シルバーバーチと語ることを永年の夢にしていた英国陸軍第八部隊所属の一軍人が、念願叶ってハンネン・スワッハー・ホームサークルに招かれた。本来はフリート街の青年ジャーナリストである。(訳者注-フリート街は英国の一流新聞社が軒を連ねている所で、そこの御意見番的存在だったのが他ならぬハンネン・スワッハーで、そういう関係からこの青年軍人も出席が叶えられたのであろう)
青年は早くからシルバーバーチの霊訓に魅せられ、これまでの霊言の一語として読んでないものはないという程だった。そして輸送船の中で、野営地において、或いは戦場において戦友と議論を闘わせて来た。それだけにシルバーバーチへの質問には〝永遠〟の問題など難解なものも飛び出したが、例によってシルバーバーチは直截簡明に答えている。
まずシルバーバーチからこう語りかけた。
「あなたは英国の軍人でいらっしゃいますが、あなたにも是非参加して頂かねばならない、もっと大きな戦いがあります。何世紀にも亘って強大な霊的軍団が組織されております。霊的真理に対して絶対的忠誠心をもって臨めば、あなたの強力な味方となってくれます。
あなたへ届けられる〝召集令状〟は人の為に自分を役立てることを求めています。勲章は授けてくれません。バッジもくれません。襟章も付けてくれません。等級もありません。しかし、絶対的な忠誠心と堅忍不抜の献身的精神をもって臨めば、必ずや勝利を手にすることが出来ることを私達がお約束します。どうかあなたも地上世界を毒している諸悪の駆逐の為に私達の味方になってください。私達の新たな道具として一命を捧げて頂けませんか。あなたの行為によってたった一人の魂でも救われれば、それだけで、あなたの人生は無駄でなかったことになります。私達の仕事はそのようにして推進されて行くのです」
-一人の人間のすることは多寡が知れてるように思えるのです。軍隊にいるとただ語り合うことしか出来ません。
「そのたった一人の人間も、霊の力を背後にすれば大きな仕事が出来るのです。私は決して自惚れてでかい口を利いているのではありません。私にも謙虚な精神と憐れみの情はあります。私もかつてはとても無理と思える仕事を仰せつかりました。地上の方には全く無名のこの私が、この声と素朴な訓え以外には何の資産もなしに、たった一人で地上へ赴き、自分で道具(霊媒)を見つけ、愛と理性のみで勝利してみよと言われたのです。
仰る通り、たった一人のすることです。見た目にはたった一人です。が、その背後には自分を役立てたいとの願望を抱く者に必ず授けられる強大な霊力が控えております。私はあらゆる逆境と困難と障害の中にあって一人の人間(バーバネル)に目星を付けました。その人間を私の目的に沿って鍛練し、更に、試行錯誤を繰り返しつつも忍耐強く、真理普及という仕事に協力してくれる人間(サークルのメンバー)を探し求めました。何かの報酬と引き替えに募ったのではありません。献身的精神を吹き込んでみた時の反応だけで募ったのです。そして、ご覧なさい。僅かな年数の内に、我々を伝達手段として、誇りある道具として、霊的真理が全世界に広がりました。
かつても、大きな仕事をたった一人で始めた人がいました。その名をナザレのイエスと言いました。そのたった一人の人間が愛を基本理念とした新しい宗教の規範を地上にもたらしました。
たった一人で大きな仕事を始めた人は他にもいます。その名をリンカーンと言いました。彼は奴隷を解放し、あの大きな大陸を一つに纏めました。
いかがです?たった一人でも大きな仕事が出来ることを示す例をもっと挙げて欲しいですか。諦めてはなりません。真理普及というこの大きな戦いにおいて私達の味方となった方には〝敗北〟はありません。時として後退のやむなきに至ることはあるでしょう。が、知識が無知を追い払い、光が闇をかき消しながら、我々は絶え間なく前進し続けております。
私は古い霊です-皆さんからそう見られております(訳者注-old という用語を用いているが、時間のない霊界には古いとか新しいとか若いとか年老いたといった表現は存在しない。ただ紀元前一千年頃に地上生活を送ったことがあり、地上的年齢計算でいくと三千歳になるという意味でそう言ったわけである。霊界には魂の成熟度しかない)私位になると人間の可能性というものが分かります。その私からあなたに激励の言葉を述べさせて頂きましょう。一切の諦めの念を駆逐しなさい。そうです。私達には為さねばならない仕事があるのです。偉大な仕事です。喜んでその手を、その心を、その精神を貸してくれる人の協力を必要とする大仕事があるのです。あなたも是非参加してください。あなた自身が手にされた知識を寛容の精神で他人に披露して、その良さを知ってもらう為の努力を忍耐強く続けてください。その内きっと少しずつ変革が生じていることに気付かれます。
