1862年、ボルドーにて。

 アンジェルと名乗る霊が、自発的に、次のようなメッセージを送ってきた。

「わたしはアンジェルと申します」
ー自分の過ちを後悔していますか?
「していません」
ーそれなら、どうして、ここに来たのですか?
「ここに来れば、何とかなるかもしれないと思ったからです」
ーということは、あなたは幸せではないのですね。
「はい、そのとおりです」
ー苦しんでいるのですか?
「いいえ」
ー何があなたには欠けているのですか?
「心の安らぎです」
ー霊になっているのに、どうして心の安らぎが得られないのですか?
「過去が悔やまれてならないからです」
ーということは、悔い改めの最中だということですか?
「いいえ。これからのことが怖いのです」
ー何を恐れているのですか?
「どうなるか分からない為に怖いのです」
ー地上にいた時に、どんなことをしたのか、教えて頂けますか?そうすれば、色々なことが、はっきりしてくると思います。
「私は、地上では何もしませんでした」
ー社会的には、どの辺りにいたのですか?
「中くらいのところです」
ー結婚は?
「結婚しており、子供もいました」
ーでは、妻として、母として、一生懸命、日々の義務を果たしたのですね?
「いいえ。夫には飽き飽きしていましたし、子供には何の関心も持てませんでした」
ーそれでは、何をして過ごしたのですか?
「娘の時は、どうでもいいようなことをして、おもしろおかしく過ごし、結婚してからは、若い妻として退屈していたのです」
ー何か職業には就いたのですか?
「いいえ」
ーでは、家のことは誰がやっていたのですか?
「女中がいました」
ーそうして無意味に過ごした為に、後悔しており、また、行く末が心配なのですね?
「多分、そうだと思います」
ー悔い改めるだけでは、おそらくダメでしょうね。その無意味な生存を償う意味で、周りにいて苦しんでいる霊達を助けてあげてはいかがでしょう。
「えっ、どうすればいいのですか?」
ー助言を与え、祈ってあげて、彼らが向上するのを助けるのです。
 「どうやってお祈りをすればいいのか分かりません」
ーでは、一緒に祈ってみましょう。そうすれば、やり方が分かるはずです。いいですか?
「いえ、結構です」
ーどうしてですか?
「面倒くさいから・・・」

霊媒の指導霊モノーからのメッセージ:「地上で過ちを犯した為に償いをさせられている霊達の、様々な苦しみ、立場を見ることによって、色々と学んで頂きたいのです。
 アンジェルは、自主性を持たなかった為に、自分自身に対しても、また、他者に対しても、意味のない人生を送った人間の例です。
 どうでもよい快楽に心を奪われ、根気よく学ぶことをせず、家族に対する義務と社会に対する義務を、まったく果たしませんでした。義務を果たすことによって初めて、人間の心は、人生に魅力を見出すことが可能となるのにもかかわらず、です。義務というのは、どんな年齢でも見出すことが出来ます。
 若い時、彼女は、意味のない気晴らしをして、いたずらに時を過ごしました。
 結婚して、真面目に義務を果たさねばならなくなったのに、彼女の周りには空虚な世界が広がっていました。それは、彼女の心が空虚だったからなのです。特に重大な過失はありませんでしたが、これといって特に取り立てるべき点もなく、夫を不幸にし、子供達の未来を台無しにしました。
 そして、投げやりと無気力の為に、子供達が快適に暮らす権利を損ないました。第一に、自分自身のダメな姿を見せることで、第二に、女中に彼らの世話を任せきりにすることで、子供達の判断力と心を狂わせたのです。しかも、自分自身で女中を選ぶことさえしませんでした。
 彼女は、価値のあることをしないことによって罪を犯したのです。というのも、悪は、善を行わないことによっても発生するからです。悪を行わないだけでは十分ではないということを知ってください。それとは逆に、期待されている徳を実践して、積極的に善を行う必要もあるのです。
 神が何を望んでおられるのかを、よく考えてください。悪の道への入り口で立ち止まることだけではなくて、そこから引き返し、積極的に善の道を進んで行くことを、神は望んでおられるのです。
 悪と善とは対立するものです。ですから、悪を避けたいと思うなら、それとは反対の善の道に入り、しかも、その道を前進する必要があるのです。そうでなければ、人生は無意味なものとなります。その場合には、死んでいるのも同然です。
 いいですか、私達の神は、死せる者の神ではなく、生ける者の神なのですよ」
ーアンジェルの、直前の転生は、どのようなものだったのでしょうか?今回の人生は、その帰結なのですか?
「修道院で、怠惰に、何もせずに過ごしました。そして、今回、家族を持つことを希望したのですが、怠惰とエゴイズムが骨の髄まで染みているせいか、殆ど改善が見られませんでした。『このままでは、まずい』と、内なる声が囁くのですが、彼女はそれを無視しました。上り坂は緩やかであったにもかかわらず、彼女は、入り口のところで諦めてしまい、努力を放棄したのです。
 今でも、『こういうふうに、どっちつかずの生き方をしていてはいけない』ということは分かっているのですが、そこから出る為に努力する力が湧いてこないのです。
 彼女の為に祈ってあげてください。彼女は目覚める必要があるのです。目を見開いて光を見るように、促してあげてください。これは、あなたにとっての義務です。しっかり、この義務を果たすように。
 人間は活動するように創られています。霊的に活発であること、これが人間の本質であり、体を動かすことは、それに伴う義務です。しだかって、永遠の安らぎを運命づけられている霊として、あなた自身の存在の本質にかかわる条件を満たしなさい。
 肉体は、霊に奉仕する為にあるのであって、あなたの知性に使われる道具でしかないのですよ。学び、そして、知性を高めなさい。そうすることによって、知性は、救済の為の道具として肉体を使いこなし、自らの使命を果たすことが可能となるのです。肉体を上手に使いこなすのです。『あなたが憧れている心の安らぎは、肉体による労働の後にしか訪れない』ということを知りなさい。したがって、仕事を怠ければ、その間中、不安になりながら待ち続けることになるのです。
 働きなさい。絶えず仕事をしなさい。義務をことごとく遂行するのです。熱意を持って、粘り強く、根気よく、義務を果たすのです。信仰があなたを支えてくれるでしょう。
 誰もが避けるような、社会の中で卑しいとされている、そうした義務を、朗らかな気持ちで行いなさい。神の目から見て、そうした人は、他人に義務を押し付けて自分は楽をしている人間に比べて、百倍も千倍も優れているのです。
 全てが、天に向かって上る為の階段になっているのです。どうか、その大切な階段をないがしろにしないでください。
 そして、天使達が、いつも、あなたに手を差し伸べているということを、忘れないでくださいね。天使達は、神の為に命を使おうとしている人達を、決して放っておきません。必ず、そういう人達を支援します」