自殺ダメ



 以上、私は従来の性道徳観から見て、異論とも非道とも言える説を述べてみた。が、私自身は少しもそうは思っていない。なんとなれば従来の性観念のよってきたる根源に遡ってみると、性的に不能又は異常な一個の人間によって作られた戒律に発していることが分かったのである。
 異常な人間の書いた掟に、どうして正常な人間が従わねばならないのだろうか。従う必要もないし、第一従えるわけがないではないか。それを無理して従わねばならぬと信じ込み、肉体的にも精神的にも不自然な努力を強いられて、古来どれだけ純心な若者或いは成人があらぬ性的罪悪感に悩まされ、それが原因でどれほど多くの副産物的罪悪を生んできたことか。現代人はこの点をよくよく反省し、厳正に見極めなければいけないと声を大にして叫びたい。
 確かに人間は肉体のみで生きているのではない。が、霊も肉体に宿って生活している以上、自然な肉体的欲求を抑えたり無視したりしては肉体そのものに不健康であるのみならず、ひいては精神的にも悪影響を及ぼし、結局は肝心の霊的進化をも妨げることになる。このことを私は単なる理屈からではなく、多くの患者に接してそう結論せずにはいられないから言っているのである。
 結論として言いたいのは、要は動機が一番大切だということである。動機が自然な欲求に発したものであれば、決して罪悪ではないということである。
 この点は性の問題に限らない。人生百般皆そうであろう。人に迷惑をかけず、責任を自覚した上であれば、何をやっても構わない。罪悪感でもって人間を小さく縛りつけ、まともな性行為一つ出来ないような、そんなだらしのない人間をこしらえるよりも、責任を自覚しながらノビノビと行動する人間に育てることの方がどれだけ立派か知れない。
 その為には、まずあなた自身が従来の根拠のないタブーや迷信から脱し、人間の原点に立ち帰ることが先決だと思うのである。