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カテゴリ:★『迷える霊との対話』 > ウィックランド 子供の霊

ウィックランド 子供の霊 目次

孤児のまま他界したスピリット

霊界の浮浪者・アンナ

スピリットが少女を算数嫌いに導いた

霊界の『家なき子』

孤児のまま他界したスピリット

●家族を知らないまま他界したケース
 地上時代に家族というものを知らないまま他界したスピリットがよく出現しているが、知識欲が旺盛なせいか、新しい生活環境に馴染むのが早いようである。


 1921年5月25日
 スピリット=ミニー・オン・ザ・ステップ(女の子)


博士「どこから来たんですか?」
スピリット「知りません」
博士「今まで、どこで何をしてたんですか?」
スピリット「それも分かりません」
博士「分からないでは済まないでしょ?自分が今どこにいるのか、どこから来たのかも分からないの?」
スピリット「分かりません」
博士「死んで、どれくらいになるの?」
スピリット「死んで?知りません、なんにも・・・」
博士「誰か『あなたはもう死んだのよ』と言った人はいませんか?」
スピリット「いません。あたし、あっちこっちを歩き回って、人に話しかけてるの」
博士「誰にですか?」
スピリット「手当たりしだい誰にでも。なのに、どういうわけか、誰もあたしの方を向いてくれないの。時々大勢の人の中に入り込んで、今度こそ全部の人をあたしのものにしたいと思ったり、壇の上に上がって『一体このあたしはどうなってるの?』って、大声で聞いてみるんだけど、みんな知らん顔をしているの。あたしだって一人前のつもりなのに・・・。だあれも相手にしてくれないの」
博士「そうなる前のことを思い出せる?」
スピリット「そうなる前?一人前だったわ。今は多分『除け者』なのね」
博士「『一人前だった』頃は、どこに住んでたの?」
スピリット「ずっと同じ場所よ。そのうち退屈しちゃって、横になって眠り続けたの。眠った後また出かけるんだけど、同じ場所をぐるぐる歩き回るだけで、少しも遠くへ行かないの」
博士「誰かついて来なかった?」
スピリット「目に入るのは、全部あたしを除け者にしている人達ばっかりよ。誰もあたしの方を向いてくれないし、心配もしてくれない。時々惨めな気持ちになったけど、また平気になるの」
博士「お母さんは?」
スピリット「知らないわ。お腹が空くことがあるけど、たまらなくなったら、誰でもいいからおねだりするの。貰えることもあるし、貰えないこともある。どこかの家の台所に上手く入れたら、食べるものを見つけて思い切り食べるの。食べ終わったら、また出歩くの」
博士「どこを?」
スピリット「どこでも」
博士「食べるものが手に入った時は、誰か他の人間になったみたいな感じがしない?」
スピリット「お腹が空く、だから何か食べるものを探すの」
博士「どこへ探しに行くの?」
スピリット「それが、とっても変なの。代金はいつも誰か他の人が払ってくれて、あたしは一円も払わない・・・本当に変なの。何を食べても代金を払ったことがありません。時々、あたしの欲しいものが出ないことがあるけど、仕方なしに頂くの。時々、ひどいものを食べさせられて気分が悪くなることがあります。出されたものが気に入らなくて、しかめっ面をすることもあります。思い切って食べる時と、ほんの少ししか食べないことがあります。それに、男になったり女になったりします(完全に憑依した時のこと)。
 自分がどうなってるのか、わけが分からなくなることがあります。どうしてこんなに変になっちゃったんでしょう?自分にも分かりません。人から話しかけてもらいたくて、歩き回って手当たり次第に話しかけるんだけど、誰も相手にしてくれなくて、ただ自分の声が聞こえるだけなの。たまには話し合ってる人の中に入り込んで、しゃがみ込んで、そして・・・・ああ、分からない!半分だけが自分になったみたいー誰か他の人になったみたいになります」
博士「年齢はいくつ?」
スピリット「年齢?知りません」
博士「自分の年齢が分からないの?」
スピリット「この前の誕生日の時は、十九歳だった」
博士「お父さんやお母さん、あるいはお姉さんはいるの?」
スピリット「いません」
博士「両親はどこに住んでたの?」
スピリット「父さんも母さんも知りません」
博士「あなた自身はどこに住んでたの?」
スピリット「父さんや母さんが今でも生きてるのかどうか、どこにいるのか、あたしは何も知りません。一度も会ったことがないの」
博士「どこかの施設にいたわけね?」
スピリット「あたしはホームで育ったの。大勢のお友達と一緒に」
博士「仲良しがたくさんいたのね?」
スピリット「いっぱい、いました」
博士「そこはどこだったの?」
スピリット「よく知りません。何か変なの。どうなってるんでしょう?とても変なの」
博士「きっとそうだろうね」
スピリット「人から話しかけられたのは、今日が初めてなの。あの美しい歌(交霊会を始める前にみんなで歌う歌)を聞いていると、知らない間にここに来ていました。あたしは浜辺の向こう岸へ行きたいと思って、どこだろうと思って見つめていたところでした」
博士「私達がそこへ連れてってあげますよ」
スピリット「気がついたら話せるようになってたの(霊媒に乗り移らされた)。これまでずいぶん永いこと、一人もあたしに話しかけてくれた人はいなかったわーこれだけは本当よ。あたしから話しかけると、いつも他の誰かが返事をするの。あたしは何も返事をすることがなくなったみたいだった。だって何を喋っても、誰も聞いてくれないんだもの。本当に変なの。あんな変なことってないわ。みんながあんまり意地悪だから、働いていた家から逃げ出しちゃったの」
