自殺ダメ


 [霊界通信 新樹の通信](浅野和三郎著)より

 (自殺ダメ管理人よりの注意 この文章はまるきり古い文体及び現代では使用しないような漢字が使われている箇所が多数あり、また振り仮名もないので、私としても、こうして文章入力に悪戦苦闘しておる次第です。それ故、あまりにも難しい部分は現代風に変えております。[例 涙がホロホロ零る→涙がホロホロ落ちる]しかし、文章全体の雰囲気はなるべく壊さないようにしています。その点、ご了承ください。また、言葉の意味の変換ミスがあるかもしれませんが、その点もどうかご了承ください)

 新樹の第一回の乃木さん訪問は、大体こんな簡単なものでした。勿論私としては、他に訊ねたい事がまだ沢山ありますので、重ねて十月の九日午前一時、私は再び新樹を呼び出して、こう申し付けました。-
 「前回はお前一人の訪問であったが、今日は一つ父の代理として、乃木さんにこう取り次いでもらいたい。-父は前年横須賀で、海軍の教官を勤めておった浅野というものであるが、ある年乃木さんが学習院長として、海軍機関学校の卒業式に臨まれた際に、一度お目にかかっている。その後故ありて官職を辞し、以来専ら心霊研究に志し、一意専心幽明の交通を開く事に尽瘁(じんすい)している。ついては差し支えなき限り、こちらの問に応じて幽界の状況なり、又感想なりを漏らして頂きたい。無論どなたのお言葉たりとも、世間に発表するのには、時期尚早と考えられる箇所は、厳秘に附するだけの覚悟は、充分に有しているつもりであるから、その点はドウぞお心安く思し召して頂きたい・・・」
 「承知致しました」
 新樹はそう答えたきり、暫く沈黙が続きましたが、やがて再び母の体に戻って来て、復命したのでした。-
 「早速お父さんの言葉を口伝えしました。乃木さんは大変に歓ばれまして、こういう御返答でありました。-
 それは誠に結構なお仕事で、日本に於いてもそういう方向の研究が、真面目に着手されたというのは、近頃にない吉報である。自分は大日本帝国については、こちらへ来ても、依然として心配している。イヤ寧ろ国家の事以外には、殆ど何事も考えていないというてよい。が、自分はまだ幽明間の通信という事につきては、一度も試みたことがなく、ドウいう風にして良いか、はッきり判っていない。のみならず、目下は自分自身の修行に没頭して、それに忙しくこちらの世界の研究も、一向まだ出来ていない。その点は予めお断りしておく。兎も角も出来るだけの事は、御返事したい考えであるから、そちらで良きように何なりと質問してもらいたい・・・。
 「乃木さんは今日はカーキ色・・・やや青味のあるカーキ色の軍服を着け、質素な肘付き椅子に腰掛けておられました。乃木さんのおられる周囲は、暗いような所ですが、不思議なことには、乃木さんの身辺は明るいのです。軍服の褶でも、顔の皺でも、皆チャーンと判ります。少々普通とは勝手が違っています」
 早速乃木さんと私との間には、新樹を介して問答が交換されることになりました。ホンの一小部分を省き、左に問答のありのままを発表いたします。