(シルバーバーチの霊訓4巻より)

 霊的交信という不安定な関係を永年に亘って維持し続けている数多くの優れた支配霊の中でも、ハンネン・スワッハー・ホームサークルの霊言霊媒モーリス・バーバネルの支配霊シルバーバーチ程広く愛され、しかるべき敬意を受けている霊はまずいない。
 本書の目的はそのシルバーバーチの膨大な霊言の記録の中から、今尚霊的実在の理解へ向けて刻苦している人類にとって不滅の意義をもつシルバーバーチならではの叡智の幾つかを選んでお届けすることである。
 私は当初、既に出版されている霊言集の中から幾つかの主題に分けて抜粋しようと思った。つまり〝枕辺のシルバーバーチ〟とでも呼ぶべきものが最初の構想だったのである。
 ところが、いざ手がけてみると、シルバーバーチの霊言はそう簡単に扱えるものでないことが分かった。大画家、大劇作家、大作曲家と同じく、シルバーバーチというのは常に人間的体験の重大なテーマを扱うか、永遠の普遍的真理を説き明かそうとしているかの、いずれかであることが分かった。一見些細に思える問題について質問すると、シルバーバーチは直ぐにそれを宇宙の大哲理の本流に繋がった支流として扱うのである。
 そこで私は、いっそのことその本流に足を踏み入れて、真理、死、恐怖心、愛、不滅性、人生の摂理、大霊すなわち神、その他幾つかの関連した問題についてのシルバーバーチの言葉を集めることにした。
 さてシルバーバーチの霊言の流暢さについては今更申し上げるまでもない。経験豊かなさるジャーナリスト(モーリス・バーバネル)の言葉を借りれば-
 「シルバーバーチの教えは言わば霊の錬金術、つまりアルファベットの26文字を操って輝かんばかりの美しい言葉を生み出す能力の典型である。年がら年中物を書く仕事をしている人間から見れば、毎週毎週ぶっつけ本番でこれ程叡智に富んだ教えを素朴な雄弁さでもって説き続けることそれ自体が既に超人的であることを示している。
 ペンに生きる他のジャーナリストと同様、私も平易な文章程難しいものはないことを熟知している。誰しも単語を置き換えたり削ったり、文体を書き改めたり、字引や同義語辞典と首っ引きでやっと満足のいく記事が出来上がる。ところがこの〝死者〟は一度も言葉に窮することなく、スラスラと完璧な文章を述べていく。その一文一文に良識が溢れ、人の心を鼓舞し精神を昂揚し、気高さを感じさせる。
 シルバーバーチは宗教とは互いに扶助し合うことに尽きると言う。神とは自然法則であり、腹を立てたり復讐心を剥き出しにする人間的な神ではないと説く。その言葉一つひとつにダイヤモンドの輝きに似たものがある。その人物像はまさしく〝進化せる存在〟であり、全人類への愛に満ち、世故に長けた人間の目には見えなくても、童子の如き心の持ち主には得心のいく真理を説き明かそうとする。迷える人類の為に携えて来たメッセージは〝人の為に自分を役立てなさい〟ということしかないと言いつつも、そのたった一つの福音の表現法はキリがないかに思える程多彩である。
 永年に亘ってその霊言に親しんできた者として、ますます敬意を覚えるようになったこの名文家、文章の達人に私は最敬礼する」
 第一集の Teachings of Silver Birch (後注①)を読んだ英国新聞界の大物の一人で政治家でもあるビーバーブルック卿 W.M.A.Beaverbrook は当時の交霊会の司会者であるハンネン・スワッハー(第一巻21頁参照)へ宛てた手紙の中で〝文章が実に美しい。そして私はその内容の純真・素朴さに心を打たれました〟と激賞している。
 第二集の More Teachings of Silver Birch (後注②)について Natal Daily News 紙は〝イギリスの言語をこれ程優しく、これ程簡潔に、これ程美しく操った書は滅多にない〟と論評し、〝英語による表現の最高傑作の一つ〟として The Book of the Week (その週の推薦図書)に推している。又、その中の一節が〝これだけのものはチャーチル程の名文家にも書けない〟と激賞されている。
 そしてこの度は Wisdom of Silver Birch (邦訳シリーズ第三巻)が Aberdeen Press and Journal 紙によって激賞され、同じくその文章表現の自在な躍動ぶりがチャーチルの名文にも匹敵すると述べられている。
 確かにシルバーバーチの訓え程高尚にしてしかも難解さを感じさせない思想は、世界の大宗教家の訓えは別として、他に類を見ない。しかし同時にその大宗教家達の思想も比肩しえないものも兼ね備えている。それはシルバーバーチが我々の地上とは異なる次元の世界から語りかけていることにある。
 愛他精神と素朴さと叡智に満ち、汎神論に裏打ちされたその明晰な教訓は、常に人生における霊的要素と同胞との関係における慈悲心の大切さを強調する。そして〝無色の大霊〟と呼んでいる神に対する絶対的な奉仕の生活を唱道する。
 シルバーバーチには現代の聖人と呼ばれるアルバート・シュバイツァーに見られるのと同じ、苦しむ人類への献身的精神と全生命に対する畏敬が見られる。同時に(英国の詩人)シェリーの詩を一貫している洞察力の純粋さと、万物に同じ霊の存在を認める思想を見ることも出来る。しかしその二人の稀代の天才とも異なるものがある。二人は、作品と業績はさておくとして、その哲理に普通一般の人間の理解の及ばないものが時として見られるが、シルバーバーチは〝知〟に偏ることがない。繰り返し一貫して説くテーマは〝摂理への従順〟である。
 ではその摂理とは何か。それをシルバーバーチ自身に語って頂くことにしよう。

 ウィリアム・ネイラー(シルバーバーチの霊訓第四巻編者)