博士「みんながどんなことをしたの?ムチでぶったりしたの?」
スピリット「そんなんじゃない。ある家で家事の手伝いをしてたの。お腹が空いたからです。もちろん期待されたほど上手に仕事は出来なかったけど、そこへ女の人がやってきて、あたしをホームから連れ出すと言ったの。あたしはそのままホームにいたかったのに・・・・。だって、ホームでは差別されないもの。もちろん辛いことはあるけど、一日中、叱られ通しより、マシよ。嫌なことも色々あるけど、楽しいこともあったわ。
 あたしを連れ出した女の人が最初に言ったのは、朝から晩まで聖書を読みなさいということでした。あたしはうんざりしちゃって、バイブルが大嫌いになっちゃった。お祈りもしなくちゃならないでしょ?膝が痛くなって歩けないほどだったわ。
 だって一日中ひざまずいて、バイブルを読むこととお祈りの繰り返しでしょ。動く時も立ち上がっちゃいけないの。膝で歩きなさいと言われたわ。それはみんな、あたしを救う為にさせてるんだって言ってたわ。それまでのあたしは本当の『良い子』ではなかったんですって。言う通りにしないと、とっても熱いところ(地獄)へ連れて行かれるんですって。ホームでもお祈りはしたけど、保母さんはとってもいい人だったわ。よくお祈りをして、神様を信じてました。
 その女の人に連れ出された時は十四歳でした。悲しかったわ。何を頂くにも、働いて働いて・・・・すると、あたしが言われた通りにしてないと言って、叱られ通しなの。つまり、お祈りとバイブルを読むことね。そんなことをしても何にもならないから、しなかったの。だって、ひざまずかないといけないでしょ。膝が痛くてたまらないから、その人の言うことが耳に入らないの。たまらなくなって転ぶと、もう大変なの。あたしの髪を引っ張って起き上がらせるの。そのくせ自分は膝にクッションを置いてるのよ。それなら何時間でも平気だわ。あたしのことをいつも罪深い女だって言ってた。すぐに疲れるからだって。
 長い時間ひざまずいていられなかったら、罪深い人間になるのかしら?あたしはよく分からないけど、そんなことをいつも真剣に考えたわーこれ、内緒だけど、こんなにお祈りを聞かされたら、神様の方が退屈するんじゃないかと思ったの(小さな声で言う)。疲れてウトウトすると、また髪の毛を引っ張って、ほっぺを叩くの。あの人は神様にお祈りをするくせに、していることは悪いことばっかりよ。言う通りにしてないと、悪魔に連れて行かれると言ってたけど、あたしは時々、この人の方が悪魔だと、本当にそう思ったわ。
 ひざまずいたままウトウトすると、すぐあたしの側にやってきて『神様、この悩みから私を救ってください。ああ、神様、私は心からあなたを愛しております』なんて言うの。いつも真っ先に自分のことをお祈りして、それからお嬢さん、お母さん、弟、お父さん、そしてお友達の順にお祈りして、最後に『ミニーのために』って、あたしのことを祈ってくれたわ。
 誰もあたしの本当の名前を知らないの。あたしは、お父さんの名前もお母さんの名前も知りません。みんなが言うには、あたしは上がり段の上(オン・ザ・ステップ)に置かれてたんだって。それであたしのことをミニー・オン・ザ・ステップなんて呼んだのね。そんな呼び方をされるのは、とっても嫌だったわ。上がり段の上で見つけたんですって。そして『ミニー』という呼び名を付けたの」
博士「あのね、あなたはもう肉体を失って、今はスピリットになっているのだよ」
スピリット「それ、何の話?あたしは女の子よ」
博士「今まであなたは、スピリットになってウロウロしてたんですよ」
スピリット「どういうこと?」
博士「あなたには、もう肉体はなくなったということです」
スピリット「死んだわけ?あたしは、もうずいぶん永いこと皿洗いをしてないし、髪の毛を引っ張られたこともないわ。あの人があんまり意地悪だから、あたし、あの家から逃げ出したの。遠くへ遠くへと逃げて、食べるものがないものだから、お腹がペコペコになっちゃった。お金もないし・・・」
博士「それからどうなったの?」
スピリット「どんどん遠くへ行くうちに道に迷ってしまい、お腹が空いてるものだから寝てしまいました。目が覚めるとあたりは真っ暗で、森の中にいました。ふと、あの人に見つかったら大変と思って、森の中を走ったり歩いたりしながら、どんどん進みました。それから、どこかで食べ物を貰わなくちゃと思ったけど、最初に見つけた家へは入りませんでした。お腹がペコペコのまま昼も夜も歩き続けたけど、大きな樹木と森以外は何もありませんでした。そうしているうちに寝てしまい、それきりその日のことは覚えていません(ここで死亡)。
 目が覚めると、身体が楽になっていたので、さらに歩き続けて町へ向かいました。ずいぶん歩いて大勢の人達がいるところへやってきたけど、誰もあたしの方へ目を向けてくれなかった。お腹はペコペコでした。
 それで、女の人がレストランに入るのを見つけて、その後をつけて入りました。一緒にごちそうを食べようとしたんだけど、その人が全部食べちゃって、あたしはホンのちょっぴりしか貰えなかった。その人はずっとあたしには知らん顔をしていました。レストランを出た後、また歩き続けているうちに、また誰かがレストランに入るのを見かけました。今度は何人かの人と一緒でした。一緒に頂いたけど、代金はみんなその人達が払ってくれました」
博士「『あたし』は、一体どうなったんだと思う?」
スピリット「分かりません」