それしか方法が無いのです。集団的暗示や熱狂的説教による陶酔ではいけません。理性と叡智と論理と常識、そして何よりも愛をもって、真実を説くことによって一人ひとり得心させて行かねばなりません。結局はそれしかないのです。そう思われませんか」
-そう思います。しかしそれには気の遠くなるような時間が掛かります。
「ある人が言ってますよ。地球はあなたが生まれる前から存在し、あなたが去った後もずっと存在するであろう、と。その地上でのご自分の束の間の人生を、何とか価値あるものにすることに(余計な心配をせずに)専心なさることです。たった一個の魂の為にあなたを役立てることが出来れば、それだけであなたの人生は失敗でなかったことになります」
-でも、生涯を何一つ他人の為になることをせずに終わる人が大勢います。
「若者はとかくせっかちに考えがちなものです。が、世の中は急激な革命によってではなく、ゆっくりとした進化によって改められていく-それが摂理なのです。私は若者特有の熱誠や情熱に水を差すつもりは毛頭ありません。私がこれまでに見て来たままを申し上げているのです。ご自分の経験から得られる叡智を道標とする-これが一番です。人間を導く上で私達はそれを一番の拠り所としています。だからこそ説得力があるのです。そうした方針でやって来て、結局私達は、多くの方が気付いておられる以上に大きな進歩を遂げております。
失望なさってはいけません。私達は決してあなた方を失望させるようなことはしません。自惚れているのではありません。霊的法則に関する知識を駆使して霊的資源を活用する用意があるからです。この資源は無尽蔵なのです。それを活用して、あなたがどんな境遇に置かれてもそれを克服出来るように導き支援して、あなたの存在を出来るだけ有効に生かす道を歩んで頂くようにいたします。
奉仕こそ霊の通貨(コイン)なのです。宗教とは何かと問われれば私は躊躇なく申し上げます-いつどこにいても人の為に自分を役立てることです、と。神学などはどうでもよろしい。教義、儀式、祭礼、教典などは関係ありません。祭壇に何の意味がありましょう。尖塔に何の意味がありましょう。ステンドグラスの窓にしたからどうなるというのでしょう。法衣を纏ったからといってどう違うというのでしょう。そうしたものに惑わされてはいけません。何の意味もないのです。
自分を人の為に役立てること、それが宗教です。あなたの住むその世界の為に役立てるのです。世の中を明るくする為に役立てるのです。人の心を思いやり、優しく労わり、気持を察してあげなさい。しかし同時に、邪悪なものに対しては敢然と闘ってください。
私がわざわざ地上へお伝えに戻って来た真理とは、こうした何でもないことばかりなのです。しかし、こうした基本的な真理にしがみ付いてさえいれば、道を誤ることはありません。知識を広めることです。時には拒否され、時には嘲笑され、軽蔑され、愚弄されることもあることでしょう。しかし、気になさってはいけません。そんなことで傷付けられてはなりません。用意の出来ていない者は当然受け入れることは出来ません。でも、それであなたはあなたの為すべきことをなさったのです。
しかし一方には、それが干天の慈雨である人もいます。そういう人こそ大切なのです。その人達の役に立てば、それだけで少なくともあなたの人生は存在価値をもつことになります。
どうか私がこれまで述べて来た知識の中から物的生活の背後で働いている霊的活動、あなたの身の周りに澎湃(ほうはい)として存在する莫大な霊力、あなた方を善の為に活用せんとして待ち構えている霊の存在を認識してください。あなた自身の中に潜在する可能性をしっかりと認識してください。それが自我の霊的本性のもつ莫大な兵器庫、魂の宝庫を開く鍵となるからです。神の叡智は無限であるということ、宇宙の宝物は無尽蔵であるということの意味を、しっかりと理解してください。
私達は金や銀の財宝をお持ちしてあげるわけにはまいりません。が、それより無限大に貴重な霊的真理という名の宝をお持ちしております。これは色褪せる心配がありません。永遠に価値を発揮し続けます。これさえ携えていれば、人生を生き抜く上での光輝溢れる照明となってくれます」
