自殺ダメ


 [霊界通信 新樹の通信](浅野和三郎著)より

 (自殺ダメ管理人よりの注意 この文章はまるきり古い文体及び現代では使用しないような漢字が使われている箇所が多数あり、また振り仮名もないので、私としても、こうして文章入力に悪戦苦闘しておる次第です。それ故、あまりにも難しい部分は現代風に変えております。[例 涙がホロホロ零る→涙がホロホロ落ちる]しかし、文章全体の雰囲気はなるべく壊さないようにしています。その点、ご了承ください。また、言葉の意味の変換ミスがあるかもしれませんが、その点もどうかご了承ください)

 幽界の居住者と交通を行なうに当たりて、誰しも先ず訊きたがるのは彼等の生活状態、例えばその姿やら衣食住に関する事柄やらでありましょう。彼の父の質問も決してその選には漏れませんでした。
 手帳を繰り広げて見ると、彼の父が初めて亡児に向かい、彼が幽界で執っている姿につきて質問を発したのは七月二十六日、第九回目の招霊を行なった時でした。
問「現在汝は以前の通り、自身の体があるように感ずるか?」
 すると亡児は考え考え、次のように答えました。-
答「自分というものがあるようには感じますが、しかし地上に居た時のように、手だの、足だのが、あるようには感じられません・・・・。と言ってただ空なのではない、何物かがあるようには感じます。そして造ろうと思えばいつでも自分の姿を造れます・・・・」
 この答は一方ならず彼の父を考えさせました。在来欧米に現われたる幽界通信によれば、彼岸の居住者の全部は生前そっくりの姿、或いはそれをやや理想化し、美化したような姿を固定的に有しているように書いてあります。これは深く霊魂問題に思いを潜める者の多年疑問とせる点で、これが果たして事実の全部かしら?という疑いが常に奥の奥で囁きつつあったのであります。が、多くの幽界通信の所説を無下に排斥することも又乱暴な仕業でありますので、止む無く暫くこれに関して最後の結論を下すことを避けていた訳なのですが、今この亡児の通信に接し、彼の父はなにやら一道の光明に接したような気がしたのでした。
 「こりゃあ面白い」と彼の父は独り言しました。「幽界居住者の姿は確かに造りつけのものではないらしい。それには確かに動と静、仮相と実相この両面があるらしい・・・・」
 殆どこれと前後して、彼の父はスコット女史の体を通じて現れた「ステッドの通信」を読みましたが、その中にほぼ同様の意味の事が書いてあったので、ますますこの問題に興味を覚え、この日の質問をきっかけに幾度かこれに関して亡児と問答を重ねました。亡児も又面白みがついたと見え、自分の力量の及ぶ限り、又自分で判らぬ時には母の守護霊その他の援助を借りて相当具体的の説明を試みました。八月三十一日の朝彼の父と亡児との間に行われた問答はその標本の一つであります。-
問「幽界人の姿に動と静と二通りあるとして、それならその静的状態の時には全然姿はないのか?それとも何等かの形態を有しているのか?」
答「そりゃ有してますよ。僕達の平常の姿は紫っぽい、軽そうな、フワフワした毬(まり)みたいなものです。あまり厚みはありませんが、しかし薄っぺらでもない・・・」
問「その紫っぽい色は、全ての幽体に通有の色なのか?」
答「皆紫っぽい色が付いていますよ。しかし浄化するにつれて、その色が段々薄色になるらしく、現にお母さんの守護霊さんの姿などを見てみると、殆ど白いです。ちょっと紫っぽい痕跡があるといえばありますが、モー九分通り白いです・・・」
問「その毬みたいな姿が、観念の動き方一つで生前そっくりの姿に早変わりするというのだね。妙だナ・・・」
答「まあちょっと例えていうと速成の植物の種子のようなものでしょう。その種子からぱっと完全な姿が出来上がるのです・・・」
問「その幽体も、肉体同様やがて放棄される時が来るだろうか?」
答「守護霊さんに訊いたら、上の界へ進む時はそれを棄てるのだそうです。-しかし、必要があれば、その後でも幽体を造ることは造作もないそうで・・・」
問「幽界以上の界の居住者の形態は判るまいか?」
答「判らんこともないでしょう、僕には沢山指導者だの顧問だのが付いていて、何でも教えてもらえますから・・・・。お父さんは一段上の界を霊界と呼んでおられるようですが、只今僕の守護霊さんに訊いてみましたら、霊界の居住者の姿も大体幽界のそれと同一で、ただその色が白く光った湯気の凝体みたいだと言います。-こんな事をただ言葉で説明してもよくお判りになれないでしょうから、お母さんの霊眼に一つ幽体と霊体との実物ををお目にかけましょうか?」
 彼の父が是非そうしてくれと注文すると、間もなく彼の母の閉じたる眼底に、極めてくっきりと双方が映じ出でたのでした。後で透一から覚めて物語るところによると、こちらもその形状は毬又は海月(くらげ)のようで、ただ幽体には紫がかった薄色がついており、そしてどちらも生気躍動と言った風に、全体に細かい、迅い、振動が充ち充ちていたといいます。
 この種の問答はまだ数多くありますが、徒らに重複することをおそれ、ただ比較的纏まりの良い、第四十六回目(昭和四年十二月二十九日午後)の問答を以って全てを代表させることに致します。この日は昭和四年度の最終の招霊と思いましたので、多少の繰り返しを厭わず、おさらい式のものにしたのでした。-
