自殺ダメ




 [コナン・ドイルの心霊学]コナン・ドイル著 近藤千雄訳より

 P215の訳注より抜粋

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 Ectoplasm

 〝抽出された〟を意味するギリシャ語のエクトスと〝原形質〟を意味するプラズマの合成語で、フランスのノーベル賞生理学者シャルル・リシェが命名した。そのリシェやドイツの精神科医シュレンク・ノッチング、更に英国の物理・科学者ウィリアム・クルックスなどによる本格的な研究の成果を纏めると、ほぼ次のようなものになる。

一、エクトプラズムの現象はエクトプラズムそのものではない。霊媒から出る特殊物質に霊界のある物質を化合させて出来上がるもので、それを行なうのは霊界の技術者である。

二、実験中、霊媒の身体のある要素が分解されて、気体となって耳・鼻・口などから体外へ出る。出ると直ぐ霊界の物質と化合して、粘着性の液状体に変化する。

三、体外へ出た直後と、それが使用され始めた時とでは、その硬度に差がある。例えば物体を浮揚させる場合、その物体に近付くにつれて硬度が増していく。

四、腕のように長く伸びて、中間が肉眼に映じない程稀薄になっても、そこで途切れているのではない。必ず何ものかによって補充されているのであるが、その〝何ものか〟は、固体でもなければ液体でもなく、気体でもない。気体よりも一段と柔らかい何ものかである。にもかかわらずガスのように形が崩れることはなく、その安定性はまるで管にきっちりと詰められた液体のようである。

五、その〝何ものか〟と同じものが物質化霊の形体を支えているものと推察されるが、これをウィリアム・クルックス博士は〝サイキック・フォース〟と名付けている。

六、全ての出産又は発生の過程が暗闇の中で行なわれるように、物質化現象も暗室の中で行なわれる。科学者によれば地球の大気層がもう少し稀薄だったら、地球上に生命が発生することは恐らく不可能だった筈だという。これは生命の発生にとって光線が有害であることを物語るものである。心霊現象が暗室の中で行なわれるのも同じ原理に基づく。

七、物質化されたものは、その大小・形態・種類を問わず、必ず霊媒と繋がっている。

八、物質化現象はいわば〝再創造〟であって、新しいものが創造されるのではない。従ってギリシャ神話に出て来るような半人半獣といった架空のものは物質化出来ない。

九、物質化して出現した霊の指紋を取ることに成功している。また脈拍を数えることも出来た。

十、こうした事実によって、物質化現象とは、霊体と同じものをこしらえるのではなく、霊体そのものの内部と外部にエクトプラズムが充填される現象である。

十一、心霊現象は霊界と地上界との共同作業であるが、物理的法則が無視又は超越されるようなことはない。例えば物質化霊の体重が五十ポンドである場合には霊媒の体重がきっちり五十ポンド減っているといった具合である。

十二、物体が浮揚した場合には必ずそれを支えているもの、或いは吊り下げているものが存在する。その場合、浮揚した物体の重量は霊媒に掛かってくる。物体が三十ポンドであれば霊媒の体重が三十ポンド増している。その重量が出席者に分散されることもある。

十三、エクトプラズムの一部を切り取らせてもらって顕微鏡による観察と化学分析を行なった結果は次の通りである。
○皮膚の円盤状組織、多数。唾液状成分、数種。粘液状の粒状組織、多数。肉組織の微片、多数。チオシアン酸カリの痕跡あり。乾燥重量、一リットルにつき8.60グラム。無機質3グラム。
○無色。やや雲模様。液状(粘り気あり)。無臭。細胞と唾液の痕跡あり。沈殿物やや白。反応弱アルカリ性。