博士「あなたは、誰かの肉体に取り憑いてたんですよ。スピリットとなって地上の誰かにつきまとっていて、その人の肉体を通して空腹を満たそうとしたんです。多分、あなたは森の中で肉体から離れたのです」
スピリット「あたし、とっても喉が渇いてました。食べるものはなんとか口に出来たけど、食べる度に喉が渇いていって、もう、バケツ一杯でも飲めそうだったわ」
博士「肉体を捨てたことに気づかずに、肉体の感覚だけが精神に残ってたのね」
スピリット「そうかしら?死んだのはいつのこと?あたしのこと、よく知ってるんでしょ?ここへはどうやって来たのかしら?」
博士「私の目には、あなたの姿は見えてないのですよ」
スピリット「あたしの両親も見えないのですか?」
博士「見えません」
スピリット「あたしは?」
博士「見えません」
スピリット「あたし、どうなっちゃったのかしら?」
博士「あなたのことは、肉眼では見えないのです」
スピリット「あたしの喋ってる声は聞こえるのでしょ?」
博士「それは聞こえます」
スピリット「声は聞こえても姿は見えないんですか」
博士「あなたは今、自分の口で喋っているのではないのです」
スピリット「ほんと?」
博士「手を見てご覧なさい。それ、あなたの手ですか」
スピリット「いいえ」
博士「ドレスはどう?」
スピリット「こんなの、一度も着たことがありません」
博士「あなたは他の人の身体を使っているのです」
スピリット「どこかの団体から頂いたんだわ。指輪もしてる!」
博士「その指輪はあなたのものではありません。手もあなたの手ではありあません」
スピリット「また眠くなってきちゃった」
博士「その身体を使うことを特別に許されたのです」
スピリット「あら!あそこを見て!」
博士「何が見えるのですか」
スピリット「よく分からないけど、女の人がいます。泣いてます」(母親)
博士「誰なのか、尋ねてごらんなさい」
スピリット「(驚いた様子で)あら、まあ、ウソ!」
博士「何て言ってますか」
スピリット「あたしは、その方の子供なんですって。あたしを置き去りにしたことを後悔してるんだと思うわ。でも、ホントにあたしのお母さんかしら?『まあ、私の愛しい子!』なんて言ってるわ。今日まで必死であたしを探し続けてきたんだけど、手がかりがなくてどうしようもなかったんですって」
博士「今はもう、お二人ともスピリットになってるんです。高級界の素晴らしいスピリットがお迎えに来てくださってますよ」
スピリット「その方は真面目に生きていたのに、男に騙されたと言ってます。教会に通っているうちに、男が結婚しようと言い寄ってきて、お腹に子供が出来ると、どこかへ姿を消しちゃったんですって。あたしを産んでから身体を壊して、あたしをホームの上り段に置き去りにし、それから不幸続きで、とうとう病気で死んじゃったんですって」
博士「お母さんに言っておあげなさい。お母さんもあなたと同じように、今はもうスピリットになったのよって。素晴らしいスピリットが、あなた達を救いに来てくださってますよ」
スピリット「母さん!おいでよ!許してあげるわ、母さん。もう泣かないで。これまでのあたしには母親がいなかったけど、今日からは母さんがいるわ。あたしをずいぶん探したって言ってるわ。それで誰かが、あたし達二人をここで会わせてくれたんですって。『きっと見つかりますよ』って言われてやってきたと言ってます。ほんとに見つかったのね。嬉し泣きしてもいいかしら?泣きたくなっちゃった。だって、あたしにも母さんが出来たんですもの」
博士「霊界でお二人の家がもてますよ」
スピリット「あたしの名前はグラディスというんですって。母さんの名前はクララ・ワッツマンですって」
博士「どこに住んでたんだろう?」
スピリット「セント・ルイスですって」
博士「霊界へ案内してくれる方が、ここへ来てくれてますよ」
スピリット「あれは何?まあ、インディアンの少女がやってくるわ。素敵な女の子よ」
博士「そのスピリットが、お二人に色々と素敵なことを教えてくれますよ」
スピリット「あら、母さん、そんな年寄りみたいな姿は嫌だわ!さっきは若かったのに」
博士「すぐに若くなりますよ。悲しんでる心の状態がそんな姿に見せているのです」
スピリット「あのインディアンの少女ーシルバー・スターと言うんだけどー母さんに手を当てがって『若いと思いなさい。そうすれば若くなります』と教えています。あっ、本当に若くなったわ!若くなったわ!じゃあ、あたし、母さんと一緒に行きます。忘れないで、私の名前はグラディスよ。ミニー・オン・ザ・ステップより素敵だわ。あたし達は、天国の神様のところへ行くのかしら?」
博士「霊界へ行くのです。そこへ行ったら、もっともっと素晴らしいことを学びますよ」
スピリット「シルバー・スターが『神はスピリットです。神は愛です。神はどこにでもいらっしゃいます』と言ってます。そして、博士に感謝しなくてはいけないって。ドクター・何でしたっけ?」
博士「ドクター・ウィックランドです。今、あなたは、私の妻の身体を使ってるんですよ」
スピリット「母さんは今は若くて奇麗です。若いと思ったら若くなるんですって。シルバー・スターがそう言ってます。いつかまた、ここへ戻ってきていいかしら?」
博士「大歓迎ですよ」
スピリット「あたしはもうミニー・オン・ザ・ステップじゃないことよ。グラディス・ワッツマンと覚えてね。皆さん、有り難う。これであたしも一人前になれたわ。ちゃんと名前がついて・・・。やっぱりいいな。あたしの『おじさま』になってくれないかしら?」
博士「そうだね」
スピリット「あたしのわがままを聞いてくださって、有り難う。さようなら」

