自殺ダメ
[ベールの彼方の生活(二)]P197より抜粋
1913年12月22日 月曜日
子供の為の施設と教育についてはこの程度にして、引き続きその見学旅行での別の話題に移るとしよう。
その後私は数少ない家がそれなりの小さな敷地をもって集落を作っている村に来た。そうした集落が幾つかあり、それぞれに異なった仕事を持っているが、全体としてはほぼ同程度の発達段階にある者が住んでいる。その領土の長が橋のたもとで私を迎えてくれた。その橋の架かった川は村を一周してから、既に話に出た例の川と合流している。挨拶が終わると橋を渡って村に入ったが、その途中に見える庭と家屋がみな小じんまりとしていることに気付いた。私は直ぐのその方にその印象を述べた。
-その方のお名前を教えて下さい。
べベルとでも綴っておくがよい。先を続けよう。
ところがその内雰囲気に豊かさの欠ける一軒が目にとまった。私は直ぐにその印象を述べ、その理由を尋ねた。と申すのも、この界層においてなお進歩を妨げられるには如何なる原因があるのか判らなかったからである。
ベベル様は笑顔でこう話された。「この家には実は兄と妹が住まっておられる。二人はかなり前に八界と九界から時を同じくしてこの界へ来られたのですが、それ以来、何かというと四界へ戻っている。そこに愛する人達、特に両親がおられ、何とか向上させようという考えからそうしているのですが、最近どうも情愛ばかりが先行して、やってあげたいことが環境のせいもあって思うに任せなくなって来ています。両親の進歩があまりに遅く、あの調子ではこの界へ来るのは遠い先のことになりそうです。そこで二人は近頃はいっそのこと両親のいる界へ降り、一緒に暮らすことを許す権限を持つ人の到来を待ち望んでいる程です。常時側に居てあげる方が両親の進歩の為に何でもしてあげられると考えているようです」
「お二人に会ってみましょう」-私はそう言って二人で庭に入って行った。
こうしたケースがどのような扱いを受けるか、貴殿も興味あるところであろう。ともかくその後のことを述べてみよう。
兄は家の直ぐ側の雑木林の中にいた。私が声を掛け、妹さんはと尋ねると、家の中にいるという。そこで中へ入らせてもらったが、彼女はしきりに精神統一をしている最中であった。第四界の両親との交信を試みていたのである。と申すよりは、正確に言えば援助の念を送っていたと言うべきであろう。なぜなら、〝交信〟は互いの働きかけを意味するもので、両親には思念を〝返す〟ことは出来なかったからである。
それから私は二人と話を交わし、結論としてこう述べた。「様子を拝見していると、あなた方がこの界で進化する為に使用すべき力がその下層界の人達によって引き留められているようです。つまり進歩の遅い両親の愛情によってあなた方の進歩が遅らされている。もしもあなた方がその四界へ戻られ、そこに定住すれば、少しは力になってあげられても、あなた方が思う程自由にはならない。なぜかと言えば、いつでもあなた方が身近にいてくれるとなれば尚のこと、今の界を超えて向上しようなどと思うわけがないからです。ですから、そういう形で降りて行かれるのは感心しません。しかし愛は何より偉大な力です。その愛がお二人とご両親の双方にある以上、これまで妨げになってきた障害を取り除けば大変な威力を発揮することでしょう。そこで私から助言したいのは、あなた方は断じてこの界を去ってはならない。それよりも、これから私と共に領主の所へ行って、現在のあなた方の進歩を確保しつつ、しかもご両親の進歩の妨げにならない方法を教えて頂くことです」
二人は私に付いて領主の所まで行った。まず私が面会してご相談申し上げたところ、有り難いことに大体において私の考えに賛同して下さった。そして二人をお呼びになり、二人の愛情は大変結構なことであるから、これからは時折この界より派遣される使節団に加わらせてあげよう。その時は(派遣される界の環境条件に身体を合わせて)伝達すべき用件を伝える。その際は特別に両親にもお二人の姿が見え声が聞こえるように配慮して頂こう。こうすれば両親も二人の我が子のいる高い界へ向上したいとの気持を抱いてくれることにもなろう、ということであった。
これに加えて領主は、それには大変な忍耐力が要ることも諭された。なぜならば、こうしたことは決して無理な進め方をすべきではなく、自然な発展によって進めるべきだからである。二人はこうした配慮を喜びと感謝を込めて同意した。そこで領主はイエスの名において二人を祝福し、二人は満足して帰っていった。
このことから察しがつくことと思うが、上層界においても、地上界に近い界層特有の事情を反映する問題が生じることがあるのである。又、向上の意欲に欠ける地上の人間が無闇に他界した縁故者との交信を求める為に、その愛の絆が足枷となり、いつまでも地上的界層から向上出来ずにいる者も少なくないのである。
これとは逆に、同じく地上にありながら、旺盛な向上心をもって謙虚に、しかも聖なる憧れを抱いて背後霊と共に向上の道を歩み、いささかも足手まといとならぬどころか、掛け替えのない援助(ちから)となる者もいる。
ザブディエルという霊からの通信