-私達兵士が外地を転戦した時、敵の方が悪いのだと思って戦いました。しかし、その敵軍を構成している一人一人も、その戦いにかける理想があればこそ戦っているのだということが分かって来ました。こうした場合、罪の報いはどうなるのでしょうか。我々は敵が悪いと思って戦い、敵は自分達こそ正しいと思って戦っているのです。
「いかなる問題においても、私達は決して地上的観点から物事を見ないということ、地上的尺度で判断しないということ、人間的な憎しみや激情には絶対に巻き込まれないということ、往々にして人間の判断力を曇らせている近視眼的無分別に振り回されることはないということを忘れないでください。
更に大切なこととして、今定住している霊的世界における神の摂理の働きを体験して来た私達は、地上の人間を悩ませる問題を人間自身の受け止め方とは違った受け止め方をしていること、あなた方と同じ視野で捉えていないということを知ってください。
以上の大切な前置きを大前提として申し上げますが、そうした問題において何よりもまず第一に考慮すべきことは〝動機〟です。自分は正しいことをしているのだと真剣に思い込んでいる人は、魂に罪過を負わせることにはなりません。いけないことと知りつつ尚も固執する人間は明らかに罪過を犯していることになります。なぜなら道義心を踏み躙り魂の進化を阻害していることになるからです。私達の目には国家の別はありません。全体が霊的存在で構成された一つの民族であり、一人一人が国家の法律でなく大自然の摂理によって裁かれるのです」
-善と悪は何を規準にして判断したらよいのでしょうか。人間一人ひとりの問題でしょうか、それとも霊的法則の中に細かく規定されているのでしょうか。
「一人ひとりの問題です。一人ひとりの霊的自我の中に絶対に誤まることのない判定装置(モニター)が組み込まれているのです。これまでに何度となくこの問題を持ち出されましたが、私には一貫して主張している見解があり、それを微塵も変更する必要を認めません。これまでに獲得した霊的知識を総合的に検討した結果として私はこう申し上げております。すなわち、正常な人間である限り、言い換えれば精神的・知的に異常又は病的でない限り、自分の思考と行動を監視する、絶対に誤まることのない装置が内蔵されております。所謂道義心です。考えること、口にすること、行うことを正しく導く不変の指標です。それがいかなる問題、いかなる悩みに際しても、その都度自動的に、直感的に、そして躊躇なく、あなたの判断が正しいか間違っているかを告げます。
それを人間は、時として揉み消し、時として言い訳や屁理屈で片付けようとします。が、真の自我はちゃんと分かっているのです」
この後議論が発展して難解な哲学的思考(スペキュレーション)の域まで入った時、シルバーバーチは一応それに対応した後、こう述べた。
「私は実用志向のタイプです。今日の地上世界が置かれている窮状を救う上で何の役にも立たないと思われる方向へ議論が流れかけた時はいつもお断りしております。私は今地球が必要としているのは基本的な霊的知識であると見ています。人間社会の全組織を改め、そこに巣食っている汚毒、汚物、スラム、不平等、不正を一掃する上で役立つ知識です。そうした環境が人間の霊性の発現を妨げているからです。
地上世界を見回すと、素晴らしい花園であるべき所に醜い雑草が生い茂り、花がその美しさを発揮する場所がなくなっています。そこで私はこう言うのです-まずそうした基本的な問題と取り組みなさい-戦場で戦ういかなる敵よりも遙かに強力なその敵に宣戦布告なさい、と。
人間の霊性を踏み躙っている敵と戦うのです。人間の霊性を抑圧し、魂を束縛する敵と戦うのです。霊的存在としての基本的勝利-神の直射日光を浴び、自由の喜びを味わう権利を奪う、あらゆる敵と戦うのです。
人間はまずそうした問題に関心を向けるべきです。そしてもしあなたとの縁によって霊的知識に何等かの価値を見出した人々がその普及に意欲を燃やしてくれた時は、その方達にこう忠告してあげてください-基本的な目的は難解なスペキュレーションを満足させることにあるのではなく、この地上生活において霊的教訓を学べるような環境にすること、言い換えると、現在のように大勢の者が悲しむべき哀れな姿で霊界へ来るような事態を改めることにあるのです、と」
-私もそう思います。しかし、インドのような国に目をやり、食べるもの、着るものさえ満足に恵まれない民衆のことを思うと、複雑な気持になります。いかにしてインドを救うべきか-これは大変な仕事のように思えます。