●霊界の浮浪者・アンナ
 このミニー・オン・ザ・ステップは、その後、自分と同じような境遇の『霊界の浮浪者』のことに熱心な関心を寄せるようになり、大勢のスピリットをこのサークルへ連れてくるようになった。次の例はその最初のスピリットで、ほぼ一ヶ月半後のことである。

 1921年7月13日
 スピリット=アンナ・メアリ


博士「こんばんは。ここにいる人の中に知ってる人がいますか」
スピリット「ここに来たら食べるものが貰えるって、ある人が教えてくれたの」
博士「あなたに必要なのは霊的な栄養です」
スピリット「それ、食べられるの?」
博士「食べられないけど、あなたの精神に必要なのです」
スピリット「精神の為か何か知らないけど、あたしが今欲しいのは、お腹の為のものです。もう永いこと何も食べてません。でも、変ね。あなたが話しかけてくれた時から、お腹が空かなくなっちゃった。さっきまですごく空いてたのに、今は空いていない」
博士「さっきまで、何をしてたの?」
スピリット「別に何も・・・何もすることがなくて、うんざりしてるの。することがないのは退屈よ。何かしたいわ。何もすることがないとイライラしちゃう。どうしていいのか分からない。あっちこっちと、どこへでも行きたいと思ったらすぐに行けるんだけど、着いたらまた、どこか他のところへ行きたくなるの。何かすることがないかと思い続けて、もう嫌になっちゃった。いつもよその方が良さそうに思えて、行ってみたくなるんだけど・・・」
博士「名前は何ていうの?」
スピリット「みんなメアリと呼んでいるけど、本当はアンナ・メアリよ。メアリって呼ぶ人もいるし、アンナって呼ぶ人もいる」
博士「お父さんとお母さんは、どこに住んでたの?」
スピリット「父さんも母さんも、知りません」
博士「年齢はいくつ?」
スピリット「知りません」
博士「カリフォルニアに行ったことがある?」
スピリット「あるわけないでしょ、あんな遠いとこ。一度も行ったことがありません。行けるほどのお金もなかったし・・・。あたしのいたところは夏は暑いし、冬は寒かったわ」
博士「ここへはどうやって来たの?」
スピリット「ほんと、ほんと、どうやって来たのかしらね?」
博士「誰かが連れてきてくれたのでしょ?」
スピリット「ミニー・オン・ザ・ステップ」
博士「今、そこに来てるの?」
スピリット「ええ」
博士「同じところに住んでたの?」
スピリット「そう」
博士「ミニーと似た境遇だったの?」
スピリット「あの子は、とてもいい子だったわ。あたしもあそこから逃げ出しちゃったの。世の中が見たかったし、同じところにいるのが嫌で・・・。
子供がたくさんいるホームにいて、そこにミニーもいました。そこがあたし達の家だったの。すごく働かされたわー磨いたり水を運んだり。あんまり疲れるから逃げ出しちゃった。みんな、あたしのことを馬鹿だ馬鹿だって言うし・・・。あたしは少しも馬鹿だなんて思ってないわ」
博士「あなたをここへ連れて来たのはミニーなのか、ちょっと聞いてみてちょうだい」
スピリット「そうだと言ってます。あたしを探してくれたんですって。今はちゃんと自分の家をもってると言ってます。
 (驚いた目つきで)うわぁ、すごい!あんな素敵な家、見たことないわ!見て、あの家!ミニーの家よ。奇麗!自分の家だって言ってるわ。驚いちゃったなあ」
博士「どうやって手に入れたのか聞いてみてちょうだい」
スピリット「(ミニーに向かって)どうやって手に入れたの?あなた(博士)や、あなた達(サークルのメンバーを一人一人指差して)のお陰だって。あの家はホームにいたお友達みんなのものなんだって。探し当てた人をみんな、あの家に連れてくるんだそうです。
 あの子、幸せそうだわ。あたしのことなんか思ってくれる人は一人もいなかった。だって、あの子の方があたしよりまだマシだったんだもの。でも、ほんとに素敵な家だわ!」
博士「何が原因で死んだの?」
スピリット「あたし、死んでなんかいないわ。あたしの声が聞こえないの?あら、メアリ・ブルームがいるわ。それにチャーリーも!あたし、チャーリーは嫌いよ。自惚れちゃってさ。あたしをずいぶんいじめたわ。いつも他の男の子と一緒になって、あたしを追っかけまわしたの。あたしのことを馬みたいに思って・・・いつも髪の毛を引っ張ったわ。あたしのことを『クシャクシャあたま』って呼ぶの。我慢できなくなって思い切り怒ると、みんなびっくりして逃げて、今度はあたしを追っかけるの。
 メアリ・ブルームは、いつもあたしと一緒に床磨きをしたのよ。メアリが、もうしなくても良くなった、と言ってる。ミニーの家にいるんだって。妹のエスターも一緒だって。ミニーが言ってるわー素直に言うことを聞いたら面倒をみてあげるって。素敵な家をもらって、仕事もさせてくれるんだって」
博士「お母さんの名前を知ってる?」
スピリット「母さんが奇麗な人だってことは、よく聞いてたわ。美しい家に住んでたことは覚えてるけど、あたしのことは嫌いだったみたいーあたしがお馬鹿さんだから・・・」
博士「あなたのことを恥みたいに思ったのかな?」
スピリット「ちっとも可愛がってくれなかった。とっても奇麗な人だったそうだけど・・・」
博士「ミニーと一緒に行きたい?」
スピリット「ミニーはすっかりレディよ。昔とすっかり変わっちゃったわ。美しくなって」
博士「何か言ってる?」
スピリット「あたしが、もうスピリットの世界にいることを理解しないといけないと言ってます。あら、あの美しい女の人を見て!」
博士「何て言ってますか」
スピリット「霊界の孤児の世話をする施設をもってるんですって。神様についてのお話をなさるそうです。美しい方よ、本当に美しい方!奇麗な金髪!銀に近いかしら?笑顔が太陽みたい。こんなことを言ってますー『私についてらっしゃい。地上では幸せでなかったけど、私と一緒に暮らして幸せになりましょう。同じような身の上の子供を大勢集めて、本当の人生のお話をしてあげます』って」
博士「その方の名前を聞いてみてくれない?」
スピリット「アビー・ジャドソンだそうです。(そのスピリットに向かって)ねえ、あなたはあたしのことを『お馬鹿さん』なんて言わないわね?あたしのお母さんになってくださる?『母さん』と呼んでもいいかしら?あたしは母さんがいなかったの。一度でいいからあたしを抱っこしてくれない?お母さんてどんなものか、感じてみたいの。口づけもしてくださる?ねえ、お願い。お母さんの口づけがどんなものか、あたし知らないの。
 その方が言ってますー『ええ、いいわ、あなたのお母さんになってあげましょうね。面倒を見てあげますよ。美しいスピリットの世界で一緒の家をもちましょうね』って。
 わあ、口づけしてくれたわ!素敵な方よ!ねえ、もっと優しくして!嬉しいわ!あたしも幸せになれたわ。だってお母さんができたんだもの!あたしも、一生懸命良い子になるわ。神様にお祈りしたから、お母さんをくださったんだわ」
博士「さ、これであなたもスピリットの世界へ行くのですよ。その世界では、幸せであることが天国なのです。天国とは心の持ち方一つなのです」
スピリット「もう行かなくてはいけないとおっしゃってます」
博士「その方のことは、私もよく知ってますよ。大勢のスピリットをここへ連れてきてくださってる方です。地上では先生をしておられたのです」
スピリット「とても奇麗な家に住んでいらっしゃるそうです。でも、地上の家とは違って、神様へのお祈りの仕方を教わるところなんですって」
博士「その方の側に行ったつもりになってごらんなさい。すると、その身体から離れますよ」
スピリット「ブルームとミニーが、あなたに感謝しなくてはいけないって、私に言ってます。新しい母さんはあたしのことを恥さらしだと思わないかしら?あたし、字も読めないの。勉強する暇がなかったんですもの。あの大きなホームで、女の人に預けられてから、ずっと働かされ通しだったわ。それで病気になって、咳ばかりしてたの。それでも休ませてくれなかった。どんどん病気が酷くなって、それから先のことは何も覚えていません(死んだ)。
 あたしを救ってくださって、ありがとう。さようなら」

