●霊的事実に無知のまま他界した牧師からの警告
 次の例は、れっきとした牧師で、自信をもってキリスト教を説き、大勢の信者をもっていたが、交通事故で他界してから様子の変化に戸惑い、精神が混乱して彷徨っているうちに、Aという女性のオーラに引っかかってしまった。
 A夫人に施される静電気治療による稲妻のような光を、彼は地獄の炎と思い込み、神の代理人として選ばれて真理を説いて来た自分が、なぜ地獄に送られたのかが理解できなかった。
 かくして、事故死してから八年目に招霊されたのであるが、さすがにベテラン牧師だけに、私との対話は延々として、かつてない長時間に及んだ。が、最後は霊的事実に目覚めて、当日出席していたA夫人と、そのご主人に詫びを言って去って行った。
 次に紹介するのは、それから三年後に戻って来て、その間の反省と償いと勉強の後を振り返りながら、後継者への警告を述べたものである。


 1922年3月14日
 スピリット=J・O・ネルソン


「今夜は、皆様方へのお礼を申し上げたくてやってまいりました。三年前のあの日、私は本当の真理を教わりました。そして、無意識のうちにとはいえ、地上の人間に憑依していたことを知らされました。
 その後、私はつくづく思いました。この地上にいる間に霊的事実を知っておくことが、どんなに大切かということです。私は決して悪い人間ではありませんでした。が、あまりにも無知な人間でした。
 何しろ私は、人に真理を説き、正しい生き方を教えるべき立場にあったのですから、本当はもっともっと霊的事実について啓発されているべきでした。今の時代に、教会の説教壇に立つ人の果たして何人が、真実を説いているでしょうか。死後の生命について説きながら、その実、ただ伝統的な教説を繰り返しているだけです。真実に触れてすぐさまそれを受け入れる人もいますが、目をつぶる人もいます。
 私は幸いでした。本当の意味で救われました。あの静電気の反応を私は、地獄にいるのだと錯覚していました。悪魔が追いかけているのだと思いました。が、かえってそれによって、地上で為すべきであったことを思い知らされる結果となったからです。(同席していた、かつての患者A夫人の母親のW夫人に向かって)Wさん、あなたにもお礼と、A夫人への詫びを申し上げねばなりません。改めて申し上げますが、私はまったく無意識でした。そういう霊的法則があることを知りませんでした。
 人に法を説いているつもりでいながら、自分が一番無知だったのです。キリストが罪を背負って死んでくださった、信じなさい、信じることによって救われるのです、と説いていました。が、それは間違っておりました。信仰に知識を加えないといけません。その知識こそが自由を与えてくれるのです。バイブルも、実はそう述べているのです。なのに私は、そうは説きませんでした。ただ信ぜよと説いておりました。
 キリスト教の牧師は、本当の意味での魂の高揚と神の理解においては、何も貢献していません。口を開けば信ぜよ、信ぜよと言うだけです。あまり多くを知られたくないのです。知ると疑問が生じ、質問をします。我々は、それに答えるだけのものを持ち合わせていないのです。
 真実を語ればいいのです。本当の意味での神と生命について、信者に理解させてあげるべきなのです。これまでの古びたドグマを説いても通じない時代となりつつあります。教会の座席が埋まることを望むのなら、教えるものを変えないといけません。
 牧師としての私が『立派』でなかったことは確かです。平たく言えば、人気がなかったという意味です。それは、私が内心どこかじくじたるものを感じ、牧師としての仕事に全身全霊を打ち込むことが出来なかったからです。
 信じることの大切さは、私も知っておりました。しかし、時折、こんな程度ではいけないーもっと死後の生命について現実的なものを知るべきだという強い観念に襲われることがありました。が、私はその度に、心の扉を閉めたのです。そのことを、今一番後悔しています。
 私の死は急に訪れましたので、その変化にまったく気づきませんでした。Wさん、あなたはご存知と思いますが、あの時は皆さんと一緒に家路を急いでおりました。踏切のところで列車が通り過ぎたすぐ後、私は反対方向から来る列車に気づかずに横切ってしまって、撥ねられたのでした。
