自殺ダメ




 叔父さんの方では判り切ったことであっても、聴く方の身になると疑問百出で、話はそれからそれへと続きました。
 ワード「あなたは只今上の組と仰いましたが、それはどんなところでございます?」
 叔父「それは信仰心はあっても、行状がそれに伴わぬ連中の居る境涯じゃ」
 ワード「すると、天国、地獄、煉獄などというものは、あれは実際存在するのでございますか?」
 叔父「さぁ地獄の有無はまだ今のワシには判らない。現在のワシに判っているのは自分の居る組と、自分より上下の組だけじゃ。実は霊界へ来た時に、昔の友達に会えるだろうと予期していたのじゃが、まだ会えない者が沢山ある。が、勿論霊界に居ないのではなく、ただ他の組に入っているだけのことらしい。純然たる未信者は皆下の組に居る。そして暫く経てばその連中がワシ達の境涯へ上って来る。
 それからあの煉獄じゃが、あれは大体自分達の居る境地を指して言っているものらしい。しかし煉獄はむしろ勉強の場所であって、刑罰の場所ではないようじゃ。もっともいくらか刑罰の気味もないではない。生前くだらなく時間を費やしたことが霊界へ来てから悔やまれる-それが刑罰と言えば刑罰に相違ない。それから不思議なことには、ワシ達の仲間が大勢いるくせに、何やら心寂しく感じられてしようがない。どうも余りお互い同士が似寄り過ぎていると、相手にして面白味がないものらしい。で、ワシは一時も早く他の組に入って、昔の友達に会いたさに、今せっせと勉強しているところじゃが、中々思うように進歩せぬには弱っとる。現在のワシはまるきり小学校の生徒さんじゃ-それはそうとワシの誕生日は月曜日で、死んだのも月曜日であった。死ぬることはつまり霊界に生まれることじゃ。して見ると月曜日は何処まで行ってもワシの誕生日に相違ない・・・」
 ワード「叔父さん、あなたは御自分の葬式のことを御存じでございますか?」
 叔父「そりゃ知っています。ワシは自分の体がベッドの上に横たわっているのを見ました。あの時はお前もワシの死骸を覗きに来てくれたね・・・。
 時に、これだけは決して忘れずにカーリーに伝言してもらいたい-生きている時に信仰心をもっていると、死んでから進歩が早いので大変助かると・・・。出来ればワシなどももう少し信仰心があればよかった」
 ワード「叔父さん、あなたはもう一度現世に戻る思し召しはございませんか、若し戻れるものなら・・・」
 叔父「それは無い!霊界の方が余程面白い。毎日毎日進歩しているもの・・・。いやワシはもう帰らなければならぬ。ワシはもう一度学校をやり直すので、大変多忙じゃ。うかうか遊んでばかりはいられない・・・」
 言うまでもありませんが、この時分の叔父さんの霊界知識は頗る幼稚なものであり、同時にワード氏の質問ぶりも素人臭味がたっぷりで、思わず失笑させられるところがあります。地獄の有無の問題などは後に於いて充分修正されてあります。