●スピリットが少女を算数嫌いに導いた
 少女のR・Gは、霊的影響を受け易い子で、たびたび憑依霊に苦しめられていたので、招霊によって治療することになった。この後紹介する実験が行われる前の何週間かは、特に反抗的態度を見せ、算数をひどく嫌い、また、なぜかショッピングに行くんだと言い張ってすねた態度を見せていた。母親は、スピリットが憑依していることを知って、何回か冷水を浴びせたらしいが、それが、結構、効果があったらしいことが窺われる。


 1922年8月2日
 患者=R・G
 スピリット=リリー

 霊媒に乗り移ると激しく足を踏み鳴らし、子供の声で怒って叫ぶように、こう言った。
スピリット「嫌だあ、さわっちゃダメ!嫌だ、嫌だあ!あたしに触らないで!あんたなんか嫌い!あたしに火をつけたのはあなたでしょ!あたし、それが怖い!」
博士「名前を教えてちょうだい」
スピリット「知らないわ」
博士「どこから来たの?どこからか来たに違いないんだけど、食事代はちゃんと払ってるのかな?」
スピリット「払ってないけど、食べるものは手に入ります。お金は持っていません」
博士「名前は何ていうの?」
スピリット「だから言ったでしょ、知らないって」
博士「お母さんは、あなたのことをジムと呼んでいましたか」
スピリット「あたしは、男の子じゃないわ! 見て分からないの?背中に火をつけるのは、もう止めて!あれは嫌、絶対嫌!」(足を踏み鳴らす)
博士「いつも、こんなにお行儀が悪いのかな?」
スピリット「なぜ、あたしをあそこから連れて来たのよ?もう行くところがなくなったじゃない!さんざん火をつけて私を追い払ったわね!(足を踏み鳴らす)あたしはあの子と一緒にいたいのよ(R・Gのこと)。あの子はあたしのものよ!」
博士「なぜ、あの子をそんなに苦しめるのかな?あの子はあなたのものではありませんよ。親戚の人でもないのですよ」
スピリット「(泣きながら)あの子が要るの!」
博士「どこから来たの?もう死んでしまったことが分からないのかな?」
スピリット「あたしはあの子と一緒にいたいの。(泣きながら)あの子が要るのよお、あの子が要るのよお。あたしを追い出したのはあなたね!あなただったのね!いじわる!」(足を踏み鳴らす)
博士「追い出してあげて良かったと思ってるんです。あの子と一緒でないといけない理由はないでしょ?」
スピリット「あたしには家がないの」
博士「自分が、今はもうスピリットになっているのが分かりませんか?ここにいる人達には、あなたの姿は見えてないのですよ」
スピリット「あの自動車に乗るのが楽しかったわ。あんな楽しい時もあったのね」
博士「もう自動車なんかに乗らなくてもよろしい。スピリットの世界へ行くんですから・・・」
スピリット「(R・Gに向かって)あんななんか大嫌い!何もかもあんたのせいよ。いじわる!あたしは自動車に乗りたいのよ。あんなお店になんか行きたくなかったのに、あんたが連れて行ったから迷子になったんじゃない!いい迷惑だわ!」
博士「あなたも人に迷惑をかけてるんです。少しわがままが過ぎますね」
スピリット「あなたは、あたしの背中に火をつけたわ」
博士「言うことを聞かないと、また火をつけますよ」
スピリット「女の子に火をつけたりして、恥ずかしいと思わないの!?」
博士「あなたはそうでもしないと、ダメだったのです」
スピリット「まだ背中がヒリヒリするわ。(R・Gに向かって)あんたってひどい人ね!水に潜らせたりして(水をかけられたこと)。ひどいじゃない!あたしは水が苦手なんだから・・・。それに、お店の中を連れ回したりして・・・」
博士「今日限りで、あの子には迷惑をかけなくなります。名前は何ていうの?」
スピリット「リリーよ。あたし、ホワイト・リリーよ」(『白ユリ』という意味の奇麗な名前であることを自慢している様子)
博士「わがままばかり言っちゃダメですよ。そんなことだと、あの世へ行ってからお家が見つかりませんよ」
G夫人「私の子供を見つけたのはどこ?」
スピリット「この子を見つけた時からお友達になったの。楽しかったわ。遊び道具がたくさんあったし・・・」
博士「リリーちゃんには、もう肉体はなくなってるということを分かってくれないかな。ここはカリフォルニアだけど、そのことは知ってる?」
スピリット「何も知らない」
博士「お父さんは何をしてたの?」
スピリット「お父さんのことは何も知らない」
博士「お母さんは、どこにいるの?」
スピリット「知りません。あたしをぶったから家を飛び出しちゃった。あんまりひどいから逃げ出したの。大きな建物で、いじわるばかりがいたわ。だから、あたしもいじわるになっちゃった。いじめてばかりいるんだもの。とうとう腹が立って、喧嘩になって、それで飛び出しちゃった」
