自殺ダメ



 1914年9月5日に現れた叔父さんからの通信-
 「私達は出来るだけ迅速にこの通信事業を完結すべき必要に迫られている。お前の病気の為に時日を空費したことは残念であるが、その間に幽界の方面が多少秩序を回復したのはせめてもの心やりじゃ-と言って幽界は当分まだ混沌状態を脱しない。その反動が霊界の方面までも響いて来ておる。
 言うまでもなく戦争の為に倒れた者の大部分は血気盛りの若者であるから、その落ち着く先は皆幽界じゃ。目下幽界に入って来る霊魂の数は雲霞の如く、しかも大抵急死を遂げているので、何れも皆憎悪の念に燃える者ばかり、その物凄い状態は実に想像に余りある。多くの者は自分の死の自覚さえもなく、周囲の状況が変化しているのを見て、負傷の為に一時頭脳が狂っているのだ、位に考えている。
 が、霊界がこの戦争の為に受ける影響は直接ではない。新たに死んだ人達を救うべく、力量のある者がそれぞれ召集令を受けて幽界の方面に出動することがこちらの仕事じゃ。既に無数の義勇軍が幽界へ向けて進発した。目下はその大部分が霊界の上の二境からのみ選抜されているが、やがてワシ達の境涯からも出て行くに相違ない。
 ワシなどはまだまだこの種の任務を遂行する力量に乏しいが、しかし召集令さえ下ったら無論出かけて行かねばならぬ。しかしこんな平和な生活を送った後で再び幽界の戦禍の中に埋もれるのはあまり感心したこととも思われない。
 が、戦争の話はこれきりにしておくとしよう。ワシ達は全力を挙げてこの通信を遂行せねばならぬ。お前の方でも多分出来るだけ迅速にその発表に着手することと思う。無論今直ぐにともいくまいが、しかしその内時期が到来するに相違ない」
 叔父さんからの右の通信の内に、召集令さえかかったら無論幽界へ出かけて行くとありますが、その召集令は約二年の後にかかりました。1916年5月初旬、ワード氏の実弟レックス中尉が戦死を遂げると共に、ワード氏は直ちに霊界の叔父さんを訪問して右の事実を物語りました。叔父さんは直ちに奮起して幽界に赴き、爾来百方レックスを助けて更に精神無比の幽界探検を遂行することになるのでありますが、それは別巻に纏められて心ある人士の賛嘆の的となっております。