●誠実なメソジストだった身障者
 次の例は、教会に真面目に出席し、信者としての義務を忠実に守り、正しい生活を送るということそれ自体は、必ずしも死後の霊的向上を保証するものではないことを物語っている。


 1922年7月19日
 スピリット=ヘンリー・ウィルキンス


 霊媒に乗り移った時の様子は、身体を前屈みにして、地上時代は身障者であったことをうかがわせた。
博士「背筋をまっすぐにできないのですか。さ、目を覚ましなさい」
スピリット「居眠りしているのではありません」
博士「なぜ、そんなに身体をねじ曲げているのですか」
スピリット「背骨が折れてるのです」
博士「折れてなんかいませんよ」
スピリット「いいえ、折れてます」
博士「昔は折れてたかもしれませんが、今は折れてませんよ」
スピリット「どうしても背中をまっすぐに出来ません。折れてるからです」
博士「私達が治してあげましょう」
スピリット「そう言ってくれた人が大勢いましたが、誰一人治せませんでした」
博士「今度こそ、大丈夫ですよ」
スピリット「もし私の背骨をまっすぐにしてくださったら、十ドルあげます」
博士「お金はどこにあるのですか」
スピリット「まっすぐに立てたら、あげます。十ドルでも足りないくらいです」
博士「『歩けるのだ』と自分に言って聞かせるのです。そうすれば歩けます」
スピリット「やって見せてくれますか」
博士「脚を動かしてごらんなさい。歩けますよ」
スピリット「何度もやってみましたが、どうやってもダメでした」
博士「でも、必ず治ります」
スピリット「しかし、私には、お金の持ち合わせがありません。ここしばらく手にしたことがないのです。お金を見つけて手に取ろうとするのですが、まるで生きてるみたいに、すっと抜けていくのです」
博士「ご説明しましょう。あなたは今はもう、スピリットになっておられるのです。『死んだ』のですーそう、地上世界から去ったのです」
スピリット「そうとは知りませんでした。そして、まだ天国へは行っていないというわけですか。私は真面目なメソジストでした。日曜の礼拝も、日曜学校も欠かさず通いました。障害が治りますようにと、一生懸命祈ったものです。仕事は靴職人でした」
博士「お住まいは?」
スピリット「テキサスです」
博士「お名前は?」
スピリット「ヘンリー・ウィルキンスです」
博士「年齢は?」
スピリット「六十を過ぎたじいさんです。三十歳の時にワゴンに乗っていて、馬がいきなり走り出して振り落とされ、背骨を折ったのです。当時は農業を営んでおりましたが、それが出来なくなって、靴の修繕みたいなことしか出来なくなりました。なんとか生計は立てられましたが、きつい時もありました」
博士「今年は何年だと思いますか」
スピリット「思い出せません」
博士「大統領は誰でしたか」
スピリット「ちょっと待ってくださいー知っていたはずです・・・・思い出しました。たしかクリーブランド大統領でした」
博士「何が原因で死んだのですか」
スピリット「私は死んでいません。今も仕事をしていますよ。もっとも、客が差し出した代金を私が頂こうとしたら、若いもんが受け取ってしまうのです。今は、店はその若者の手に渡っているという話は耳にしますが、私はずっとそこで仕事をしてきたのです。なのに、お金は全部そいつが取ってしまうのです」
博士「その店は、あなたが始めたのですね?」
スピリット「そうです、ずいぶん前に。その後、ある若者が見習いにやって来て、色々教えてやりましたが、今はそいつが代金を全部取っちゃって、私には全然くれません」
博士「ですから、あなたはもう地上を去ってしまったのですー死んだのです。その店を営んでいるうちに亡くなって、その後、その若者が店を継いだのです。その若者は、あなたがその店にいることは知りませんよ」
スピリット「たしかに、知らないみたいですね。私が椅子に腰掛けて仕事をしていると、その椅子にそいつが座るのです。どかそうとしても、どけられないのです」
博士「今年は、何年だと思いますか」
スピリット「1892年です」
博士「それは今から三十年前ですよ。ここはどこだと思いますか。カリフォルニアのロサンゼルスですよ」
スピリット「カリフォルニア!?」
