こうした体験を通じて私は、神の摂理の完璧さを学び始めたといえる。最初の離脱体験で二つの霊のオーラが融合した時の以心伝心の素晴らしさを思い出して、私はこうした教訓は全て目に見えない一人の指導霊によって伝えられていることを悟り始め、さらにその後、私の理解力の成長に応じて、その後の全ての霊界旅行が教訓を目標として計画されていたことを知った。
 私は、背後霊団はいずれ妻との再会のチャンスを案配してくれるものと確信していたが、それが間もなく実現した。三日後に離脱現象が起き、気がつくとこの度は田舎の小道に立っていた。
 離脱現象の特徴の一つとして私が気がつき始めたのは、霊的身体は霊界のある一定範囲を超えると自然にスピードが増すということである。その時もそれを意識することが出来た。その感覚、ないしはバイブレーションは心地よいものだった。
 私はまた妻が現れるものと期待していたが、なかなか姿を見せてくれない。そこで私の方から意志を妻に集中して、一言『おいで!』と言ってみた。すると少し間をおいて妻が同じ小道に姿を現し、私の方へ歩み寄ってきた。私は自分のテレパシーによる呼びかけが成功したことが嬉しかった。実に簡単でしかも自然に思えた。多分それはその後の数々の体験の為の一つの練習だったのだろう。
 妻も嬉しそうだった。近づいてくるのを見て、妻の容貌が生前そのままであることを確認した。やがて二人のオーラが融合するとある種の変化が生じ、妻の容貌がずっと進歩した霊のそれに変わっていた。それまでに高級霊を何度か見たことがあるが、妻は完成された高級霊の容貌をしていた。間違いなく私のかつての妻である。が今はすっかり違っている。にもかかわらず私は、地上にいた時よりその時の方がより一層、本当の妻を理解していた。
 地上の全人生と個性とがオーラの中に記録されており、オーラが融合し合うと、私と共に過ごした永年の生活が甦ってくる程で、たとえ目を閉じていても妻の容貌を正確に叙述することが出来たであろう。妻の方も私を地上時代以上に深く理解してくれていることも分かった。
 二人の間に素晴らしい一体関係が出来ていることは、二人が同じ挨拶の言葉と同じ祝福の言葉とを同時に述べあったことから分かった。そうなってからは口を使って喋る手間が省けた。言葉ではじれったい程表現が遅くなった。二人が味わう幸福感がバイブレーションを高めているように思え、霊的一体感の中で信じられない速さで思念をやり取りすることが出来た。
 無論こうした体験は私にとっては一時的なものに過ぎないのに、それが極めて自然に感じられた。ところが、後になって私はその間の会話の全てを肉体の脳へ持ち帰ることが出来ないことを知った。その理由については後で述べることにする。とにかく我々夫婦は、最初の出会いの時の失敗のことと、その時の出会いの嬉しさについて語り合ったことは確かである。
 二人でどの位の時間を共に過ごしたかは知らないが、そのうちその界層のバイブレーションの高さが私に心地よい眠気を誘い始めた。私はそろそろ時間が来たと感じた。すると身体が穏やかに漂い始めた。この度の別れはいささかの寂しさもなかったー我々夫婦はもう一つの霊的法則を体験したのである。
 肉体へ戻り、部屋の暗さと置き時計のカチカチという音を意識しながら、私はその妻との再会と、私が目にした言語に絶した完全さへの驚嘆の気持ちに満たされた。その完全さを説明するかのように、その時、私の精神にあるものが印象づけられた。それは『神の面影』という言葉で、それと共に天井が真珠の如き純白の大理石で出来た巨大な浅浮き彫りで覆われた。
 どうやら霊の名匠が宇宙の最高の名匠(神)を讃えているようであった。