 ところが、その時の私は、肉体から離れてしまっていることを知らずに、そのまま家に帰り、部屋に入りました。が、家族の誰一人として私に気づいてくれません。どうなっているのかと思い、一人ひとり捕まえて声をかけるのですが、みんな知らん顔をしています。実に妙な心境でした。
 どうしていいか分からないまま、教会へ戻ってみました。そのまま教会に居続けました。そのうち、Wさん、あなたが教会を訪れました。あの時のあなたは、私のことで一杯でした。薄暗い中で、あなたが明かりのように見えました。それで、あなたについて行けば事情が分かるかも知れないと思って、あなたの家までついて行ったのです。そして、家の中に入った途端、どこか狭いところに閉じ込められたような感じがしました(A夫人に憑依した)。
 やがて私は、寝入りましたー寝入ったような感じがしました。ずいぶん永い間、薄ぼんやりとして妙な感じがしていましたが、ある時突然、全身に火を浴びせられ、雷が鳴り響きました(A夫人への静電気治療の反応)。私はてっきり死んで地獄へ落ちたのかと考えました。それ以外に考えが浮かばないのです。『人を救うべき牧師が、地獄のまっただ中にいるとは!』と無念に思いました。
 そう思っているうちに、もう一度火を浴びせられたかと思うと、口がきけるようになっていました(ウィックランド夫人に乗り移らされた)。それまでは、なぜか口がきけなかったのです。あの時は、まだ死んだことに気づいていませんでしたので、てっきり元気になったと思い込んでおりました。実際は、このサークルに連れてこられていたわけです。
 目覚めさせてくださって有り難く思っております。あの時の『地獄の火』に恨みは感じておりません。あのお陰で『地獄』から『天国』へ、つまり霊界へ行くことが出来たのですから。霊界というところは、地上時代に想像していたところとは、まったく違っておりました。
 我々牧師から見て、死後の世界をどう思うか、ですか?
 正直言って、牧師は死後のことについて、自分では何も考えていないのです。説教はしても実践はしていません。『人を救う』と言いつつ、では何から救うのかとなると、まるで理解していないのです。
 前回ここで初めて、生命の実相について教えて頂いた後、私は死後の生命について多くを見、そして学びました。目が覚めてからの三年間ー死んでから三年間とは申しません。かなりの間夢幻の中にいましたのでー自分が置かれている実情に目覚めてからというものは、見るものすべてが美しく、心は愉快で、やりたいことが一杯です。
 今の私の仕事は、霊界の狂信者を相手にして、真理を説き聞かせることです。彼らは暗い闇の中に置かれています。祈り、歌い、そして、キリストは自分達の罪の為に血を流されたと叫び続けております。ただ、それだけの行為を延々と続けているだけで、何一つ、進歩も進化もありません。
 地上にも、精神病的狂信者が大勢いますが、みんな霊界の狂信者に憑依されているのです。だから、歌って祈ってばかりなのです。中には、とても狂暴で手のつけられない者もいますが、私の説得に、ふと心を開いて、目覚めてくれる者もいます。地上で福音を説いている人達が、神学から離れて、バイブルの本当の意味を理解する時代の到来を待ち望んでやみません。
 私は今、霊界で用意されていた住まいを頂いて、一応幸せな境涯にいますが、しなければならないことが沢山あるのです。地上で間違った教えを説いた信者達をこちらで探し出して、その間違いを指摘してあげないといけません。私は、ドグマばかりを説いておりました。今、それに代わる真理を教えてあげないといけないのです。
 Wさん、私が、あなたの娘さんにあたるA夫人に憑依していたことをお許しください。正直言って私自身は、あんなことになっていたとは知らなかったのです。すべて無意識のうちにやっていたことです。
 ついでに、あなたにお願いしたいことがあります。今、あなたが通っておられる教会の牧師のウィリアムさんに、心の奥で気づいていることを包み隠さずに、思い切って信者に説きなさいと告げて頂けませんか。こちらへ来るまでに心を開いておかないと、私のように暗い境涯で悶々と過ごすことになります。
 今日の若者は、古いドグマには顔を背けます。それが真理でないことは、みんな分かっております。ずばり真理を説けば、若者はついて来ます。メソジスト教会のジョン・ウェスレーは、心霊現象の意義をちゃんと説いております。それを思い切って全面に押し出して説けばいいのです。
 では、失礼します。さようなら」