博士「着ておられる衣服をご覧なさいよ」
スピリット「誰がこんな服を着せたのですか。女のドレスなんか嫌です!」
博士「ご説明しましょう」
スピリット「その前にズボンを持って来てください!」
博士「その手をご覧になってください」
スピリット「これも、私のものではありません。指輪なんかしたことはありません」
博士「仮に今、あなたがお店で靴の修理をしているとしましょう。その姿を見て、人は何て言うと思いますか。『おいおい、今日はどこかの女が靴を修理してるぞ』と言うでしょうね。『どこかの女』は私の妻なのです。あなたは今、その身体を使っておられるのです」
スピリット「私は女じゃありません。結婚を約束した女性がいましたが、私が事故で障害者になってしまい、彼女は他の男と結婚してしまいました。身障者と結婚するのは嫌だと言うのです。でも、私は彼女が好きでしたし、今でも愛しております」
博士「その女性の名前は?」
スピリット「メアリ・ホプキンスです。本当は身障者になったからこそ彼女が必要だったのです。でも、こんな身体ではダンスにも行けません。ある日、彼女から『身障者とデートするのは恥ずかしい』と言われてショックを受けました。そんなにつれない女だとは想像もしていなかったからです。その時から、身体だけでなく、心まで歪んでしまいました。女は全部悪魔だと思うようになりました」
博士「立派な女性も大勢いますよ」
スピリット「神なんかいるものかと思いました。身も心もこんなに苦しめられるなんて・・・。自暴自棄になるのを必死でこらえました」
博士「今その我慢が報われようとしていますよ」
スピリット「私はせっせと教会に寄付をしました。神がお金を必要としておられると教会は言うのです。時には手元の金がなくなって、その日の食べるものにも困ったことがあります。寄付しないと天国に行けないと言われるものですから・・・」
博士「牧師が説くような『天国』はありませんよ」
スピリット「ではなぜ、あんなことを言うのでしょうか」
博士「生活費を稼ぐ為です。イエスの教えの立派さは、あなたもお分かりでしょう?『神は霊であり、したがって霊と真理の中に神を崇めなさい』とおっしゃっています。
 キリスト教は、天国がどこか空の高いところにあるかのように説きますが、『天国』というのは各自の精神状態をいうのでして、目に見える場所ではないのです。
 私達は物的身体をもっていても、霊的存在なのです。目に見えない存在なのです。ですから、物的身体から脱け出ても、相変わらず霊的存在のままです。間違った考えに迷わされていなければ、先に霊界入りした人達が迎えてくれて、霊界へ案内してくれます。
 神は形ある存在ではありません。神は霊であり、神は愛です。あなたは先ほど愛し合った女性がいたとおっしゃいましたが、その『愛』は目に見えましたか」
スピリット「いいえ。でも、心でその存在を感じ取っていました」
博士「そうでしょう?『愛の中にある者は神の中にある』とイエスは言っております。私はこうして、あなたと話を交わしておりますが、私にはあなたの姿は見えていないのです。見えているのは私の妻の顔だけです」
スピリット「あなたは、先ほど、私があなたの奥さんであるみたいな言い方をされていますが、どういうことなのか分かりません。『死』というものはないとおっしゃりながら、私はもう死んでるみたいな言い方をされてます。でも、ご覧の通り、障害者のままですよ」
博士「あなたが、もし霊的な真理を理解していたら、死んですぐから障害者でなくなっていたはずなのです」
スピリット「ずっと前から正常になってるとおっしゃるのですか」
博士「そうです。もしも真理を知っていたら、です。イエスが言ってるでしょうー『人は、私のことを口先で崇めてくれるが、心は遠く離れている』と」
スピリット「イエスは、我々人間の罪を背負って死んだと、みんな信じてます。真面目に生きた人間は、死後天国へ行くと説いていますが、私はまだ天国へは行っておりません」
博士「キリスト教の言う『天国』へは行けませんね。そんなものはないのですから。もしあっても、そんなところへ行ったら、誰もいなくて寂しいですよ。『天国』とは、霊的真理の理解を通して到達した心の状態を言うのです。あなたは音楽はお好きですか」
