(シルバーバーチの霊訓2巻より)
ロンドンの質素なアパートの一室でシルバーバーチと名乗る古代霊が、入神した霊媒の口を借りて現代に生きる人々の為の人生訓を説き続けている。本来の高い霊格を隠す為に無名の北米インディアンの姿に身をやつし、大切なのは自分の語る中身であって自分の身元ではないことを強調するのである。
シルバーバーチの使命は宇宙を支配する不変の理法についての知識を広めることにある。それを流暢で美しい、しかも平易な言葉で説き明かす。
こうして私が綴っている間も世界は又もや猜疑と不信の渦中に巻き込まれて行きつつある(第二次大戦の予兆)。不吉な流言が飛び交い、恐怖が地上に忍び寄っている。貧困と飢餓が各地に発生している。猜疑心が地球を二分している。信頼と善意の欠如の為に、差し出した友愛の手が拒絶されている。
思うに、もしシルバーバーチの平易でしかも実用的な教訓が日常生活に応用されれば、間違いなく四海同胞の時代が到来するであろうことに同意しない人はまずいないであろう。
所謂ハンネン・スワッハー・ホームサークルのメンバーが定期的に交霊会を開くのは、そのシルバーバーチの霊訓を広める為に他ならない。霊言は速記者によって記録され、各種の雑誌や書物を通じて世界各地に広められている。
この愛すべきインディアンはこうして世界中に無数の同志を作って来たが、その大半は一度もその交霊会に出席したこともなれば、メンバーと直接会ったこともない人ばかりである。中には余りの苦しみにシルバーバーチの救いの言葉を求めて便りを寄せる人もいる。
それに対してシルバーバーチはいつでも喜んで助言を与え人生哲学を説いて聞かせる。これまでも数え切れない程の人が慰めと援助の言葉を授かって来たが、その一つとして無名の南アフリカ人のネーピア氏の場合を紹介しよう。
まずネーピア氏が交霊会の司会者であるスワッハー氏に宛てて「見知らぬ者が突然手紙で助言を求める失礼をお許し下さい」との書き出しで自己紹介し悩みを披瀝した後、シルバーバーチの霊言との出会いの感激をこう綴った。
「・・・・それを読んで私は、これでやっと真理探究の目的地に辿り着いたと確信しました。失うものが多かっただけに、それだけ補うものを用意してくれたのだと思いました。一読して、これだ!と思ったのです。あまりの感動に私はまるでシルバーバーチが私の直ぐ側にいて語りかけ、助言し、理解と忍耐と慈悲の心で接してくれているように感じた程です。私は本当にそんなことがあるのだろうかと思ったりしました。私の魂はすっかりシルバーバーチに奪われてしまったからであり、それ程の緊密な接触を求めるまでに至っていたからです。
私がこうしてお便りしたのは果してそんなことが実際にあるのかどうかをお聞きする為です。この遠きアフリカにいる私如き者にお教え頂けますでしょうか。私に代わってシルバーバーチにお聞きくださいますでしょうか。そして、あなたを通じてシルバーバーチのご返事をお聞きしたいのです。見知らぬ者からのお願いとしては虫が良過ぎるでしょうか。(攻略)」
この手紙はやむを得ない事情で到着が遅れはしたが、私達の催す交霊会でシルバーバーチのもとに届けられた。朗読されるのを聞き終わったシルバーバーチはこう語った。
「この方にこうお伝え下さい。大いなる勇気をもつこと、大自然の中に生きその変転極まりない現象に接して来た人間ならその背後に法則が存在することに気付いておられる筈だということです。その法則は寸分の狂いもなく機能しております。神は大自然の隅々まで配慮し無限の変化を律している如くに、人間の一人一人にもそれなりの備えを用意して下さっております。
過ぎ去ったことに未練を抱いても何にもなりません。人生は過去ではなく現在に生きなければなりません。目を魂の内奥に向け、神の授け給うた泉から潜在力を引き出し、信念から生まれる冷静さをもって人生に対処出来るよう、力と安らぎを求めて祈ることです。
又こうお伝え下さい。この方には奥さんという実物教訓とすべき信仰をもつ人の愛に浴していることを喜ぶべきです。自分の心の中の嵐を鎮めることです。そして真の自我に目覚めることによって神を悟った人から平穏なる安らぎを求めることです。静かに己を見つめ、その静寂の中にそれまで知らずにいた真の自我を見出した時、心の葛藤も終わりを告げることでしょう。どうかその方によろしくお伝え下さい。そしてこう言い添えて下さい-挫けてはいけない。怯んではいけない。神は決してお見捨てにならない、と」
