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自殺してはならない理由


 《印刷された文字には絶大な影響力があります。話し言葉は忘れ去られるということがあります。人間の脳という小さなスクリーンにゆらめく映像は至って儚いものて、それに付随して生まれる言葉には不滅の印象を残す程の威力はありません。その点、活字には永続性があります。いつでも参照することが出来ます。目に見えますし、その意味を繰り返し吟味することも出来ます。又人から人へと伝えられ、海をも越えて、悲運をかこつ孤独な人の下に届けられることもあります。幸いにして私は、これまでに手にすることの出来た叡智をこうして皆さんにお聞かせしておりますが、それが速記者の仲介を経て次々と活字になっております。そのお蔭で各地で魂が目を覚まし、種子が実を結んでおります》
 シルバーバーチ

 Brother John のペンネームで二十年以上(1969年現在)に亘ってサイキックニューズ紙上で心霊知識の解説と人生相談を担当して来たコラムニストが初めてシルバーバーチ交霊会に招かれた。冒頭の引用句はそのジョンが〝なぜあなたは説教者としての仕事を選び、又その霊媒としてバーバネルを選んだのですか〟と質したのに対して答えたものである。
 ブラザー・ジョンが二十年あまり一週も欠かすことなく執筆し続けた記事は、延べにして一千回を超える。その中には読者から寄せられた質問に対する情愛溢れる回答も含まれている。例えば1967年の一年間に寄せられた手紙は1400通にのぼり、人生相談的なものからコラムの内容についての質問まであるが、彼はその全てに、丁寧に回答している。
 その真摯にして謙虚な態度はシルバーバーチと同じで、死後の存続の事実と、それが有する重大な意義について十年一日の如く、倦むことなく語り続けている。その彼が媒体としているのも又、活字である。(訳者注-その間の膨大な記事を纏め上げた本が1977年に Truth Has Label 〝真理にラベルはない〟の題名で出版されている。その〝まえがき〟の中でブラザー・ジョンは「サイキックニューズ紙上に毎週連載して来た記事を一冊の本に纏めてはどうかという勧めを聞くようになって久しいが、私はそれをずっと遠慮して来た。この度遂に説得されて出版の運びとなったが、やはり戸惑いを禁じ得ない」と謙虚に述べている)
 これまでの霊言集の編者の内の二人が、冷ややかな活字ではシルバーバーチの温かい人間味と愛を伝えることは到底出来ないと述べている。確かにその通りである。交霊会に出席する光栄に浴した人は例外なく、顕と幽との二つの世界の言うに言われぬ交わりを体験して感動するものである。
 しかし、私自身はそう度々出席したわけではないが、そうした人間味とか愛のみがシルバーバーチという一個の霊の個性の最も重要な要素だとは思えないし、その使命の主たる目的でもないと考えている。私自身が出席した交霊会の霊言が活字になったのを読んでも、私は改めて感動を覚える。要するにシルバーバーチの述べていることそのものが魂に訴えるものをもっているということである。
 この度本書を編纂するに当たってこれまでの霊言記録に目を通してみて私は、改めてシルバーバーチという霊の述べた言葉の威力-一つのフレーズ(句)、一つのセンテンス(文)を何の準備もなしに当意即妙に述べる、その〝言葉の錬金術〟に驚嘆させられた。
 これまでに出版された霊言集は全て読んでいるし、又サイキックニューズ社での仕事の一つが月刊誌ツーワールズに連載されている霊言の校正もある。その私が本書を編纂しながら一度も退屈さを感じなかった。シルバーバーチは自分のことを〝古いメッセージを携えた同じ古い霊です〟と言うが、その助言、その内側に秘めた真理と率直さは常に生き生きとして新鮮である。
 かの手厳しい評論家のハンネン・スワッハーでさえ十五年前にこう書いている-〝私はシルバーバーチの教え・指導・助言に毎週一回一時間あまりに亘って耳を傾けることをずっと続けているが、地上のいかなる人物よりも敬愛し尊敬するようになった〟と。
 今では録音技術の進歩のお蔭でカセットテープにまで収められて、シルバーバーチの生の声が世界各国で聞けるようになった。が、シルバーバーチが自らに課した使命のエッセンスは、いつも哀れみを込めて語り続ける言葉が活字となって広く読まれることにあると私は確信している。その思想の真価は、少なくともこの地上においては直々に会うことは望めない世界各地の人々に及ぼす影響力によって計られるのである。
 自ら述べているように、シルバーバーチにとっては、基本的な霊的真理を一人でも多くの人に伝える為の霊媒の発見が第一の仕事であった。そして、最終的にモーリス・バーバネルに白羽の矢が立てられたことは成る程と思わせる。なぜならバーバネルは週刊と月刊の二つの心霊ジャーナルの主筆であり、シルバーバーチの霊訓を遠く広く流布する手段としてうってつけの人物だったからである。
 さて、初めての交霊会の印象をブラザー・ジョンは次のように書いている。
 〝永い年月の中で、このシルバーバーチ交霊会での体験程素晴らしいものはなかった。シルバーバーチが語ってくださった言葉に私は思わず涙を流した。シルバーバーチという霊に何か強烈な親近感を覚え、それでつい、ホロッとしてしまった。私にとって忘れ難い夜となった〟
その夜のシルバーバーチの霊言の中から幾つかを抜粋して紹介しておこう。

