自殺ダメ
これは2月14日に出た自動書記で、霊界から見た人間の臨終の光景が実によく描かれております。通信者は例の叔父さんのLの霊魂であります- 「憑って来たのはワシじゃ。最近ワシは人間の臨終の実況を霊界から見物したので、今日はそれをお前に通信してあげる。案内してくれたのはワシの守護神じゃ。何処をどう通って行ったものか途中はさっぱり分からないが、兎に角現場に臨んだのじゃ。見るとそれは通風のよい大きな部屋で、さっぱりはしているが、しかし別段贅沢な装飾などは施してない。部屋の外は庭園になっている。ただ何分冬じゃから別に面白いこともない・・・。
ベッドの上には七十歳ばかりと思われる一人の老人が臥せっている。その人の身分は牧師じゃ。するとワシの守護神が説明してくださる-
「彼は忠実なる道の奉仕者である。彼が死後直ちに導かるるは信仰と実務との合一せる、霊界最高の境涯である。彼はローマ舊教(ろーまきゅうきょう=カトリック)の牧師としてこの教区を預かっている身分である・・・」
ふと気が付くと室内にはたちまち麗しき霊魂達が充ち充ちて来た。それが後から後から殖えて行くので、終いには部屋に入り切れず、庭園へまでも溢れ出た。
「どんな人達でございます?」ワシはびっくりして訊ねた。
「いずれもこの者に救われた善良な霊魂達である」とワシの守護神が答えてくださる。「それなる婦人、彼女は一旦堕落しかけたのであるが、この者の導きによりて誠の道に戻ることが出来た。あれなる愚昧の少年、彼は一旦地獄へ堕ちたのをこの者の為に救い出された。あれなる父親、彼は今一息で、己の娘を娼婦の群に追いやるところであったのを、この者が娘を尼寺に連れて行ってくれたばかりに心が和らいだ。今では父子二人共霊界の最高境に達して楽しい月日を送っている。これ等の霊魂達が皆打ち連れて、父であり又友であるこの者を迎えるべく出て参ったのじゃ」
そう守護神が説明してくだすっている最中に、これ等の霊魂達よりも一段優れて麗しく光輝く何者かが室内に現れた。
「跪いて!」と守護神がワシに教えてくださる。
ワシが跪くと同時に部屋に溢れた霊魂達もことごとく拝跪(はいき)の禮(れい)をとった。
「どなたでございます?」とワシが小声に訊ねる。
「この御方がこの教区の真の支配者の天使であらせられる。わざわざお迎えの為にお出ましになられたのじゃ。気をつけて見るがよい」
すると、極めて静かに牧師の体から一条の光線が脱けて出た。頭部の辺が一番よく光る。色は金色に近いが、ただ幾分青味を帯びている。そうする内に右の光は次第次第に凝集して、頭となり、肩となり、いつしか一個の光明体が肉の被物の中から脱け出した。最初はうっすらしていたが、やがて輪郭がくっきりして来た。同時に幾百とも知れぬ満座の霊魂達の口から歓喜の声が溢れた。
「万歳万歳!一同お迎えいたします!」
すると老牧師は一同に向かってにっこりしたが、イヤその笑顔の晴々しさ!体全体が笑み輝くと疑われた。老牧師の霊魂はベッドの傍に看護の労をとりつつあった地上の人達に向かっても同様に笑顔を見せてその幸福を祈るのであった。
やがて体と霊魂とを繋ぐ焔の紐は次第に延びて、遂にプツリ!と切れてしまった。同時に看護の人達はワッとばかり泣き崩れたが、その泣き声は霊魂達の群からドッと破裂する歓びの歌にかき消されてしまった。と、お迎えの天使は老牧師の手をとって言われた-
「汝いみじき者よ、汝はよくも地上の哀れなる者の為に尽くした。余は汝に向かって汝が生前救済の手を述べた全ての者の支配を委ねるであろう」
言いも終わらず、又も満座の霊魂の群から起こった歓呼喝采!その響きは未だにワシの耳に残っている。
間もなく部屋の付近から全ての姿は消えて、後にはただワシと、守護神と、二、三の哀悼者のみが残ったが、イヤ実に何とも言われぬ結構な光景で、其処を立ち去った時のワシの胸も嬉しさに躍ったのである。
今日のワシの通信はこれで終わりじゃ。今晩仕事の手伝いをしてくれた五人の人達にはワシから厚くお礼を述べておく。何れ又・・・」