このシルバーバーチの言葉をスワッハーからの手紙で読んだネーピア氏はその喜びをこう語っている。
「この美しいシルバーバーチの言葉から受けた大いなる慰めと喜びを私はどう言い表したらよいか、言葉もありません。心の奥深く染みる思いが致します。きっと喜んで頂けることと思いますが、スワッハー氏に初めてお手紙を差し上げて以来私も随分進歩し、実は当地に新たに設立されたスピリチュアリスト教会の会長のご指名を受けたばかりなのです。願わくば私に代わってシルバーバーチに私の感謝の言葉をお伝え頂き、同時に、授かったご忠言を実行に移すことによって心の柵を乗り越え、荒れた道を無事通過し、今ではご指摘頂いた道にしっかりと足を踏まえていることをお伝え頂ければ幸いです」
そしてシルバーバーチを〝素晴らしき霊〟と呼んで、こう結んでいる。
「私が怏々(おうおう)として長年求めて尚得られなかった真の信仰と幸せを見出し闇から光明へと導いてくれたのは、実にこのシルバーバーチの霊訓でした。全てシルバーバーチのお蔭です。その霊訓が、同じくシルバーバーチから慰めを得ていた妻を通じてもたらされたのです。この事実をありのまま申し上げ感謝の意を表すのも礼儀であるという私の考えにきっとご賛同頂けるものと確信致します。そのようにお伝え頂けますでしょうか」
この言葉をスワッハーが読むのを聞いたシルバーバーチはこう語った。
「魂が目を覚ました人間からこうしたメッセージを受けて私こそ感謝の念を禁じ得ません。私も彼と共に神に感謝の祈りを捧げましょう。しかし彼にこう伝えて下さい。彼が暗闇の中から這い出て光明を見出したように、つまり己の誤りから長い間苦悩の道を歩んだ後に真理を見出したように、今度は他人にそうしてあげなければならない。即ち人生の不安を和らげいまだ味わえずにいる心の安らぎを見出すことが出来るよう、手助けをしてあげなければいけないということです。その人の体験を単なる結果として終わらせずに誘発剤としなければならない-つまりその真理を他人に授けなければならないということです。そこでその方にこうお伝え頂きたい。今献身的に働いておられる新しい真理普及のセンター(スピリチュアリスト教会)を、奥さん共々、叡智の光の流れ出る泉となし、今尚暗闇にいる多くの人々にその光に気付かせて頂きたい。そうすることが二人してその灯台を築かれた努力が報われる所以となることでしょう」
シルバーバーチは筆者にとっても長い間の人生のカウンセラーであり、同時によき友でもある。畏れ多い程高い霊格の持ち主でありながら常に庶民的な人間味を漂わせる。慈悲心と情愛の固まりのような方である。それというのもシルバーバーチの使命が私達地上の人間の弱点と欠点とに深く関わり合う性質のものだからであろう。しかしかつて一度たりともシルバーバーチが人を咎めるのを聞いたことがないのである。
シルバーバーチの実在性に関してはどこにも曖昧さや取り留めのなさはない。肉眼にこそ見えないが、その存在には現実味があり実体性がある。一個の生きた知的存在であり、その口を借りている霊媒(実は筆者の主人)とは全く異質の存在であることが私にはよく判る。
シルバーバーチは可能な限りいつでもどこでも援助の手を差し伸べてくれる。私もかつて困難の渦中にあった時にシルバーバーチの助言を求めたことがあるが、その助言はその時は本当だろうかと疑いたくなるようなものが時としてあった。ところが結局は必ずシルバーバーチの言った通りになって、成る程と得心がいくのである。
心温まる親しみを込めた勇気付けをしてくれる時のシルバーバーチは、普段の指導者的で哲人的な雰囲気が消えて、心優しい霊となる。例えば愛する者が他界した時などは、その人の死後の様子を告げて地上に残された身内の人々を慰めてくれる。私の父が他界した時も霊界での父の目覚めの様子を語ってくれて感動させられた。
晩年の父は熱心なスピリチュアリストであった。死後存続の知識がそれまでの人生観と生き方をすっかり変えていた。そしてシルバーバーチに深い愛着を抱いていた。死後私がシルバーバーチに父が新しい世界に目覚めた時の様子を聞いたところ、
