作家としても出版業者としても成功を収めている男性と、心霊知識の普及に健筆を揮っている女性(両者共氏名は紹介されていない。手掛かりになるものもない-訳者)が招かれた時の様子を紹介する。
 この男性は交霊会は今回が初めてであるが、スピリチュアリズムには早くから親しんでいた。そこでシルバーバーチがこう挨拶した。
 「私はあなたを見知らぬ客としてではなく待ちに待った友として歓迎いたします。どうかサークルの皆さんと思い切り寛いだ気分になって頂き、お互いに学び合ってまいりましょう。
 これまであなたも随分長い道のりを歩んで来られました。けっして楽な道ではありませんでした。石ころだらけの道でした。それをあなたは見事に克服して来られました。あなたご自身にとって、又あなたの愛する方達にとって重大な意味をもつ決断を下さねばならなかった魂の危機を象徴する、忘れ難い出来事が数多くあります」

 これを聞いてその男性は「少しピンと来ないところがあるのですか」と述べてから、自分が霊的に飢えていたというのはどういう意味かと尋ねた。すると-

 「(通常意識とは別に)あなたの魂が切望していたものがありました。あなたの内部で無意識に求めていたものですが、あなたはその欲求を満たしてやることが出来なかった。永い間あなたは何かを成就したい、やり遂げたい、我がものとしたいという絶え間ない衝動-抑えようにも抑え難い、荒れ狂ったような心の渇望を意識し、それがしばしば精神的な苦悩を生みました。〝一体自分の心の安らぎはどこに求めたらいいのか。自分の心の港、心の避難所はどこにあるのか〟と心の中で叫ばれました。次々と難問は生じるのに回答は見出せませんでした。ですが、いいですか、その心の動乱は実はあなた自身の魂の体質が生んでいたのです。水銀柱が急速に上昇するかと思えば一気に下降します。あなたは爆発性と沈着性という相反するものを具えたパラドックス的人間です。いかがです、私の言っていることがお分かりになりますか」

-よく分かります。仰る通りです。私なりに偉大な思想家から学ぼうと努力して来たつもりですが・・・・

 「私にも真理の全てをお授けすることは出来ません。真理は無限であり、あなたも私も同様に有限だからです。我々も無限なるものを宿していることは事実ですが、その表現が悲しい程不完全です。完全の域に達するまでは真理の全てを受け入れることは出来ません。真理とは無限の側面をもつダイヤモンドです。無限の反射光をもつ宝石です。その光は肉体に閉じ込められた意識では正しく捉え難く、その奥の霊のもつ自然の親和力によって手繰り寄せられた部分をおぼろげに理解する程度です。私には〝さあ、これが真理ですよ〟と言えるものは持ち合わせません。あなたが求めておられるものの幾つかについて部分的な解答しかお出し出来ません。
 あなたは感受性のお強い方です。男性の割には過敏でいらっしゃいます。それはそれなりの代償を支払わされます。普通の人間には分からないデリケートで霊妙なバイブレーションを感知出来る程の感受性をもっておれば、当然、他の分野でも過敏とならざるを得ません」

-そのことを痛切に思い知らされております。

 「感受性が強いということは喜びも悲しみも強烈となるということです。幸福の絶頂まで上がれるということは奈落の底まで落ちることも有り得るということです。強烈な精神的苦悶を味わわずして霊的歓喜は味わえません。二人三脚なのです。私があなたのお役に立てることといえば、たとえ苦境にあってもあなたは決して泥沼に足を取られてにっちもさっちも行かなくなっているのではないこと、いつも背後霊によって導かれているということを理解させてあげることです。一人ぽっちで足掻いているのではないということです。幸いなことにあなたは度を超して取り乱すことのない性格をしていらっしゃいます。時には目先が真っ暗に思えることがあっても、自分が望むことは必ず叶えられるとの確信をお持ちです。
 どうぞ自信をもってください。あなたが生きておられるこの宇宙は無限なる愛によって創造され、その懐の中に抱かれているのです。その普遍的な愛とは別に、あなたへ個人的な愛念を抱き、あなたを導き、援助し、利用している霊の愛もあります。それは、よくよくのことがない限り自覚していらっしゃいません。私の申し上げてきたことが参考になりましたでしょうか」

