自殺ダメ




 過去一世紀あまりの教育水準の向上で目を覚まされ、それまでの「ただ信ぜよ」式の説教では誤魔化されなくなった民衆は、所謂宗教的教義について様々な疑問を抱くようになりました。それは必ずしも社会の道徳水準の向上に繋がっていませんが、十数世紀も前に勝手にこしらえながら一度も疑念を挟まなかった教会の上層部の責任は大いに問われねばならないでしょう。
 これは他のあらゆる宗教についても言えることで、最初は庶民の道徳的並びに霊的向上の為に霊覚者を通して届けられたものが、時代と共に交雑物が混ざって玉石混交のまま語り継がれ、教え継がれ、正しいのか間違っているのかにお構いなく、〝そういうもの〟と信じられてきました。が、幸いなことに、近代の飛躍的な科学の発達によってその間違いが誰の目にも明らかになってきました。今の時代に地動説が神を冒涜するものであるという教会の言葉を信じる者はいません。
 そして1920年に至って、ある霊覚者によって地上界に向けて空前絶後とも言うべきメッセージが届けられるようになりました。その霊覚者は地上の人間ではありません。三千年前に地上生活を送り、今では別の次元で生活している霊的存在です。それがモーリス・バーバネルという地上の人間を霊的アンテナとしてメッセージを送ってきたのです。
 同じ地球上でも、アンテナさえあれば、丁度裏側にあたる場所とでも交信することが出来ることは、既に常識となっています。衛星放送がそれを如実に示しています。それと同じことが次元の異なる階層とでも可能なのです。つまり霊的アンテナさえあれば交信が可能なのです。そうした仕事を言い渡されたスピリットは、バーバネルが母胎に宿った瞬間から、霊的アンテナとして使用する為の準備を始めたと言っています。
 そのスピリットは「シルバーバーチ」と名乗りました。無論仮の名です。肉体の死後、我々は段階的に次元の高い階層へと進化していきますが、次元が高まるにつれて地上時代の民族や国籍、身分や地位、姓名などの価値も必要性も薄れて行き、真理の理解度、霊的覚醒の度合いだけが問われるようになります。そこでシルバーバーチという仮名を使い、地上の人間が関心を持ちそうな事柄は一切打ち明けず、聞かれても答えず、ただひたすら、人類が長い歴史の中で台無しにしてしまった霊的摂理を改めて説き直すことに専念しました。

 (訳者説明)
 人間らしい欲求として、出現した霊が地上時代にどういう立場の人間であったか、姓名を何と言ったかを知りたいと思うのは自然であるが、これは色んな意味で危険をはらんでいることを知っておくべきである。その為には次の二つの事実を念頭に置いておく必要がある。一つは、人間は死後も、個性も本性も容易には変わらないこと。もう一つは、低階層つまり地上界に近い階層で暇を持て余している低級霊ほど交霊会に出たがるし、また出やすいということ。
 ここで忘れてならないのは、霊の側からは出席者の姿が見えても、出席者の目には霊の姿は見えないことで、そうなると、たとえ歴史上の著名人の姓名を名乗っても、本当かどうかを証明することは不可能ということになる。人間的煩悩の一つとして、いかにもそれらしい態度で語られると、何となくそう思えてくるもので、それが他界した親族、特に父親や母親、早世した我が子であると言われれば、人間的な情に流されて抱き合って喜んだり感動したりするものである。悪いこととは言わないが、愚かしいことをしているのだということを知るべきである。
 スピリチュアリズムの本来の目的はそんなところにあるのではない。それを、これから著者ニューマン氏がシルバーバーチの言葉を引用しながら、懇切丁寧に説いてくれる。