博士「飛び出してからどこへ行ったの?」
スピリット「逃げているうちに転んだんだけど、それから後が分からないの(死んだ)。時々、ちっちゃな子供になったみたいに思えることがあるの(Rに憑依)。だけど、あたしはちっちゃくなんかないのよ。十一歳か十二歳くらいになったかと思うと、今度は、そうね、五歳くらいの子供になったみたいに思えるの」
博士「そんなちっちゃい子供になったみたいに思えた時は、みんなから何て呼ばれたの?」
スピリット「『R』と呼んでたけど、あたしはRじゃないわ。逃げる途中で転んだ後、しばらく真っ暗なところにいて、それから突然歩けるようになって、それであの子(R)と遊んだの」
博士「何かの事故に遭って死んだんですよ。その時にリリーちゃんは肉体を失って、今はスピリットになってるんです。ここにいる人達には、あなたの姿は見えてないのですよ」
スピリット「あたしには、あなたの姿は見えないわ!」
博士「口のへらない子ですねえ」
スピリット「あんたこそ、おせっかい焼きのくせして!あたしは、まだちっちゃいんだから、わがまま言わせてよ。その手を放してよ!」
博士「私が握っているのは、あなたの手ではありません。私の奥さんの手なんです」
スピリット「あんたなんか、大嫌い!」
博士「あなたは今、私の奥さんの身体を使っているのです。ですが、少しの間だけですよ。あなたは、何も知らずにあの女の子につきまとってるものだから、無理矢理離してその身体に宿らせたのです」
スピリット「あの子はあたしのものよ」
博士「よく聞きなさい。言うことを聞かないと、いつまで経っても住む家がありませんよ。あなたのことをよく知っている霊界の方達が、あなたをここへ連れて来て、私の奥さんの身体に宿らせて、こうして、あなたを救ってあげようとしているのです。
 霊界というところは、素晴らしいところです。そこへ、その方達が案内してくださいます。地上をうろつき回っても見つからない本当の幸せが見つかります。そのためには、そのプリプリする癖を直さないといけません」
スピリット「その人達は、あたしにいじわるしないかしら?どこへ行ってもいじめられどおしなの。男の子が大勢であたしを虐めるものだから、シャクにさわって喧嘩になっちゃったの」
博士「さあ、可愛いインディアンのシルバー・スターの後について行きなさい。これまでで最高の友達になってくれますよ。昔のことはこれっきり忘れることです。みっともないマネをしてはいけませんよ。これからはいい人ばかりで、いじわるする人なんか一人もいませんよ」
スピリット「ずいぶんムチで打たれたわ」
博士「これからは霊界の素敵な方達が手引きをしてくれますよ」
スピリット「あれ、ハッピー・ディジーがやってきた」
博士「何か、いじわるを言いそうな顔をしてる?」
スピリット「そんなことないわ。男の子達は、あたしのことを『赤毛』とか『そばかす』なんて呼んでいたけど、あたしは平気だった。あそこに立ってる女の子について行っていいの?」
博士「いいですとも。これでもう火をつけられたり、火花を浴びせられたりはしませんよ」
スピリット「きっとよ、ウソ言っちゃダメよ。ハッピー・ディジーが一緒について来なさいって言ってるわ。素敵なお家へ連れてってくれるんだって。天国のことかしら?良い子になって良いことをするようになったら、しっかり勉強して、また地上に戻って来て、あの子(R)の役に立つことが出来るようになるんですって。学校のお勉強も手伝えるんですって」
博士「算数は好きかな?」
スピリット「あたし、学校は大嫌いです。では、もう行きます。これから学校へ連れて行くんですって・・・。あたし、学校は嫌いなんだけどなあ」
博士「学校は学校でも、正しい生き方を教えてくれるところですよ」
スピリット「あたし、青い目と柔らかい巻き毛が欲しいな。そんな望みは叶えられないのかしら?あたし、そんな女の子になりたいの」
博士「人のためになることをしていたら、奇麗になりますよ。美しいことを考え、親切なことをしていれば、きっと美しくなれます。スピリットの美しさが出てくるのです。
 さあ、あの人達と一緒について行きなさい。人の為になることを勉強した後、Rちゃんの面倒を見に来てあげてちょうだいね。さ、あの人達と一緒になったつもりになってごらん。それだけでそこへ行けますから・・・。すっかり生まれ変わるんですよ」
スピリット「きっと、この子の面倒を見に来ます。さようなら」

●霊界の『家なき子』
 それから一週間後に、同じような身の上のスピリット、いわば霊界の『家なき子』が出現した。同じくR・Gの母親のオーラに引っかかっていたスピリットである。