「あなたのお父さんにとって死後の存続はごく当たり前のことでしたが、今まさにその世界を目の前にして、その素晴らしさに圧倒されておられます」という返事であった。
「父が自然さを愛する人間だったからでしょう」と私が言うと
「それもそうですが、不思議なご縁で私に対して非常に愛着をもっておられました。お父さんが目覚められると直ぐ私は弟さんが立って見ている側でお父さんの手を握り締めて〝ようこそ〟と語り掛けました。(弟は第一次世界大戦で戦死)お父さんは私達二人を見てはた目も構わずほろほろと感激の涙を流され、その身体-晩年より大きくなっておられます-を震わせておられました」そう述べてから更にこう言葉を継いだ。
「あなた方地上の人間には霊の世界の真実の相(すがた)は想像出来ません。私がどう伝えても、それより遙かに実在性の感じられる世界なのです。今ではご尊父もすっかり意識を取り戻されております。あれこれと為すべきことがあり、いずれその成果が現れるでしょう。それより、お母さんもそう長くあなたと一緒に暮らせることを期待してはいけませんよ。こちらへ来られた方が遙かにお幸せです。これ以上地上にいると大きな苦痛となります」(母はこのメッセージの後二、三ヶ月して他界した)
このようにシルバーバーチは全ての人間の悩みに同情して親身になってくれるが、その悩みを肩代わりしてくれることは絶対にない。考えてみると、もしも私達の悩みをシルバーバーチが全部取り除いてくれたら、私達は性格も個性もないロボットになってしまうであろう。私達はあくまでも自分の理性的判断力と自由意志を行使しなくてはならないのである。
そうは言うものの、私達はどっちの道を選ぶべきかでよく迷うものである。そんな時シルバーバーチはこう私達に尋ね返してその処置へのヒントを与えてくれる。
「そうなさろうとするあなたの動機は何でしょうか。大切なのはその動機です」
そのシルバーバーチがこうして地上に戻って来た動機は一体何であろうか。それは極めて明白である。受け入れる用意のある人に援助の手を差し伸べること-これに尽きる。
1949年 シルビア・バーバネル(シルバーバーチの霊訓第二巻編者)
ロンドンの質素なアパートの一室でシルバーバーチと名乗る古代霊が、入神した霊媒の口を借りて現代に生きる人々の為の人生訓を説き続けている。本来の高い霊格を隠す為に無名の北米インディアンの姿に身をやつし、大切なのは自分の語る中身であって自分の身元ではないことを強調するのである。
シルバーバーチの使命は宇宙を支配する不変の理法についての知識を広めることにある。それを流暢で美しい、しかも平易な言葉で説き明かす。
こうして私が綴っている間も世界は又もや猜疑と不信の渦中に巻き込まれて行きつつある(第二次大戦の予兆)。不吉な流言が飛び交い、恐怖が地上に忍び寄っている。貧困と飢餓が各地に発生している。猜疑心が地球を二分している。信頼と善意の欠如の為に、差し出した友愛の手が拒絶されている。
思うに、もしシルバーバーチの平易でしかも実用的な教訓が日常生活に応用されれば、間違いなく四海同胞の時代が到来するであろうことに同意しない人はまずいないであろう。
所謂ハンネン・スワッハー・ホームサークルのメンバーが定期的に交霊会を開くのは、そのシルバーバーチの霊訓を広める為に他ならない。霊言は速記者によって記録され、各種の雑誌や書物を通じて世界各地に広められている。
この愛すべきインディアンはこうして世界中に無数の同志を作って来たが、その大半は一度もその交霊会に出席したこともなれば、メンバーと直接会ったこともない人ばかりである。中には余りの苦しみにシルバーバーチの救いの言葉を求めて便りを寄せる人もいる。
それに対してシルバーバーチはいつでも喜んで助言を与え人生哲学を説いて聞かせる。これまでも数え切れない程の人が慰めと援助の言葉を授かって来たが、その一つとして無名の南アフリカ人のネーピア氏の場合を紹介しよう。
まずネーピア氏が交霊会の司会者であるスワッハー氏に宛てて「見知らぬ者が突然手紙で助言を求める失礼をお許し下さい」との書き出しで自己紹介し悩みを披瀝した後、シルバーバーチの霊言との出会いの感激をこう綴った。
