自殺ダメ


 (自殺ダメ管理人よりの注意 この元の文章は古い時代の難解な漢字が使用されている箇所が多数あり、辞書で調べながら現代で使用するような簡単な漢字に変換して入力しています。しかし、入力の過程で、間違える可能性もあります故、どうかご了承ください)

 頽齢者(たいれいしゃ)=心身の能力が衰えてしまうほどの高齢。老齢。

 頽齢者は、地上を去る前に、或る程度記憶が衰え、理解力も弱っているので、傍からこの状況を目撃する者は、死後の世界とは、結局ヨボヨボの耄碌(もうろく)者の集り、生気と興味との稀薄なる生活を送る所と考えたがるが、これは魂と頭脳とを混同した間違った結論である。魂、つまり本人の自我は、決して耄碌などはしない。耄碌したのは独りその肉体である。肉体が非常に老衰すると、エーテル体の頭脳と、物質体の頭脳とを繋ぐ所の太い紐が破損するので、本人がまだ生きている時から、魂は止むことを得ず複体の方に引き移ってしまう。しかしそうした場合にも、エーテル体と肉体との他の部分を繋ぐ第二の紐、その他がまだ立派に存在するので、死ぬ訳にも行かないのである。こんな具合で、一見心抜きの残骸としか見えない老翁も老婆も、その中身は依然として活発な生命の保有者なのである。彼或は彼女は、単に少しばかり奥の方へ退却しているというに過ぎない。これを気の毒がるのは寧ろお門違いである。何となればこの退却こそ、実は第二の生活への躍進の門出なのであるから・・・。
 (評釈)自我とその媒体との混同の結果、いかに多くの無用な論争が、従来世間で行なわれていた事であろう。肉体は現世で使用すべき機関であるから、時節が来れば勿論老朽して、次第に役に立たなくなる。が、肉体が役に立たなくなったからとて、彼には尚幽体もあれば、霊体もあり、又本体もある。自我意識を発現せしむるに何の差支えもないどころか、上に行く程媒体が一層精妙自由になるから、死後に於いてこそ、初めて真に高尚な享楽も出来、活動も出来るというものである。マイヤースの筆は非常に簡潔であるが、極めて要領を獲ている。