「いいえ、霊界からの声と力による導きと援助を素直に受け入れるようになりさえすれば、さほど大変なことではありません。多くの魂を束縛し、怨念と敵意と憎しみを助長し、神の子を迷信と偏見と無知による真っ暗闇の中で暮らさせている教条主義の呪いから解放しさえすればよいのです。
永い間〝宗教〟の名をもって呼ばれて来た、ただの古代神話、伝説に過ぎないものを棄ててその拘束から脱する方法を教え、代わって霊的真理の陽光を浴びる方法を教えてあげれば-〝宗教〟の名の下に行われている欺瞞と誤謬を地上から一掃することが出来れば、地上を毒している問題の多くが解決されて行きます。私はここで改めて、私に可能な限りの厳粛な気持で申し上げますが、地上はこれまで教条主義によって呪われ続けてまいりました」
-経済的な側面はいかがでしょうか。
「それも同じ問題の一つの側面に過ぎません。私はどうやら〝人騒がせ者〟のようです。キリスト教の教えと違うことばかり説いていると非難されております。しかし自分では、そう言って批難する人達よりもキリスト教の本質についてより多くのことを知っていると思っております。あらゆる地上の問題を煮詰めれば、その原因はたった一つの事実を知らないことに帰着するのです。すなわち人間は本来が霊的存在であり、神からの遺産を受け継いでいるが故に、生まれながらにして幾つかの権利を有しているということです。
その権利は、次の生活の場に備える為に、地上生活においてその属性を十分に発揮させる為のものです。その妨げとなるものはいかなるものでも排除する-それだけのことです。それをどう呼ばれようと構いません。私はラベルや党派には関心はありません。私が関心をもっているのは〝真理〟だけです。
もしもあなたが私と同じ立場に立って、毎日のように発育を阻害された者、挫折した者、精神を歪められた者、未発達者、何の用意も出来ていない者がぞくぞくと私達の世界へやって来るのをご覧になれば、多分あなたも私と同じように、この繰り返しに終止符を打つ為に何とかして地上を改革しなければという気持を抱かれる筈です。
どうか、その若さで霊的知識を手にされたことを喜んでください。それを人生の冬(晩年)になって漸く手にして悔しがる人が多い中で、あなたは人生の春にそれを手にされました。しかし、あなたにはそれを成就すべき夏がこれから訪れます」
青年は早くからシルバーバーチの霊訓に魅せられ、これまでの霊言の一語として読んでないものはないという程だった。そして輸送船の中で、野営地において、或いは戦場において戦友と議論を闘わせて来た。それだけにシルバーバーチへの質問には〝永遠〟の問題など難解なものも飛び出したが、例によってシルバーバーチは直截簡明に答えている。
まずシルバーバーチからこう語りかけた。
「あなたは英国の軍人でいらっしゃいますが、あなたにも是非参加して頂かねばならない、もっと大きな戦いがあります。何世紀にも亘って強大な霊的軍団が組織されております。霊的真理に対して絶対的忠誠心をもって臨めば、あなたの強力な味方となってくれます。
あなたへ届けられる〝召集令状〟は人の為に自分を役立てることを求めています。勲章は授けてくれません。バッジもくれません。襟章も付けてくれません。等級もありません。しかし、絶対的な忠誠心と堅忍不抜の献身的精神をもって臨めば、必ずや勝利を手にすることが出来ることを私達がお約束します。どうかあなたも地上世界を毒している諸悪の駆逐の為に私達の味方になってください。私達の新たな道具として一命を捧げて頂けませんか。あなたの行為によってたった一人の魂でも救われれば、それだけで、あなたの人生は無駄でなかったことになります。私達の仕事はそのようにして推進されて行くのです」
-一人の人間のすることは多寡が知れてるように思えるのです。軍隊にいるとただ語り合うことしか出来ません。
「そのたった一人の人間も、霊の力を背後にすれば大きな仕事が出来るのです。私は決して自惚れてでかい口を利いているのではありません。私にも謙虚な精神と憐れみの情はあります。私もかつてはとても無理と思える仕事を仰せつかりました。地上の方には全く無名のこの私が、この声と素朴な訓え以外には何の資産もなしに、たった一人で地上へ赴き、自分で道具(霊媒)を見つけ、愛と理性のみで勝利してみよと言われたのです。
