英国の心霊治療家連盟の会員は今や六千名を数えるに至っている(平成6年現在)。これから紹介するのは、その連盟の代表40名がシルバーバーチと交わした徹底した質疑応答の録音からの抜粋である。
 その規模の大きさもさることながら、心霊治療について出された事細かな質問に対して、例によってシルバーバーチが懇切丁寧に答えていて、しかもそれが地上の人間の生き方についての忠言ともなっていて、シルバーバーチの霊言集を締めくくるのに相応しい内容になっている。
 まず質疑応答に入るに先立ってシルバーバーチが心霊治療の原理について一般的な講話を行っている。(一部割愛。これまで繰り返し述べられていることであると同時に、その後の質疑応答の中で何度も出てくることだからである)

「心霊治療の目的は極めて単純です。魂を目覚めさせること、これに尽きます。身体の症状が消えても魂が霊的なものに目覚めなかったら、その治療は失敗したことになります。反対に病気そのものは治っていなくとも、魂が目覚めて霊的なものに関心を抱くようになれば、その治療は成功したことになります。
 私達の側からすれば、霊の資質と霊力は、大霊の子が例外なく宿している神性を自覚させる為に使用すべきものであり、その結果として地上降誕の目的の認識が芽生えるのです。それこそが霊媒現象と呼ばれている様々な現象の背後に託された目的なのです。
 ですから、病人が良くならなかったといって残念がることはありません。残念に思うべきなのは、その病人があなた方との出会いによって霊的実在に目覚めるまでに至らなかった場合です。それが心霊治療の究極の目的なのですから。
 私達霊団も、各国に築かれた橋頭堡を強化して、霊力が受け入れる用意の出来た人々に順当に届けられるようにと、結束を固めております。その目的は、今述べた究極の目的、すなわち地上の人間が自分とは本質的に何なのか、何をしにこの地上にいるかについての理解を植え付け、それを地上で実践するにはどうあらねばならないかを自覚させることです。
 一言で言えば、物質界の人間も霊的宿命を背負った霊的存在だということを悟らせることです。
 心霊治療の能力も、霊体に潜在する無限の資質の一つです。霊眼で見るクレアボイアンス、霊耳で聞くクレアオーディエンスと同じです。心霊治療家になる為にはその霊力の始源とコンタクトしなくてはなりません」

-その霊力がそちら側で創造される過程を教えて頂けませんか。つまり病人の特殊な条件に合わせて操作する、その方法です。

「これは説明の難しい問題です。非物質的なエネルギーを表現する用語が見当たらないのです。霊力とは生命力であり、生命の素材そのものであることを理解してください。活力そのものです。無限に存在します。柔軟な性質をしており、どんな形態にも変化します。変換も組み替えも自由自在です。
 それを扱う、知識と経験と理解の豊富な者が、こちらで待機しております。そちらの化学者や科学者に相当します。その者達が、この霊力を各種の病気に合わせた特性をもたせる技術の開発に、いつも取り組んでおります。そのチャンネルとなる治療家を通して、病気のタイプに合わせて[調剤]する実験も行っております。
 以上のような説明しか私には出来ません。最終的には治療家のもとを訪れる患者によって一つひとつ異なるプロセスがあると思ってください。その際、患者のオーラが診断の大きな参考になります。それが精神的状態と霊的状態を物語ってくれるので、それをもとにして、今述べた治癒エネルギーの調剤が行われます」

-それには知的な努力が要求されるわけですね?

「[知的]という用語は適当でないでしょう。実体感を伴うものだからです。実際に[調合]が行われるのです。皆さんが化学物質と呼んでいるものに相当するものが用いられます。精神力は必要です。なぜなら、こちらでは、何をこしらえるにも精神が実体を伴った素材となるからです」

-遠隔治療のことはこちらへ置いといて、直接治療においては治療家の身体や霊体は、霊力の通路としてどの程度使用されるのでしょうか。

「遠隔治療においても使用されるのですよ」

-私達の身体や霊体が実際に使用されると仰るのですか、それとも霊波の調整の為に患者との架け橋として使用されるという意味ですか。

「実際にあなた方の霊体を使用するのです」

-そのプロセスをご説明願えますか。

「治療家はテレビの受像機のようなものと想像してください。送られてくる霊波をあなた方の霊体で半物質的な治癒エネルギーに転換します。変圧器のようなものと思ってください」

-遠隔治療でも同じ役目をするわけですか。

「そうです」

-でも、転換されたものがどうやって患者に届けられるのでしょうか。

「患者の側からそういう要請が出ているからです。患者の思念がバイブレーションをこしらえ、あなた方治療家のもとに届けられます。既に架け橋が出来ていますから、その波動に乗っかって治癒エネルギーが送り届けられます」