-とても参考になりました。


 話は前後するが、この交霊会より早く、女性の文筆家が二度招かれていた。この夫人はスピリチュアリズム普及の為に色々と書いておられる。が、最近ご主人に先立たれた。シルバーバーチが歓迎の言葉をこう述べた。
 「あなたのペンの力で生き甲斐を見出してから他界した大勢の人に代わって、私が歓迎の言葉と感謝の気持を述べる機会を持つことが出来て、とても嬉しく思います。私達にはあなたから慰めを得た人々の心、あなたの健筆によって神の恵みに浴することが出来た魂が目に見えるのです。道を見失える者、疲れ果て困惑し切ってあなたの下を訪れる人々に、あなたは真心を込めて力になってあげられました。自分を人に為に役立てること、これが私達にとって最も大切なのです」

-ご理解頂いているように、ともかく私は人の為にお役に立ちたいのです。

 「私達の価値判断の基準は地上とは異なります。私達は、出来ては消え行く泡沫のような日々の出来事を、物質の目でなく魂の知識で見つめます。その意味で私達は、悲しみの涙を霊的知識によって平静と慰めに置き換えてあげる仕事に携わっている人に心から拍手喝采を送るものです。地上の大方の人間があくせくとして求めているこの世的財産を手に入れることより、たった一人の人間の魂に生き甲斐を見出させてあげることの方がよほど大切です。
 有為転変極まりない人生の最盛期において、あなたはその肩に悲しみの荷を背負い、暗い谷間を歩まねばならないことがありましたが、それも全ては、魂が真実なるものに触れて初めて見出せる真理を直接に学ぶ為のものでした。大半の人間がとかく感傷的心情から、或いは様々な魂胆から大切にしたがる物的なものに、必要以上の価値を置いてはいけません。そうまでして求める程のものではないからです。いかなる魂をも裏切ることのない中心的大原理すなわち霊の原理にしがみ付かれることです」

 更にシルバーバーチはその文筆家が主人を亡くしたばかりであることを念頭に置きながらこう続けた。
 「あなたが今こそ学ばねばならない大切な教訓は、霊の存在を人生の全ての拠り所とすることです。明日はどうなるかという不安の念を一切かなぐり捨てれば、きっとあなたも、その後に訪れる安らぎと静寂と共に、それまで不安に思っていた明日が実は、これから辿らねばならない道においてあなたを一歩向上させるものをもたらしてくれることに気付かれる筈です。非常に厳しい教訓ではあります。しかし、全ての物的存在は霊を拠り所としていることはどうしようもない事実なのです。物的宇宙は全大宇宙を支配する大霊の表現であるからこそ存在し得ているのです。そしてあなたもその身体に生命と活力を与えている大霊の一部であるからこそ存在し得ているのです。物的世界に存在するものは全て霊に依存しております。言わば実在という光の反射であって、光そのものではないのです。
 私達としては、あなた方人間に理想を披瀝するしかありません。言葉をいい加減に繕うことは許されません。あなたがもし魂の内部に完全な平静を保つことが出来れば、外部にも完全な平静が訪れます。物的世界には自分を傷付けるもの、自分に影響を及ぼすものは何一つ存在しないことを魂が悟れば、事実、この世に克服出来ない困難は何一つありません。かくして、訪れる一日一日が新しい幸せをもたらしてくれることになります。いかに優れた魂にとっても、そこまでは容易に至れるものではないでしょう。
 しかし人間は苦しい状態に陥ると、それまでに獲得した知識、入手した証拠を改めて吟味し直すものです。本当に真実なのだろうか、本当にこれでいいのだろうか、と自問します。しかし、これまで何度も申し上げて来たことですが、ここで又言わせて頂きます。万事が上手く行っている時に信念をもつことは容易です。が、信念が信念としての価値をもつのは暗雲が太陽を遮った時です。が、それはあくまでも雲に過ぎません。永遠に遮り続けるものではありません」
 (訳者注-この後に続く部分は第四巻の八章「質問に答える」の中で質問(四)として引用されている。次の問答はその続きとしてお読み頂きたい)