仰る通り、たった一人のすることです。見た目にはたった一人です。が、その背後には自分を役立てたいとの願望を抱く者に必ず授けられる強大な霊力が控えております。私はあらゆる逆境と困難と障害の中にあって一人の人間(バーバネル)に目星を付けました。その人間を私の目的に沿って鍛練し、更に、試行錯誤を繰り返しつつも忍耐強く、真理普及という仕事に協力してくれる人間(サークルのメンバー)を探し求めました。何かの報酬と引き替えに募ったのではありません。献身的精神を吹き込んでみた時の反応だけで募ったのです。そして、ご覧なさい。僅かな年数の内に、我々を伝達手段として、誇りある道具として、霊的真理が全世界に広がりました。
かつても、大きな仕事をたった一人で始めた人がいました。その名をナザレのイエスと言いました。そのたった一人の人間が愛を基本理念とした新しい宗教の規範を地上にもたらしました。
たった一人で大きな仕事を始めた人は他にもいます。その名をリンカーンと言いました。彼は奴隷を解放し、あの大きな大陸を一つに纏めました。
いかがです?たった一人でも大きな仕事が出来ることを示す例をもっと挙げて欲しいですか。諦めてはなりません。真理普及というこの大きな戦いにおいて私達の味方となった方には〝敗北〟はありません。時として後退のやむなきに至ることはあるでしょう。が、知識が無知を追い払い、光が闇をかき消しながら、我々は絶え間なく前進し続けております。
私は古い霊です-皆さんからそう見られております(訳者注-old という用語を用いているが、時間のない霊界には古いとか新しいとか若いとか年老いたといった表現は存在しない。ただ紀元前一千年頃に地上生活を送ったことがあり、地上的年齢計算でいくと三千歳になるという意味でそう言ったわけである。霊界には魂の成熟度しかない)私位になると人間の可能性というものが分かります。その私からあなたに激励の言葉を述べさせて頂きましょう。一切の諦めの念を駆逐しなさい。そうです。私達には為さねばならない仕事があるのです。偉大な仕事です。喜んでその手を、その心を、その精神を貸してくれる人の協力を必要とする大仕事があるのです。あなたも是非参加してください。あなた自身が手にされた知識を寛容の精神で他人に披露して、その良さを知ってもらう為の努力を忍耐強く続けてください。その内きっと少しずつ変革が生じていることに気付かれます。
それしか方法が無いのです。集団的暗示や熱狂的説教による陶酔ではいけません。理性と叡智と論理と常識、そして何よりも愛をもって、真実を説くことによって一人ひとり得心させて行かねばなりません。結局はそれしかないのです。そう思われませんか」
-そう思います。しかしそれには気の遠くなるような時間が掛かります。
「ある人が言ってますよ。地球はあなたが生まれる前から存在し、あなたが去った後もずっと存在するであろう、と。その地上でのご自分の束の間の人生を、何とか価値あるものにすることに(余計な心配をせずに)専心なさることです。たった一個の魂の為にあなたを役立てることが出来れば、それだけであなたの人生は失敗でなかったことになります」
-でも、生涯を何一つ他人の為になることをせずに終わる人が大勢います。
「若者はとかくせっかちに考えがちなものです。が、世の中は急激な革命によってではなく、ゆっくりとした進化によって改められていく-それが摂理なのです。私は若者特有の熱誠や情熱に水を差すつもりは毛頭ありません。私がこれまでに見て来たままを申し上げているのです。ご自分の経験から得られる叡智を道標とする-これが一番です。人間を導く上で私達はそれを一番の拠り所としています。だからこそ説得力があるのです。そうした方針でやって来て、結局私達は、多くの方が気付いておられる以上に大きな進歩を遂げております。
失望なさってはいけません。私達は決してあなた方を失望させるようなことはしません。自惚れているのではありません。霊的法則に関する知識を駆使して霊的資源を活用する用意があるからです。この資源は無尽蔵なのです。それを活用して、あなたがどんな境遇に置かれてもそれを克服出来るように導き支援して、あなたの存在を出来るだけ有効に生かす道を歩んで頂くようにいたします。
奉仕こそ霊の通貨(コイン)なのです。宗教とは何かと問われれば私は躊躇なく申し上げます-いつどこにいても人の為に自分を役立てることです、と。神学などはどうでもよろしい。教義、儀式、祭礼、教典などは関係ありません。祭壇に何の意味がありましょう。尖塔に何の意味がありましょう。ステンドグラスの窓にしたからどうなるというのでしょう。法衣を纏ったからといってどう違うというのでしょう。そうしたものに惑わされてはいけません。何の意味もないのです。