「・・・・それを読んで私は、これでやっと真理探究の目的地に辿り着いたと確信しました。失うものが多かっただけに、それだけ補うものを用意してくれたのだと思いました。一読して、これだ!と思ったのです。あまりの感動に私はまるでシルバーバーチが私の直ぐ側にいて語りかけ、助言し、理解と忍耐と慈悲の心で接してくれているように感じた程です。私は本当にそんなことがあるのだろうかと思ったりしました。私の魂はすっかりシルバーバーチに奪われてしまったからであり、それ程の緊密な接触を求めるまでに至っていたからです。
私がこうしてお便りしたのは果してそんなことが実際にあるのかどうかをお聞きする為です。この遠きアフリカにいる私如き者にお教え頂けますでしょうか。私に代わってシルバーバーチにお聞きくださいますでしょうか。そして、あなたを通じてシルバーバーチのご返事をお聞きしたいのです。見知らぬ者からのお願いとしては虫が良過ぎるでしょうか。(攻略)」
この手紙はやむを得ない事情で到着が遅れはしたが、私達の催す交霊会でシルバーバーチのもとに届けられた。朗読されるのを聞き終わったシルバーバーチはこう語った。
「この方にこうお伝え下さい。大いなる勇気をもつこと、大自然の中に生きその変転極まりない現象に接して来た人間ならその背後に法則が存在することに気付いておられる筈だということです。その法則は寸分の狂いもなく機能しております。神は大自然の隅々まで配慮し無限の変化を律している如くに、人間の一人一人にもそれなりの備えを用意して下さっております。
過ぎ去ったことに未練を抱いても何にもなりません。人生は過去ではなく現在に生きなければなりません。目を魂の内奥に向け、神の授け給うた泉から潜在力を引き出し、信念から生まれる冷静さをもって人生に対処出来るよう、力と安らぎを求めて祈ることです。
又こうお伝え下さい。この方には奥さんという実物教訓とすべき信仰をもつ人の愛に浴していることを喜ぶべきです。自分の心の中の嵐を鎮めることです。そして真の自我に目覚めることによって神を悟った人から平穏なる安らぎを求めることです。静かに己を見つめ、その静寂の中にそれまで知らずにいた真の自我を見出した時、心の葛藤も終わりを告げることでしょう。どうかその方によろしくお伝え下さい。そしてこう言い添えて下さい-挫けてはいけない。怯んではいけない。神は決してお見捨てにならない、と」
このシルバーバーチの言葉をスワッハーからの手紙で読んだネーピア氏はその喜びをこう語っている。
「この美しいシルバーバーチの言葉から受けた大いなる慰めと喜びを私はどう言い表したらよいか、言葉もありません。心の奥深く染みる思いが致します。きっと喜んで頂けることと思いますが、スワッハー氏に初めてお手紙を差し上げて以来私も随分進歩し、実は当地に新たに設立されたスピリチュアリスト教会の会長のご指名を受けたばかりなのです。願わくば私に代わってシルバーバーチに私の感謝の言葉をお伝え頂き、同時に、授かったご忠言を実行に移すことによって心の柵を乗り越え、荒れた道を無事通過し、今ではご指摘頂いた道にしっかりと足を踏まえていることをお伝え頂ければ幸いです」
そしてシルバーバーチを〝素晴らしき霊〟と呼んで、こう結んでいる。
「私が怏々(おうおう)として長年求めて尚得られなかった真の信仰と幸せを見出し闇から光明へと導いてくれたのは、実にこのシルバーバーチの霊訓でした。全てシルバーバーチのお蔭です。その霊訓が、同じくシルバーバーチから慰めを得ていた妻を通じてもたらされたのです。この事実をありのまま申し上げ感謝の意を表すのも礼儀であるという私の考えにきっとご賛同頂けるものと確信致します。そのようにお伝え頂けますでしょうか」
この言葉をスワッハーが読むのを聞いたシルバーバーチはこう語った。
「魂が目を覚ました人間からこうしたメッセージを受けて私こそ感謝の念を禁じ得ません。私も彼と共に神に感謝の祈りを捧げましょう。しかし彼にこう伝えて下さい。彼が暗闇の中から這い出て光明を見出したように、つまり己の誤りから長い間苦悩の道を歩んだ後に真理を見出したように、今度は他人にそうしてあげなければならない。即ち人生の不安を和らげいまだ味わえずにいる心の安らぎを見出すことが出来るよう、手助けをしてあげなければいけないということです。その人の体験を単なる結果として終わらせずに誘発剤としなければならない-つまりその真理を他人に授けなければならないということです。そこでその方にこうお伝え頂きたい。今献身的に働いておられる新しい真理普及のセンター(スピリチュアリスト教会)を、奥さん共々、叡智の光の流れ出る泉となし、今尚暗闇にいる多くの人々にその光に気付かせて頂きたい。そうすることが二人してその灯台を築かれた努力が報われる所以となることでしょう」
