誤った再生思想に囚われているスピリット
[セオソフィーの場合]



●再生を信じて子供に憑依するスピリット
 地上の人間が想像しているような単純な生まれ変わりの思想は間違っており、それが往々にして死後の向上の妨げになっていることは、高級霊はしばしば指摘するところであるが、我々のサークルにおいても、死後すぐに生まれ変わろうと子供に取り憑き、その子供はもとより、自分自身もおかしなことになっているケースをよく見かける。
 例えば、シカゴのジャック・Tという少年は、五歳までは正常だったのだが、その後、急に大人びた傾向を見せ始め、行動に奇妙なところが多くなった。子供には縁のない取り越し苦労をし、夜も寝付かれずにブツブツ独り言を言い、時には激しい感情をあらわにした。
 少年は、顔立ちの奇麗な子であったが、自分が歳をとってしまい顔が醜いことをしきりに口にするのだった。それを聞いて両親がそんなことはないじゃないのと説得しても、まったく耳を貸そうとしなかった。そのうち両親も回復に絶望的になってしまった。
 が、親戚の人に、我々の仕事を知っている人がいて、その少年の為に集中祈念をしてほしいと依頼してきた。早速行ったところ、一人のスピリットが私の妻に憑依して(マーシーバンドが連れて来て乗り移らせた)、少年とそっくりの仕草をした。聞き出してみると、次のような事情が明らかとなった。
 名前はチャーリー・ハーマンといい、死んだことはしっかり自覚していたが、容姿が不細工で、顔もあばた面で醜いという点をしきりに強調し、それがために誰も付き合ってくれず、そのことで心を傷つけられたという。
 そのうち、誰かから、死後もう一度生まれ変わることが出来るー自分の好みのタイプになれると聞かされたことがあるのを思い出した。彼の唯一の望みはハンサムになることだったので、今度こそいい男に生まれ変わろうと考えた。そして、奇麗な顔立ちのジャックを見つけて生まれ変わろうとしているうちに、その子のオーラに絡んでしまって出られなくなったという次第だった。
 招霊によって、その間違いに気づいたハーマン霊は、マーシーバンドの指示に素直に従って離れていった。ジャックも、それから子供らしさを取り戻し、学校の成績も目覚ましく向上したという。
 次に紹介するのも、同じように子供の身体に入り込んで生まれ変わろうとして、その子を肢体不自由児にしてしまったケースである。



 1916年11月19日
 スピリット=ウィリアム・スタンレー


スピリット「私は本当に健康体になったのでしょうか。話が出来ますね。腕も足も動かせます。あの子から、どうやって出られたのでしょうか」
博士「高級霊の方達が、あなたを救う為にここへ連れてきてくださったのです」
スピリット「地上に戻りたくなり、子供の身体に入ろうとして身動きが取れなくなって、それきり出られなくなってしまいました。身体の自由がきかなくなって、ものも言えず、酷い目に遭いました。
 地上ではセオソフィーを信じていました。教えの通りに生まれ変わりたいと思い、一人の子供を見つけて入り込んだところ、その子が麻痺してしまい、私も麻痺してしまいました。出なかったのではなく、出られなかったのです。
 自分が数年前に死んだことは知っていました。もう一度生まれ変わって、もう一つのカルマを生きたいと思ったのです。尊師に生まれ変わるつもりでいたのですが、ご覧の通りのざまでした。大変な目に遭いました。生まれ変わろうなどと考えてはいけません。間違っております。もっとも、セオソフィーの教えそのものは大変いいと思います。
 私は、考えが利己的でした。偉い人間になってみせる為に生まれ変わりたいと思ったのです。それが、まったく逆の結果になったのです。生まれ変わってみせて、セオソフィーの仲間達に、どうです、見事に生まれ変わりましたよ、と自慢してやろうと思い、子供の身体に入ろうとしたのです。
 ブラバツキー女史がいけないのです。(ブラバツキーのスピリットが来ているらしく、指さしながら)ブラバツキーさん、私がこんなことになったのも、あなたが悪いのですよ。
 ブラバツキー女史がここに来ています。私を救うのを手伝う為です。この方こそ、私に輪廻転生の教義と思想を教えたのです。今、正しい考えを教えようとなさっておられます。転生のようなものはないと述べておられます」
博士「あなたのお名前は、何とおっしゃるのですか」
スピリット「それが出て来ないのです。
 ブラバツキー女史はインドにいらして、セオソフィーの思想を説いておられました。大勢の支持者がいて、私もその一人でした。
 私の父は、インドが植民地だった頃の陸軍の将校でした。生涯の殆どをカルカッタで過ごしました。その時にセオソフィーの中心指導者達との縁があり、私もセオソフィー協会の会員になりました。
 輪廻転生説は間違いです。私は二度と生まれ変わりたいとは思いません。利己的な目的の為の転生願望を生み出します。生まれ変わらずとも、向上進化の道はあるのです。私はセオソフィーの思想とカルマの教義に固執していました」
博士「霊媒というものについて何か耳にしたことがありましたか」
スピリット「あれは、霊的な媒体のような存在に過ぎません。ブラバツキー女史も、かつては霊媒だったのですが、スピリットにコントロールされるのが嫌いで、自分の個性と才能を伸ばすべきだと考えるようになったとおっしゃっています」

 このスピリットは死後の生活への準備としての地上生活の意義、つまり地上で獲得した知識と叡智が、死後の環境を明るく照らす光となる、といった主旨の私の説明を素直に聞き、礼を述べ、最後に地上時代の姓名を告げて去って行った。