私にとって、心霊現象の研究程あれこれと思索を巡らし、そして、結論を出すのにこれ程時間の掛かったものは、他にない。
 誰の人生にも、ある時ふと関わり合った事柄に心を奪われ、あっという間に青年期が過ぎ、そして中年期が足早に過ぎ去っていくという体験があるものだが、私にも、先日それを身に沁みて思い知らされることが起きた。
 心霊誌に「ライト(注1)」というのがある。地味な月刊誌だが、内容が中々いい。ある日ふと目に留まった記事に、三十年前の同じ日付の出来事が特集してあって、その中に、1887年のある交霊会における私の興味深い体験を綴った手紙が掲載されていた。それを見て、我ながらこの道への関心が随分長期間に亘っていることを思い知った。と同時に、私が心霊現象の真実性を確信してそれを公表したのはこの一、二年のことであるから、私がその結論に到達するのが決して性急だったとは言えないことも明確となった。
 本章では、これまでに私が体験してきた経験と困難の幾つかを披露するのであるが、それを〝自己中心的〟と受け止めないで頂きたい。読んで頂けば、この道を探求なさる方の誰もが体験するであろうことを、点と線で図式的にスケッチしていることがお分かり頂けると思う。それが済んでから、第二章で一般的かつ普遍的な性格のものへと進んで行きたい。

 (注1)-Light 1881年に創刊されたロンドン・スピリチュアリズム連盟の機関誌で、世界的に有名なモーゼスの『霊訓』Spirit Teachings は最初この心霊誌に連載された。