自分を人の為に役立てること、それが宗教です。あなたの住むその世界の為に役立てるのです。世の中を明るくする為に役立てるのです。人の心を思いやり、優しく労わり、気持を察してあげなさい。しかし同時に、邪悪なものに対しては敢然と闘ってください。
私がわざわざ地上へお伝えに戻って来た真理とは、こうした何でもないことばかりなのです。しかし、こうした基本的な真理にしがみ付いてさえいれば、道を誤ることはありません。知識を広めることです。時には拒否され、時には嘲笑され、軽蔑され、愚弄されることもあることでしょう。しかし、気になさってはいけません。そんなことで傷付けられてはなりません。用意の出来ていない者は当然受け入れることは出来ません。でも、それであなたはあなたの為すべきことをなさったのです。
しかし一方には、それが干天の慈雨である人もいます。そういう人こそ大切なのです。その人達の役に立てば、それだけで少なくともあなたの人生は存在価値をもつことになります。
どうか私がこれまで述べて来た知識の中から物的生活の背後で働いている霊的活動、あなたの身の周りに澎湃(ほうはい)として存在する莫大な霊力、あなた方を善の為に活用せんとして待ち構えている霊の存在を認識してください。あなた自身の中に潜在する可能性をしっかりと認識してください。それが自我の霊的本性のもつ莫大な兵器庫、魂の宝庫を開く鍵となるからです。神の叡智は無限であるということ、宇宙の宝物は無尽蔵であるということの意味を、しっかりと理解してください。
私達は金や銀の財宝をお持ちしてあげるわけにはまいりません。が、それより無限大に貴重な霊的真理という名の宝をお持ちしております。これは色褪せる心配がありません。永遠に価値を発揮し続けます。これさえ携えていれば、人生を生き抜く上での光輝溢れる照明となってくれます」
-私達兵士が外地を転戦した時、敵の方が悪いのだと思って戦いました。しかし、その敵軍を構成している一人一人も、その戦いにかける理想があればこそ戦っているのだということが分かって来ました。こうした場合、罪の報いはどうなるのでしょうか。我々は敵が悪いと思って戦い、敵は自分達こそ正しいと思って戦っているのです。
「いかなる問題においても、私達は決して地上的観点から物事を見ないということ、地上的尺度で判断しないということ、人間的な憎しみや激情には絶対に巻き込まれないということ、往々にして人間の判断力を曇らせている近視眼的無分別に振り回されることはないということを忘れないでください。
更に大切なこととして、今定住している霊的世界における神の摂理の働きを体験して来た私達は、地上の人間を悩ませる問題を人間自身の受け止め方とは違った受け止め方をしていること、あなた方と同じ視野で捉えていないということを知ってください。
以上の大切な前置きを大前提として申し上げますが、そうした問題において何よりもまず第一に考慮すべきことは〝動機〟です。自分は正しいことをしているのだと真剣に思い込んでいる人は、魂に罪過を負わせることにはなりません。いけないことと知りつつ尚も固執する人間は明らかに罪過を犯していることになります。なぜなら道義心を踏み躙り魂の進化を阻害していることになるからです。私達の目には国家の別はありません。全体が霊的存在で構成された一つの民族であり、一人一人が国家の法律でなく大自然の摂理によって裁かれるのです」
-善と悪は何を規準にして判断したらよいのでしょうか。人間一人ひとりの問題でしょうか、それとも霊的法則の中に細かく規定されているのでしょうか。
「一人ひとりの問題です。一人ひとりの霊的自我の中に絶対に誤まることのない判定装置(モニター)が組み込まれているのです。これまでに何度となくこの問題を持ち出されましたが、私には一貫して主張している見解があり、それを微塵も変更する必要を認めません。これまでに獲得した霊的知識を総合的に検討した結果として私はこう申し上げております。すなわち、正常な人間である限り、言い換えれば精神的・知的に異常又は病的でない限り、自分の思考と行動を監視する、絶対に誤まることのない装置が内蔵されております。所謂道義心です。考えること、口にすること、行うことを正しく導く不変の指標です。それがいかなる問題、いかなる悩みに際しても、その都度自動的に、直感的に、そして躊躇なく、あなたの判断が正しいか間違っているかを告げます。