[ベールの彼方の生活(二)]P197より抜粋
1913年12月22日 月曜日
子供の為の施設と教育についてはこの程度にして、引き続きその見学旅行での別の話題に移るとしよう。
その後私は数少ない家がそれなりの小さな敷地をもって集落を作っている村に来た。そうした集落が幾つかあり、それぞれに異なった仕事を持っているが、全体としてはほぼ同程度の発達段階にある者が住んでいる。その領土の長が橋のたもとで私を迎えてくれた。その橋の架かった川は村を一周してから、既に話に出た例の川と合流している。挨拶が終わると橋を渡って村に入ったが、その途中に見える庭と家屋がみな小じんまりとしていることに気付いた。私は直ぐのその方にその印象を述べた。
-その方のお名前を教えて下さい。
べベルとでも綴っておくがよい。先を続けよう。
ところがその内雰囲気に豊かさの欠ける一軒が目にとまった。私は直ぐにその印象を述べ、その理由を尋ねた。と申すのも、この界層においてなお進歩を妨げられるには如何なる原因があるのか判らなかったからである。
ベベル様は笑顔でこう話された。「この家には実は兄と妹が住まっておられる。二人はかなり前に八界と九界から時を同じくしてこの界へ来られたのですが、それ以来、何かというと四界へ戻っている。そこに愛する人達、特に両親がおられ、何とか向上させようという考えからそうしているのですが、最近どうも情愛ばかりが先行して、やってあげたいことが環境のせいもあって思うに任せなくなって来ています。両親の進歩があまりに遅く、あの調子ではこの界へ来るのは遠い先のことになりそうです。そこで二人は近頃はいっそのこと両親のいる界へ降り、一緒に暮らすことを許す権限を持つ人の到来を待ち望んでいる程です。常時側に居てあげる方が両親の進歩の為に何でもしてあげられると考えているようです」
「お二人に会ってみましょう」-私はそう言って二人で庭に入って行った。
こうしたケースがどのような扱いを受けるか、貴殿も興味あるところであろう。ともかくその後のことを述べてみよう。
兄は家の直ぐ側の雑木林の中にいた。私が声を掛け、妹さんはと尋ねると、家の中にいるという。そこで中へ入らせてもらったが、彼女はしきりに精神統一をしている最中であった。第四界の両親との交信を試みていたのである。と申すよりは、正確に言えば援助の念を送っていたと言うべきであろう。なぜなら、〝交信〟は互いの働きかけを意味するもので、両親には思念を〝返す〟ことは出来なかったからである。
それから私は二人と話を交わし、結論としてこう述べた。「様子を拝見していると、あなた方がこの界で進化する為に使用すべき力がその下層界の人達によって引き留められているようです。つまり進歩の遅い両親の愛情によってあなた方の進歩が遅らされている。もしもあなた方がその四界へ戻られ、そこに定住すれば、少しは力になってあげられても、あなた方が思う程自由にはならない。なぜかと言えば、いつでもあなた方が身近にいてくれるとなれば尚のこと、今の界を超えて向上しようなどと思うわけがないからです。ですから、そういう形で降りて行かれるのは感心しません。しかし愛は何より偉大な力です。その愛がお二人とご両親の双方にある以上、これまで妨げになってきた障害を取り除けば大変な威力を発揮することでしょう。そこで私から助言したいのは、あなた方は断じてこの界を去ってはならない。それよりも、これから私と共に領主の所へ行って、現在のあなた方の進歩を確保しつつ、しかもご両親の進歩の妨げにならない方法を教えて頂くことです」
二人は私に付いて領主の所まで行った。まず私が面会してご相談申し上げたところ、有り難いことに大体において私の考えに賛同して下さった。そして二人をお呼びになり、二人の愛情は大変結構なことであるから、これからは時折この界より派遣される使節団に加わらせてあげよう。その時は(派遣される界の環境条件に身体を合わせて)伝達すべき用件を伝える。その際は特別に両親にもお二人の姿が見え声が聞こえるように配慮して頂こう。こうすれば両親も二人の我が子のいる高い界へ向上したいとの気持を抱いてくれることにもなろう、ということであった。
これに加えて領主は、それには大変な忍耐力が要ることも諭された。なぜならば、こうしたことは決して無理な進め方をすべきではなく、自然な発展によって進めるべきだからである。二人はこうした配慮を喜びと感謝を込めて同意した。そこで領主はイエスの名において二人を祝福し、二人は満足して帰っていった。
このことから察しがつくことと思うが、上層界においても、地上界に近い界層特有の事情を反映する問題が生じることがあるのである。又、向上の意欲に欠ける地上の人間が無闇に他界した縁故者との交信を求める為に、その愛の絆が足枷となり、いつまでも地上的界層から向上出来ずにいる者も少なくないのである。
これとは逆に、同じく地上にありながら、旺盛な向上心をもって謙虚に、しかも聖なる憧れを抱いて背後霊と共に向上の道を歩み、いささかも足手まといとならぬどころか、掛け替えのない援助(ちから)となる者もいる。
ザブディエルという霊からの通信