ジャーナリストであり作家でもあるP・ミラー氏の二人のお子さん、ルースとポールは、ごく自然な環境の中で、両親から死後の存続を事実として教わっている。今はもう少年期に入っているが、姉のルースが八歳、弟のポールが六歳の幼児期から(六年間)毎年のようにクリスマスが近付くと交霊会に招かれて、シルバーバーチとお話をしている。従ってシルバーバーチとはまるで家族のような親しい間柄となっている。
 二人が出席する時は大抵幾つかの質問を用意しているが、その質問内容は〝子供らしさ〟或いは〝少年らしさ〟を尊重して両親を始めとしてサークルの大人のメンバーの誰からも干渉されていない。交霊会そのものも、大人のメンバーは出席することは許されても口出しは許されない。言わば〝子供の為の交霊会〟なのである。(訳者注-口出しは許されないとは言っても、大人にとっても大切な問題になると補足的な質問をしている。尚このルースとポールの幼少時代の交霊会の様子は日本語版シリーズ第五巻で「二人の幼児と語る」と題して紹介されている。それから六年経っている。原書では本章は冒頭に子供時代の宗教教育の大切さについてのシルバーバーチの講話が載っているが、これは第四巻で「宗教の本質と子供の宗教教育のあり方」と題して紹介されているので本書ではカットした)
 当日の交霊会の様子については父親のミラー氏の記事があるので、それをそのまま紹介するのが一番良いように思われる。次がその全文である。


 ハンネン・スワッハー交霊会の支配霊であるシルバーバーチの側に二人の少年が立っていた。そして二人が代わるがわるクリスマスタイム(十二月二十四日~一月六日)の暫しの別れの挨拶をすると、シルバーバーチはまず姉のルースに、
 「上品さと逞しさ、愛と叡智を身に付けるようにね」と言い、続いてポールに、
 「逞しくなりなさい。そして自分の背後には霊の力が控えているのだという確信を忘れないようにね」と言い、最後に二人に、
 「私はいつでも私の存在の全てをかけ、愛の心と霊の力を傾けてお二人の為に尽くしますよ」と述べた。
 確かにそう述べたのであるが、こうして活字にしてしまうと、二人の子供が質問しシルバーバーチが答えるという形で、年一回、六年間も続けられて来た三人の間の情愛の温かさは、その片鱗さえ伝えられない。一時間と二十分、二人は真剣そのもので質問し自分の意見を述べた。若いとはいえ、早スピリチュアリズムの真理が二人の生活の一部となり切っているようだ。
 二人は質問すべき問題を二人だけで話し合って決め、大人のサゼスチョン(提言・助言)を一切断った。その問答が始まった。

○〝死に方〟は死後にどう影響するか。

ルース「人間が死ぬ時の死に方というのが霊界へ行ってから影響するのかどうかが知りたいのです。つまり自然な死に方の方が霊界へ行き易いのかということです」

シルバーバーチ「勿論です。大きな違いがあります。もしも地上のみんなが正しい知識を持ち自然な生き方をすれば-もしもですよ-そうすれば死に方があっさりとして、少しも苦痛を伴わなくなります。そして又、死後の霊の身体を調節する必要もないでしょう。ところが残念なことに、実際はそんなに上手い具合に行っておりません。
 地上を去って霊界へ来る人の殆どが自分がこれからどうなるのか、自分というのは一体どのように出来上がっているのか、霊的な実在とはどんなものなのかについて恐ろしい程無知なのです。その上、地上で十分な成長をしない内にこちらへ来る人がそれはそれは多いのです。そういう人は、私が度々言っておりますように、熟さない内にもぎ取られた果実のようなものです。ルースちゃんも知っているように、そんな果物は美味しくありませんね。
 果実は熟せば自然に落ちるものなのです。霊が十分に成長すると自然に肉体から離れるのです。今私の世界へ、渋い果物や酸っぱい果物がぞくぞくとやって来ております。その為、そういう人達をこちらで面倒を見たり、監視したり、手当をしたり、看護をしたりして、霊界に適応させてあげないといけないのです。みんながちゃんとした知識をもってくれれば、私のように地上の人間の面倒を見ている者はとても手間が省けて有り難いのですけどね。ルースちゃんの言う通り、死に方によって大変な違いが生じます。以上のような答えでいいですか」

