「真理に対する反感や敵意は、無知が産み出す産物です。分別心がないのです。恐怖心から出ていることもあります。いわゆる洗脳の結果である場合もあります。精神が汚染されていて、何の抵抗力もなかった幼い時期に植えつけられた型にはまった教えから離れて理性を働かせることができなくなっているのです。
 そういう人達のことを気に毒に思ってあげないといけません。光の中で生きられるものを、暗闇の中で生き続けている人がこの地上に無数にいるという現実は、実に悲しむべきことです。なぜ人間は知識よりも無知を好み、真理よりも迷信を好むのでしょうか。
 それは、その人自身にとって気の毒なことなのです。地上に存在を得たそもそもの目的が、霊的覚醒を得ることであり、その結果として、折角の人生を無駄に終らせることなく、いずれは必ず訪れる死の後に控える、永遠の生命の次のページに備えないといけないのです。
 もし反抗に遭った時は、あなたが手にされた珠玉の真理をその人はまだ知らずにいることを気の毒に思ってあげて、その人の力になる言葉を投げかけてあげられるように、大霊に祈ることです。少しでも真理に近付かせてあげることが出来れば、それだけで、その人との出会いが無駄でなかったことになるのです。不幸にして何の役にも立たなかった時は、その人がまだ霊的真理を受け入れる用意ができていなかったことを意味します。受け入れる用意ができていない魂には、為すすべがありません。
 私が同志の方々にいつも申し上げていることは、自分に可能な範囲で最善を尽くすということ、これ以上のことは人間には求められていないということです。あなた方地上の人間は、不完全さを沢山携えた存在であり、その欠点を少しずつ改めていかねばなりません。が、それは長い時間を必要とする仕事であり、たった一回の地上生活で成就できるものではありません。
 その点あなたは大変恵まれた方です。血縁によって繋がったスピリットだけでなく、地上的な縁はまったくないスピリットの愛によっても守られております。血縁よりもっと永続性のある縁によって結ばれているスピリットです。そうした広範囲のスピリットによる援助があるからこそ、必要に応じたサービスを施すことが出来るのです。
 そして、もう一つ大切なことをお教えしましょうか。そうした霊界の援助者は、インディアンであろうと、中国人であろうと、ニグロであろうと、本当の自我のすべてではなく、進化せる存在のごく一部を顕現させているだけだということです」

「確かに、そうだろうと思っておりました」と夫婦が相槌を打った。

「全てに犠牲が伴っているのです。背後霊にも割り当てられた仕事があり、それを成就する為にはあなた方の協力が必要なのです。本日このサークルに来られて、今後の仕事への意欲を刺激されたとしたら、これも無駄でなかったことになります」

-無駄だなんて、とんでもありません。私達も今年で揃って七十歳になりました。が、もう年だといった気持から生き方を変えることは、とても考えられません。

「これまで全てのことが上手くいったのは、お二人の生き方が霊の力の導きを最優先してこられたからです。霊の力は決して見捨てません。決して疎かにはしません。常に導き、守り、支援し、お二人の霊的能力を最高度に発散させてくれるでしょう。
 ですから、うんざりなさってはいけません。お二人のチャーチを訪れるのは、肉体を携えた霊的存在です。その霊的身体は目に見えないかも知れません。ましてや魂(自我の本体)は見えません。大切なのは肉体ではありません。それはそれなりに役目があります。が、魂と霊的身体の成長こそ大切なのです。その成長にあなたが何らかの寄与をすることができれば、それは他の誰にもできないことをなさったことにほかなりません。ですから、堂々と胸を張って、大いなる愛と力に守られていることを常に自覚して仕事に励んでください。よろしいでしょうか?」

-大変勉強になりました。お礼を申し上げたいところですが、あなたは謝辞をお受けにならないことを存じておりますので、本日のことは大霊に感謝申し上げることに致しましょう。

「私が語った教えをお二人が有意義に活用してくださっていることは、よく存じております。が、私自身の教えではありません。私はただのマウスピースに過ぎません。英語をマスターして、上層界から授かった教えをあなた方のお役に立つ形で表現することができることを光栄に思っているところです。
 私のお蔭でよい仕事が出来ていると仰ってくださる方にお会いすると、私の心は喜びに溢れます。ですが、そのことで感謝の言葉をお述べになりたいのであれば、むしろ私の言葉を記録してくれている速記者(ムーア夫人)に向かって述べるべきでしょう。大変な仕事です。ですが、彼女は喜んで召使であることに甘んじております」

「本当に有り難いことです」とシンプソン夫人。

「彼女と旦那さんについての秘密をお教えしましょうか。実は二人はこの私が引き合わせたのです。この仕事の為にです。その意味では私に全責任があるのです。ですが、これまでのところ、二人はうまく行っているようです。私達霊団の者はこうしたカップルがいることを誇りに思っております。特殊な指導を受けており、それはこれからもまだ続きます。
 ということは、この交霊会もまだまだ続くということです。そういう計画になっているのです。どの政党が政権を握ろうと、明日のことを思い煩ってはなりません。将来を決めるのは霊的真理の意義をどこまで実生活に生かすかということです。霊的真理に従って生きるようにならない限り、本当の平和も調和も意義も、そして霊的・精神的・物的な恩恵も、手にすることはできません。そこに、我々が携わっているこの仕事の重大性があるのです」

これを聞いて、速記者の[旦那さん]である元牧師が質問する。

-今こうしている間にも、社会問題で悩み苦しんでいる人が大勢いるわけですが、スピリチュアリストとしてはどういう態度で臨むべきでしょうか。


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