ノヴェルという霊が、生前知っていた霊媒に、次のように語りかけてきた。

「俺が死んだ時、どのように苦しんだかを、これから話してみよう。
 死んだ時、俺の霊は、電子線で体に結びつけられていたが、これを切るのに、まず、えらい苦労をした。これが、最初の、耐え難い試練だった。俺は24歳で地上の生活におさらばしたが、この地上の命の影響は、俺が思っていたよりもしぶとく俺の中に残り続けた。
 俺は地上での生活が諦められずに体を探し回っていたんだが、気がついてみると、周りを亡霊共に取り囲まれていたんで、びっくりし、恐怖に囚われた。
 そして、段々、自分がどうなっているのかが分かってきた。自分が過去世で犯してきた罪が全て啓示のように意識に上ってきた。容赦のない光が射してきて、俺の魂の隅々まで照らし出した。一番恥ずかしいことまで明らかにされて、俺の魂が丸裸にされたような感じだった。俺は恥ずかしくて恥ずかしくてどうしようもなくなった。
 そこから目を背けて、俺の周りにいる、前から知っている、しかし新たな獲物達に襲いかかることで、何とかそうした状況から逃げ出そうとした。
 だが、エーテルの海に漂っている、光り輝く霊達が、俺には縁のない幸福ということを教えようとしているようだった。
 影のような亡霊達がいて、ある者は絶望の淵に沈み、ある者は猛り狂っていたが、俺の周りに忍び寄ってきたり、地上を徘徊したりしていた。人間達は、いい気なもので、そんなこととはつゆ知らず、のんびりと動き回っている。
 あらゆる種類の未知の感覚、或は既に知っている感覚が、同時に俺の中に流れ込んできた。抵抗し難い力に引きずられ、激しい苦悩から逃れようとしつつ、距離を超え、様々な領域を横断し、物理的な障害を乗り越えて移動していったが、自然の美しさも、天上界の輝きも、一瞬といえども、俺の引き裂かれた意識を安らかにすることは出来なかったし、永遠という観念が引き起こす恐怖を和らげることも出来なかった。
 地上の人間も、物理的な拷問を目前にして体をおののかせることがあるかもしれない。しかし、地上では、どのような苦痛であっても所詮は一時的なものであり、そのうち、希望によって和らげられ、気晴らしによって緩和され、忘却によって消されるのである。
 したがって、人間には、霊界にいる魂達が経験する、永遠に続くかと思われる、一切の希望を奪われた、悔い改めることさえ出来ない苦しみなど、到底理解することは出来ないだろう。
 俺は、いつ終わるとも知れない永遠の間、時々かいま見る輝かしい高級霊達を羨みつつ、かつ俺を嘲弄し続ける悪霊共を嫌悪しつつ、また数々の愚行を犯す人間共を軽蔑しつつ、深い意気消沈と気違いじみた反抗の間を行ったり来たりしながら過ごしていたのである。
 そうしているうちに、とうとうお前が俺を呼んでくれた。そして、初めて、俺は優しい気持ちになることが出来たのだ。俺は、お前の指導霊がお前に授けた教えを聞いた。そして真理を悟り、神に祈った。そうしたら、なんと!神は聞き届けてくださった。死の瞬間に正義を示されたように、今度は慈悲を示してくださったのだ」