 「今夜はようこそお出でになりました。真っ先にご注意申し上げておきますが、私についていささか誇張された宣伝がなされており、私がまるで全ての叡智を具えているかのように書かれておりますが、とんでもないことです。私もあなたと同じ、至って人間的な存在であり、弱点もあれば欠点もあり、誤りも犯します。ただ私は、霊的真理について少しばかり知識の蓄えがあり、それを、受け入れる用意の出来た人達にお分けしたいと思っているところです。
 それとても私自身の所有物ではありません。私はただの代弁者に過ぎません。私はその仕事を要請されたのです。仕事が完了して地上から引き上げる時期が来るまでは続けることになりましょう。が、今はまだその時期ではありません。まだもう少し時間がかかります。これまで多くのことが成就されてまいりましたが、まだまだ為さねばならないことがあります。
 霊力は条件さえ整えば、つまり一欠片の心配の念もなく、知識を基盤とした信仰と体験から生まれた確信とがあれば、時として驚異的なことをやってのけます。
 あなたが今の職責を果たしていらっしゃるのも霊力のお蔭です。それは私から申し上げるまでもないこととは思いますが、ただ、あなたはその貢献度、奉仕度を過小評価していらっしゃる。それはいけません。読者の為に施しておられる援助の大きさはあなた自身にはお分かりになりません。多くの魂に感銘を与えていらっしゃいます。そしてそれは、地上で為しうる最も大切な仕事の一つなのです。
 地上に肉体を携えて生まれて来るそもそもの目的は、魂が真の自我を見出すこと、言い換えれば、宿された神性に点火し、燃え上がらせ、輝かしい炎とすることです。残念ながら必ずしもそういう具合に行かないのが実情です。迷信と無知の暗闇、疑念と恐怖と困惑の泥沼の中で過ごす人が多過ぎるのです。そうした中で一人でも真理に目覚めさせてあげることが出来れば、それだけであなたの存在価値があったことになります。たった一人でいいのです。それで十分なのです。それをあなたは既に数え切れない程の人に施しておられます。
 その程度はどうあれ、神の使徒として働ける我々は光栄この上ないことです。これはキリスト教の教会には最早望めないことです。心の奥ではもう信じていない古い教えを決まり文句として口にするだけとなっております。とっくの昔に意味を失ってしまった紋切り型の語句、使い古した慣習と儀式を繰り返すのみです。
 そうした教会、大聖堂、寺院などが陳腐で空しい死物と化してしまったのは、そこに霊の力が働かなくなったからです。生命を与えているのは霊なのです、なのに、そうした建造物の中で行われていることは、霊力、キリスト教で言う聖霊を拒絶することばかりなのです。そこで、我々のように、風変わりな式服も纏わず、祭壇もしつらえず、ただ霊力の流れる通路となり、この世で誰一人として無視されたり見落とされたりすることのない神の摂理の存在を教えることだけを心掛ける者を利用せざるを得なくなったのです。
 あなたの場合も、人生が暗く荒涼として、いずこへ向かうべきかも分からず、あたかも絶望の壁に四方を仕切られた思いをさせられていた時に、啓示を受けられました。これ以上申し上げる必要はないでしょう。愛、情愛、友情、同情、慈悲、哀れみ、寛容心、こうしたものは不滅の霊性です。愛に死はないのです。死は生命に対しても愛に対しても無力なのです。今申し上げた霊性も皆元を質せば愛の諸相なのです。私はけっしてナゾナゾを申し上げているのではありません」

