当時の代表的な霊媒はスコットランド生まれの米国人D・D・ホームで、スピリチュアリズム史上、最高・最大の評価を得ている。ある意味では〝超人〟と言ってもよいこの人物の特筆すべき点は、霊媒として三十年近くを公衆や研究者の前に身を晒しながら、一度も報酬を得たことがなかったことで、信頼のおける理性的な人であれば、喜んで要請に応じた。照明はどんなに明るくてもよかった。自宅でもよかったし他人の家でもよかった。決して資産家だったわけでもなく、身体的にはどちらかというと弱い方だった。
 現象は、今日知られている心霊現象で出来ないものはない程で、それも全て最高の形で見せた。自分自身の浮揚現象は最も有名である。重い物体を指一本触れずに持ち上げることも出来た。真っ赤に燃えた石炭を素手で取り、それを列席者に持たせることも出来た。物質化現象も心霊治療も出来た。スピリットからのメッセージをインスピレーションで伝えることも出来た。あまりの素晴らしさに、ホームを超人として崇拝の対象としようとする動きすら出始めて、ホーム自身を困らせたこともあった。
 そんなホームにも霊媒能力に盛衰があり、時には全く出なくなった時期もあった。ホームが人間としても正直者で、欲に動かされない人であることを物語る事実として、私は、そんな時にはいかなる要請にも応じなかったことを挙げたい。能力の衰えを予見して断ったこともある。パリの〝ユニオン・サークル〟という心霊グループから二千ポンド(現行のレートを二百五十円で換算して五十万円)の謝礼を提示された時も、きっぱりと断っている。
 霊媒能力の間欠性-つまり前回は実に見事だったのに、今回はどうも思わしくなかったりする性質-が、時として霊媒を不純な行為に走らせることがあるのは、残念ながら事実である。道義的勇気に欠ける霊媒はそれを正直に打ち明けることが出来ずに、下手なトリックを使ってしまう。金銭欲に負けるケースもある。第一部でも紹介したユーサピア・パラディーノは物理現象では科学者を圧倒する驚異的なものを見せながら、人間的品性と教養に欠ける人物で、上手く行かない時は平気でトリックを使い、それが簡単にバレる為に、研究者達を面食らわせたものだった。