-自分の為に遠隔治療の依頼が出されていることを患者自身が知らない場合はどうなりますか。

「誰かが知っている筈です。そうでなければ治療を施すことはないわけでしょ?」

-仮に私が一方的にその患者の様態を知って治療してあげようと思った場合はどうなりますか。

「それで立派にリンクが出来ているではありませんか」

-でも、患者からの要請の思念は出されていません。

「いえ、リンクは出来ています。あなたがこしらえています。いいですか、思念というのはこちらでは実体があるのです。私は今あなたという人物を見ておりますが、あなたの肉体は見えておりません。霊媒(バーバネル)の目で見れば見えるのでしょうけど(注)。私達にとっては思念こそ実体があるのです。あなたの肉体は薄ボンヤリとしか見えません。あなたから思念が発せられると、それが実体をもって見えます。それがバイブレーションをこしらえ、それが遠隔治療で使用されるのです」

(注 シルバーバーチはバーバネルの言語中枢しか使用していない。従って入神中は目を閉じ、そして座ったままで喋り、立ち上がったり歩いたりすることはなかった)

-今ローマ法王がファティマの神殿を訪れています。噂によると、その神殿で多くの病人が癒されていて、それがマリアの仲介によると言われているのですが、マリアが直接治療に当っているとは思えません。この神殿での癒しの力は何なのでしょうか。

「癒されると信じる、その信心です」

-でも、それはただの信仰ではないでしょうか。

「そうです、信仰です。信仰ではいけないのですか。癒してもらえるという信心は、実際に癒されるに至る第一歩です」

-私は、患者が治る為の条件として信仰は無用であると理解しております。むしろ患者の心が邪念に満ちていると、それが治療の妨げになると考えておりますが、それは正しいでしょうか。

「信仰心は、それが理性に根ざし、いわゆる盲目的信仰でない限りは、むしろ結構であると私は考えます。皆さんは霊的知識を手にしておられるとはいえ、それは全体からみればささやかなものでしかないことを知らないといけません。物質に包まれて生きているこの地上では、全知識を得ることは絶対に不可能です。こちらへ来てからでもなお不可能です。
 そこで私は、知識の上に信仰を加えなさいと申し上げるのです。理性に裏打ちされた信仰、知識を基盤とした信仰は立派です。それにケチをつけるつもりは毛頭ありません。むしろそれが、余裕ある雰囲気をこしらえ、治癒力の流入を容易にすることがあります。
 霊力は明るく楽しい、そして快活で受容性に富んだ性格の人程効果を発揮し、陰鬱で猜疑心の強い、そして動揺の激しい性格の人には、よい効果は出ません」

-オーラを霊視できない治療家の場合、治癒力が上手く働いていることを知るにはどうすればよいでしょうか。

「オーラが見える見えないは治療そのものとは何の関係もありません。病気の原因の診断が出来るか否かも関係ありません。治療家は施療すればそれでよいのです。そういった余計なことを気遣う必要はありません。霊医が扱い易い状態になることが大事です。
 要するに霊の道具として少しでも完璧に近付くことを心掛けることです。ご自分の人間性から人間的煩悩を全てご法度にするくらいでないといけません。そう心掛けただけ、その治療家を通して、より多くの霊力が流入します。治療力の質や量を決定づけるのは、その治療家の生活そのものです」

-治療家の中でも優秀な人とそうでない人とがいるのはなぜですか。

「演奏家にせよ、作家にせよ、上手な人とあまり上手でない人がいるのと同じです。他の治療家に比べて能力がより多く顕現しているということです」

-治療家自身が病気になった場合、他の治療家に依頼しなければならないでしょうか、それとも自分で治せるのでしょうか。

「他の治療家に依頼しなくても、自分で治癒エネルギーを引き寄せて治すことが出来るようでないといけません。大霊に祈るのに教会へ行く必要はないように、治療家が他の治療家のところへ行く必要はありません。直接エネルギーを引き寄せることが出来ればの話ですが」

-医師の述べるところによりますと、最近の病気の主なものはプレッシャーと仕事上の悩みだそうです。これにはあなたの仰る(三位一体)不調和がどの程度まで介入しておりますでしょうか。