ルース「ええ、とてもよく分かりました」
 (訳者注-ルースが〝死に方〟と言った時多分自然死でない死に方、すなわち事故死、病死、戦死、自殺といったものが念頭にあった筈で、シルバーバーチも一応そのことを念頭に置いていたことは〝霊の身体を調節する必要もないでしょう〟という言葉から窺われるが、もう少し具体的なことを述べて欲しいところである。そこで、最近入手したスカルソープという人の所謂〝体外遊離体験〟の書物から霊界の病院を訪れた時の模様を紹介しておく。
 《霊界の妻との関係と思われるが、私は妻の勤める霊界の病院へ度々連れて行かれる。病院といっても地上から霊界入りしたばかりの人を介抱する施設である。
 ある時その施設を妻の案内で見学したのであるが、そこは若い女性ばかりの患者を介抱する施設だった。そこの食堂へ行ってみると丁度食事中で、私も妙な食欲を覚えた。テーブルの間を通り抜けながら患者のオーラとコンタクトしてみたが、死因となった事故のショックや恐怖、病床での苦しみや不安の念が根強く残っていた。
 中には地上の病院での消毒液の臭いが漂っている者もいた。事故死した者の腕や首や顔に傷当ての赤い絆創膏の跡がうっすらと残っている人もいた。精神に焼き付いた映像がまだ消えていないのである。
 しかしホール全体に穏やかな雰囲気が漂っていて、一人として病人臭さは見せていない。これは高級界から間断なく送られて来る生命力のせいで、こうした特殊な患者にはそれが必要なのである》)

○霊的(スピリチュアル)と心霊的(サイキック)の違い

ポール「インディアンには儀式のようなものをして、雨を降らせることが出来る人がいましたが、それには霊界の人はどのように関係しているのですか。何か関係があるのですか」

シルバーバーチ「関係ありません。心霊的法則と霊的法則とは少し違うのです。全く同じではないのです。どちらにでも言い換えることが出来ると思っている人がいますが、同じものではありません。
 さて、かつてインディアンという民族は地上の物的現象に関係した心霊的法則についてよく知っておりました。純粋に物的な現象です。そして、腕のいい熟練したまじない師は、儀式によってその心霊的要素を引き寄せる能力を具えていたのです。
 実はこれは簡単に説明するのが難しい質問なのです。とにかく霊界とは何の繋がりもないのです。地上の物的な現象と関係した心霊的法則との繋がりの方が大きいのです。こんな説明ではポール君にはよく分からないでしょうね?」

ポール「いえ、分かります。ただ、その心霊的法則というのはどんなものですか」

シルバーバーチ「やっぱりそこまで話さないといけませんかね」

 ここで、交霊会の終わりが近付くまでは大人は口出しをしてはいけないというルールを破ってメンバーの一人が「それはサイコメトリのようなものでしょうか。あれは必ずしも霊的法則とは関係ないと思うのですが・・・」

シルバーバーチ「例ならば幾らでも挙げられるのですが、この二人の子供に一番よく理解してもらえるものを考えているところです。例えば霊視能力者の場合を例に挙げてみましょう。霊視が利くと言われている人でも、霊界のものは何も見えない人が沢山います(日本語ではこれを透視能力という-訳者)。この場合は心霊的な能力の一部に過ぎません。ですから心霊的法則の支配を受けた心霊的な能力で見るだけで、その背後に霊界の人間との繋がりはありません。他界した人の姿も見えません。肉眼に見えない遠くの情景を見ることは出来ます。予知も出来ます。未来を覗いたり過去の出来事を当てることも出来ます。ですが、そうしたことが霊界と全く繋がっていないのです。生まれながらに具わっている純粋に心霊的な能力なのです。これで分かりますか」

 二人の子供に代わって母親が「私はそういうことがあるとは思ってもみませんでした。霊界との関わりなしに証拠を言い当てたり物事を見抜いたりすることが出来るとは知りませんでした」

シルバーバーチ「でも、事実そうなのです。この地上界の範囲だけの心霊的能力というのがあるのです。現に多くの人がそれを使用しております。五感の延長なのです。霊の世界とは何の関係もありません。物的法則と繋がった心霊的法則ないし心霊的要素の範囲内の現象です。易占い-本物の場合ですが-或いは本物の水晶占いで霊的な働きかけなしに見たり聞いたりすることが出来るように、心霊的能力を駆使出来るまじない師は、ある種の儀式によって物的法則の背後にある力をその心霊能力と調和させて雨を降らせることが出来たのです。私に出来る説明はこんなところですが・・・」

別のメンバー「実によく分かりました。面白いテーマだと思います。私も、そうした能力がどの程度まで伸ばせるのだろうかということに関心がありましたので・・・」

シルバーバーチ「その可能性は大変なものです。インドにはヨガの修行者で凄いのがいます。それでも霊界とは何の繋がりもありません。彼等が霊の姿を見たら、たまげることでしょう」

別のメンバー「霊を見たらその容姿を述べるのではないかと思いますが・・・」

シルバーバーチ「その時は既に波長の次元が違います。霊媒現象というのは霊的なものと心霊的なものとの組み合わせです。その融合作用で霊的通信が行われるのです。霊界と交信する能力は霊媒のもつ心霊能力だけで行われるのではありません。支配霊ないしは指導霊との協力によって行なわれるのです」