スピリット「昔は好きでした。聖歌隊で歌ったこともあります。恋人も同じ聖歌隊にいたのです。素敵なハーモニーで歌った時は、とても幸せでした。が、牧師が壇上に上がると、教会に寄付をしない者のことを悪し様に言うのです。そういう人間は、まっすぐに地獄へ行くことになっていると言うのです。清く正しく生きていても、お金を教会に持って来ないと地獄へ落ちるというのが、私にはどうしても理解できませんでした」
博士「メソジスト教会の創始者であるジョン・ウェスレーは、霊的真理をよく理解していて、死後の生活やスピリットとの交信についても、正しく説いておりました。彼にとっては、死後の世界のことは信仰ではなくて、事実として本にも書いているのです。ところが、信者にはそれが理解できなかったのです。
 イエスの教えも、クリスチャンは正しく理解しておりません。というよりは、理解しようとしないのです。それは、教会が理性的に考えることを禁じて、ただ信ぜよと教えるからです。霊的真理は信じるだけではいけません。理性的に理解しないといけません」
スピリット「店で仕事をしていると(死後の話)、時折、父親と母親がやってきました。でも、とっくに死んでいるので、会ってもしょうがないと思って、近づきませんでした」
博士「なぜ、会ってみなかったのですか」
スピリット「だって、私は生きた人間ですよ。店で靴を修理しているのです。母が、一緒においでと言ってくれましたが、身体が不自由だし、お金も稼がないといけないし・・・・」
博士「その時既に、あなたはスピリットだったのです。だから、ご両親の姿が見えたのです。あなたは、死んだ後もずっとお店を離れなかったー死後の生命の法則を知らなかったからです」
スピリット「教会へ通わないと、地獄へ行って永久に火あぶりになると教えられました」
博士「永遠の火あぶりなどというものはありません」
スピリット「それは有り難い!」
博士「辺りを見回してごらんなさい。どなたか、知った方の姿が見えませんか」
スピリット「身体は不自由だし、もう靴直しも飽きました」
博士「ここを去った後は、もう靴の仕事とは縁が切れますよ」
スピリット「思い切って遊びたいし、歌も歌いたい。音楽はいいです。身体が不自由になるまでは、歌のレッスンが楽しかったですけどね」
博士「多分、メアリも来ているはずですよ」
スピリット「メアリが?あの女はこの私を棄てて、他の男と結婚しましたよ。でも、幸せにはなれなかった。その男が飲んだくれでしてね。彼女、悩んでましたよ。あれ、母がいる!母は優しかったなあ」
博士「何かおっしゃってますか」
スピリット「『もう身障者じゃないんだよ』と言ってます。
 あれ、母さん、僕は新しい身体になってるよ。でも(と言いながら泣き出す)母さん、女になっちゃってる。なんということだー女みたいにめかし込んで!」
博士「私の妻の身体で話をしているだけですよ」
スピリット「他人の身体で話が出来るのですか」
博士「出来るのです。私の妻は霊媒といって、スピリットがそれを使って話をすることが出来るような身体をしているのです。あなたが話をしている間、妻の意識は控えていて、表面に出てこないのです。不思議に思われることでしょうが、事実そういうことが出来るのです。あなたは『生命とは何か』という疑問を抱かれたことがありますか」
スピリット「いえ、そんな難しいことを考える余裕はありませんでした。靴を製造する為に頭を使うのが精一杯でした」
博士「それは言い訳になりませんね」
スピリット「母が言ってますー」


 ここで突然、そのスピリットが霊媒から離れて、代わって母親が乗り移り、あたかも息子に向かって説教するかのような口調で語った。

「ヘンリー、生命には実感があるのだよ。教会で教わったような神秘的なものは何もありません。お前も知ってのとおり、私とお前はせっせと教会へ通ったのに、父さんは一度も通わなかった。なのに、父さんは霊界へ来てから私よりずっと早く向上していきました。信仰とドグマが私の進歩を妨げたのです。
 父さんは心霊学の本を読んでいて、時折交霊会にも出席していました。私達はそんな父さんを気狂い扱いにして、死んだら地獄へ行くと心配していたのに、実際は私の方が惨めでした。