-最近の大規模な疎開政策によって家族関係が破壊され、それが責任意識に欠けた若者を生む原因になっていると私は考えるのですが、いかがでしょうか。

 「そういうことも考えられます。が、それが全てというわけではありません。元来家族というのは子供の開発成長にとっての理想的単位であるべきなのですが、残念ながらこれにも多くの例外があります。私が思うに、暴力行為を誘発すると同時に道徳基準を破壊してしまうという点において、やはり何といっても戦争が最大の原因となっております。一方で相手を殺すことを奨励しておいて、他方で戦争になる前のお上品さを求めても、それは無理というものです。

-結局、社会環境を改善するしかないように思います。

 「その為に霊的実在についての知識を普及することです。自分が霊的存在であり物的存在ではないこと、地上生活の目的が霊性の開発と発達にあることを全ての人間が理解すれば、これ程厄介な野獣性とか暴力の問題は生じなくなることでしょう」

 これにサークルのメンバーが「そうなれば当然戦争などは起こり得ないですね」と相槌を打つと、シルバーバーチが-
 「人類の全てが霊性を認識し、人類という一つの家族の一員としてお互いの間に霊という不変の絆がありそれが全員を神の家族たらしめているということを理解すれば、地上から戦争というものが消滅します」

 別のメンバーが「それが所謂不戦主義者の態度なのですね?」と述べると-
 「私はラベルには関心がありません。私はなるべく地上のラベルには係わり合わないようにしております。理想、理念、動機、願望-私にとってはこうしたものが至上の関心事なのです。例えば自らスピリチュアリストをもって任じている人が必ずしもスピリチュアリズムを知らない人よりも立派とは言えません。不戦主義者と名乗る人がおり、その理念が立派であることは認めますが、問題は結局その人が到達した霊的進化の程度の問題に帰着します。不完全な世の中に完全な矯正手段を適用することは出来ません。時には中途半端な手段で間に合わせざるを得ないこともあります。世の中が完全な手段を受け入れる用意が出来ていないからです。こちらの世界では高級な神霊はまず動機は何かを問います。動機がその行為の指標だからです。もし動機が真摯なものであれば、その人の願望は丸々我欲から出たものでないことになり、従って判断の基準も違って来ます」
 (訳者注-最期に述べている〝丸々我欲から出たものではない〟というセリフは注目すべきであろう。前巻でも注釈しておいたことであるが、シルバーバーチは〝利己性〟を全ていけないものとは見ていない。霊的なものに目覚めた当初はとかく完全な純粋性を求め、それが叶えられない自分を責めがちであるが、肉体という〝悲しい程不自由な牢〟に閉じ込められている人間に、そのような完全性を求めるつもりはさらさらないようである。だから〝動機さえ正しければ〟ということになるのである)

 ここで先程の女性が「立派な兵士と真面目な不戦主義者が共に正しいということもありうるのですね」と述べると-

 「その通りです。二人の動機は一体何かを考えればその答えが出ます。何事も動機がその人の霊的発達の程度の指標となります」

-こういう場合には自分だったらこうするだろうということは予断出来ないと思うのです。

 「そうなのです。なぜかと言えば、人間はその時点までに到達した進化の程度によって制約されていると同時に、地上生活での必需品として受け継いだ不可避の要素(前世からの霊的カルマ、肉体の遺伝的要素などが考えられる-訳者)の相互作用の影響も受けるからです。ですから、常に動機が大切です。それが、どちらが正しいかを判断する単純明快な基準です。仮に人を殺めた場合、それが私利私欲、金銭欲、その他の利己的な目的が絡んでいれば、その動機は浅はかと言うべきでしょうが、愛する母国を守る為であれば、その動機は真摯であり真面目です。それは人間として極めて自然な情であり、それが魂を傷付けることにはなりません。ただ残念なことに、人間は往々にしてその辺のところが曖昧なことが多いのです」

 別のメンバーが「勿論あなたは人を殺めるということそのものを良いことだとは思われないでしょう」と言うと、
 「勿論です。理想としては殺し合うことは間違ったことです。ですが、前にも述べたことがありますように、地上世界では二つの悪いことの内の酷くない方を選ばざるを得ないことがあるのです」
 (訳者注-この後の死刑制度についての問答は同じく第四巻の「質問に答える」の質問(四)の最後に引用されているが、これをカットすると脈絡が取れにくくなるので再度掲載しておく)