自殺ダメ



 『これが死後の世界だ』M・H・エバンズ著 近藤千雄訳より

 P147から抜粋(一つ前の『少女からの通信』の続き)

 「魔法の杖を握ったらおばさんが少女になったり、魔法の絨毯に乗ればどこへでも飛んで行けたりするのも、みんな魔法のような力をもった心がそうさせるのです。人が止めようとしても止められないの。凄いんだから、その力は。おばさんには信じられないかも知れないけど、全部本当なんです。本当にあったことばかりなんです。でも、来たばかりの子供にはそんなことは出来ません。心の使い方が分からないからです。初めはただ地上に似た綺麗な国や立派な人々や家なんかを見るだけです。本当は同じでないんだけど、同じように見せかけてあげないと寂しいでしょ。
 その内次第に自分の心に強い力があることを知ります。すると遊びを止めて、その力の使い方を勉強しようと思い始めます。一番最初に教わるのは自分の好きな場所のこしらえ方です。最初どんなものが出来るか、おばさんが見たら笑い転げるだろうな。勿論初めは一つずつこしらえて行きます。あたしが最初に作ったのはお馬さんでした。心で考えてから暫くすると、直ぐ目の前に一頭の馬が現れたのです。その時は嬉しくて、嬉しくて。パパにもこんなことは出来ないと思うな。
 お友達の中にはつまんないものをこしらえるのがいてね。あるお友達なんかジャングルとプレーリー(大草原)なんかを欲しがったの。その子は頭のいい子だったから直ぐにこしらえることが出来たんだけど、ところがね、こしらえてみると薄暗くて蛇なんかがウヨウヨしてるでしょ。急に怖くなって大急ぎでホラ穴をこしらえて、その中でブルブル震えていたんですって。勿論その穴も心でこしらえたのよ。
 結局あたし達はこちらでも地上と同じ生活をするんだけど、ただ違うのは、家なんかが大人の方がこしらえたものだということ、そして、その内心の使い方を教わると自分で色んなものをこしらえたり、大人の方が作ってくれた場所(環境)を作り変えたりするってことね。勿論手や筋肉を使うのではなくて、心に絵を画いておいて、次にそれが本当にそこにあるのだと信じるの。一番難しいのは信じるってことね。あたしも最初は信じることを何回も練習したっけ。悪い人はこちらへ来ても悪いことばかり考えるから、イヤな場所が出来ちゃうの。子供は教わったことを信じて、そのことだけに一生懸命になるから、いつも楽しいことばっかりよ。だけど、ただ一つだけどうしても作れないものがあるの。それはね、人間。パパやママはどんなにこしらえようとしても絶対にダメ。大人の方に聞いてみたら霊魂(スピリット)だけは誰にも作れないんですって。そういうことを教えて下さる大人の方はみんな優しくて親切な人ばかりだから、私達子供がびっくりしないように、いつも姿を変えて来てくださるのよ」