「あなたが今仰ったことは、私が言っていることを別の言葉で表現したまでです。仕事上の悩みを仰いますが、つまりは不調和のことです。霊と精神と肉体の三者が調和していれば、仕事にせよ何にせよ、悩みは生じません。悩むということは調和を欠いているということの証拠です。
 霊的知識を手にした者が悩むようではいけません。悩みや心配はマイナスのエネルギーです。霊的に啓発された魂は取り越し苦労とは無縁です。私はそれを不調和と呼び、あなたは仕事上の悩みと呼んでいるまでのことで、自分が永遠の存在であることを知り、従って地上のいかなるものにも傷付けられることはないとの信念に燃える者に、悩みの入る余地はありません」

-治らない人がいるのはなぜでしょうか。

「霊的にみて治るべき権利を得るに至っていないということです」

-遠隔治療で一度リンクが出来たら、改めてこしらえる操作は不要でしょうか。

「一度出来たら不要です。霊界との繋がりは全て磁性的(注)なものです。ですから、一度出来たらリンクは切れることはありません」

(注 磁気治療でいう磁気とは別。強烈に引き合う霊的性質を言っている)

-すると、どこにいようと、例えば教会にいようが駅にいようが、関係ないわけですね?

「霊の世界には地理的な位置はありません。どこへ行こうと、皆さんの身の回りに常に存在しております。教会の中にいるから、或いは飛行機で高く上がったからといって、それだけ大霊に近付くわけではありません」

-地上界で物的存在が顕現するに先立って必ず思念が存在すると言われます。言い換えると、人間はまず思念の母体をこしらえていることになります。それが事実だとすると、治療家が患者に接するに先立って心の中で完全に治った状態を描き、完全な健康体のイメージをこしらえることは、治癒を促進することになるのでしょうか。

「大いに促進します。思念には実体があるからです。完全な健康体を強く念ずる程、それを達成する可能性に近付くことになります。何事につけ、理想に向かって最善を尽くさないといけません。常に最高のものを念ずることです。希望を失ってはなりません。いつも明るく楽天的な雰囲気を醸しなさい。そうした状態の中で霊力は最高の威力を発揮します」

-先程、治らない人は霊的に治る権利を得るに至っていないからだと仰いましたが、私には少し割り切りすぎているように思えます。その論理でいくと、善人は必ず治り、悪人は絶対に治らないということになりませんか。

「事はそんな単純なものではないのです。霊的な目をもってこの問題をご覧になれば、そういう安直な考えは出ない筈です。例えばあなた方人間にとって苦難はご免こうむりたいところでしょうけど、私達から見ると、こんなに有り難いものはないのです。大失敗をしでかすと皆さんは万事休すと思われるでしょうが、私達から見ると、新しい人生の出発点とみて喜ぶことがあるのです。
 善とか悪とかを物的尺度で計るような調子で簡単に口にしてはいけません。善悪の判断基準は私達とあなた方とでは必ずしも一致しません。私は霊的にみて治るべき権利を得ていなければならないと申し上げているのであって、善人とか悪人とは言っておりません。自我がその霊性に目覚めた時に初めて治る権利を得たことになるのです」

-純粋に物理的な理由で治らないということもあるのではないでしょうか。例えば神経が完全に破壊されて視力を失った場合、新しく神経をこしらえるということは法則上不可能だと思うのです。

「私達は今、奇跡の話をしているのではありません」

-仰る通りですが、治らないケースについての一般論を語っておられると思ったものですから・・・

「私が申し上げているのは、治る筈の病気がどうしても治らず何の変化も見られない時は、その患者はまだ治る為の霊的権利を得るに至っていないことがあるということです」

-両脚が奇形の赤ちゃんがいます。片方の脚は変化が見られるのですが、もう一方は何の反応もありません。なぜでしょうか。

「両脚が奇形というのを一つの病気としてではなく、右脚と左脚の二つの病気とみるべきで、同じ治癒エネルギーでは両方は治せないということです。何もかも同じエネルギーで治っているのではありません。一つ一つ条件が異なり、一つ一つ特性があるのです。地上の人間に分かり易くということになると、そういう表現しか出来ません。他にも色々と事情があるのです。病気の原因には幾つもの次元があり、それが入り組んでいて複雑なのです。
 治癒というのは見かけはあっさりと治っているようで、実際はそう簡単なものではないのです。身体に表れた症状を取り除けばそれで済むというのではありません。魂に関わる要素も考慮に入れなくてはいけません。こうすれば魂にどういう反応が出るか、病気の背後に潜む意図は何なのか、なぜその患者が心霊治療家のところへ来たのか、その患者の魂か霊性に目覚める段階にまで進化しているかどうか、等々。
 こうしたことはあなた方には測りようがないでしょう?が、心霊治療はそういう要素まで考慮しなくてはならないのです。なぜかと言えば、少なくとも治療に当っている間は宇宙の生命力そのものを扱っているからです。ということは、あなた方も無限の創造活動に参加していることになるのです。だからこそ責任の重大性を声高に説くのです」

-てんかんの原因は何でしょうか。

「脳に障害があって、それが脳への印象を妨げ、精神からの正しい連絡を受けられなくしているということです」

-でも、治るのでしょうね?

