勿論よ。ねえ、あなたはなぜこの私を閉じ込めといたのよ?なぜ出してくれなかったのよ?」
バートン夫人「私は出て行けと言い続けたじゃないですか」
スピリット「それは知ってたわ。だけど、あなたはドアを開けてくれなかったじゃないですか」
博士「自分の心の中で、この人の身体から離れるのだと思い込めば、それで離れられたのですよ」
スピリット「思い込んで離れるなんて、私には出来っこありません」
博士「スピリットの世界のことが分かってくると、出来るようになるのです。出来ないのはその原理を知らないからです」
スピリット「(バートン夫人に向かって)ねえ、あなたは何のために私をあなたの側から離れられないようにしたのよ?」
博士「あなたは『招かれざる客』だったのですよ」
バートン夫人「あなたがいなくなってくれて、さっぱりしているところですよ」
スピリット「私の方こそよ。あんな牢から出られて、せいせいしてるわ。なぜおとなしく出してくれなかったのよ?」さんざんノックしたのに、出してくれなかったじゃない。(博士に向かって)あなたがあの火の贈り物をくださったお陰で出られたのね。有り難く思ってるわ」
博士「この前の治療の後、出たのですね?」
スピリット「あれを『治療』とおっしゃるのね」
博士「これで夫人の身体から離れられたのなら、立派な治療ですよ」
スピリット「あれで私がどれほど苦しい思いをしたか、ご存知ないのね。特に、あの針で突き刺すやつーあれをやったのは、あなただったのね?大嫌いよ、あんたなんか!」
博士「あなたを出すために、あの夫人にあのような手荒い治療を施さなければならなかったのです」
スピリット「あなたは、あの悪魔の機械を小さな神様みたいに思ってるんだわ。あなたは私にどこかへ行ってほしいと言ったわね。どこでしたか」
博士「スピリットの世界です」
スピリット「それはどこにあるのです?」
博士「肉体を捨てた者が行くところです。ただし、それには理解が必要です。あなたは肉体はなくなりましたが、まだ理解が出来ていらっしゃらない。それであのご婦人に迷惑をかけてきたのです」
バートン夫人「あなたや他の人達に出て頂いた後は、ドアをきっちり閉めて、あなた達の誰一人として、二度と入れないようにしますからね」
博士「自由になったつもりになれば、それで牢に閉じ込められた気分にはならなくなります。肉体をもった人間は思っただけではどこへも行けませんが、スピリットにはそれが出来るのです。あなたは私達には姿が見えません。あなたはスピリットとなっており、一時的に地上の人間の身体を使っているのです。それが私の妻というわけです」
スピリット「前にもそんなことををおっしゃったわね」
博士「どこか変だとは思いませんか」
バートン夫人「マギーマッキンをご存知でしょう?」(もう一人の憑依霊で、バートン夫人は霊視で確認していた)
スピリット「知ってます。メアリーも知ってます」
博士「肉体から出た時はおいくつでしたか。昔のことを何か思い出しませんか」
スピリット「馬に乗って出かけていた時に、いきなりその馬が走り出して、それから何もかも真っ暗になりました。それからのことはあまり覚えていません」
博士「今年は何年だかお分かりですか」
スピリット「そんな質問に答える必要はないでしょう。一体あなたは弁護士?それとも裁判官?一体何なの?」
博士「私は『火夫(ファイアマン)』です。今年が1920年であることをご存知ですか」
スピリット「そんなこと、どうでもいいことです(指を鳴らす)。私の知ったことではありません」
博士「さぞ苦しみから逃れたいだろうと思っていたのですがね」
スピリット「私はただ、あの牢から出たいだけだったのです。今はとても楽で、ここしばらく味わったことがないほどです」
バートン夫人「牢から出して頂いたことを、先生に感謝しなくてはいけませんよ」
スピリット「冗談じゃありません。私に火を放射した罪で逮捕されるべきですよ。まるで頭が狂いそうでしたよ」
博士「お知り合いの方が見えているのが分かりませんか」
スピリット「二人のインディアンの姿が見えます。一人は大柄な方で、もう一人は少女です。カールした髪と青い目をした婦人も見えています」
博士「『シルバー・スター』と呼んでみてください。少女の名前ですよ」(ウィックランド夫人の背後霊の一人)
スピリット「頷いています」
博士「その方達が、霊の世界での向上に力になってくれますよ」
スピリット「私は自信があります。きっと天国に行けます。教会へも通ったし、真面目な女でしたからね」
博士「今見える人達もみんな、あなたと同じスピリットなのです。私達には見えていないのです」
スピリット「でも、同じようにそこにいますよ。その人について行けば、素敵な家に案内してくださるんですって。嬉しいわ!しばらく家をもっていないんですもの。もうあの火責めには遭わないのでしょうね。あの赤い髪の婦人のところへは行きませんからね。神様に感謝します」
博士「さあ、もう自由なんだと心に思って、その方達と一緒に行きなさい」
スピリット「分かりました。行きます。さようなら」
バートン夫人が初めて我々のところへ来た時は、どんな仕事も出来なかったが、今では大きな商店の事務員をしている。