これは2月14日に出た自動書記で、霊界から見た人間の臨終の光景が実によく描かれております。通信者は例の叔父さんのLの霊魂であります- 「憑って来たのはワシじゃ。最近ワシは人間の臨終の実況を霊界から見物したので、今日はそれをお前に通信してあげる。案内してくれたのはワシの守護神じゃ。何処をどう通って行ったものか途中はさっぱり分からないが、兎に角現場に臨んだのじゃ。見るとそれは通風のよい大きな部屋で、さっぱりはしているが、しかし別段贅沢な装飾などは施してない。部屋の外は庭園になっている。ただ何分冬じゃから別に面白いこともない・・・。
ベッドの上には七十歳ばかりと思われる一人の老人が臥せっている。その人の身分は牧師じゃ。するとワシの守護神が説明してくださる-
「彼は忠実なる道の奉仕者である。彼が死後直ちに導かるるは信仰と実務との合一せる、霊界最高の境涯である。彼はローマ舊教(ろーまきゅうきょう=カトリック)の牧師としてこの教区を預かっている身分である・・・」
ふと気が付くと室内にはたちまち麗しき霊魂達が充ち充ちて来た。それが後から後から殖えて行くので、終いには部屋に入り切れず、庭園へまでも溢れ出た。
「どんな人達でございます?」ワシはびっくりして訊ねた。
「いずれもこの者に救われた善良な霊魂達である」とワシの守護神が答えてくださる。「それなる婦人、彼女は一旦堕落しかけたのであるが、この者の導きによりて誠の道に戻ることが出来た。あれなる愚昧の少年、彼は一旦地獄へ堕ちたのをこの者の為に救い出された。あれなる父親、彼は今一息で、己の娘を娼婦の群に追いやるところであったのを、この者が娘を尼寺に連れて行ってくれたばかりに心が和らいだ。今では父子二人共霊界の最高境に達して楽しい月日を送っている。これ等の霊魂達が皆打ち連れて、父であり又友であるこの者を迎えるべく出て参ったのじゃ」
そう守護神が説明してくだすっている最中に、これ等の霊魂達よりも一段優れて麗しく光輝く何者かが室内に現れた。
「跪いて!」と守護神がワシに教えてくださる。
ワシが跪くと同時に部屋に溢れた霊魂達もことごとく拝跪(はいき)の禮(れい)をとった。
「どなたでございます?」とワシが小声に訊ねる。
「この御方がこの教区の真の支配者の天使であらせられる。わざわざお迎えの為にお出ましになられたのじゃ。気をつけて見るがよい」
すると、極めて静かに牧師の体から一条の光線が脱けて出た。頭部の辺が一番よく光る。色は金色に近いが、ただ幾分青味を帯びている。そうする内に右の光は次第次第に凝集して、頭となり、肩となり、いつしか一個の光明体が肉の被物の中から脱け出した。最初はうっすらしていたが、やがて輪郭がくっきりして来た。同時に幾百とも知れぬ満座の霊魂達の口から歓喜の声が溢れた。
「万歳万歳!一同お迎えいたします!」
すると老牧師は一同に向かってにっこりしたが、イヤその笑顔の晴々しさ!体全体が笑み輝くと疑われた。老牧師の霊魂はベッドの傍に看護の労をとりつつあった地上の人達に向かっても同様に笑顔を見せてその幸福を祈るのであった。
やがて体と霊魂とを繋ぐ焔の紐は次第に延びて、遂にプツリ!と切れてしまった。同時に看護の人達はワッとばかり泣き崩れたが、その泣き声は霊魂達の群からドッと破裂する歓びの歌にかき消されてしまった。と、お迎えの天使は老牧師の手をとって言われた-
「汝いみじき者よ、汝はよくも地上の哀れなる者の為に尽くした。余は汝に向かって汝が生前救済の手を述べた全ての者の支配を委ねるであろう」
言いも終わらず、又も満座の霊魂の群から起こった歓呼喝采!その響きは未だにワシの耳に残っている。
間もなく部屋の付近から全ての姿は消えて、後にはただワシと、守護神と、二、三の哀悼者のみが残ったが、イヤ実に何とも言われぬ結構な光景で、其処を立ち去った時のワシの胸も嬉しさに躍ったのである。
今日のワシの通信はこれで終わりじゃ。今晩仕事の手伝いをしてくれた五人の人達にはワシから厚くお礼を述べておく。何れ又・・・」