〝新聞界の法王〟の異名をもつ世界的ジャーナリスト・ハンネン・スワッハー氏がシルバーバーチの交霊会の様子を次のように紹介している。

 自分を人の為に役立てること-これが繰り返し説かれ強調されて来たシルバーバーチの教訓の〝粋〟である。それを折りある毎に新たな譬えで説き、別の言葉で表現し、深い洞察力と眼識の光で照らし出してみせてくれる。我々レギュラーメンバーにとっては何年もの間繰り返し聞かされて来たことであるが、招待された新参者にとっては一種の啓示である。
 数日前も私は三人の知人を招待した。三人共シルバーバーチの霊言に興味を抱く新参者である。その内の一人は爵位をもつ家柄の夫人でありながら庶民層への施しの必要性を説く仕事に身を投じて来られた。交霊会の頭初からシルバーバーチが夫人の心を読み取っていることを思い知らされた。
 「あなたは私共の説く教説の真実性をかねがね痛感しておられましたね」とシルバーバーチが語り始めた。「あなたはこれまて宗教の名の下に与えられて来た教説には不満を抱いておられました。これまで得た知識に加えて是非ともこのスピリチュアリズムの知識が必要であることを痛感されました。そして何年か前に、残りの生涯をご自分より不幸な人々の為に捧げようと密かに決意なさいました」
 「仰る通りです」と夫人が答えると、続けてシルバーバーチは、しばしば困難に遭遇するその仕事についてこう述べて勇気付けた。
 「あなたが片時も一人ぼっちでいることはないことはご存知でしょう。人の為に尽くそうとされるその願望は自動的に私共の世界で同じ願望を抱く博愛心に燃える霊を惹き寄せます。なぜならば双方に理解力における親和性があるからです。永遠に変わらぬものは〝愛〟です。人の為に尽くしたいという願望から発する真実の愛です。私共は肩書も党派も教義も宗派も興味ありません。その人がその日常生活において何を為しているかにしか興味はないのです。
 私共にとっては〝人の為に尽くすこと〟が宗教の全てなのです。人の為に生きる者こそ最も神に近い存在なのです。そこに魂の存在価値があるのであり、人の為という願望を抱く者は自動的にこちらの世界で同じ願望を抱いている霊を引き寄せます。その人間を介して自分を役立てたいと思う霊が寄って来るのです。こちらの世界には地上で人類解放の為に生涯を捧げた霊が無数におります。その気高い使命は墓場で終わったのではありません。霊の世界へ来てからの体験によって寧ろその使命感を一層強烈に感じるようになります。霊界から地上世界を見ると悲劇と悪行が目に余ります。強欲と利己主義と略奪が横行し、改めねばならないことが無数にあることが判ります。そこでそんな地上を少しでも良くし少しでも美しくする為に自分を役立てる為の媒体として同じ願望を抱く人間を求めるのです。
 これが人の為に役立てるということの仕組みです。つまり自分を無にして霊の力に委ねるのです。霊の力を取り止めのないもののように想像してはいけません。実体があり直接的にあなたの心に触れることが出来るのです。それがあなたを通じて更に他人へ働きかけ、より大きな悟りを開く助けとなります」
 ここで夫人が良い講演をするにはどうしたらよいかを尋ねた。するとシルバーバーチは、「精神統一をなさることです。時には煩雑なこの世の喧騒を離れて魂の静寂の中へお入りになることです。静かで受身的で受容性のある心の状態こそ霊にとって最も近付き易い時です。静寂の時こそ背後霊が働きかける絶好機なのです。片時も静寂を知らぬような魂は騒音のラッシュの中に置かれており、それが背後霊との通信を妨げ、近付くことを不可能にします。
 ですから、少しの間でいいのです。精神を静かに統一するよう工夫することです。すると次第に役に立つよい考えが浮かんで来るようになります。背後霊のオーラとあなたのオーラとが融合する機会が多い程、それだけ高度なインスピレーションが入って来ます。どれ程多くの愛があなたの周りを包んでいるか、それが判って頂けないのが残念です。その様子を言葉でお伝えするのは容易ではありません。
 人間は目に見え耳に聞こえるものによって現実を判断します。お粗末な手段であるとはいえ、止むを得ないことです。しかし本当は身の回りの目に見えないところに同じ志を抱く霊が待機し、堕落せる者を立ち上らせ、心弱き者を元気付け、困窮せる者を救い、病人を癒し、肉親に先立たれた人を慰め、道に迷える者、疲れ果て煩悶する者達に知識と叡智と悟りを授けんとして、その好機を窺っております。あなたには為すべきことがあります。そして、いずれおやりになることでしょう」