 1922年8月9日
 患者=G夫人
 スピリット=エラ


 全員で歌を歌っている間、霊媒(に乗り移っているスピリット)は黙りこくっている。
博士「なぜ一緒に歌わないのですか」
スピリット「ここにいる人達は、あたしの知らない人ばかりです。一緒に歌わないといけないのですか」
博士「どちらからおいでになりました?」
スピリット「知りません」
博士「あなたのことをもっと知りたいのです。こんなところにいるのを変だとは思いませんか」
スピリット「どうなってるのか分かりません。調べてみないと・・・」
博士「あなたがどういう身の上の方で、名前を何とおっしゃるのか、教えてください」
スピリット「ここに来たら家が見つかると誰かに言われたのです」
博士「それまで、何をしてたの?」 
スピリット「当てもなく歩き回り、身体を横たえるところがあったら、どこでも寝ました」
博士「男ですか女ですか、大人ですか子供ですか」
スピリット「あたしが女の子だってこと、見て分からないのですか」
博士「年齢はいくつですか」
スピリット「多分・・・よく分からないけど・・・十六か七だと思います」
博士「どのあたりを歩き回ったの?」
スピリット「分かりません」
博士「よく考えて思い出してみてごらん」
スピリット「色んなところを歩き回っていました・・・・。家が欲しくて・・・」
博士「お父さんもお母さんもいないの?」
スピリット「いません」
博士「小さい頃は、どこに住んでたの?」
スピリット「子供が大勢いる大きな施設です。みんな一緒でした。喧嘩と悪口の言い合いばかりだったわ。あたしには、もともと母さんなんかいなかったみたい。その大きなホームで生まれたのだと思う。いくら思い出しても、それ以外にいたところはありません。大きいホームで、男の子と女の子がいっぱいいました。いい子もいたし、悪い子もいたし、色々だった。
 あたしは何でもやりました。言いつけられたことは何でもやりました。一日中、まるで機械みたいに仕事をしました。『おい、エラ、あっちだ!』『エラ、今度はあっちだ!』と言われて、ホーム中で仕事をさせられました。まるで母親みたいに、大勢の子供の面倒を見さされました」
博士「あなたのことを、みんな慕ってたんだ?」
スピリット「みんなあたしのところに来るものだから、やってあげないといけなかったのです。それがあたしの仕事で、出来るだけのことはしてあげたつもりです。十何人もの子をお風呂に入れたり、着替えさせたりするのは、楽じゃなかったわ。とってもやかましくて、よく叱りつけたわ。頭にきたこともあったわ。一生懸命やってあげてるのに、人の足を踏んだり蹴ったりされると、腹が立つわよ」
博士「それは、どれくらい前の話?」
スピリット「そんなに昔の話ではないと思う。そのうち、迷子になっちゃったの。ある日ホームを出て歩いているうちに、帰り道が分からなくなったの」(ここで多分事故で死んだ)
博士「それから、どんなことがあったの?」
スピリット「別に何もありません。ホームに帰ろうとして歩き続けました」
博士「事故に遭ったんじゃないの?」
スピリット「いいえ。とにかくホームが見つかるまで歩かなくちゃと思って」
博士「いくら歩き続けても、住む家が見つからないのは、なぜだと思う?」
スピリット「誰かが、ここに来たら家が見つかるよと言ってくれて、あたしを何かに押し込んだの。気がついたらここにいて、歌が聞こえたの。
 そう、あたしが泣いていたら、女の子が来て、自分を救ってくれた人のところへ連れてってあげるーそこへ行ったら幸せになれるって言ってくれたの。それまでは暗いような明るいようなところを歩き回っていました。とにかく、家を見つけたかったの、ホームで子供の面倒を見るのは辛かったけど、何もすることがないよりは、あの子達と一緒の方がいいわ。あたしの子供みたいに世話をしてあげたいです」
博士「みんな、あなたと同じ孤児だったの?」
スピリット「あたしのことをみんな、頭が変だなんて言ってたけど、あたしは誰にも負けないくらい、しっかりしていたつもりよ」
博士「今、あなたは、こうして私達と話をしているけど、本当を言うと、私達の目にあなたの姿は見えていないのです。見えているのはあなたではなくて、私の奥さんなのですよ」
スピリット「あなたの奥さん!冗談じゃないわ!(思い切り笑う)あたしは笑い上戸なの。みんなが泣いている時でも、あたしは笑って笑って笑い続けるの。すると、みんな泣き止んで、黙ってあたしを見つめるの。泣いている人を泣き止ませるには、そうするのが一番だった。それでみんないい子になっちゃうの。
 あなたも試してみたら?誰かが泣いていたら、カラカラ笑ってみせるの。すると泣き止んで、その人も笑い出すはずよ。あたしのことを『笑い上戸のエラ』なんて呼ぶ人もいたわ」
博士「(手を取って)この指輪は、どこで手に入れたの?」
スピリット「指輪なんて、あたし、つけたことないわ」(そう言って、愉快そうに笑う)
博士「この手は、あなたの手じゃありませんよ。この身体も、あなたのではありませんよ」
スピリット「(笑いながら)それ、どういう意味?」
博士「あなたには馬鹿げた話に思えるかもしれないけど、でも、本当にそうなんです。馬鹿にすると後悔しますよ。ここにいる人達に聞いてごらんなさい」
スピリット「(みんなに向かって)これ、あたしの身体ですよね?」
一同「違います」
スピリット「そうよ!」
博士「この身体は、ウィックランド夫人のものなのです」
スピリット「(笑いながら)ウィックランド夫人!」
博士「あなたは、自分の無知を笑っているのと同じですよ。今、あなたは、一時的にウィックランド夫人の身体を使っているのです」
スピリット「そんな馬鹿げた話、聞いたことないわ」
博士「私が言っていることは、あなたが思う程馬鹿げた話ではありませんよ。あなたには以前のような身体はもうないのです。多分、病気か何かで、身体を失ったのです。今いる世界は、まったく新しい環境の世界なのです」
スピリット「身体がなくて、どうして生きられるのです?」
博士「霊体という身体があるのです」
スピリット「あたしが『身体を失ってる』ということは、あたしは『死んでる』ということかしら」