「勿論です。病気は全て治ります。[不治の病]というものは存在しません。治してもらえない人が存在するだけです」

-遠隔治療を依頼されたことが三度ないし四度あるのですが、私の感じでは成功しなかったと思います。いずれの患者も死亡したのです。

「もしかしたらそれは、あなたにとって最上の成功だったかも知れませんよ。魂が首尾よく肉体から離れるのを助けているのです。それも心霊治療の役目の一つなのです。治療するということは寿命を長引かせることではありません。霊を目覚めさせることです。それが一番大切なのです。優先させるへきものを優先させることです。霊に関わることこそ第一順位です。霊が正常であれば身体も正常です」

-治療家によっては二、三分で治す人もいれば、二時間も掛ける人、また何週間も何ヶ月も、時には何年も掛けながら治らない人もいます。なぜでしょうか。

「[その実によって彼らを見分けよ]とバイブルにあります。大切なのは結果です。治療家は霊団との最高の協調関係を作り出すように日常生活を規制すべきです。結果は自ずと出ます。まず家の中を整えてください。後のことは霊団が面倒をみます。
 必要な時は援助を求めて祈りなさい。決して放っておくようなことは致しません。諦めて手を引くようなことも絶対に致しません。いつも自分を役立てる用意をしてください。どんな患者でも拒みません。どんな患者でも歓迎します。霊の力は万人が受ける権利をもっているのです。霊界側が欲しいのは、喜んで治癒力の流入の通路となってくれる人です」

-ある人を治療したところ、良くはなったのですが、その後他界してしまいました。どう理解すべきでしょうか。

「霊の世界へ戻って行くのがなぜ悲劇なのでしょうか。赤ちゃんが地上へ誕生した時、私達の世界では泣いている者がいるのです。反対に、死んでこちらの世界へ戻って来るのを大喜びして出迎えている者がいるのです。地上を去ることをなぜそんなにいけないことのように考えるのでしょうか」

-サイキックとスピリチュアルを区別しておられるようですが、なぜでしょうか。

「同じく治療といっても、物質次元の磁気的なものがあり、幽体を使用した心霊的なものがあるのです。更にその上に、霊界の高い界層からのエネルギーによる治療があります。これをスピリチュアルと呼びます」

-サイキックと呼ぶものの範囲は?

「地球に近いレベルのものと思ってください」

-それは身体上の効果だけで、魂の琴線に触れるレベルのものではないことを意味するのでしょうか。

「いえ、魂への影響も全く無いわけではありません。が、極めて限られており、受容性に乏しいと言えます。霊的意識としては低いレベルでの働きしかありません」

-その背後にエネルギーの作用はないのでしょうか。

「あることはありますが、質的には落ちます。エネルギーには無限の段階があります。その頂点には大霊がおわします。そして物質はその最下層に位置します。治療はその階梯のどの段階においても行えます。どの段階になるかは治療家の霊性の高さによって決まります」

-精神的な病に冒されている人には同情を禁じ得ないのですが、正直言って私達の無力さを痛感させられております。

 「精神病も心霊治療で治せます。霊団に全てを預けて祈るのです。それだけでいいのです。そうすることで治癒エネルギーがあなた方を通して流れます。直接治療が出来ない場合は遠隔治療でエネルギーを送ってあげればよろしい。
 心霊治療の体制は今や立派に確立されております。もう排斥されることはありません。あなた方一人ひとりに果たすべき役割があります。重大な役目です。皆さんは霊力のチャンネルとして大霊の無限の進化の計画の中に組み込まれていることを忘れてはなりません。素晴らしい仕事です。が、同時に、責任ある仕事でもあります。
 本日はこの私をご招待くださり、語り合いの時を持たせて頂いたことを光栄に存じております。少しでもお役に立っていれば幸いです。少なくとも互いに勉強になったことは確かでしょう。
 お終いに大霊の祝福を祈念致しましょう。初めも終わりもない大霊の援助を求めましょう。そしてその御心を我が心とすべく、日常の生活を規律正しいものに致しましょう。
 大霊の道具として常に最善を尽くしましょう。その努力の中で、私達の働きの場が常に大霊の愛のマントに包まれていること、そして私達一人ひとりが温かき大霊の御胸に抱かれていることを実感致しましょう。
 皆さまに大霊の祝福のあらんことを」