 もう一人の招待客は出版業を営む男性で、ヨーロッパ中に洪水の如く良書を行き渡らせることが夢である。というのは知的水準の高い良書という良書がヒトラー政権のナチ党員によって焼却されてしまい、今その失われた知識を求める声がしきりに聞かれるからである。
 シルバーバーチはこの男性に対し、これまでも霊が陰から援助して来ている事実を語り、のっぴきならぬ状態に差し掛かる度に霊の救いの手が差し伸べられてきた事実を指摘した。そして書物を出版する仕事はただの商売と呼ぶ人がいるかも知れないが立派に神の計画の一翼を担っていること、そして彼の動機の崇高さの故に何者も阻止し得ないことを説いてからこう語る。
 「私には人生に疲れ切った人間の数々-生活は暗く、あたかも霧と靄の中で暮らしているような人間、肉体的にも知的にも霊的にも雁字搦めにされた人間が見えます。そこで私共はその束縛から解き放す為の援助の手を差し伸べようと願っているのです。あなたには今心で願っておられることを成就するチャンスがあります。怖れることなく、そして立ち塞がる困難に惑わされることなく、あなたがこれまで少なくとも三度は試みられたことを今一度試して頂きたい。真一文字に突き進みなさい。障害と思えることも、近付いて行けば雲散霧消します。
 忘れないで下さい。あなたに生命を賦与した力、あなたに息吹を与えたエネルギー、あなたに意識を与えた生命力は、この宇宙を創造し極小極大を問わず全存在に生命を与えたのと全く同じものなのです。心に唯一の目的を抱いて真一文字に進むことです。そうすれば必ずその力があなたを支えてくれます」

 三人目の招待客は右の出版業者の秘書で、いきなりシルバーバーチからお褒めの言葉を頂戴して赤面した。見通しの真っ暗な時、出版による文化の普及が最早絶望的と思えた時期にこの女性が社長を励まし続けてきた。これも人の為である。シルバーバーチはこう語りかけた。
 「あなたも細胞の寄せ集め以上のものを宿しておられるお一人です。黄金の心、純金の心、最高の金で出来た心をお持ちです。これまで精錬と純化を重ねて、今まさに最高の光沢をもって輝いております。そこには憎しみの念など一欠片もありません。愛と哀れみの情が溢れております。
 そのあなたに大切な仕事があります。私が申し上げることは、まっしぐらにその道を進むこと、それだけです。生命、愛、記憶、意識-こうしたものは墓場を超えて存続し、この世的な取り越し苦労、病気、苦痛から解放された霊が新たなエネルギーと生命力をもって心機一転してあなた方を援助してくれます。あなたのこれからの人生にも期待出来ることが大いにあります。自信をもって邁進なさることです」
 その秘書が謙虚に「私は本当に無力なのです」と述べると、シルバーバーチはこう語った。
 「ご自分で思っておられる程無力ではありません。女性は男性に較べて知性よりも情緒によって支配される為に弱い面があります。しかしそれは決して悪いことではありません。それだけ感受性が強いということだからです。男性より繊細な属性を具えており、それだけ私達霊界の者からの働きかけに敏感であり、影響を受け易いということになります。
 その点男性はあまり情緒性がありません。その生活は心より頭によって支配されております。精妙な生命力の働きに女性程敏感でなく、為に情緒の自然な発露としての喜びの多くが感識出来ないのです。
 無論女性が情緒的であることにもマイナス面はあります。心の痛みを男性よりも強く感じてしまうことです。しかしそれも身体にはない魂の属性の一つであることに変わりありません」