 父さんは、私より先に死にました。私が死んだ時、父さんが迎えに来てくれたけど、私はてっきり幻覚だと思ったのです。父さんは一生懸命私の目を開かせようとしてくれたようですが、駄目でした。教会の説くドグマや教義は、多くの地縛霊を生み出す原因になっております。それがまた、地上の人間にも悪影響を及ぼしているのです。
 ヘンリー、バイブルにもあるでしょうー『汝が大切にしているもののところに汝の心もある』と。お前にとって大切なものはお店だったのです。死んだ後もずっとあのお店にいて、新しい若い男を雇ったつもりでいたのです。だから、私達が近づこうにも近づけなかったのです。
 その第一の原因は、地上で身体が不自由だったことです。それが精神まで不自由にしてしまって、霊体には何の障害もないことが理解できなかった。身障者だという観念が凝り固まって、私達がなんとかしようと思って近づいても、心が通じ合えなかったのです。
 だから、ヘンリー、ここで目を覚まして、霊体は真新しくこしらえられたものであることを理解しなさい。昔の不自由だった身体のことを思い出してはいけません。新しく若返るのです。
 あなたは、真面目な人間でした。悩みは多かったけど、その中にあって精一杯の努力をしました。あなたを今のような状態に封じ込めたのは、無知と、間違った教義と、信仰です。
 ヘンリー
、お前にも美しい家が用意されているのだよ。あたしが案内してあげますから、ついていらっしゃい。そこで生命について色々と勉強しましょうよ。まず第一に、自分中心の考えと、無知と、自分に対する憐れみと、他人への嫉妬心をなくさないといけません。心の窓を大きく開くのです。そうすれば、自分の中に神の王国があることを知ります。
 まだまだ学ばないといけないことが沢山あります。幸せな心と愛を知っている状態が天国であり、利己主義と無知の暗闇が地獄なのです。地獄は自分でこしらえているのです。あたしも真面目な人間でしたが、霊界へ来て苦しい思いをさせられました。自分中心に生きていたからです。教会へ通ったのも、自分と自分の家族の為でした。死んだ後も、教会で教わったことしか頭にありませんでした。そのことが、お前の妹のオーラに引っかかる原因となり、あの子に憑依してしまったのです。かわいそうに、あの子は精神病院に入れられて、そこで死にました。死んでようやく解放され、私も解放されました。
 たった一人の人間、たった一人の家族の為に一生懸命になりすぎるのは感心しません。それが死後もその子、その家族から離れられなくし、悪くすると、私のように、その子に憑依してしまうことになります。ですから、地上にいる時から死後の事情をよく知っておくということが、いかに大切であるかが分かるでしょう。多く知っておくほど、こちらでの幸せが多くなのです(このあたりからサークルの人達を意識して語っている)。
 
 霊体というのは、肉体とそっくりです。精神が成長するにつれて霊体も成長します。死ぬということは、肉体にさよならをして霊体に移ることです。地上で私のように自分中心に生きていた人々は、地上の時のままの環境に置かれ、そして苦しみます。それは一種の教育なのです。私の経験を、皆さんの教訓としてください。
 私は今、母親を知らない子供を百人以上も面倒をみています。育て上げながら、母親の愛情を味わわせてあげます。彼らは、家庭の温かさを知らないまま、こちらへ来ているのです。
 私はヘンリーが可愛くて、ヘンリーの為に一生懸命に働いたのに、こちらへ来てからヘンリーに近づけませんでした。反対に夫は、さっさと高い境涯へと向上していきました。地上で学ぶべきものを学び、何一つ足かせとなるものがなかったからです。私には間違った信仰しかありませんでした。それが障害となりました。皆さん、私の苦しい体験から学んでください。
 本日は、息子をここへ連れてくることを許してくださって、有り難うございました。娘もここへ来ております。私も光明を見出し、可愛い子供達を相手にした功徳積みの仕事をしております。
 どうか皆さんも、我が子だけを可愛がらないで、全ての子供に愛を向けてあげてください」