自殺ダメ


 先生がワシに向かって質問されたのは、ワシが教室へ入って暫く過ぎてからのことであった。
 先生「あなたは何ぞ質問がありますか?」
 私「御座います-一体ここは霊界であるというのに、どうして色々の物が実体を具えているように見えるのです?なかんずく私自身が依然として体を持っているのが不審でなりません」
 先生「それなら訊ねるが、人間は何物から成立しております?」
 私「肉体と霊魂より成立しております」
 先生「科学者はそれに何という定義を下します?」
 私「物質と力だと申します」
 先生「その通り-それで人が死ぬるとその物質はどうなります?滅びますか?」
 私「イヤ物質は滅びません、ただ形を変えるだけであります。私の肉体が腐敗して土壌に化すると、それから植物が発生します」
 先生「肉体を働かせていた力はどうなります?」
 私「力は霊界へ回ります。それが霊魂でございます。霊魂も又滅びません」
 先生「宜しい。物質も力も共に滅びない。が、地上に残しておいた肉体は生前の肉体とどこか違った点はありませんか?」
 私「違った点がございます」
 先生「どの点が違います?今あなたが地上へ行って自分の遺骸を見たとすれば、主としてどこが相違していると思います?」
 私「肉体は腐敗しますから、段々原形を失いつつあるものと存じます。形が違います」
 先生「事によると形はもう無くなっているかも知れない。ところで物質と力とは滅びないとすれば形はどうなります?形は滅びますか?」
 私「滅びるでしょう。滅びないという理由はないように思われます」
 先生「然らばお訊ねしますが、あなたがかつて起こした思想の形は少しも滅びずに霊界に存在したではありませんか?思想の形が滅びない以上、あなたの肉体の形とても滅びずにいないでしょうか?」
 私「そうかも知れません-しかし思想を形作った私自身が今霊界に存在する以上、私のことを考えたものが私よりも以前に存在している筈だと思います。私が居って考えたからその思想の形が霊界に存在する。誰かが居って考えたから私というものが霊界に存在する!そうではないでしょうか?」
 先生「その通りじゃ。誰かがあなたのことを考えたからあなたが出来上がったのである。その誰かが即ち神じゃ。神は思想を以ってあなたを創られた。それと同一筆法で、あなたも又思想を以って物を創る-これであなたは何を悟りましたか?」
 私「形も又物質及び力と同じく滅びないということであります。それからもう一つは、神が私を考えて創られたと同様に、私も又考えて形を創り得るということであります」
 先生「これであなたが最初発した質問に対する答案が出来たではありませんか?」
 私「そうかも知れません・・・。私が現在霊界で見ているものは形である。私自身も又形に過ぎないから、それで自分と同じく全ての物が皆実体を具えているように見える・・・こんな道理かと存じます。しかし何故私自身実体があるように見えるのでしょう・・・」
 先生「そう見えるのが当たり前じゃ。霊界には物質は全く無い」
 私「それなら若しも私がこの形で地上に戻ったなら、自分が非実体的であるような感じが起こるでしょうか?」
 先生「地上に戻ってあなたは物質化しますか?」
 私「しません。するとあなたの仰る意味はこうでございますな-私が物質化するのでなければ、単なる形であり、力であり、物質との比較は出来ないと・・・」
 先生「分かり易いように一つ例を引きましょう。若しもここに光があって、それを煙の真ん中に置いたとする。そうすれば何が見えます?」
 私「勿論煙を通して光が見えます。恐らくいくらかぼんやりと・・・」
 先生「煙は何です?」
 私「力です」
 先生「ただ力だけですか?」
 私「無論炎には形もあります」
 先生「煙は何です?」
 私「物質と形とです」
 先生「それであなたの質問に対する答案にはなりませんか?」
 私「そう致しますと、先生の仰る意味はこうでございますか-人間の物質的肉体を通して霊魂が光るのは、丁度煙を通して蝋燭の火が光るようなものだと・・・・」
 先生「その通り」