シルバーバーチの交霊会には、シルバーバーチが一方的に語るだけの日もあれば、霊言集の読者から寄せられた質問に答えるだけの日もある。時にはシルバーバーチの方から[難しい質問]を所望することもある。
 本章に集めた質疑応答は霊言集の読者から寄せられた投書を中心にしたもので、霊媒のバーバネルには前もって見せないことになっているが、シルバーバーチの答えは、それが読み上げられた次の瞬間に出る。

-霊界の指導者は、地上の政治的組織にどの程度まで関与するのでしょうか。[人類はみな兄弟]の理念にそって指導するのでしょうか、それとも各国独自の計画にそって指導するのでしょうか。

「ご承知のとおり私達は、人間がとかく付けたがる肩書きには拘りません。政党というものにも関与しません。私達が関心を向けるのは、どうすれば人類にとって為になるかということです。
 私達の目に映る地上世界は、悪習と不正と既成の権力とが氾濫し、それが神の豊かな恩恵が自由に行き渡るのを妨げております。そこで私達は、その元凶である利己主義の勢力に立ち向かっているのです。永遠の宣戦を布告しているのです。
 その為の道具となる人であれば、いかなる党派の人であっても、いかなる宗派の人であっても、いかなる信仰をもった人であっても、時と場所を選ばずに働きかけて、改革なり、改善なり、改良なり、一語にして言えば[奉仕]の為に活用します」

-それには本人の自由意志はどの程度まで関わっているのでしょうか。

「自由意志の占める要素は極めて重大です。ただ、忘れてならないのは、自由意志という用語には、一つの矛盾が含まれていることです。いかなる意志でも、自らの力ではいかんともし難い環境条件、どうしても従わざるを得ないものによって支配されています。物的要素があり、国の法律があり、宇宙の法則があり、それに、各自の霊的進化の程度の問題があります。
 そうした条件を考慮しつつ私達は、人類の進歩に役立つことなら何にでも影響力を行使します。あなた方の自由意志に干渉することは許されませんが、人間生活において、より良い、そして理に適った判断をするよう指導することは出来ます。
 前にもお話したことがありますが、私達にとって最も辛い思いをさせられるのは、時として、苦境にある人を目の前にしながら、その苦境を乗り切ることがその人の魂の成長にとって、個性の開発にとって、また霊的強化にとって薬になるとの判断から、何の手出しもせずに傍観せざるを得ないことがあることです。
 各自に自由意志があります。が、それをいかに行使するかは、各自の精神的視野、霊的進化の程度、成長の度合いが関わってきます。それを、私達が許される範囲内でお手伝いするということです」

-各国の指導的立場にある人々の背後でも指導霊が働いているのでしょうか。

「全ての国にそれなりの計画が用意されております。全ての生命に計画があるからです。地上で国家的な仕事に邁進してきた人は、死の過程を経た後も、それをやめてしまうわけではありません。そんなことで愛国心が消えるものではありません。愛国心は純粋な愛の表現ですから、その人の力は、引き続きかつての母国の為に使用されます。
 更に向上すれば、国家的意識ないし国境的概念が消えて、全ては神の子という共通の霊的認識が芽生えてきます。しかし私共は、あらゆる形での愛を有効に活用します。少なくとも一個の国家を愛し、それに身を捧げんとする人間の方が、愛の意識が芽生えず、役に立つことを何一つしない人間よりはマシです」

-人類の福祉の促進の為に、霊界の化学者が地上の科学者にインスピレーションを送ることはあるのでしょうか。

「あえて断言しますが、地上世界にとっての恵み、発明・発見の類の殆ど全部が霊界から発しております。人間の精神は、霊界のより大きな精神が新たな恵みをもたらす為に使用する受け皿のようなものです。
 しかし、その分量にも限度があることを忘れないでください。残念ながら人間の霊的成長と理解力の不足の為に、折角のインスピレーションが悪用されるケースが多いのです。科学的技術が建設の為でなく破壊の為に使用され、人類にとっての恩恵でなくなっているのです」

-そちらからのインスピレーションの中には悪魔的発明もあるのでしょう?

「あります。霊界は善人ばかりの世界ではありません。極めて地上とよく似た自然な世界です。地上世界から性質の悪い人間を送り込むことを止めてくれない限り、私達はどうしようもありません。
 私達が地上の諸悪を無くそうとするのはその為です。こちらへ来た時にちゃんと備えが出来ているように、待ち受ける仕事に直ぐ対処出来るように、地上生活で個性をしっかりと築いておく必要性を説くのはその為です」