遠い親戚に当たる女性が他界した後私はその女性の為にあらかじめ用意されていた家に連れて行かれた(人間は例外なくその地上生活に相応しい住居を用意されている)。その家の一つの部屋で私の父が待っていた。二人で話をしているうちに父が『ほら、見なさい』と言って壁の方を指差した。私は壁紙のことを言っているものと思って見つめていると、その壁の前に一個の像の輪郭が見え始め、やがて姿が整ったのを見ると母だった。
 母は私達に映じる波長の姿をこしらえるのに必要な精神統一をしている為に緊張し、真剣な表情をしていた。すっかり整うとようやくにっこりとして近寄り、挨拶をした。非常に若く見えた。他界したのは74歳の時だったが、今は20〜25歳位に見える。かなり高い界層に所属し、それでそういう出現の手間をかけなければならないのだと理解できた。
 私は一通りその家を案内してもらった後、もう一度別の部屋で母と会った。母は明るく幸せそうだった。そして、そろそろ帰らなくては、と言った。それから寝椅子に横になり『さようなら』と言った。私は母の頭部の横に立って見ていると、すーっと姿が薄れて消えていった。母とはいつでもコンタクトが取れるので、その光景を見て私は少しも悲しさは感じなかった。
 その後の霊界旅行で子供達が野原で遊んでいるのを見ていた時に、再び母が姿を見せた。この時は前の時よりも地上的雰囲気に近かった。そして最近他界してきた例の親戚の女性が地上の家のことで悩んでいると告げた。私はその人があとに残した家にとても執着していることは聞いて知っていた。そこで地上に戻ってから聞き合わせをしてみたところ、息子さん達がその家を売る考えであることが分かった。