シルバーバーチは筆者にとっても長い間の人生のカウンセラーであり、同時によき友でもある。畏れ多い程高い霊格の持ち主でありながら常に庶民的な人間味を漂わせる。慈悲心と情愛の固まりのような方である。それというのもシルバーバーチの使命が私達地上の人間の弱点と欠点とに深く関わり合う性質のものだからであろう。しかしかつて一度たりともシルバーバーチが人を咎めるのを聞いたことがないのである。
シルバーバーチの実在性に関してはどこにも曖昧さや取り留めのなさはない。肉眼にこそ見えないが、その存在には現実味があり実体性がある。一個の生きた知的存在であり、その口を借りている霊媒(実は筆者の主人)とは全く異質の存在であることが私にはよく判る。
シルバーバーチは可能な限りいつでもどこでも援助の手を差し伸べてくれる。私もかつて困難の渦中にあった時にシルバーバーチの助言を求めたことがあるが、その助言はその時は本当だろうかと疑いたくなるようなものが時としてあった。ところが結局は必ずシルバーバーチの言った通りになって、成る程と得心がいくのである。
心温まる親しみを込めた勇気付けをしてくれる時のシルバーバーチは、普段の指導者的で哲人的な雰囲気が消えて、心優しい霊となる。例えば愛する者が他界した時などは、その人の死後の様子を告げて地上に残された身内の人々を慰めてくれる。私の父が他界した時も霊界での父の目覚めの様子を語ってくれて感動させられた。
晩年の父は熱心なスピリチュアリストであった。死後存続の知識がそれまでの人生観と生き方をすっかり変えていた。そしてシルバーバーチに深い愛着を抱いていた。死後私がシルバーバーチに父が新しい世界に目覚めた時の様子を聞いたところ、
「あなたのお父さんにとって死後の存続はごく当たり前のことでしたが、今まさにその世界を目の前にして、その素晴らしさに圧倒されておられます」という返事であった。
「父が自然さを愛する人間だったからでしょう」と私が言うと
「それもそうですが、不思議なご縁で私に対して非常に愛着をもっておられました。お父さんが目覚められると直ぐ私は弟さんが立って見ている側でお父さんの手を握り締めて〝ようこそ〟と語り掛けました。(弟は第一次世界大戦で戦死)お父さんは私達二人を見てはた目も構わずほろほろと感激の涙を流され、その身体-晩年より大きくなっておられます-を震わせておられました」そう述べてから更にこう言葉を継いだ。
「あなた方地上の人間には霊の世界の真実の相(すがた)は想像出来ません。私がどう伝えても、それより遙かに実在性の感じられる世界なのです。今ではご尊父もすっかり意識を取り戻されております。あれこれと為すべきことがあり、いずれその成果が現れるでしょう。それより、お母さんもそう長くあなたと一緒に暮らせることを期待してはいけませんよ。こちらへ来られた方が遙かにお幸せです。これ以上地上にいると大きな苦痛となります」(母はこのメッセージの後二、三ヶ月して他界した)
このようにシルバーバーチは全ての人間の悩みに同情して親身になってくれるが、その悩みを肩代わりしてくれることは絶対にない。考えてみると、もしも私達の悩みをシルバーバーチが全部取り除いてくれたら、私達は性格も個性もないロボットになってしまうであろう。私達はあくまでも自分の理性的判断力と自由意志を行使しなくてはならないのである。
そうは言うものの、私達はどっちの道を選ぶべきかでよく迷うものである。そんな時シルバーバーチはこう私達に尋ね返してその処置へのヒントを与えてくれる。
「そうなさろうとするあなたの動機は何でしょうか。大切なのはその動機です」
そのシルバーバーチがこうして地上に戻って来た動機は一体何であろうか。それは極めて明白である。受け入れる用意のある人に援助の手を差し伸べること-これに尽きる。
1949年 シルビア・バーバネル(シルバーバーチの霊訓第二巻編者)