ハンネン・スワッファー・ホームサークルの招きでシルバーバーチの交霊会に出席した各界の著名人は、これまででも相当な数にのぼる。政治家・芸術家・舞台俳優・動物保護団体のメンバー等々、実に多彩である。本章はそうしたゲストとの問答を特集してみた。
 まずはロンドンのフリート街に立ち並ぶ新聞社の一つの主筆で、スピリチュアリズムにも興味をもつジャーナリストが、ある日の交霊会で、思念とインスピレーションの違いについて質問した。それについてシルバーバーチはこう答えた。
 「物質の世界に住んでおられるあなた方は、きわめて創造性の乏しい存在です。よくよくの例外を除いて、まず何一つ創造していないと言ってよろしい。が、基本的には、受信局であると同時に、発信局でもある存在です。
 まず外部から思念が送られてきます。それが一旦あなたという受信局で受け止められ、それに何かが付加されて発信され、それを別の人が受信するという具合です。あなたに届いた時の思念と、あなたから発信される時の思念とは、既に同じではありません。あなたの個性によって波動が高められることもあり低められることもあり、豊かになっていることもあり貧弱になっていることもあり、美しくなっていることもあり醜くなっていることもあり、新たに生命力を付加されていることもあり衰弱していることもあります。
 しかし、それとは全く別に、霊的な波動の調整によって、あなたと同じ波動を持つ霊からのインスピレーションを受けることも出来ます。人間が死んで私達の世界へ来ます。その時、精神と魂に宿されているものは何一つ失われることはありません。それは霊的にして永遠であり、霊的にして永遠なるものは絶対に消滅することはないからです。その魂と精神に宿された資質はその後も生長し、拡大し、発達し、成熟してまいります。
 そうした霊性を宿しているからこそ、こちらへ来て暫くすると、地上の人間の為に何か役立つことをしたいと思うようになるわけです。そして、やがて自分と同質の人間を見出します。或いは見出そうと努力し始めます。
 地上で詩人だった人は詩人を探すでしょう。音楽家だった人は音楽家を探すでしょう。そして、死後に身に付けたもの全てを惜しげもなく授けようとします。問題は波長の調整です。インスピレーションが一瞬の間の体験でしかないのは、私達の側が悪いのではありません。二つの世界の関係を支配している法則が完全に理解されれば-言い換えれば、地上の人間が霊界の自由な交信の障害となる偏見や迷信を取り除いてくれれば、無限の叡知が人間を通してふんだんに流れ込むことでしょう。
 要は、私達の側から発信するものを受信する道具がなければならないこと、そしてその道具がどこまで高い波動の通信を受取れるかという、性能の問題です。全てのインスピレーション、全ての叡知、全ての真理、全ての知識は、人間側の受信能力に掛かっております」

-それだけお聞きしてもまだ、なぜインスピレーションというものが一瞬の閃きで伝わるのかが理解出来ません。

「その瞬間、あなたの波長が整って、通信網に反応するからです」
と答えた後、そういう思念が霊界からのものか地上の人間からのものかの区別の仕方について質問されて、こう述べた。
「両者をはっきりと線引きすることはとても困難です。思念には、地上の人間の発したものが地上の他の人間によって受取られることもありますが、霊界からのものもあります。思念は常に循環しております。その内のあるものが同質の性格の人に引き寄せられます。これはひっきりなしに行われていることです。
 しかし、インスピレーションは霊界の者が、ある共通の性質、関心、或いは衝動を覚えて、自分が既に成就したものを地上の人間に伝えようとする、はっきりとした目的意識をもった行為です。地上の音楽や詩、小説、絵画の多くは、実質的には霊界で創作されたものです」

-天才をどう説明されますか。

「まず理解して頂きたいのは、大自然又は法則-どう呼ばれても構いませんが-は、決して真直ぐの一本の線のように向上するようには出来ていないことです。様々な変異・循環・螺旋を画きながら進化しています。全体からみれば、アメーバから霊に至る段階的進化がはっきりしておりますが、その中にあって、時たま一足跳びに進化するものと後退するものとが出てきます。先駆けと後戻りが常に存在します。天才はその先駆けに当たります。これから何十世紀或いは何百世紀か後には、地上の全人類が、程度の差こそあれ、今の天才と同じ段階で発達します。天才は言わば人類進化の前衛です」

-現在地上で行われている進化論と大分違うようですが・・・

「私の見解はどうしても地上の説とは違ってきます。皆さん方はどうしても物的観点から問題を考察せざるを得ません。物的世界に生活し、食糧だの衣服だの住居だのといった俗世の問題を抱えておられるからです。そうした日々の生活の本質そのものが、その身を置いている物的世界へ関心を向けさせるようになっているのです。日常の問題を永遠の視点から考えろと言われても、それは容易に出来ることではありません。が、私達から見れば、あなた方も同じ霊的存在なのです。いつ果てるともない進化の道を歩む巡礼者である点は同じです。
 今生活しておられるこの地上が永遠の住処でないことは明白です。これから先の永遠の道程を思えば、地上生活などはほんの一瞬の出来事でしかありません。私達の視界は焦点が広いのです。皆さんからお受けする質問も、霊的真理に照らしてお答えしております。その真理が人間生活においてどんな価値をもつか、どうやって他の同胞へ役立てるべきか、どんな役に立つかといった点を考慮しながらです。
 これまでの私は、私の説く真理が単純素朴なものであること、唯一の宗教は人の為に自分を役立てることであることを、皆さんもいい加減うんざりなさるのではないかと思う程、繰り返し述べてきました。私達の真理の捉え方が地上の常識と違う以上、そうせざるを得ないのです。
 大半の人間は、地上だけが人間の住む世界だと考えております。現在の生活が人間生活の全てであると思い込み、そこで物的なものを、いずれは残して死んで行かねばならないものなのに、せっせと蓄積しようとします。戦争・流血・悲劇・病気の数々も、元はといえば、人間が今この時点において立派に霊的存在であること、つまり人間は肉体のみの存在ではないという生命の神秘を知らない人が多すぎるからです。人間は肉体を通して自我を表現している霊魂なのです。それが、地上という物質の世界での生活を通じて魂を生長させ発達させて、死後に始まる本来の霊の世界における生活に備えているのです」

このシルバーバーチの言葉がきっかけとなって、サークルのメンバーの間で[進化]についての議論にひとしきり花が咲いた。それを聞いていたシルバーバーチは、やおら次のような見解を述べた。
「人間は全て、宇宙の大霊の一部、言い換えれば無限の創造活動の一翼を担っているということです。一人ひとりがその一分子として進化の法則の働きを決定付けるということです。霊としての真価を発揮していく階梯の一部を構成しているのです。霊は、自我意識が発現し始めた瞬間から存在し、その時点から霊的進化が始まったのです。身体的に見れば人類は、事実上、進化の頂点に達しました。が、霊的にはまだまだ先は延々と続きます」