 交霊会を閉じる直前にシルバーバーチは今自分の側にキア・ハーディ(英国の政治家で労働党の創設者の一人)が立っていたと言い、本日彼が来た理由は招待客の一人で最初に紹介した婦人がキア・ハーディの熱烈なファンであったからだと説明した。そしてこう語った。
 「ハーディ氏は偉大な霊の一人です。氏には庶民一般に対する思いやりがあります。氏はこれまで社会事情の推移を残念に思っていないと言っておられます。というのは庶民の権利獲得の闘争は永くそして漸進的なものであることを覚悟しておられるからです。氏は庶民が一段又一段と生得の権利の獲得を目指して梯子を昇って行く様子を見つめております。それを阻止出来るものはないと氏は信じております。
 庶民の幸福を妨げようとする運動は決して永続きしません。なぜなら、いかなる人間も、いかなる階級も、いかなる教義も、神の子を騙してその生得の権利を奪うことは許されないからです。一時的には神の計画を邪魔することは出来ます。しかし霊的な力は人間の力より大きく、正義の為に闘う者は必ず勝利を収めます。ハーディ氏もその正義の福音を信じておられるのです。ここで私達全てが大いなる目的の為の道具であることを銘記しましょう」そう述べてから、いつものように締めくくりの言葉に入った。
 「常に崇高なる目的の為に我々を使用せんとする偉大なる力の存在を忘れぬように致しましょう。常に神と一体であるように生活に規律を与え、神の心を我が心と致しましょう。そうすれば我々が神の意図された通りに努力していることを自覚することでしょう。神の御恵みの多からんことを」
 かくして人の為に尽くさんと心掛けている人々が心を新たにし、勇気を新たにして会を後にする。

 以上がハンネン・スワッファーによるある日の交霊会の描写である。〝人の為〟という教えはシルバーバーチが繰り返し説いているテーマであり、別の交霊会でもこう語っている。
 「私達が説く全教説の基調は〝人の為に己を役立てる〟という言葉に尽きます。あなた方の世界のガンとも言うべき利己主義に対して私達は永遠の宣戦を布告します。戦争を生み、流血を呼び、混乱を招き、破壊へ陥れる、かの物質万能主義を一掃しようと心を砕いております。
 私達の説く福音は互助と協調と寛容と同情の精神です。お互いがお互いの為に尽くし合う。持てる者が持たざる者、足らざる者に分け与える。真理を悟った者が暗闇にいる者を啓発する為に真理という名の財産を譲る。そうあって欲しいのです。
 地上にはその精神が欠けております。人間の一人一人が持ちつ持たれつの関係にあること、全ての人間に同じ神性が流れていること、故に神の目には全てが平等であること、霊的本性において完全に平等であるとの観念を広める必要があります。性格において、生長において、進化において、そして悟りにおいて、一歩先んじている者が後れている者に分け与えるという行為の中に偉大さがあるのです。
 霊的な仕事に携わる人達、己の霊的才能を心理探求の為に捧げる霊媒は、自己を滅却することによって実は自分が救われていることを知ることでしょう。なぜならその人達は人間はかくあるべきという摂理に則った行為をしているからです。それは取引だの報酬だのといった類のものではなく、多くを与える者程多くを授かるという因果律の働きの結果に他なりません。
 こうして今あなた方と共に遂行している仕事においても、お互い一人一人が欠かせない役割を担っております。今私達はいわば霊的戦争の兵籍に入り、あらゆる進歩の敵-改革、改善、改良、人道主義、善意、奉仕の精神を阻止せんとする勢力と対抗した闘いにおいて、霊界の軍団の指揮下に置かれております。
 私達の仕事は何世紀にも亘って無視されてきた霊的真理を人類に理解させることです。一部の人間だけに霊力の証を提供するだけでは満足出来ません。その豊かな霊的〝宝〟、驚異的な霊力が一人でも多くの人間に行き渡ることを望んでいます。無数の人間が普段の生活において真理と知識と叡智の恩恵に浴せるように、というのが私共の願いなのです。
 神からの霊的遺産として当然味わうべき生命の優美さ、豊かさを全く知らない人間の数の多さに愕然とさせられます。餓死の一歩手前で漸く生きている人々、地上生活の最低限の必需品さえ恵まれずにいる人々を座視するわけにはまいりません。地球の富の分配の不公平さを見て平然とはしておれないのです。
 それは大変な仕事です。そして、あなた方はその実現への最短距離に位置しておられます。あなた方は新しい時代に入りつつあります。人類の新しい時代の夜明けです。その恩恵の全てに浴したければ、真理の受け入れを邪魔してきた愚かな教義をかなぐり棄て、無知の牢獄から脱け出て、自らの自由意志で歩み、神が意図された通りに生きることです。
 獲得した知識は着実に実生活に生かして行くように心がけましょう。その知識全体に行き渡る霊的理念に沿って生活を律していきましょう。人間の勝手な考えや言葉や行為によって色付けせず、その理念に忠実に生き、その行為を見た全ての人から成る程神のメッセンジャー(使者)であり霊界からの朗報の運搬人であると認めてもらえるようになりましょう。
 そう努力することが又、より大きな叡智、より大きな愛を受けるに相応しい資質を身に付けることになり、又宇宙間の全生命の宿命を担いつつ一切を懐に包んでいるところの、その驚異的な霊力との一層緊密な繋がりを得ることになるのです」
 別の交霊会でシルバーバーチは「お金は盗まれることがあっても知識は絶対に盗まれません。叡智も盗まれません。そうした貴重な真理は一旦身に付いたら永遠にあなたのものとなります」と述べている。
 続いてシルバーバーチはリラックスすることの効用を次のように説く。
 「リラックスと言っても、足を暖炉の上にでも置いて椅子にふんぞり返ることとは違います。身体の活動を中止し、静かに休息して内なる自我を取り戻し、その霊力が本来の威厳と力とを発揮し潜在力が目を覚ます機会を与えることです。
 あなた方の世界にはそういう機会がありませんね。目覚めている間にすることと言えばただ忙しくあっちへ走りこっちへ走り、その場限りの他愛ない楽しみを求めて、あたら貴重な時間を費やしています。そうした物的生活に心を奪われている魂の直ぐ奥には、永遠に錆びることも色褪せることもない貴重な知識と叡智と真理の宝が、あなた方によって存分に使用されることを待ち受けているのです。一度手に入れたら永遠にあなた方の所有物となるのです」