博士「その通りです。みんなそのことを知らないのです。人が身体を失うと『死んでしまった』と言いますが、それは間違いなのです。肉体から霊体が抜け出ただけなのです。そのスピリットが本当の自分なのです。身体は『宿』に過ぎません。死んでしまう人は一人もいません。見た目にそう思えるだけです」
スピリット「いいえ、みんな死ぬのよ!あたし、死んだ人を大勢見てるわ。あたしが知ってるちっちゃな子も、死んで天国へ行ったわ 」
博士「あなたはその子の『死んでしまった身体』を見ただけです。この世に生きていられるのはホンの短い期間だけで、いつかはみんなこの地上を去って行かねばならないのです」
スピリット「どこへ行くの?」
博士「霊界です」
スピリット「見て、やっぱりあたしはレディじゃないですか!首にネックレスをつけてるわ」
博士「それは、私の奥さんのものです。あなたはもう、肉眼に見えないスピリットになっているのです。そして、これまでずっと暗いところを彷徨っていたのです。住む家が欲しければ、ちゃんと用意してもらえますよ」
スピリット「天国で、と言いたいのでしょう?」
博士「イエスは『神の国は自分の心の中にある』とおっしゃいましたよ」
スピリット「イエス様は、あたし達の罪を背負って死なれたのです。真面目に生きていれば、死んだ時に天国へ行って、天使様と一緒に暮らすのです。ホームでいつもそう祈ったわ。(R・Gの姿を母親の側に見つけて)あたし、あの子が好きなの。前に見かけたことがあるわ」
G夫人「あなた、リリーを知ってる?先週ここに来た子で、あなたと同じように、もうスピリットになってるのよ」
スピリット「(R・Gに向かって)この間、あなたはずいぶん生意気だったわね。なぜ、あんなにつっけんどんにしたのよ?」
G夫人「だから、あれはリリーのせいなの」
スピリット「あの子は、ずいぶんいじわるだったわ。ひっぱたいてやりたいほどだったわ。あの子が近づいてくると、その子(R・G)の顔つきが変わったわ」
博士「リリーは、スピリットで、この子に取り憑いていたのです。あなたもスピリットで、今、私の妻の身体に取り憑いて喋っているのです。リリーも、あなたと同じように、この子の身体に取り憑いて喋っていたのです」
スピリット「誰かがここに来るように言ったの。家も見つかるし、あたしには特別の仕事があるんですって。これ、どういう意味ですか」
博士「この子をあなたが守ってあげるというということでしょうね、多分」
スピリット「あたしが、見張り役になるんですって。誰にも取り憑かれないように・・・何のことだか分からないけど」
博士「そのうち説明してくれますよ。もうすぐここにインディアンの少女が来ますから、その子の言うことをよく聞きなさい。霊界のホームへ連れてってくれます」
スピリット「みんなあたしを可愛がってくれるかしら?ホームにいた時は、あたしがみんなをよく笑わせるものだから、みんなあたしのことを好きになってくれたわ。誰かが言ってるわーあたしが、この子の周りにいて守ってあげないといけないんですって」
博士「悪いスピリットから守ってあげなさいと言ってるんですよ」
スピリット「どんなふうにするか、よく見てなくちゃ」
博士「その前に、ものわかりのいい子にならなくちゃ。他に誰か、こっちへ来るのが見えませんか」
スピリット「女の子が大勢やってきて、楽しそうに跳び回ってるわ。ここに、素敵な女の子がいます。『プリティガール』という名前ですって。とても奇麗な人よ。一緒にいらっしゃいと言ってます。あたしをここに連れて来たのも、この人ですって。あたしがホームでよく世話をしたことを褒めてくださってる。今度はこの方があたしの世話をしてくださるんですって」
博士「さあ、ここに来ている大勢のお友達と一緒に行かなくちゃ」
スピリット「ものわかりが良くなったら、あたしも人助けが出来るようになるんですって。あたしが(R・Gの)守り役になったら、誰にも取り憑かせないんだからー絶対よ!」
博士「住んでたのはどこ?」
スピリット「カンザス州よ(G夫人は、以前カンザスに住んでいた)。あたしは、ホームで十人から十二人くらいの子供の着替えをさせられたわ。身体を洗ってやることから寝かせつけるまで、全部よ。学校へ通う子もいたし、遊びに行っちゃう子もいました」
博士「何という町だったの?」
スピリット「ええっと・・・H市の近くよ」(後で確認された)
博士「Kーという名前の人を覚えてる?」(H市のホームの管理人)
スピリット「覚えてるわ」
博士「Mーさんは?」(女の孤児の世話係)
スピリット「別の部屋の係だったわ。あの部屋の子はわんぱくばかりで、Mさんも、手に負えなかったみたい。ぶってもダメなの。それであたしがよく助けに行ってあげたわ。あんまりぶってばかりいたら、良くないわ。
 Mさんにぶたれて、小さい子がよく泣いてたわ。それで、Mさんがいなくなってから、あたしが行って笑わせるの。笑ってるうちに、ぶたれたことも忘れちゃったみたい」
G夫人「小さい頃のあたしに見覚えがあるかしら?」
スピリット「(じろじろ見つめてから、興奮気味に)ある、ある、見覚えがあるわ。思い出した!でも、いつもはいなかったわ(G夫人は時折ホームを訪問する程度だった)。よく来たけど、すぐに帰っていった。髪がきれいで、ドレスも素敵だった。パラソルを手にして、貴婦人みたいに歩いていたでしょ?」
G夫人「そんな格好で、あたしがドブに落ちたの覚える?」
スピリット「覚えてる、覚えてる。大騒ぎしたわ。ズブ濡れになって、おばあさんに叱られて・・・。あたしはあなたのことは好きだったから、ドブに落ちた時は、とてもかわいそうに思ったわ。素敵なドレスが台無しになっちゃって・・・ずいぶん昔の話よ。
 色んなことが分かってきたわ。目が覚めたみたい!ひどい風邪をひいて、ひどく咳をして、それから眠り込んじゃった」
G夫人「私は今は結婚して、子供もいるの。この子がそうよ。ここのところ何人かのスピリットに邪魔されてたの」
スピリット「これからはあたしが力になってあげる。インディアンのシルバー・スターが、あたしがその子を守ってあげないといけない、と言ってるわ」
博士「まずは、スピリットの世界へ行って、色々と勉強しなくちゃ。人助けはそれからだね?」
スピリット「一生懸命やってみます。では、これから行きます。でも、また来ます。『笑い上戸のエラ』を忘れないでね」

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