ポール「すみません。僕は頭が悪いものですからサイキックとスピリチュアルとはどこが違うのか、まだよく分かりません。今までは一緒だと思っていました」

シルバーバーチ「似てはいますが、全く一緒ではないのです。心霊的能力の全てが開発されても、それが高級霊の指導を受けてスピリチュアルな目的の為に使用されるようになるまでは、それは霊的能力とは言えないのです。ポール君は物的身体の他に霊的身体も具えています。その身体には生まれつきあらゆる心霊能力が潜在していますが、それが開発され、しかも霊界の力と融合した時初めてスピリチュアルと言えるものになるのです」

○死後の界層の違いは何で決まるか

ポール「死後の世界のレベルについて教えてください。シルバーバーチさんはよくその違いについて話しておられますが、どういう違いがあるのですか」

シルバーバーチ「成長の度合が違うのです。しかしその違いは地上のように物差しで計れるものとは違います。もし私がポール君に愚かな人と賢い人、或いは欲張りと聖人との違いを寸法で計りなさいと言っても、そんなことは出来ませんね?
 しかし、それぞれの界に住む霊の成長には大きな差があるのです。こちらでは魂の成長に応じた界、つまりその人の知性と道徳性と霊性の程度に丁度よく調和する界に住むようになります。界の違いはそこに住む人の魂の程度の違いだけで、霊性が高ければ高い程、善性が強ければ強い程、親切心が多ければ多い程、慈愛が深ければ深い程、利己心が少なければ少ない程、それだけ高いレベルの界に住むことになります。
 地上はその点が違います。物質界という同じレベルで生活しているからといって、みんな精神的に、或いは霊的に、同じレベルの人達ばかりとは限りません。身体は同じレベルのもので出来ていますが、その身体つまり物質で出来た肉体が無くなれば、魂のレベルに似合ったレベルの界へ行くことになります」

ポール「はい、よく分かりました。もう少し聞きたいことがあります。この地球はそういう界の一つですか、それとも特別なものですか」

シルバーバーチ「いいえ、地上世界も霊的な世界の一部です。なぜかと言うと、霊の住む世界は全部が重なり合っているからです。宇宙に存在する生活の場の全てが互いに重なり合い融合し合っており、霊界とか幽界とか物質界というのは一つの宇宙的生活の違った側面をそう呼んでいるだけです。ポール君は今物質界にいますが、同時に幽界にも繋がっているのです」

○知識には責任が伴う

ルース「あたしは(この交霊会での質問の準備をしている時に)シルバーバーチさんはあたし達より遙かに多くのことを-あたし達が夢にも思わないようなことを知っているのだから、あたし達の方から質問しなくてもちゃんとお話してくださるだろうと思ったりしました」

シルバーバーチ「ええ、お話しますよ。でも、だから何の質問もしなくていいということになるのですか」

ルース「なりません。あたしが知りたいのは、子供の頃からスピリチュアリストとして育てられて、あたし達二人は得をしているかどうかということです」

シルバーバーチ「自分ではどう思ってますか」

ルース「分かりません。だってあたしは霊の世界に住んでないでしょ?だから、どんな得をするか、自分では分かりません」

母親「この子はスピリチュアリズムを知らない生活というのを体験していないものですから、比較が出来ないのです。その点シルバーバーチさんは両方がご覧になれます」

シルバーバーチ「私は目を閉じていても見ることが出来ます。私が〝自分ではどう思ってますか〟と聞いたのは、ルースちゃんのお友達には死んでからのことを知らない人が沢山いるからです。そういうお友達はルースちゃんと較べて得だと思いますか損だと思いますか」

ルース「霊の世界へ行く時に何の準備も出来ていないという点では損だと思います。その知識も体験もないからです。でも、それ以外のことはよく分かりません。すみません」

ポール「今ルースが最初に言ったことはその通りだと思います。でも、それ以外のことでは損も得もないと思います。死ねばどうなるかが分かっているのは得だけど、それ以外では別に変わりはないと思います」

シルバーバーチ「答えは簡単なのですよ。知識は全て得になるということです。ところが、残念なことに、そうとばかりも言えない事態が生じるのです。知識は確かに喜びと幸せと落ち着きをもたらしてくれますが、今度はそれをどう生かすかという責任ももたらすのです。知識は、無知から生じる愚かな心配を取り除いてくれます。知識は自分とは何かを自覚させ、これからどうすべきかを教えてくれます。そして、真理を知らずにいる人を見て気の毒だと思うようになります。真理を知らなかった為に罪を犯す人は勿論それなりの償いをさせられますが、真理を知っていながら罪を犯す人は、もっと大きな償いをさせられます。より多くを知っているということが罪を大きくするのです。ポール君は真理を知っているだけ得です。しかし、これからどういう行いをするかが問題です」