 ここでシルバーバーチはその日の交霊会に、かつてブラザー・ジョンと一緒に仕事をしたこともある偉大な心霊治療家で、今はブラザー・ジョンの背後霊の一人として働いているフレッド・ジョーンズが来ていることを述べてから、更にこう続けた。
 「今この会場に訪れているあなたの霊団は実に素晴らしい方ばかりです。あなたをこの道に導いたのはこの方達であり、今もずっと指導しておられます。フレッド・ジョーンズは偉大な霊です。彼にとって物的身体が小さ過ぎる程霊性が大きくなった為にこちらへ来られましたが、地上に立派な足跡を残されました。この道の先駆者としての仕事をしたのです。その努力は無駄ではありませんでした。
 彼が地上で仕事をしていた頃は、心霊治療を施す者はほんの一握りに過ぎませんでした。が、今日では数え切れない程になっております。身体と精神と魂を病んだ人が至る所にいる病める地上では、それだけの数が必要なのです。残念ながら物質中心主義から生まれる病は感染力が強く、直ぐに蔓延する一種の伝染病です。しかし、光が闇を駆逐する如く、心霊治療は正しい生き方を教えることによってその病弊を駆逐していくことでしょう。
 健康を増進するのは医学でも医薬でも劇薬でもありません。不自然なものを体内に注ぎ込むことによって健康にすることは出来ません。それは言わば医学的愚行です。正しい生き方さえしていれば、つまり思念に邪なところがなく、霊と精神と身体とが調和していれば健康でいられるのです。日常生活のストレスと心労、或いは利己心や邪心や強欲が生み出す不自然な緊張-こうしたものは物的存在の全ての息の根を止める毒素です。
 もしも私の話をお聞きになられて今後も頑張ろうという気持になってくだされば、本日ここにお出でになられた甲斐があったことになります。思うに任せぬことがあることはよく存じております。が、霊的な褒賞を求める者には楽な道はありません。
 大霊は完全です。摂理は完全です。必ず摂理通りに働きます。が、その枠の中に自由意志の要素が存在し、その中に、自分の意志で貢献するチャンスが与えられているわけです。全世界を破滅に追いやる力はありません。大混乱を巻き起こす位なら出来るでしょう。が、人間のすることには自ずと限界があります。
 神の計画が狂うということは絶対にありません。もし狂えば、ないしは狂うことも有り得るとしたら、神は神でなくなります。完全が間違いを犯す筈がないのです。もし犯せば完全が完全でなくなります。自然法則という形での神の定めは無窮の過去から常に存在し、一度たりともその定め通りに働かなかったことはありません。
 地球が一瞬でも回転を止めたことがあるでしょうか。汐が満ちて来なかった日が一日でもあったでしょうか。昼の後には必ず夜が来ていないでしょうか。蒔いた種は正直にその果実を実らせていないでしょうか。
 狂いません。神の計画は絶対に狂いません。本来は人間もその定められた計画に沿って進まねばならないのです。しかし人間は愚かさと無知と利己心から誤まった道へ外れる可能性もあるのです。美しい花を咲かせるべき庭園に雑草を生い茂らせることも有り得るということです。正しい生き方とは何であるかを、自ら学んで行かねばなりません。そうすることが人間としての神への貢献となるのです。潜在的には無限の霊的属性を秘めておりますが、それを駆使出来るようになるには、それなりの努力をしなければならないということです」

 交霊会が終わった後ブラザー・ジョンは、何よりもシルバーバーチの素朴さと謙虚さに一番心を打たれたと語り、こう続けた。
 「その素朴さとは二つの世界を一体ならしめる素朴さ-偉大なる魂が素朴にして深遠な真理を説く為に地上のもう一つの魂の身体と精神とを支配する為の素朴さである。
 それに謙虚さ-シルバーバーチの言葉の中にはこの偉大な特質の表現と思えるものが何度も出て来たが、私との対話の中で特に心に沁みる思いがした場面が三回あった。それは私が思わずお礼の言葉を口にした時で、その度にシルバーバーチは穏やかに、そして優しく〝私への礼はお止めください。私が感謝を頂戴するわけにはまいりませんから〟と述べるのだった」
 《こうした人材の操作、つまり適時に適材を適所に活用することは、入り組んだ複雑な協力態勢を必要とする大変な業です。今や神の教えが多くの人々に届けられるようになりました。私の教えではありません。私はそれを中継してお届けしているだけです。同志の協力を得て、霊光と霊力を幾らかでも悩める地上世界へお届けすることが出来ております。いつの日か皆さんが私の下へ来られて、書物なり心霊誌に書かれていたのを読んだことが救いになったと告げてくだされば、私は、こうした協調的努力が無駄でなかったことを知ることになります》
 シルバーバーチ