SNU(英国スピリチュアリスト同盟)のゴードン・ヒギンソン氏は、これまでも何度かこのサークルに招待されているが、1971年にベテランの霊言霊媒レスリー・フリント氏(注)を伴って出席した。

(注 フリント氏は直接談話を得意とした霊媒で、入神もせず、ただ腰掛けているだけで、その部屋のあちこちからスピリットの声がする。学者による厳しいテスト、例えば口にガムテープを貼られるなどされたが、それにお構いなく、入れ替わり立ち替わりスピリットの声がした。著書には自伝的内容のVoices in the Darkがある。現在は老齢のため霊媒活動はしていない-訳者)

まずシルバーバーチはフリント氏に声を掛け、ヒギンソン氏には「あなたにも関係のある話なので、よく聞いてほしい」と言ってから次のように述べた。
 「霊媒という仕事が、列席者の目に映っている外見からはおよそ想像のつかない厳しい道を歩まされ、大きな犠牲を強いられるものであることは、私が他の誰よりもよく知っております。
 あなたの背後には素晴らしい霊団が控えていることは、ご存知と思います。叡智に富む高級なスピリットばかりです。ロンドン訛りの若者(注)がいますが、それをもって教養が低いと思ってはなりません。あの若者は霊界側の霊媒でして、高級なスピリットの意志を取り次いでいるのです。最初に聞こえる独特の言い回しは、会場の雰囲気を和らげて、最高のコミュニケーションを得る上で必要なバイブレーションを生み出すために、わざと行っているのです。多分あなたはご存知だと思いますが・・・」
(注 ミッキーという呼び名の進行役のことで、[最初に聞こえる独特の言い回し]がどういうものかは著書Voices in the Darkにも出ていない-訳者)

フリント-勿論知っております。

「あのシーンに出て来るスピリットは、言ってみれば梯子の下の段に相当します。一番下の段に位置する地上の霊媒、つまりあなたと、一番上の段に位置する中心的指導霊との繋ぎ役、いわば霊界の霊媒役(注)を務めているのです」

(注 シルバーバーチを霊視したマルセル・ポンサンによる肖像画は北米インディアンに描かれていて、表向きはそれがシルバーバーチということになっている。が、これは霊界の霊媒であって、シルバーバーチその人ではない。
 シルバーバーチと名乗る中心的指導霊については、三千年前に地上で生活したことがあるということ以外は、姿はおろか、地上時代の姓名も国籍も分かっていない。六十年に及んだ交霊会で何度となくそれを訊ねられたが、[そんなことはどうでもいいことです。大切なのは私が述べている教えです]と言って、ついに明かさずに終った。
 この事実、つまり高級霊ほど地上時代のことを明かそうとしないということの重大性がどこまで理解できるかが、その人の霊的理解力の尺度であると私は見ている-訳者)

引き続きシルバーバーチが「こんな事を申し上げるのは、これまでにあなたが辿られた道がどんなに辛く、石ころだらけで、およそ楽な暮らしとはいえないものだったとしても-」と言いかけると、フリント氏が「火打石(フリント)のようでした。ただの石ころよりも厳しかったです」と、シャレを引っ掛けて言う。

「でも、どうしようもない窮地に陥ったことはないはずです。生きる為に必要な最低限のものは、最後の最後まで忍んでいれば必ず用意されてきております。他人の為に尽くす行為をする人は他人から尽くされる、というのが霊的摂理の一環なのです。そして、他人の為になる行為が大霊の目に止まらないことは絶対にありません。
 しかし同時に、アクセルとブレーキの操作も絶え間なく行われていることも知らないといけません。促進と抑制とでうまく調整しながら、あなたが使命と心得てこの世に生まれて来た道から外れることのないようにするのです。振り返ってごらんになれば、なんだかんだと言いながらも、何とか切り抜けてきておられることがお分かりでしょう。あなたの生活レベルは、地上の尺度で見れば決して裕福とはいえないかも知れませんが、霊的視野から見れば、大変恵まれていらっしゃいます。
 悲哀の極にある人に慰めを与えてあげる仕事は、誰にでも出来るというものではありません。キリスト教会にも為し得ない、何ものかが必要なのです。キリスト教信者は[自負]しますが、ただの信仰というものは頼りないものでして、何事もない時は間に合うかも知れませんが、愛する者を奪い去られる体験をした人には、何の役にも立ちません。
 霊の力があなたを通して働くのです。その結果として悲哀の涙が、霊的知識がもたらす穏やかな確信と置き換えられます。かくして、この地上世界に、霊的悟りを手にした人が一人増えることになります。暗黒と悲哀の中にいるかに思える体験も、実は神の意図があるからこそであることを悟った人が一人増えるのです。
あなたも困難の最中にあって、よく[なぜこんな体験をさせられるのだろうか。これにも意味があるのだろうか]と自問されることと思いますが、ちゃんと意味があるのです。そして、その困難に耐えて行く上で支えになるのが、確固とした知識が生み出す霊力なのです」

フリント-はい、よく分かります。
「千々に乱れた心を癒してあげることができたら、愛する者を失って片腕をもぎ取られたような思いをしている人に慰めを与えてあげることができたら、病身の人に健康を取り戻させてあげることができたら、それがたった一人であっても、その行為の価値は絶大です。そういう行為こそ、こちらの最高級界に淵源を発する地球浄化の大事業計画に目論まれている目的の一環なのです。
 その界層においては、進化せる高級霊達が、一人でも多くの地上の人間に霊的存在としての本来の生き方を悟らせ、美しさと荘厳さと崇高さを身につけさせる上での不可欠の知識を授ける計画の推進に当たっているのです。
 あなたは、授けられた使命を立派に果たしておられます。このことを感謝しないといけません」