問「多少前にも尋ねたことのあるのが混じるだろうが、念の為にもう一度質問に応じてもらいたい。-汝が叔父さんに招かれて初めて死を自覚した時に自分の体のことを考えてみたか?」
答「そうですね・・・。あの時、僕、真っ先に自分の体はと思ったようです。するとその瞬間に体が出来たように感じました。黙って見てもやはり生前そっくりの体で、別にその感じが生前と違いませんでした。要するに、自分だと思えばいつでも体が出来ます。若い時の姿になろうと思えば勝手にその姿にもなれます。しかし僕にはドーしても老人の姿にはなれません。自分が死んだ時分の姿までにしかなれないのです」
問「その姿はいつまでも持続しているものかな?」
答「自分が持続させようと考えている間は持続します。要するに持続すると否とはこちらの意志次第のようです。又僕が絵を描こうとしたり、又は水泳でもしようとしたりするとその瞬間に体が出来上がります。つまり外部に向かって働きかけるような時には体が出来るもののように思われます。-現に今僕がこうしてお父さんと通信している時には、ちゃーんと姿が出来ています・・・・」
問「最初汝は裸体姿の時もあったようだが・・・」
答「ありました。ごく最初気が付いた時には裸体のように感じました。こりゃ裸体だな、と思っていると、その次の瞬間にはモー白衣を着ていました。僕、白衣なんかイヤですから、その後は一度も着ません。寛いだ時には普通の和服、訪問でもする時には洋服-これが僕の近頃の服装です」
問「汝の住んでいる家屋は?」
答「何でも最初、衣服の次に僕が考えたのは家屋のことでしたよ。元来僕は洋館の方が好きですから、こちらでも洋館であってくれれば良いと思いました。するとその瞬間に自分自身の置かれている室が洋風のものであることに気付きました。今でも家屋の事を思えば、いつも同じ洋風の建物が現れます。僕は建築にあまり趣味を持ちませんが、勿論立派な洋館ではありません。丁度僕の趣味生活に適当した、バラック建ての、極めてざっとしたもので」
答「どんな内容か、モ少し詳しく説明してくれないか?」
答「東京辺の郊外などによく見受けるような平屋建で、室は三間ばかりに仕切ってあります。書斎を一番大きく取り、僕いつもそこにおります。他の室は有っても無くても構わない。ホンの付録物です」
問「家具類は?」
答「ストーブも、ベッドも、又台所道具のようなものも一つもありません。人間の住宅と違って至極あっさりしたものです。僕の書斎には、自分の使用する卓子と椅子とが一脚ずつ置かれているだけです。書棚ですか・・・そんなものはありませんよ。こんな書物を読みたいと思えば、その書物はいつでもちゃーんと備わります。絵の道具なども平生から準備しておくというような事は全然ありません」
問「汝の描いた絵などは?」
答「僕がこちらへ来て描いた絵の中で、傑作と思った一枚だけが保存され、現に僕の室に掛けてあります。装飾品はただそれきりです。花なども、花が欲しいと思うと、花瓶まで添えて、いつの間にやら備わります」
問「現在こうして通信している時に、汝はどんな衣服を着ているのか?」
答「黒っぽい和服を着ています。袴は穿いていません。先ず気楽に椅子に腰をかけて、お父さんと談話を交えている気持ですね・・・」
問「庭園なども付いているのかい?」
答「付いていますよ。庭は割合に広々と取り、一面の芝生にしてあります。これでも自分の所有だと思いますから、邸の境界を生垣にしてあります。大体僕華美なことが嫌いですから、家屋の外周なとも鼠がかった、地味な色で塗ってあります」
問「イヤ今日は話が大変要領を得ているので、汝の生活状態が彷彿として判ったように思う。-しかし、私との通信を中止すると汝は一体ドーなるのか?」
答「通信が済んでしまえば、僕の姿も、家も、庭も、何もかも一時に消えてしまって、いつものフワフワした凝塊一つになります。その時は自分が今どこに居るというような観念も失せます」
問「自我意識はドーなるか?」
答「意識がはっきりした時もあれば、又眠ったような時もあり、大体生前と同一です。しかし、これは恐らく現在の僕の修行が足りないからで、追々覚めて活動している時ばかりになるでしょう。現に近頃の僕は、最初とは違って、そう眠ったような時はありません。その事は自分にもよく判ります」
問「汝の住宅にはまだ一人も来訪者はいないのか?」
答「一人もありませんね・・・。幽界へ来ている僕の知人の中にはまだ自覚している者がいないのかも知れませんね・・・」
問「そんな事では寂しくてしようがあるまい。その中一つ汝のお母さんの守護霊にでも依んで、訪問してもらおうかナ・・・」
答「お父さん、そんな事が出来ますか・・・」
問「そりゃきっと出来る・・・出来なければならない筈だ。汝達の世界は大体に於いて想念の世界だ。ポカンとしていれば何も出来まいが、誠心誠意で思念すればきっと何でも出来るに相違ない・・・」
答「そうでしょうかね。兎に角お父さん、これは宿題にしておいてください。僕やってみたい気がします・・・・」
 この日も彼の母の霊眼には彼の幽界に於ける住宅がまざまざと映じましたが、それは彼の言っている通り、頗るあっさりした、郊外の文化住宅らしいものだったとの事でした。その見取り図も出来てはいますが、格別吹聴する程のものでもないからここには省きます。