それを人間は、時として揉み消し、時として言い訳や屁理屈で片付けようとします。が、真の自我はちゃんと分かっているのです」
この後議論が発展して難解な哲学的思考(スペキュレーション)の域まで入った時、シルバーバーチは一応それに対応した後、こう述べた。
「私は実用志向のタイプです。今日の地上世界が置かれている窮状を救う上で何の役にも立たないと思われる方向へ議論が流れかけた時はいつもお断りしております。私は今地球が必要としているのは基本的な霊的知識であると見ています。人間社会の全組織を改め、そこに巣食っている汚毒、汚物、スラム、不平等、不正を一掃する上で役立つ知識です。そうした環境が人間の霊性の発現を妨げているからです。
地上世界を見回すと、素晴らしい花園であるべき所に醜い雑草が生い茂り、花がその美しさを発揮する場所がなくなっています。そこで私はこう言うのです-まずそうした基本的な問題と取り組みなさい-戦場で戦ういかなる敵よりも遙かに強力なその敵に宣戦布告なさい、と。
人間の霊性を踏み躙っている敵と戦うのです。人間の霊性を抑圧し、魂を束縛する敵と戦うのです。霊的存在としての基本的勝利-神の直射日光を浴び、自由の喜びを味わう権利を奪う、あらゆる敵と戦うのです。
人間はまずそうした問題に関心を向けるべきです。そしてもしあなたとの縁によって霊的知識に何等かの価値を見出した人々がその普及に意欲を燃やしてくれた時は、その方達にこう忠告してあげてください-基本的な目的は難解なスペキュレーションを満足させることにあるのではなく、この地上生活において霊的教訓を学べるような環境にすること、言い換えると、現在のように大勢の者が悲しむべき哀れな姿で霊界へ来るような事態を改めることにあるのです、と」
-私もそう思います。しかし、インドのような国に目をやり、食べるもの、着るものさえ満足に恵まれない民衆のことを思うと、複雑な気持になります。いかにしてインドを救うべきか-これは大変な仕事のように思えます。
「いいえ、霊界からの声と力による導きと援助を素直に受け入れるようになりさえすれば、さほど大変なことではありません。多くの魂を束縛し、怨念と敵意と憎しみを助長し、神の子を迷信と偏見と無知による真っ暗闇の中で暮らさせている教条主義の呪いから解放しさえすればよいのです。
永い間〝宗教〟の名をもって呼ばれて来た、ただの古代神話、伝説に過ぎないものを棄ててその拘束から脱する方法を教え、代わって霊的真理の陽光を浴びる方法を教えてあげれば-〝宗教〟の名の下に行われている欺瞞と誤謬を地上から一掃することが出来れば、地上を毒している問題の多くが解決されて行きます。私はここで改めて、私に可能な限りの厳粛な気持で申し上げますが、地上はこれまで教条主義によって呪われ続けてまいりました」
-経済的な側面はいかがでしょうか。
「それも同じ問題の一つの側面に過ぎません。私はどうやら〝人騒がせ者〟のようです。キリスト教の教えと違うことばかり説いていると非難されております。しかし自分では、そう言って批難する人達よりもキリスト教の本質についてより多くのことを知っていると思っております。あらゆる地上の問題を煮詰めれば、その原因はたった一つの事実を知らないことに帰着するのです。すなわち人間は本来が霊的存在であり、神からの遺産を受け継いでいるが故に、生まれながらにして幾つかの権利を有しているということです。
その権利は、次の生活の場に備える為に、地上生活においてその属性を十分に発揮させる為のものです。その妨げとなるものはいかなるものでも排除する-それだけのことです。それをどう呼ばれようと構いません。私はラベルや党派には関心はありません。私が関心をもっているのは〝真理〟だけです。
もしもあなたが私と同じ立場に立って、毎日のように発育を阻害された者、挫折した者、精神を歪められた者、未発達者、何の用意も出来ていない者がぞくぞくと私達の世界へやって来るのをご覧になれば、多分あなたも私と同じように、この繰り返しに終止符を打つ為に何とかして地上を改革しなければという気持を抱かれる筈です。
どうか、その若さで霊的知識を手にされたことを喜んでください。それを人生の冬(晩年)になって漸く手にして悔しがる人が多い中で、あなたは人生の春にそれを手にされました。しかし、あなたにはそれを成就すべき夏がこれから訪れます」