自殺ダメ



 叔父さんの霊界の説明がワード氏に判ったようで中々判らない。で、氏は更に念を押しました-
 ワード「して見ると霊界の状態は永久不変なのですか?それとも段々友達が増え、それに連れて過去の嫌な記憶・・・思想の形が遠ざかって行くのですか?」
 叔父「この前にも説明した通り、無論霊界の状態は不変なものではない。我々の信仰心が加わるに連れて、周囲の状態はズンズン改善されていくのじゃ。何故過去の嫌な記憶が次第に遠ざかって行くのかはワシにもまだよく判らない。が、兎に角我々がこちらへ来てから次第に高尚な思想を創造して行くと、それが我々の心を引き立て、不思議に旧悪の苦痛を緩和して行くことになる。人間には自分を欺くことが出来るが、霊界の居住者にはそれが出来ない。
 イヤ最初霊界へ来た時には、まるきり悪夢を見ているようで、一生涯に積み上げた旧悪が悉く形をなして雲霞の如く身辺を取り巻いたものじゃった。が、暫く過ぎるとそれ等のものにキチンと整理が出来て来た。ワシにはその理屈は少しも判らないが、兎に角以前よりも凌ぎよくなって来た-イヤこちらへ来てからワシにはまだ判らぬことばかり、先日来お前に説明して聞かせたものだって、皆ワシの教師から最近教わったことばかりじゃ・・・」
 ワード「時に叔父さん、あなたはどんな方法を用いて私の所へお出でなさいます?」
 叔父「方法と云って別にありゃしない。ただお前のことを思えばよいのじゃ。もっと詳しく説明すると、ワシの精神をお前一人に集め、他の考えを一切棄ててしまうのじゃ。最初は中々やり難い仕事であったが、近頃はもうお手のものじゃ。こちらはそれでよいが難しいのはお前の精神をワシの精神に調子を合わせることで、それが出来ないと結局通信は出来ない。ワシは最初他の人達にも色々試してみた。カーリーにも、Hにも、それからFにも試したのだが、どいつもこいつも皆上手く行かない。最後にお前ならばと目星をつけたのだ」
 ワード「そうすると、あなたはこの世界にお出でになって、私達のように何かを御覧なさるのですね」
 叔父「この世界に居ることは居るが、しかし何もこの世界にのみは限らない。又お前達とは物の見方が違う。我々には過去が見える。修業の積んだ者には未来までも見える。もっともワシにはまだそれは出来ないがね-現にお前だとて、ワシの死ぬる一ヶ月前にワシの死ぬる実況を夢に見たではないか-イヤしかし今日はお前も大分くたびれたろう。それともまだ質問が残っているかな?」
 ワード「はぁ御座います。あなたは人間に劣情のあることを仰いましたが、何かその劣情を挑発する悪魔でもあるものでしょうか?」
 叔父「それはまだワシにも判らん。現世に生きている時分にワシは勿論悪魔などがあるとは思わなかった。しかし死んでから初めて信ずるようになったことも沢山あるから、事によると悪魔が存在せぬとも限るまいが、それは後日の問題にしよう・・・」
 ワード「何故あなたの教師にそれをお訊ねしないのです?」
 叔父「そう何もかも一度には行かない。お前じゃとて、一人の子供にユークリッドを教えている最中に、突然歴史の質問をされたらどうします?霊界でもそれに変わりはない。数あることが沢山なので一遍には訊かれはせぬ」
 ワード「私にとりては、叔父さんがこうしてお出でくださるのは大変ありがたいのですが、叔父さんの方では何故私の所へお出でなさるのです?」
 叔父「一つはお前が好きなせいじゃ-が、何よりもワシは少しなりとも他人の利益になることをしたいのじゃ。霊界で他人を助けるのは決して容易なことではない。ワシは生きている時にもう少し善い事をしておけばよかった。カーリーには格別お前から詳しく伝えてくれ。一番カーリーがワシを理解していてくれる。出来ることなら彼女と対話をしてみたいが出来ないから致し方がない-お前は大分疲れて来たね・・・。何れ又会おう。何れまた・・・・」
 ワード氏はそれっきりぐっすり寝込んで、翌朝まで何も知らずにおったのでした。