 ここでかつてのメンバーの一人でワケあって暫く欠席し、この度何年ぶりかで再びレギュラーとなった人が、シルバーバーチが以前と少しも変わらず雄弁で魅力的で説くところも一貫して変わっていないことを述べると、
 「仰る通り私はかつてと同じ霊であり、説くところの真理も同じ真理です。ただそれを説く対象である地上の人間はかつてとは同じではありません。常に変わりつつあり、叡智の声に耳を傾け霊の力を受け入れる者が次第に増えつつあります。真理は大いに進歩を遂げました」
 そう述べながらもシルバーバーチは真理普及の立役者は自分ではないと主張してこう述べる。
 「私の力でそうなったのではありません。そんな大それたことは私は申しません。無論私も私なりに貢献しているでしょう。でもそれは無数の霊が参画している大いなる献身的事業のほんの小さな一部に過ぎません。これまで為し遂げた進歩は確かに驚異的なものがあります、しかし、もっと大きな進歩が遂げられんとしております。何事も最初が肝心なのです」

 さて、シルバーバーチは自分が霊界のマウスピース(代弁者)に過ぎないことをよく強調する。
 「私はこうした形で私に出来る仕事の限界を十分承知しておりますが、同時に自分の力の強さと豊富さに自信をもっております。自分が偉いと思っているというのではありません。私自身はいつも謙虚な気持です。本当の意味で謙虚なのです。というのは私自身はただの道具に過ぎない-私をこの地上に派遣した神界のスピリット、全てのエネルギーとインスピレーションを授けてくださる高級霊の道具に過ぎないからです。が私はその援助の全てを得て、思う存分に仕事をさせてもらえる。その意味で私は自信に満ちていると言っているのです。
 私一人では全く取るに足らぬ存在です。が、そのつまらぬ存在もこうして霊団をバックにすると、自信をもって語ることが出来ます。霊団が指図することを安心して語っておればよいのです。威力と威厳に溢れたスピリットの集団なのです。進化の道程を遙かに高く登った光り輝く存在です。人類全体の進化の指導に当たっている、真の意味で霊格の高いスピリットなのです」

 会を閉じるに当たってシルバーバーチは次のように語った。
 「私達は深刻さの中に笑いの要素をもたらしました。他界した古き知友との再会を実現させました。死によって隔てられていた絆を取り戻したことを嬉しく思います。人の為に己を捧げる者は必ず報われます。
 この集会には真剣な目的が託されていることを忘れてはなりません。人類の行く手に横たわる危険な落とし穴を教えてあげる重大な任務を帯びているからです。人生に疲れ、或いは迷う人々の心を軽やかにし、精神を目覚めさせ、指導と助言となるべき霊的な光を顕現してあげようと努力しているのです。
 困難と懐疑と絶望の中にある者には魂の避難場所を提供してあげることが出来ます。人間の歩むべき道、つまり内在する崇高な精神を存分に発現させる方法を教えることが出来ます。そして何にもまして、全ての光と全ての愛の大根源より発せられる荘厳な神的エネルギーの存在を自覚せしめます。それは決して遙か彼方の手の届かない場所にあるのではありません。全ての人間の魂に内在しているのです。
 それは実にこの大宇宙を造り上げたエネルギーであり、自然界の隅々まで流れているエネルギーであり、その存在を自覚する者が見棄てられることは絶対にありません」